2019年8月19日 (月)

ウイグルのタンブール

ゼアミdeワールド174回目の放送、日曜夜にありました。21日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。放送と同じ演奏者と曲の動画は見当たりませんので、他の演奏者ですが、タンブール独奏を上げておきます。東京芸大の柘植先生の関係だったと思いますが、この方にもお会いしたことがあります。

中国ウイグル タンブール 『ムダンハン』


フンザの次は、中国西部に位置するテュルク系の新疆ウイグルの音楽です。ウズベクの辺りが西トルキスタン、ウイグルは東トルキスタンで、トルキスタンはシルクロードの中心に位置し、東西音楽文化の結節点でもあります。

ウイグルと聞くと、近年の政情不安がまず気になるところですが、個人的に思い出すことがあります。2005年まで住んでいた千葉県の松戸市で毎年夏に開催されていた新松戸祭にウイグルの屋台が出ていました。確かシルクロード倶楽部の人たちが運営していたと思います。2004年ころ毎年のように顔を出して、カバブを食べたのを思い出しますが、その時によく来ていたのが、日本在住のウイグル人タンブール奏者、アブライティ・ムハメドニヤズさんでした。祭りでも生演奏を何度か見ましたが、コジマ録音から彼のCD「ウイグル・タンブールの音色」が出たのは、私はUターンして祭りに顔を出せなくなった後の2006年でした。コジマ録音からサンプル盤を頂いて、懐かしく彼のCDを聞いた次第です。

ウズベクのブハラの「6つのマカーム」を意味するシャシュマカームに対し、ウイグルには「12のマカーム」を意味するオンイッキ・ムカームの壮大な体系があります。ウイグル音楽は中央アジア音楽の重要な位置にありますが、当店でのCDの売れ行きはとても良くて手元に資料がほとんど残っていないため、余り回数は出来ないと思います。実はオンイッキ・ムカームの12ムカーム毎のVCDというレアなウイグル盤が手元にあるのですが、放送でかけることは難しそうです。中東の多くのマカーム音楽と同じく、演奏される旋法だけでなく、旋法に属するレパートリーの集合体で、それぞれの楽曲が独自のストーリーや背景などを持っているようです。

ウイグル・タンブールの棹は非常に長く、おそらく低いポジションには手が届かないように思いますので、アブライティ・ムハメドニヤズさんは、ほとんどハイポジションのみで弾いていたように記憶しています。

では、アブライティ・ムハメドニヤズさん(ニックネームはニヤズさん)の演奏を順に抜粋して聞いて行きます。典雅な12ムカムのレパートリーと、ウイグル民謡を披露していますが、中央アジアを強く感じさせながら、仄かな中華風味もある所がウイグル音楽の特徴で、タンブールとドタールのソロを中心に、歌も聴かせます。まず一曲目のチャビャトムカムからどうぞ。

<1.チャビャトムカム 第一ダスタンメルグリ 4分24秒>

12の各ムカームはチョンナグマ、ダスタン、マシュラップの3部で構成され、チョンナグマ、ダスタンにはメルグルを言う優美な間奏曲が多い。12ムカム全曲の演奏には24時間を要する。この曲はその2番目であるチャビャトムカムの一部で、ウイグル民族の深い悩みを表した内容で、どのようにその悩みや困難を克服し、希望を見出すかを、テンポの速い演奏で表現した曲。とありました。

2曲目は、自分が愛する女性に自分の心を伝える、恋人を褒め称えた曲。とありました。

<2.アミレキム(私の恋) 3分24秒>

3曲目は、遠く離れた所で恋人を想い、深く愛する気持ちを緩急のあるメロディで表現したウイグル民謡の名曲。とありました。

<3. ヤル(恋人) 4分56秒>

少し飛んで7曲目は、緑の芝の中から湧き上がるオアシスのチムブラク(緑の泉)を見ながら、緑と水は人間が生きるために大切だと歌い、明るい未来に希望を託した曲。とありました。

<7.チムブラク(芝生の泉) 5分40秒>

8曲目は低音豊かな2弦のドタールの曲です。亡くなって初めて分かる親の有難さ。父親が子供を育てるのにどのくらい苦労したか。大人になった子供が父親の役割の大きさ、大切さを理解し、愛や尊敬の気持ちを歌い上げた曲。とありました。

<8. アタム(私の父) 1分52秒>

もう一曲ドタールの曲を聴きながら今回はお別れです。9曲目のデルクイという曲は「心の響き」と訳されています。タンブールの方は、中央アジアのルバーブと中国の琵琶のちょうど間のように聞こえる曲も多いですが、ドタールでは西域のカラーが明確に出ているように思います。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<9. デルクイ(心の響き)4分4秒>

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2019年8月17日 (土)

スケッチ・オブ・ミャーク 長田孫太郎

ペロッグ音階は日本の沖縄音階と、スレンドロ音階は律・民謡音階と、マドゥンダ(旧称?ソロッグ)音階は都節音階と似ている例を上げようかとも思いましたが、何年か前に当ブログで書いてますし、本筋からずれますので、宮古島の歌に戻ります。第64回ロカルノ国際映画祭〈批評家週間賞 審査員スペシャル・メンション2011〉を受賞した「スケッチ・オブ・ミャーク」(DVD有り)のトレイラー映像と、「南嶋シリーズ Nisumura 宮古西原 古謡集」に出てきた演歌歌手・島和也(本名・奥原初雄)の遠縁に当たるという村一番の唄者、長田孫太郎(ながたまごたろう)の生映像です。来週はウイグルに移りますから、宮古島の音楽を締めるのに相応しい素晴らしい2本です。

スケッチ オブ ミャーク Sketches of MYAHK Trailer

長田孫太郎 不世出の唄者、宮古民謡 Magotaro Nagata MIYAKOJIMA

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2019年8月15日 (木)

宮古西原 古謡集

昨晩の風はすごかったですが、台風の目に近いのか今は割と落ち着いています。しかし「台風銀座」の宮古・八重山などの先島諸島では、この位の風は何でもないことでしょう。あちらの建築の堅牢さには驚きました。
実は宮古島についた7月6日の夜に、屋台で沖縄料理を食べた後、すぐ横で三線弾き語りのライブをやっていて、一曲だけ宮古の民謡を聞けました。「豊年の綾語」という曲で、例の「南嶋シリーズ Nisumura 宮古西原 古謡集」でも8曲目に入っています。
宮古西原 古謡集のYouTubeが一本だけ上がっていました。Yusuma no Shu ( 四島の主 )、Tabihae no Ayagu ( 旅栄えの綾語 )、Nisugatou ( 西が沖 ), Komuriuta ( 子守り唄 )、Myahkzutsu no Aag ( 宮古節の綾語 )、Kuichaa Aag ( クイチャー綾語 )がメドレーで出てきます。これらもかけたかったのですが、神が舞い降りるような絶品の「御前風」は絶対外せないので、「宮古節の綾語」だけ入れて他は割愛しました。
ライブでその他に歌っていたのは、安里屋ユンタ、てぃんさぐの花、島唄(ブームのヒット曲)、涙そうそう、などお決まりの曲でしたが、なかなか良い演奏でした。そういえば、谷茶目節も昔よく聞いたものですが、最近は定番曲から漏れているようにも思います。昭和28年の映画「ひめゆりの塔」にも出てきました。沖縄本島中西部、恩納村(おんなそん)の海岸「谷茶前(たんちゃめ)」での漁を題材とした沖縄民謡とのことで、沖縄音階の民謡名曲です。
「ハイサイおじさん」でお馴染みの沖縄音階は、琉球王国時代にジャワから沖縄本島に伝わったという説がありますが、そういえば先島諸島で聞くことは少なく、奄美で聞くことは皆無のように思いました。ジャワやバリの、ペロッグ音階は日本の沖縄音階と,スレンドロ音階は律・民謡音階と,マドゥンダ(旧称?ソロッグ)音階は都節音階(新内節などの江戸音曲によく聞かれる)に似ていると言われます。

from NISUMURA 宮古西原 古謡集より [ABY-004]

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2019年8月12日 (月)

宮古島の神歌

ゼアミdeワールド173回目の放送、日曜夜にありました。14日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。

フンザの次は、ウイグルの予定でしたが、毎年お盆と正月には日本の音楽をご紹介していますので、今年も一回だけ日本に戻ります。

長男の結婚式で7月初旬に沖縄の宮古島に行ってきまして、17年前に奄美大島に行って、南の島の明るい風光と島民の気さくな人柄に触れて「移住したい」と思う程気に入ったのを思い出す旅になりました。手持ち音源から2枚おかけしたいと思います。Alchemyから出ている「南嶋シリーズ Nisumura 宮古西原 古謡集」と、キングの「沖縄・宮古の神歌」の2枚です。

アルケミー盤は、1974年に宮古島西原地区の村立100周年の記念として、池間出身の演歌歌手・島和也、本名・奥原初雄氏と村一番の唄者、長田孫太郎氏によって録音、制作された2枚組のレコードから編集し、プロデューサーの久保田麻琴氏がリマスターして復刻した2009年の盤でした。

キング盤は150枚のワールドルーツミュージックライブラリーの一枚で、同じく久保田麻琴氏の録音とプロデュースで、アルケミー盤と同じ曲を含む2008年録音です。「宮古・池間地区の島の繁栄を祈願する儀礼の中で、女性達が島内の霊場を廻りながら唱える神歌が収録されています」と解説にはありますが、池間島からの移住者が宮古島の中心に近い西原という所に住んでいるので、西原(アルバムタイトル通り方言ではNisumura)に残る池間の伝承ということになるようです。

解説は後で入れることにしまして、まずは、アルケミー盤の一曲目「御前風」をお聞き下さい。穏やかな序曲のようなグディンブー(御前風)という11分余りの歌唱です。

<1 南嶋シリーズ Nisumura 宮古西原 古謡集 ~御前風 11分6秒>

宮古島に行ってみて不思議に思ったのは、本土にある寺社仏閣や墓地が見当たらないように見えたことですが、これは本土では失われた「神の世界観」が今なお沖縄では息づいているからかなと思いました。観光タクシーの運転手さんから色々話を聞きましたが、祖先崇拝が強いからでしょうというお返事でした。聖なる地、ウタキ(御嶽)は、宮古島には何と千以上あるそうです。

面積は小豆島くらい、人口6万ほどの宮古島の中で、池間や西原の方言で話されると、同じ島民同士でも全く通じないそうです。これには驚きました。北の方にある池間島は遠いので行けませんでしたが、西の来間島と5キロ近い長い橋の向こうの伊良部島には渡りました。

今回かけているような古い伝承の歌を現地で聞きたかったのですが、大体の民謡酒場では一般的な沖縄民謡がほとんどのようですので、初めての土地の夜道をレンタカーで走ってまで行かなくて良かったかなと思っています(笑)

本土の都節とは違いますが、短調に聞こえる「宮古節の綾語」という曲をおかけします。奄美民謡に少し似た感じですが、短調の沖縄民謡はほとんど記憶がありません。

<21 南嶋シリーズ Nisumura 宮古西原 古謡集 ~宮古節の綾語 2分36秒>

アルケミー盤とキング盤共通で入っている曲は、他に「出産祝いの歌」がありますが、現在ではこの歌の歌い手は数えるほどという貴重な歌です。アルケミーの方は三線付きですが、キング盤の無伴奏歌唱の方でおかけします。

<5 沖縄・宮古の神歌 ~マイグムイマウヤハ(出産祝) 4分51秒 から2分ほど>

では最後にアルケミー盤でも冒頭に入っていた「御前風」を時間まで聞きながら今回はお別れです。キング盤の録音年はアルケミー盤の34年後ですので、キング盤の90歳前後の「オバァ」の一人、長崎トヨさんは、もしかしたらアルケミー盤のジャケットの女性と同じ人かと思いましたが、どうも違うようです。祭祀を行う女性の歌い手を七杜(ナナムイ)と言いますが、七杜の現役は47~56歳なので、アルケミー盤のジャケットの女性は、1974年当時現役だったのではと思いました。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<1 沖縄・宮古の神歌 ~グディンブー(御前風) 12分12秒>

宮古島神歌古謡 2007年12月の録音



高良マツさん、長崎トヨさん、村山キヨさんによる、キング盤リリース前年の同曲の歌唱

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2019年8月10日 (土)

カラシュとフンザ

金曜に書けなかったので、土曜ですがアップしておきます。
フンザでは系統不明のブルシャスキー語の他に、ゴジャール地域ではイラン系のワヒー語も使われています。こちらは印欧語系です。(10年ほど前にワヒーの映像も色々探しました)
フンザのあるギルギット・バルティスタン州の西隣のカイバル・パクトゥンクワ州北部のチトラルの近くには、少数民族カラシュ族が住んでいて、カラシュ語はインド・イラン語派ダルド語群ですが、アレクサンダー大王の帝国以来の古代ギリシア人の末裔とも言われています。フンザのノンサッチ盤も入手困難だと思いますが、カラシュ族のフランスPLAYA SOUNDの音源も、レーベル自体が活動停止してしまったので、同じく難しそうです。カラシュの独特な地声合唱は、この番組(ナレーションはウルドゥー語でしょうか)からもかすかに聞こえています。アフガニスタン北東部のヌーリスターン人も、カラシュ族と同じく金髪、紺碧目で色白というヨーロッパ人のような風貌の人が多いそうですが、カラシュに比べるとマイナーで音源等は記憶にありません。

店は10~18日まで夏休みです。ブログも飛び勝ちになると思いますが、ビルの経理作業とZeAmiの作業は進みそうです。弦楽合奏の練習と収録はいつも通りあります。

chilam josh festival Dance in Kalash Valley chitral Report sherin zada

Burushaski: Mystical Music Colors of Karakoram

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