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2007年9月16日 (日)

Maryam Akhondy / Banu

Maryamakhondy

  

 マリアム・アホーンディはイランの首都テヘランに生まれ、現在はドイツ在住のイラン人女性歌手。テヘラン芸術アカデミーでイラン伝統音楽を学び、女性の音楽活動が制限されるイランを離れ、渡独したようだ。
 他にもこのような例は多い。例えば、あの有名なファーテメ・パリサーやイラン東部ホラサーン地方出身のスィマ・ビナ。二人とも現在はヨーロッパに活動の中心を置いているようだ。パリサーは、1978年の伝説的な東京でのライヴで日本でも有名。このライヴはビクターからCDで出ていた。民族音楽学者の故・小泉文夫氏は、「世界一美しい歌」とペルシアの古典声楽(アーヴァーズ)を絶賛していたが、彼をして「これを聞いたらもう死んでもいい」とまで言わせたライヴだった。考えてみれば、この年はちょうどイラン革命の前年で、色々兆候は出てきていたのではないだろうか。パリサーにしても、出来る内に良い演奏を残しておきたいという気持ちがあったのかも知れない。あのライヴはそんな切なさも感じられ、ペルシアの声楽でも稀に見る高みに達した歌唱で、正にペルシアの絶唱だった。その後色々な噂が流れたが、95年にイギリスでのライヴ盤が登場し、ファンをほっとさせた。更に独Networkの2枚組みを含め、数枚最近の録音が出てきている。昔ほどの輝かしさはないが、成熟した名歌手の風格が増してきている。イランのディーヴァ、永遠なれと祈りたい。
 2004年に来日したホセイン・アリザーデの場合は、同行した女性歌手2人はイランでも活動しているようだが、公のコンサートではなく、プライヴェートコンサートがほとんどらしい。去年の演目Raze NoのCDのパッケージの外側には、女性歌手の名前と写真は入っていない。(中には写真があるがチャドルを被っている)かようにイランでは女性の表立った音楽活動は制限されている。

 マリアム・アホーンディは古典音楽よりはイラン各地の民謡を専門としている人のようだが、ドイツ移住後西洋の古楽演奏などからもヒントを得たのだろうか、コーラスで複数の音を被せる手法をとっている。本来の素朴な民謡旋律がコンテンポラリーなメッセージ性も帯びて表現されていてなかなかに鮮烈だ。アリザーデのハムアーヴァーヤーン(複数の声を合わせる)の手法も斬新だったが、それとは別に着想されたようだ。コーラスとは言っても、発声はイラン古来のもの。使われる楽器は片面太鼓のトンバク(ザルブ)を中心に各種打楽器のみで、このスタイルの演奏を数年前に日本で聞く機会があったようだが、もしかしたら彼女のこのアンサンブル、バーヌ(distiguished ladyの意だとか)だったのだろうか。
 一曲目、エシュグというタイトルの曲はペルシア語で愛とか恋の意で、中近東の「ロメオとジュリエット」とも言われる「ライラとマジュヌーン」の物語がイメージされている。たゆたうような美しい旋律で、これは名高いデイラーマンの節だ。往年のバナーンという男性歌手の絶唱で有名になった。カスピ海南岸ギーラーン地方の民謡に由来し、アボルハサン・サバーが古典音楽のレパートリーに取り込んだと言われ、ダシュティ旋法のグーシェ(伝統的な節の雛形のようなもの)の一つに収まっている。
 古典音楽でも知られる旋律はこれ位だが、イラン各地方の民謡を上手く料理している。絨毯を作る時の作業歌はフラメンコやロマの歌に似ていたり(7)、アフリカ北半分のものと思われていた、裏声のけたたましい叫び声ユーユーが出てくるロレスターン民謡(9)など、意外性にも富む多彩なイラン音楽文化の縮図を見る思いがするアルバムである。

またまたちょっと古いですが、Pop Biz Free Paper: Doo Bee Doo Bee Doo #02より転載した拙稿です。

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