2019年6月26日 (水)

Nomadic Tribal Song of Separation ギチャクとゼルバガリ

インドのバラモン階級出身の民族音楽学者バッタチャリア(Deben Bhattacharya)のアフガニスタン録音では、国民楽器の印象が強いアフガン・ラバーブよりも、Muhammad Naim Mazari(1914年生まれ。バーバー・ナイムと同一人物?)の擦弦楽器ギチャクとMalang Nejrawiのゼルバガリのコンビがとても多いというのは、意外な点かなと思います。Malang Nejrawiも、ドゥタールとの映像が比較的youtube上で前から(2008年頃ですが)知られていたように思います。
今日のNomadic Tribal Song of Separationという曲は、バッタチャリア音源を集めたイギリスのARC盤収録の曲ですが、23日放送のラストにかけたアーゴ盤のパシュトー語の「遊牧民の歌」からの抜粋と思われます。ですので、ARC盤を取り上げる30日放送分からは外しました。歌詞は以下の通り

「娘は結婚して、この種族から去る時に、母に“さよなら”を言いました。それから、彼女は母親から贈ってもらいたいと思っていた贈り物について語ります。そして遠くに去って行きます。」

ぱっと聞きは浪曲風にも聞こえるMuhammad Naim Mazariのギチャク弾き語りですが、確かにSong of Separationらしい、沁み入る歌唱です。

Nomadic Tribal Song of Separation


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2019年6月24日 (月)

バッタチャリア録音のアフガニスタン argo

ゼアミdeワールド166回目の放送、日曜夜にありました。26日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。

アフガニスタンの音楽の6回目になります。今回はイギリスのargoから出ていたアーゴ民族音楽シリーズの11枚目「アフガニスタンの音楽」からご紹介します。手元にあるのは、98年リリースの同内容の日本ポリグラム盤です。インドの世界的な民族音楽学者のデベン・バッタチャリアが、1955年と70年にカブールで録音してきた音源です。大変お世話になった明治大学教授の故・江波戸昭先生監修のシリーズで、インド周辺だけでなく世界中の伝統音楽が網羅されています。これまでかけた中では一番古い音源で、伝統音楽がしっかり根付いていた頃の、より生々しい演奏が記録されています。一部重なるバッタチャリアの音源は、イギリスのARCからも出ておりまして、次回補足でかけると思います。

まずは、一曲目のギチャク弾き語りとゼルバガリの伴奏で、アフガン・ペルシア語とも言われるダリー語の恋歌「Goftamash Ai Nazaneen」をどうぞ。録音は1970年で、ギチャクは1914年生まれの名手Muhammad Naim Mazari、ゼルバガリは色々な盤でもうお馴染みのマラン・ネジラビです。彼は1942年生まれのようです。

<1 Goftamash Ai Nazaneen 6分16秒>

2曲目のBattle Tune(戦闘の音楽)は1955年の録音で、アフガニスタン北部のトルクメンやウズベクと同一系統の民族が伝えた非常に古い歌の旋律による曲とのことです。けたたましいダブルリード管楽器のスルナイと、両面太鼓ドールによる勇壮な音楽です。

<2 Battle Tune 2分13秒>


5曲目は1970年録音のルバーブの独奏です。やっぱりこの楽器の音色が、一番アフガニスタンらしいように思います。演奏はルバーブがウスタッド・ムハンマド、ドール伴奏がグル・アラームです。

<5 Rubaba 2分8秒>

6曲目はパシュトゥー語の恋歌で、これも1970年の録音で、ギチャクとゼルバガリの演奏者は1曲目と同じMuhammad Naim Mazariとマラン・ネジラビです。バッタチャリアの解説によると、パシュトー語はインドのサンスクリット(梵語)起源になっています。現在も支持される説かどうかは分かりませんが、例のパシュトゥーンのルーツに当たるサカ族と釈迦族が元は同じ民族という、ビックリ仰天の説を思い出します。この曲はアフガニスタン南部のカンダハールに住んでいたパシュトゥー人が伝えた民謡が元ではないかと言われているそうですが、そのカンダハールという地名も古代のガンダーラに由来する説があるようです。

<6 Pashto Love Song 5分36秒>


7曲目は1955年録音のダリー語の恋歌で、アブドゥル・カーデルによる切々とした男性の独唱です。

 
<7 Dari Love Song 2分50秒>


では最後に4曲目のパシュトー語の「遊牧民の歌」を聞きながら、今回はお別れです。ギチャクとゼルバガリの演奏者は、これまでの数曲と同じMuhammad Naim Mazariとマラン・ネジラビです。

「娘は結婚して、この種族から去る時に、母に“さよなら”を言いました。それから、彼女は母親から贈ってもらいたいと思っていた贈り物について語ります。そして遠くに去って行きます。」と連綿と歌われています。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<4 Tribal Song 8分33秒>

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2019年6月21日 (金)

Afghanistan Untouchedのカザフとトルクメン

今週は終活カフェの準備と本番があったので、ブログアップは2回になりました。今日はAfghanistan Untouched後半のカザフとトルクメンです。ディリ・トュイドゥクというのだけは、現物を見たことがないので、見てみたいものです。尺八やカヴァルを引き合いに出しましたが、ダブルトーンのカルグイ・トュイドゥクに一番似ているのは、バシコルトスタンのクライのように思います。弦楽器演奏はどちらも現在の本国のものよりは比較的地味で、これが古形ということかも知れません。

ソ連時代の1932年にカザフスタンの首都アルマトゥイから脱出したカザフ族も、やはりアフガニスタン北部に住んでいて、この盤にはドンブラの独奏と弾き語りが入っています。カザフスタンでは変化があっても、亡命者の演奏には30年代のまま変わってない面があるかも知れません。ロシアのバラライカのように左手の親指を上から巧みに使う独特なフィンガリングが見られるドンブラ独奏と、弾き語りの両方が入っています。

<11 Khandikhan / Kazakh Music: Dombra Pieces 1分20秒>



<12 Haji Birdali / Kokshetau 1分53秒>


やはりソ連を脱出してトルクメニスタンに近い北部に住んでいるトルクメン族の4曲は、ダブルリードと思われる管楽器のディリ・トュイドゥクと、尺八や東欧のカヴァルなどに近い音色のカルグイ・トュイドゥクの独奏で始まり、代表的な弦楽器のドゥタール弾き語りの吟遊詩人バフシーの音楽に移っていきます。独特な喉をひくつかせる歌唱の出てくるドゥタール弾き語りを聞かせるのは、バフシーの名をそのまま名乗る名人アフマド・バフシーです。

<13 Nur Mohamed / Turkmen Music: Two Dili-Tuiduk Pieces 2分26秒>



<14 Hamra Bakhshi / Waghelbeg (Karghy-Tuiduk Piece) 1分11秒>



<15 Akhmad Bakhshi / Ughulbeg (Song With Dutar) 5分8秒>

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2019年6月17日 (月)

Afghanistan Untouched~ハザラ、パシュトゥーン、カザフ、トルクメン

ゼアミdeワールド165回目の放送、日曜夜にありました。19日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。曲が多いので、カザフとトルクメンのyoutubeは明後日以降に回します。

アフガニスタンの音楽の5回目になります。前々回に続いて今回もアメリカのTraditional Crossroadsから出ていた「往年のアフガニスタン(Afghanistan Untouched)」の2枚組からご紹介します。Untouched(無傷の)という副題通り、平和な頃の貴重な記録で、1968年にマーク・スロービンによってフィールド・レコーディングされた録音の集成です。前々回は1枚目のタジク族とウズベク族の音楽でしたので、今回は2枚目のハザラ族、パシュトゥーン族、カザフ族、トゥルクメン族の音楽をご紹介します。

モンゴル帝国時代の末裔と言われるモンゴル系のハザラ人の音源は、一曲だけ入っています。ハザラ人はアフガニスタンの中央部から首都のカブールなどかなりの広域に住んでいますが、2003年推計のパーセントで見ると、パシュトゥーン人が45%、タジク人が32%、ハザーラ人が12%、ウズベク人が9%ですから、少ない方の民族ということにはなります。それ以外のトルクメン人、アイマーク人、ヌーリスターン人、バローチ人、パシャイー人は、もっと少ない少数民族になります。

ハザラの曲を笛で演奏しているのは、ディルダルという人です。モンゴル系ですが、5音音階ではないのが分かります。

<1 Didar / Hazara Music: Flute Tunes 1分44秒>

Hazara Music: Flute Tunes


この後はパシュトゥーンの音楽が5曲、ヘーラートの音楽が4曲、カザフの曲が2曲、トルクメンの曲が4曲と続いて、最後はゼアミブログでも妙技を取り上げたMalang Nejrawiの片面太鼓ゼルバガリの独奏で締めています。プラヤ盤の冒頭もこの人の演奏でした。この曲はフェイドアウトしたくないので、先におかけしておきます。様々なリズムパターンをデモ演奏しています。解説にありませんが、彼はパシュトゥーン族でしょうか?

<17 Malang Nejrawi / Samples Of Drum Rhythms On Zirbaghali 5分14秒>

Samples Of Drum Rhythms On Zirbaghali


アフガニスタンの最大民族のパシュトゥーン族の使うパシュトー語は、古代にパルティアから圧迫されてイラン高原からガンダーラ地方へ移住したイラン系のサカ族の言語を起源としていて、『漢書』で塞(そく)と呼ばれる種族(サカ)と釈迦族がもとは同じ民族であった、という大変に興味深い説があります。パシュトゥーン人というのは狭義のアフガン人で、元々アフガニスタンは、ペルシア語とダリー語で「アフガン人(パシュトゥーン人)の国」という意味です。ガンダーラは、現在のアフガニスタン東部からパキスタン北西部にかけて存在した古代王国です。

タンブール弾き語りとタブラ伴奏の4曲目は、内戦の頃によく耳にしたマザリ・シャリフでの録音です。アフガニスタンのタンブールは、共鳴弦のたくさん付いた長い棹の弦楽器で、シタールのルーツ楽器と言われています。

<4 Abdul Mazari / Bulbulak-I Sangshekan For Voice And Tanbur 4分16秒>

Bulbulak-I Sangshekan For Voice And Tanbur


ヘーラートの弦楽器は、有名なルバーブではなく、ドゥタールの演奏が2曲入っています。ドゥタールは2本の演奏弦だけでなく、共鳴弦のものと思しきペグがたくさん付いたヘーラート・ドゥタールです。

<7 Mohamed Qasem / Herati Music: Ghori (Dutar Piece) 3分46秒>

Herati Music: Ghori


ソ連時代の1932年にカザフスタンの首都アルマトゥイから脱出したカザフ族も、やはりアフガニスタン北部に住んでいて、この盤にはドンブラの独奏と弾き語りが入っています。カザフスタンでは変化があっても、亡命者の演奏には30年代のまま変わってない面があるかも知れません。ロシアのバラライカのように左手の親指を上から巧みに使う独特なフィンガリングが見られるドンブラ独奏と、弾き語りの両方を続けておかけします。

<11 Khandikhan / Kazakh Music: Dombra Pieces 1分20秒>

<12 Haji Birdali / Kokshetau 1分53秒>

やはりソ連を脱出してトルクメニスタンに近い北部に住んでいるトルクメン族の4曲は、ダブルリードと思われる管楽器のディリ・トュイドゥクと、尺八や東欧のカヴァルなどに近い音色のカルグイ・トュイドゥクの独奏で始まり、代表的な弦楽器のドゥタール弾き語りの吟遊詩人バフシーの音楽に移っていきます。3曲続けておかけします。独特な喉をひくつかせる歌唱の出てくるドゥタール弾き語りを聞きながら、今回はお別れです。演奏は、バフシーの名をそのまま名乗る名人アフマド・バフシーです。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<13 Nur Mohamed / Turkmen Music: Two Dili-Tuiduk Pieces 2分26秒>

<14 Hamra Bakhshi / Waghelbeg (Karghy-Tuiduk Piece) 1分11秒>

<15 Akhmad Bakhshi / Ughulbeg (Song With Dutar) 5分8秒>

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2019年6月14日 (金)

ヨーデルと野ばら

164回目の放送でも言いましたが、ウィーン少年合唱団と聞いて真っ先に思い浮かべるのが、ウェルナーの「野ばら(Heideröslein)」です。ウィーン少年合唱団が物語の中心になっている1957年のドイツ映画『野ばら』を見たのは、40年くらい前だと思います。月曜にも上げましたが、ウェルナーのこの大変に美しい旋律を歌っているシーンの映像がありました。更には山でヨーデルを歌うシーンも。オーストリアやスイスの民族音楽で一番有名なのは、シュランメルよりも、やっぱりヨーデルでしょう。ここで歌われている『ヨハン大公のヨーデル Erzherzog Johann Jodler』は、神聖ローマ皇帝フランツ2世の弟ヨハン大公を讃えるオーストリア民謡。スイスのヨーデルにはこの有名曲ではないユネスコの現地録音もあって、カウベルの音と一緒に街を練り歩くヨーデルの声を聴くと、アルプスの風景が目に浮かびます。

Michael Ande & Wiener Sängerknaben - Erzherzog-Johann-Jodler 1957

Michael Ande & Wiener Sängerknaben - Heideröslein 1957

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