2019年12月 9日 (月)

女子十二楽坊とウスクダラ 他

ゼアミdeワールド190回目の放送、日曜夜にありました。11日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。今日の動画は、女子十二楽坊とウスクダラだけにしておきます。

トルコの伝統音楽の9回目です。トルコの音楽は手元の資料の数ではペルシア音楽やアラブ音楽に次いで多いので、オスマン古典音楽だけでも後数回は予定していますが、この辺でおそらく多くの人に耳馴染みではという曲から始めたいと思います。

サントゥーリー・エトハム・エフェンディのロンガ・シャーナズですが、中国の女子十二楽坊が「自由」というタイトルで演奏したことで知られています。2001年頃盛んにテレビCMでも流れたので、おそらく誰でも聞いたことのあるオスマン音楽と言えるでしょう。エトハム・エフェンディは、1855生まれ1926年没ですから、オスマン末期の音楽家です。サントゥーリーの敬称がある通り、サントゥールの名手でした。女子十二楽坊は二胡が中心ですが、琵琶、中阮、笛、揚琴、古筝、独弦琴もバックにいて、この内揚琴(ヤンチン)はサントゥールと同属の楽器です。ロンガは速い2拍子で演奏される軽快な楽曲形式で、コンサートの最後を飾ることも多いです。では2007年リリースの女子十二楽坊のアルバム「上海」から、「自由」のライブバージョンをどうぞ。

<12 女子十二楽坊 Freedom (Live) 4分12秒>

女子十二楽坊 自由


もう一曲のウスクダラはトルコの古典音楽ではなくイスタンブールの民謡になりますが、1954年に江利チエミが日本語で歌ったので、古い世代の方はご存知かと思います。オスマン音楽シリーズが一通り終わったらトルコ民謡の方でも取り上げますが、今回は往年の古典音楽の女性歌手サフィイェ・アイラの古い録音でおかけします。この曲の別名キャティビームが曲名になっています。音源は、アメリカRounderから出ていたSP復刻の「トルコ音楽の巨匠 Vol.2」の1曲目です。

<1 Safiye Ayla / Katibim 3分18秒>

Safiye Ayla-Uskudara gideriken aldida bir yagmur


エトハム・エフェンディと同じオスマン朝末期の音楽家のタンブーリ・ジェミル・ベイは、トルコ音楽史上最高のタンブール奏者と言われています。彼の作曲した中で、アラブ音楽でもよく演奏される「チェチェン・クズ」を今回おかけします。「チェチェンの娘」と訳せるこのヒュセイニー旋法の曲は、ロシアでの迫害から逃れてオスマン帝国に移住してきたチェチェンやチェルケスなど北コーカサス系の愛らしい美少女を描写した曲かと思います。ジェミル・ベイはタンブールだけでなく、ケメンチェの名手でもあったので、ここではケメンチェを弾いています。アメリカTraditional Crossroadsの盤は、1910~14年にブルーメンタル・レコードとトーキング・マシーン・カンパニーによって行われたアコースティック録音からのCD復刻ですから、100年余り前の録音です。

<1-2 Tanburi Cemil Bey Vol.2-3 Cecen Kizi 3分9秒>

同じチェチェン・クズを、クドゥシ・エルグネルのアンサンブルが演奏した録音がドイツのCMPから91年に出ていましたので、そちらでもおかけしておきます。

<11 Peshrev & Semai of Tanburi Djemil Bey / Cecen Kizi 3分42秒>

185回目にクドゥシ・エルグネルのメヴレヴィー的な演奏でかけたイスマイル・ハック・ベイのフェラフェザのペシュレヴもアラブ音楽でよく演奏されています。パレスティナのウード名手シモン・シャヘーンの演奏が、92年にドイツのCMPから出ておりました。そちらでおかけします。ペシュレヴは、ここではアラビア語のバシュラフになっております。なおシャヘーンは、シモンという名前の通り、パレスティナのキリスト教徒だと思われます。

<1 Simon Shaheen / Turath - Masterworks of the Middle East Bashraf Farahfaza 5分45秒>

では最後に、同じくシモン・シャヘーンの演奏で、タンブーリ・ジェミル・ベイの息子のメスード・ジェミルが書いたSama'i Nahawandを時間まで聞きながら、今回はお別れです。今回は途中までになると思いますが、ウードなどアラブの楽器でもよく演奏される名曲ですから、またちゃんとかける予定です。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<6 Simon Shaheen / Turath - Masterworks of the Middle East Sama'i Nahawand 8分16秒>

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2019年12月 6日 (金)

デヴレト・コロスのカラー映像

デヴレト・コロスの正式名称は、イスタンブール国立トルコ古典音楽合唱団(Istanbul Devlet Klasik Turk Muzigi Korosu(Chorus))で、彼らの映像は、カラーでもいくつもありました。ファースト・ヴァイオリンのトップが、ジョルジュ・バタイユに似た老紳士で気になりましたので、今日はこちらで上げておきます。ファースト・ヴァイオリンのトップは、トルコでもコンサートマスターと言うのか、同じ役割を果たすのかどうかは分かりません。このグループは、Kalan Muzik Yapimから1996年に出ていた「デデ・エフェンディ没後150周年記念(2CD)」の演奏団体でもありました。やはり売り切れで手元にないので、忘れておりました。その中からスズナーク旋法のベステを2本目に上げておきました。スズナークは、好きなマカームの一つです。

İstanbul Devlet Klasik Türk Musikisi Korosu 3. Dvd 1. Bölüm

Sûznâk Beste

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2019年12月 4日 (水)

Devlet Korosu Prof. Dr. Nevzat ATLIĞ

デヴレト・コロスの貴重なモノクロ映像がありました。これは紛れもないオスマン古典音楽ですが、途中で出てくる女性の独唱はMarie Keyrouzに似ていますし、コメント欄にも「Is this Byzantine music? Sounds like it.」というのがありました。そう思うのは、私だけではないようです。マリー・ケイルーズがビザンツ教会歌の盤で歌っていたのも、トルコ語はなくても、ギリシア語やアラビア語のシリア正教会などの歌でした。近東一帯は、19世紀まで全てオスマン帝国の版図でしたから、似ているのは当然かも知れませんが、トルコ人がアナトリアに入ってくる前のビザンツ帝国以来の要素もあるのかどうかが気になる点です。
ネヴザード・アトリーと表記することについてですが、トルコ語では上に楔型のあるGは、前の母音を伸ばしますので、アトリグではなくアトリーになります。序に言えば、Cはジャ行の音になります。

Devlet Korosu Prof. Dr. Nevzat ATLIĞ (Siyah Beyaz TRT Konseri 1.bölüm)

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2019年12月 2日 (月)

イスタンブル・デヴレト・コロスとネヴザード・アトリー

ゼアミdeワールド189回目の放送、日曜夜にありました。4日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。

トルコの伝統音楽の8回目です。オスマン古典音楽名曲選の6回目としまして、トルコKentで演奏していたNevzad Atlig(ネヴザード・アトリー)指揮トルコ古典音楽国立合唱団の演奏が、フランスのUnescoからも出ておりますので、今回はそのTurkish Classical Music - Tribute to Yunus Emreから抜粋しておかけします。ケントの方は10枚の作曲家別の合唱付きオスマン古典音楽のシリーズで、その内の第5集のデデ・エフェンディの盤から数曲のみご紹介しました。このシリーズは20年以上前のリリースで、手元にはデデ・エフェンディのみ残っている状況ですので、他にどういうタイトルが出ていたか、また現在も手に入るかどうかは不明になってしまいました。ユネスコの方は、リリースが91年と言うことで同じ頃の演奏ですから、ケントの10枚シリーズのダイジェストのように聞けると思います。Tribute to Yunus Emreの副題がある通り、ペルシアの詩人ジャラール・ウッディーン・ルーミーの影響を強く受けた神秘主義詩を多く書いた13、4世紀トルコの詩人ユヌス・エムレ賛となっております。この国民的な詩人の生誕750周年だったようです。

まずは1曲目にアブドゥルカディル・メーラギのラストのキャールが入っておりますので、そちらからおかけします。ファスルの中では、このトルコのシリーズの3回目にかけました同じ作曲家のラストのベステ、Rast Nakis Besteの前の曲になりまして、クドゥシ・エルグネルのオスマン軍楽の1曲目にも一部出てきたと思います。14、15世紀と非常に古い時期から残るこの名曲が最初になっております。途中転調の妙も聞けます。

<1 Rast Kar-i Muhtesem - Ah Ki Kuned Kavm-I Beyakiyn 8分10秒>

İstanbul Devlet Klasik Türk Müziği Korosu - Rast Kâr-ı Muhteşem


トルコシリーズの初回にかけましたガズィ・ギレイ・ハーンのマーフールのペシュレヴが3曲目に入っておりますので、そちらをおかけします。ガズィ・ギレイ・ハーンは、現在はロシア領のクリミア半島出身で、チンギス・ハーンの末裔と言われるクリミア・ハーン国の12代目ハーンでしたが、勇敢な戦士であるだけでなく偉大な作曲家としても知られ、色々な楽器を演奏し、アラビア語、ペルシア語、オスマン語など多言語で詩も残しています。Mutlu Torunのウード教本にも入っているこのマーフール旋法の明るく親しみやすいペシュレヴは、作曲されたのが16世紀ということで、オスマン音楽の中でもかなり古い曲ですが、長らく口承で伝えられ、ウルヴィ・エルグネルが記譜した云々という話を前にもしました。

<3 Mahur Pesrev 3分6秒>

İstanbul Devlet Klasik Türk Müziği Korosu - Mahur Peşrev [ © 2002 Kalan Müzik ]


この盤の5曲目には17、8世紀の作曲家ウトリーの大作Neva Kar(ネヴァー・キャール)も入っております。ウトリーはイスタンブルに生まれ、最初の音楽教育をイスタンブルのメヴレヴィー教団の修道場で受け、オスマン帝国第19代皇帝メフメト4世(在位:1648-1687)の時代の宮廷音楽家にして、詩人で書家でもあったという人です。古典的な様式に誠実である多くの作曲家が、大なり小なり彼の影響を示しているとのことです。ウトリーの綴りはItriですが、トルコ語では上に点のないIと上に点のあるIを区別し、点のない方はイの口でウと言う発音、点のある方はイの音ですので、ウトリーの最初の音は前者になるため、表記上はウとしていますが、ユに近いかも知れません。
この曲は13分を越えますので、途中で終わるかも知れませんが、もし時間が余りましたら、8曲目のEvc Ara Saz Semaisiをおかけします。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<5 Neva Kar 13分12秒>

İstanbul Devlet Klasik Türk Müziği Korosu - Neva Kâr [ © 2002 Kalan Müzik ]

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2019年11月29日 (金)

キャーニ・カラジャで~キャール・ナートゥク

昨日の続きですが、~キャール・ウ・ナートゥクと付く曲は、マカームごとに色々な作曲家が書いているようです。ラスト・キャール・ナートゥクも、デデ・エフェンディ以外に複数存在していました。圧倒的にデデ・エフェンディの曲が美しく親しみやすいように思いますが、今日は2001年に来日した名歌手、故・キャーニ・カラジャで幾つか見てみたいと思います。
2001年の東京の夏音楽祭は、7月28日の東京ジャーミー文化センターの方を見に行きました。黒メガネのインパクトもありますが、もの凄い声の存在感と、整然とした伴奏陣の演奏には感動しました。日本最大のモスクでのシチュエーションも最高でした。
一本目がサバー・キャール・ナートゥク、二本目はデデ・エフェンディのと同じでラスト・キャール・ナートゥクで、後者は活動停止してしまった90年代フランスの名レーベルAl Surから出ていたCDの音源です。作曲は、前者がゼカイ・デデで、ゼカイという名前から推測するにユダヤ系でしょうか? 名唱を聞かせていますが、余りマカームが変わっているようには聞こえません。しかし、この頃のカラジャの若いこと!
後者のアル・スールの方の作曲は、ハティプザーデ・オスマン・エフェンディという人です。伴奏のネイがKudsi ErgünerとAka Gündüz Kutbayということで、超豪華です。楽譜も出てきますが、デデ・エフェンディの曲のように調号が頻繁に変わらず、マカームが鮮やかに変わっている感じはないように思いました。ハティプザーデ・オスマン・エフェンディは、デデ・エフェンディよりも前の人のようですので、もしかしたらこのスタイルの考案者でしょうか?

Kâni Karaca - Sabâ Kâr-ı Nâtık (Beste: Zekâî Dede)

Rast Kar-ı Natık - (Kani Karaca)

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