2022年5月26日 (木)

トランシルヴァニアの結婚式の儀礼歌

トランシルヴァニアの戦前の録音は、まだ人々の日常に伝統歌が脈々と生きていた頃の息遣いが感じられます。昨日は葬儀、今日は結婚式の儀礼歌です。決まった詩節を歌った後に出てくるように思われる、北アフリカのユーユーに少し似た裏声の掛け声を聞くと、古い譬えですが、大屋政子さんの声を思い出します(笑) 
アグネス・ヘルツクなど現代ハンガリーのトラッド界の女性歌手が、類似の歌唱を披露していたと思いましたので、探してみました。5本目は左からHerczku Ágnes, Bognár Szilvia, Szalóki Ágiです。そう言えばこの映像の2008年頃、この3人のハンガリーの歌姫のコラボ作が連発していました。これが結婚式用の歌唱かどうかは不明ですが、唱法としてはそっくりです。70年代からのハンガリーのタンツハーズ(ダンスハウス)運動で復興したハンガリーのヴィレッジ音楽は、エルデーイ(トランシルヴァニア)のハンガリー音楽を重要なルーツにしていますから、当然と言えば当然でしょう。

<22 Ritual de nunta. Joc: "Pe drum" 53秒>

<23 Ritual de nunta. Cintec: Cintecul miresei 1分18秒>

<24 Ritual de nunta. Joc: "Cind pleaca mireasa la cununie" 35秒>

<25 Ritual de nunta: Strigaturi 31秒>

"Háljunk ketten az éjjel"

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2022年5月25日 (水)

80年前の葬送歌ボチェッツ

スイスのVDE-Galloから出ている名盤「ルーマニアの農村音楽」の3枚組は、15年くらい前の段階でCDでは入手困難だったと思います。このレーベルはクラシックがメインで、今も色々出ているようですが、最近も民族音楽方面の新譜が出ているのか不明です。以前の音源は、今回のようにほとんどがストリーミングやYouTubeで聞けるようです。「ルーマニアの農村音楽」の場合ですが、ジャケットは90年代とは異なっています。
LPサイズの解説を読みながら聞いていると色々発見のある盤ですが、トランシルヴァニア編で一番驚いたのは12曲目と32曲目に入っているボチェッツが、ゲオルゲ・ザンフィルのパンパイプ演奏で聞いたような「セルビア東部ヴラフ人の葬儀の音楽とイメージが重なるBocet(ボチェッツ)は、会葬者の慟哭の声まで生々しく描写した音楽」ではなく、意外なまでに淡々と歌われていることでした。トランシルヴァニアと、ザンフィルの拠点のワラキアでは音楽も違うとは思いますが、ザンフィルが彼なりの修飾を施した(ドラマ仕立てのような)演奏をしていたのか、80年の間に徐々に変わっていたのか、どちらでしょうか。
トランシルヴァニア編の2曲の後に、ザンフィルの演奏を入れておきます。ワラキアのオルテニア編とモルダヴィア編にもボチェッツがありますので、またそれぞれで取り上げる予定です。

<12 Bocet: "La sot" (I) 1分35秒>

<32 Bocet: "La sot" (II) 1分13秒>

Bocet

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2022年5月24日 (火)

更にエネスコのヴァイオリン・ソナタ第3番

火曜には通常ブログは書いておりませんが、先週のネタが多過ぎて4回で収まらなかったので、今日2本上げておきます。明日の放送原稿も、ほぼ出来ていますし。イラン系ユダヤ人のペルシア音楽のヴァイオリン演奏も、最近見つけて非常に驚いた映像ですが、それはまたの機会にして、エネスコのヴァイオリン・ソナタ第3番ですが、Yehudi Menuhinと妹のHephzibah Menuhinの全曲演奏がありました。録音は1967年とあります。先日はライブ映像でしたが、1楽章だけでしたから。既存の音源かも知れませんが、何よりこの静止画の写真が貴重です。少年時代のメニューインと、彼を温かく見守る師匠のジョルジュ・エネスコ。最高の一枚です。
そして2本目は、何とエネスコがピアノ伴奏に回っての全曲演奏。ヴァイオリンはSerge Blancと言う人です。1952年ですから、亡くなる3年前の演奏です。2楽章初めの同音連打など弱音部分も割と大きく聞こえて、曲の秘密の一端が垣間見えるようです。コメントにInteresting to hear this after a recording of a doina by Maria Tanase.と言うのを見かけて、ニヤリとしました(笑) マリア・タナセは、何回か先で取り上げます。

George Enescu. Violin Sonata No. 3 - Yehudi Menuhin (violin), Hephzibah Menuhin (piano); rec.1967

RARE! Enescu plays Piano - Sonata Nr.3 for Violin & Piano, Serge Blanc (Violin), Live 1952

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2022年5月23日 (月)

VDE-Gallo「ルーマニアの農村音楽」トランシルヴァニア編

ゼアミdeワールド310回目の放送、日曜夜10時にありました。25日20時半に再放送があります。宜しければ是非お聞き下さい。今日のYouTubeは4曲目まで入れました。

ルーマニアの音楽の22回目になります。今回はスイスのVDE-Galloから出ている名盤「ルーマニアの農村音楽」の3枚組の、トランシルヴァニア編からご紹介します。他にモルダヴィア編とワラキア西部のオルテニア編がありまして、90年代にはLPサイズのケースに入って英仏の豪華解説が付いていました。国内では、この3枚からの抜粋盤がクラウンから出ていました。
ルーマニアの民謡研究の先駆者であるハンガリーのバルトークを受け継いだ、ルーマニアの作曲家で民族音楽学者のコンスタンティン・ブライロイウの貴重な記録で、現在は消滅してしまった伝承歌も多いと言われています。録音は1933~1943年の間にされています。
VDE-Galloは、ブライロイウが1944 年にジュネーヴに設立したフィールド・レコーディング音源のアーカイブ機関=AIMP(Les Archives internationales de musique populaire)が所有する音源を中心にリリースしてきたレーベルですが、最近の新録も登場していました。
ブライロイウは1893生まれ、1958年にスイスのジュネーヴで亡くなっていますので、生没年はバルトークのほぼ10年ずつ後ですから、相当昔の人です。録音は蝋管録音になるでしょうか、各1~3分の曲がほとんどです。

曲名の最初にクンテク(歌)と付いている7曲の内、4曲目までを続けておかけします。2曲目の笛の演奏は、南トランシルヴァニアの1曲目の歌の変奏です。3曲目はトランシルヴァニア南部のオルト地方起源でトランシルヴァニア中に広まったという民謡です。4曲目もオルトの古い民謡で、ドイナ風のフリーリズムの歌です。大きなヴィブラートのかかった声が特徴的です。

<1 Cintec: "Nino, bade, serile" 1分9秒>

<2 Cintec 1分19秒>

<3 Cintec: "Du-te, dor, cu dorurile" 1分45秒>

<4 Cintec: "Ian asculta cum mai cinta" 1分50秒>

8曲目はルーマニアに入ってからタラフなどの演奏で度々出てきたブルウですが、縦笛を吹きながら声も入るダブルトーン奏法です。8曲目から11曲目まではジョク(舞踊曲)が続きますが、いかにもトランシルヴァニアのハンガリー系音楽らしい伴奏ヴァイオリンが3弦の10曲目までの3曲をおかけします。

<8 Joc: Briul 1分3秒>
<9 Joc: Invirtia 1分16秒>
<10 Joc: Ardeleana cu strigaturi 3分12秒>

20曲目にドイナが入っていますが、この歌はワラキア西部のオルテニアのスタイルのドイナで、このタイプはトランシルヴァニアのオルト地方では珍しいようです。おそらくカルパチア山脈を越えて移牧してきた羊飼いが伝えたのだろうと推測されています。

<20 Doina: "In padure duce-m-oi" 1分29秒>

12曲目と32曲目に入っているボチェッツも、ルーマニア初回のゲオルゲ・ザンフィルの時以来これまで何度か出て来ました。ザンフィルの演奏では「セルビア東部ヴラフ人の葬儀の音楽とイメージが重なるBocet(ボチェッツ)は、会葬者の慟哭の声まで生々しく描写した音楽」と言うことでしたが、ここでは意外に淡々と歌われています。2曲続けておかけします。

<12 Bocet: "La sot" (I) 1分35秒>
<32 Bocet: "La sot" (II) 1分13秒>

31曲目のRitual funebru: Cocosdaiulは「葬儀:雄鶏」と訳せるようで、これは数回前にムジカーシュでかけたSzól A Kakas Márを思い出させます。厳粛な雰囲気が女声合唱から伝わってきます。

<31 Ritual funebru: Cocosdaiul 1分51秒>

22~25曲目は結婚式の音楽で、24曲目と25曲目辺りの女性のコーラスと管楽器の演奏は、裏声を巧みに使った結婚式の儀礼歌です。アグネス・ヘルツクなど現代ハンガリーのトラッド界の女性歌手が、類似の歌唱を披露していたと思います。

<22 Ritual de nunta. Joc: "Pe drum" 53秒>
<23 Ritual de nunta. Cintec: Cintecul miresei 1分18秒>
<24 Ritual de nunta. Joc: "Cind pleaca mireasa la cununie" 35秒>
<25 Ritual de nunta: Strigaturi 31秒>

13、14曲目にはコリンドとありますので、クリスマス関連の歌になります。カウベルらしき音も入ったほのぼのとした14曲目を聞きながら今回はお別れです。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<14 Ritual de Craciun. Colinde si urari 3分38秒>

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2022年5月20日 (金)

Ami Flammerのヴァイオリン

アミ・フラメールのYouTubeは、イディッシュ関係はすぐに出てきましたが、クラシックはセザール・フランクのヴァイオリン・ソナタがほとんどで、残念ながらエネスコのヴァイオリン・ソナタ3番はなさそうです。カタカナ表記は、アミ・フラマーと言うのも見かけますが、フランス語圏ですからフラメールとする方が近いと思います。
アミ・フラメールはルイ・マル監督の映画「さよなら子供たち」の中で、お道化た調子でサン=サーンスの「序奏とロンド・カプリチオーソ」を弾いていたのを、たまたま見かけたこともありました。番組でかけたThesis盤は、エネスコの他にチェコのヤナーチェクと、新ウィーン楽派のウェーベルンとシェーンベルクのヴァイオリン作品も演奏しています。アミ・フラメールは1985年にOcoraから出ていたイディッシュ民謡のCDでも演奏していまして、それで名前を覚えていてThesis盤を購入しました。

この人のプロフィールを調べると、以下のようにありました。現代音楽寄りの活動にユダヤ音楽まで入るユニークな経歴です。(おそらく、まず間違いなくユダヤ系でしょう)
パリ音楽院でローラン・シャルミーのクラスで学び、1969年にヴァイオリンで1等賞を受賞。その後、J.ギンゴールド、H.セリグ、C.フェラスに師事。 マリア・カナルス国際コンクール(バルセロナ)で第1位を獲得し、イヴァン・ガラミアン(ニューヨーク・ジュリアード音楽院)、ナタン・ミルシテインに師事。現代音楽のアンサンブル「2e2m」のメンバーであり、1983年にはSACEMのジョルジュ・エネスコ賞を受賞している。ジョン・ケージの「フリーマン・エチュード」をフランスで初演。J.-C.ペネティエとのデュオでヴァイオリンを演奏し、フランク、ドビュッシー、シマノフスキ、エネスコ、ウェーベルン、シェーンベルク、ヤナーチェクなどの作品を一緒に録音している。1999年にカルテット "Carre-Le Partage des Voix "を設立し、現代的なレパートリーを提供している。シャロン=シュル=ソーヌ音楽院とジャンヌヴィリエ音楽院で教鞭をとり、パリCNSMDではヴァイオリンと室内楽の教師を務めている。2017年には、ジャン・ジャック・カントロフ指揮によるベートーヴェンの協奏曲を録音している。

フランクは今回は外して、イディッシュのみにしておきます。1985年にOcoraから出ていたイディッシュ民謡のCD「Chansons Yiddish - Tendresses et Rage」から、Avremlとパピロシュンを上げておきます。編成は、Ami Flammerのヴァイオリン、Moshe Leiserのギターと歌、Gerard Barreauxのアコーディオンです。東欧系ユダヤ人のイディッシュ語の哀感溢れる歌を聞かせるCDは沢山ありますが、この盤はCDでは最も早い時期に出た一枚だったと思います。2本目を見て、LPの頃から出ていたことを知りました。またポーランドの時に東欧系ユダヤの音楽は集中的に取り上げる予定です。

Avreml

Ami Flammer, Moshe Leiser, Gérard Barreaux - A kalte Nakht (Papirosn) (Yiddish Song)

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