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2008年2月

2008年2月29日 (金)

グルジアン・ポリフォニー

グルジアの男声合唱のクリップが余り見つからないと前に書きましたが、よく探してみると結構沢山出てきました。グルジアの場合、ポリフォニー(多声音楽)は三声が基本で、グルジア正教の合唱とも深く繋がりがあるようです。というかそれがルーツかも知れませんが。歌われている民謡に楽譜などはなく、口伝で代々歌い継がれてきたもの。一般人がこんな複雑な民謡合唱が出来るなんて、凄いとしか言いようがありません。地方によって、同じ男声合唱でも微妙に変ってきます。
黒海周辺には西のブルガリア、東のグルジア、北のウクライナと、素晴らしいポリフォニーが伝承されています。イスラム圏だからでしょうか、南のトルコにはないようですが。前に見たようにオスマン古典音楽にも合唱はありましたが、基本的にユニゾン(全パート同音)で歌われます。イスラム圏では大体メリスマ(コブシ)が入りますから、多声の合唱は難しいでしょうね。
大事なことを書き忘れていましたが、グルジア語ではグルジアをサカルトベロと言います。

საზეიმო მგზავრული/Sazeimo M'gzavruli

これは結構古いビデオのようで、踊りも入っているし、とても興味深い内容です。グルジアの美しい風景に歌声が絶妙にマッチしています。(ピアスが並んだようなグルジア文字が表示されるかどうか心配^^)

Basiani

これが例のストラヴィンスキーを感嘆させたというハッサンベグラに似たスタイルの合唱です。Basianiというのが合唱団名でしょうか。左右両端でヨーデルのような声を出しているパートがクリマンチュリ。全体にアルカイックな印象ですが、クリマンチュリがあるからでしょうか、どこかユーモラスに聞こえます。後半は合唱と団員の踊り。

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2008年2月28日 (木)

Juhuroの音楽

今日取り上げるカフカス系ユダヤの存在は、イスラエル盤(伝統的な宗教歌ですが)を通して多少知っておりましたが、映像で見るのは初めて。こういった貴重映像が見られるのもyoutubeのお陰です。コーカサス(カフカス)の音楽において、どんな役目を果たした人々なのか、今の段階ではほとんど何も分からないので、北コーカサスの時と同じで、「発掘現場」を見ていただいている皆さんと共有しているという状況です。
アップされているものを見ると、ポピュラー系がほとんど全て。この人たちは、古代パレスチナから東に進んだグループなのか、中世のハザール帝国の遺民なのか、肝心なことも不明です。トルコ語式の綴りとトルコ・ポップス風の音が多いところを見ると、アゼルバイジャンやダゲスタンに住んでいる人が多いようです。
Juhuroはユダヤ(ジュー)、Evreiはヘブライの意味だとすぐ分かりますが、Gorskieというのは?  詳しい方、メッセージお待ちしております^^;

Kavkazi Jewish Music.....Juhuro Kavkaz Gorskie Evrei Musika

往年のカフカス系ユダヤ人の民族衣装の写真が大変興味深いですが、こちらもポップスのクリップのようです。

Juhuro Lezginka

ジュフロ(と発音するのか不明ですが)のレズギンカ。ロマ的な濃厚な音色のクラリネットの使用、これがレズギンカ?という感じの粘るハチロク・リズム。どれを取っても、これまで見てきたコーカサスの音楽と一味違います。

Lezginka by Isaiyka from "Kavkaz" Live Gorskie_Evrei-Juhuro

こちらのレズギンカは、リズム、踊り、振り付け共に、これまでのコーカサス関係とほぼ一緒で、ちょっと安心します。

Mountain Jewish Song

Sarit Yosefという女性歌手のジュフリ・ポップス(というのかどうかも不明ですが)。ダゲスタンの首都マハチカラ中心に活動している歌手のようです。singing in juhuriとあります。リズムは確かにコーカサス。

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2008年2月27日 (水)

アラブ・アンダルシア音楽でも

コーカサスを南下しグルジアを巡っていた訳ですが、この地の音楽でもマウンテン・ジュー(Juhuloとも呼ばれるカフカス系ユダヤ人)のユニークさが見えてきました。しかし、Juhuloの音楽は明日に回して、昨日偶然に見つけたアラブ・アンダルシア音楽を演奏するユダヤ人アンサンブルの演奏を見てみたいと思います。グルジア音楽にはその後に戻ります。寄り道が多くて済みません^^
アラブ・アンダルシア音楽(ナウバ)は、中世末期のイスラム王朝下スペイン南部で花開いた古典音楽。1492年のレコンキスタでキリスト教勢力によってユダヤ人、イスラム教徒共にスペインから追放され、ユダヤ人は北アフリカ(マグレブ)のモロッコ、アルジェリア、チュニジア、当時のオスマン帝国の版図(旧ユーゴ、ギリシア、ブルガリア、トルコ、パレスチナ)、オランダなどに離散していきました。モロッコなどでは白装束の楽士たちによって、現在も盛んに演じられていますが、マグレブの地で特異な発展を遂げたようです。この楽団編成がルネサンス期のイタリアに伝わり、西洋の「オーケストラ」というもののヒントになったと言われています。仏Ineditの大河シリーズのようなセットものCD群には、その壮麗な古典音楽体系が記録されています。
ナウバはマグレブの様々な音楽に大きな影響を及ぼし、現代アルジェリアの歌謡、シャアビやライもその流れを強く汲んでいるようです。ナウバにおいては、イスラム教徒だけでなくユダヤ人音楽家も大きな役割を果たしたと見られています。ユダヤ人音楽家は、西洋の場合も非常に大きな存在ですが(特にヴァイオリンなどの弦楽器)、アラブ音楽やオスマン古典音楽などにおいても同様だったようです。余りにも美しいアルハンブラの建築が生まれた中世のスペインでは、パレスチナ問題(西洋列強がからんでから拗れて顕在化したものです)などはないので、ユダヤとイスラムが角を突き合わせるようなことはほとんどなく、むしろユダヤ人は啓典の民として大目に見られていたようです。ユダヤ教はセム一神教(古い順にユダヤ教、キリスト教、イスラーム)の先輩宗教ですから。

Musica Judia - Jewish Music

このコブシは紛れもないアラブ・アンダルシアの節回し。しかし、歌われているのはユダヤ教の祈祷歌「イェディッド・ネフェシュ」でした。ユダヤ教徒の男性は、祈祷帽のキパを被っています。以下にヘブライ語歌詞対訳を付しておきます。昨日と同じ幕屋イスラエル・ソング集の訳ですが、こちらは東欧系ユダヤの場合ですので、後半は異なるようです。
 イェディッド(愛する方) ネフェシュ(魂の) アヴ(父) ハラハマン(憐れみ給う方)
 メショフ(導いて下さい) アヴデハー(あなたの下僕を) エル・レツォネハー(あなたの御思いのままに)
 ヤルーツ(飛び走るだろう) アヴデハー(あなたの下僕は) ケモー(~のように) アヤール(鹿)
 イシュタハヴェ(ひれ伏すでしょう) ラララ・・・ エル・ムール・ハダレハー(あなたの栄光の前に)

Israeli Andalusian Orchestra

同じ楽団による器楽合奏の部分。ヴァイオリン、チェロ、ウード、カーヌーン、カマン(ヴァイオリンを立てて弓奏)、ダラブッカ、レク等という編成。弦楽器2本は名前が不明。一本はクルドのテンブールかバンジョーに見えますが。因みに伊予弁でカマンは、「良いです、結構です」の意味なので、ちょっと笑ってしまいますが^^ イラクなどではカマンジャという名の胡弓型の楽器があります。

♫ Lamma Bada ♪

中世スペインでユダヤ人音楽家が盛んに詠んだムワッシャハと言われる恋愛詩の形式は、レコンキスタ後離散地域に広まりますが、近世以降にシリアのアレッポ辺りではムワッシャハが古典音楽として発展し、この名旋律もその頃生まれたのではと言われています。書いたのはユダヤ人音楽家だという説が濃厚なようです。という訳で、その名曲「Lamma Bada Yatathanna」によるベリーダンス。名曲故、収録音源は枚挙に暇がありません。

Maria del Mar Bonet - Lamma bada

そのラッマ・バダ・ヤタサンナを、スペインのカタロニア地方の名歌手マリア・デル・マール・ボネットが歌ったクリップ。From the "Amic, Amat" show held on 22nd july 2004 at Barcelona's GREC Festival (Forum of Cultures'04) with the excepcional collaboration of the Cantiga Chorus (Catalonia) and the Cham Ensemble from Damascus (Syria). Directed by Jordi Cerdà

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2008年2月26日 (火)

ハヴァ・ナギラ

昨日のビデオでハヴァ・ナギラが出てきましたので、今日はこの歌のクリップを3本。
一本目はシャンソン歌手ダリダの歌うハヴァ・ナギラ。歌詞は途中フランス語が混じりますが、前後のサビの部分はヘブライ語です。この曲はアハヴォ・ラボ旋法の特徴がよく出た歌で、元は東欧系ユダヤのハシディック・ソング。この旋律(ニグン)は、南ロシア(現在はウクライナ)のブコヴィナ地方からイスラエルにもたらされ、著名な音楽学者のイデルゾーンが採譜し、モシェ・ナタンソンという人がヘブライ語の歌詞を付けました。
アハヴォ・ラボのアハヴォは「愛」、ラボは「大いなる」の意味で、ユダヤ教の祈祷書の中の朝の祈祷文の出だしの一句「我らの王よ、あなたは大いなる愛で我らを慈しんで下さった」という文句に由来しています。増2度音程(ミ・ファ・ソ♯・ラ・シ・ド・レ・ミの音階のファ・ソ♯の部分)がとてもエキゾチックで、ハシディック・ソングらしいエキサイティングな歌です。アラブで言えばヒジャーズに近い旋法です。一般にはイスラエル民謡として知られていますが、現代のクレズマー音楽でもたまに演奏されています。
ダリダと言えば、色っぽい歌唱で有名ですが、ハヴァ・ナギラを歌ってもお色気タップリですね~。この曲を歌っていたとは、今日まで知りませんでした。バルバラはオデッサ系ユダヤの血を引く人でしたが、この人も顔立ちから見るとユダヤ系か?と思い調べましたが、エジプト育ちのイタリア人のようで、ユダヤ系ではないようです。

Dalida - Hava Naguila in Festival in 1959

歌詞と訳 (幕屋イスラエル・ソング集より)
 ハヴァ・ナギラ (さあ、歓喜しよう)
 ヴェニスメハー (そして欣喜しよう)
 ハヴァ・ネラネナ (さあ、喜び叫ぼう)
 ウールー・アヒーム (そして目覚めよ、兄弟たちよ)
 ベレヴ・サメアッハ (心愉快に)

Hava Nagila (My Wedding)

ユダヤの結婚式の模様。短いですが、恐いくらいのハシディックな盛り上がりがよく分かります。

Boban Markovic Orkestar "Hava Naguila"
同曲をセルビアのジプシー・ブラス・バンド、ボバン・マルコヴィッチ・オルケスタルの演奏で。そう言えばジプシー(ロマ)楽士の演奏でもたまに聞きます。残念ながら埋め込み禁止。The King of Balkan Brass live at HeimatKlänge Festival Berlin 2003. Song from Piranha CD "Live in Belgrade - The Best Trumpet of Guca"

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2008年2月25日 (月)

ドゥドゥキと民謡

一昨日舞踊の中でドゥドゥキが出てきましたので、今日はドゥドゥキ関係と民謡に行きます。一昨日の舞踊、昨日の男声合唱、そして今日は民謡と器楽を見る訳ですが、ちょっと見ただけでもグルジアの歌舞音曲関係の層の厚さがよく分かります。グルジアは北海道ほどの面積なのに、楽士や踊り手が星の数ほどいるのかも。これは凄いことです。日本も何とかならないものでしょうか。

Georgian Duduki, Tbilisi Folk-8

グルジアの首都トビリシのレストラン?での演奏。ドゥドゥキの曇った哀愁味のある音色が最高です。Daniel Astangelov他、グルジアのオヤジ楽士たちの歌と演奏も最高。こんなのを目の前で聞けたらグルジア・ワインを頂きたくなります^^  ドゥドゥキ関連は山ほどビデオがありますので、ご興味のある方は、再生後のリンクから辿ってみてください。

Georgian Duduki 3

グルジアン(ジョージアン)・ドゥドゥキとありますが、出てくるのはクラリネット。後はアコーディオンとドリ(太鼓)。これもいい味の出た親父芸です。後半に出てくるのは、何と有名なユダヤ民謡の「ハヴァ・ナギラ」。もしかしたら彼らはグルジア系ユダヤ人かも? 
書き忘れていましたが、グルジアは英語でジョージアと言います。なのでGeorgiaと検索をかけると大半がアメリカのジョージア州関連が出てきて、グルジア検索者を困らせます。

Shatilis Asulo - destination Tbilisi.
民族衣装を着けてのトビリシのレストランでの演奏。Shatilis Asuloという有名な民謡です。左端がドゥドゥキ。残念ながら埋め込み禁止でした。Performed at the 'Watermill', Dighomi neighborhood on the outskirts of the city. Tbilisi 2006.

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2008年2月24日 (日)

歌ものもシヴィリ

グルジアの歌ものが見つかりましたので、今日はそれを行きます。今日も~シヴィリの人です。とにかくグルジアには~シヴィリが多いです。往年の名歌手、ハムレット・ゴナシヴィリですが、どうやらあの有名なRustavi合唱団の一員だったようです。最初往年のエジプトの名優オマー・シャリフかと思いました。そっくりですw  彼はワールドミュージック・ブームが本格化する直前の1985年に亡くなっているので、多分余り録音もないのでは、と思われます。ビデオは間違いなく大変貴重なものでしょう。
「春の祭典」などで有名なロシアの大作曲家ストラヴィンスキーは、グルジアの男声合唱を「人類の作った最高の音楽」と絶賛したそうです。彼はクリマンチュリという高音部で動き回る声部の入った曲、ハッサンベグラ(グルジア南西部辺りの多声合唱曲)とかを指していたようですが、カフカスの山々に響き渡るようなゴナシヴィリの静謐で瞑想的な歌唱も、幽玄美の極みだと思います。もうちょっと良い音で聞けると良いのですが^^

Hamlet Gonashvili_Cincyaro

chona hamlet gonashvili ilia zakaidze

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2008年2月23日 (土)

グルジア舞踊団 Sukhishvili

今日はグルジアのSukhishvili(スヒシヴィリ?)舞踊団の映像を3本。12月の最初にアップして大好評だった男性の超絶の踊りから行きます。グルジアやアルメニアなど、南カフカス(ザカフカス)は、ロシア、イラン、ギリシア、トルコ、クルドなど東西文明の十字路。音楽と踊り、両方に色々な面が入れ替わり立ち代り出てきて、耳と目を楽しませてくれます。グルジアには~シヴィリという名前が多いので、Sukhishviliというのは創立者の名前かも知れません。

Sukhishvili- MUST SEE!!!

12月2日にアップして大好評だったクリップの再登場。グルジア国立舞踊団(バレエ団?)Sukhishviliの舞台から。作曲家のハチャトゥリアンはグルジア生まれのアルメニア人でしたが、彼の「剣の舞」はこの辺の舞踊をヒントにしたものでは。ガイーヌのレズギンカも有名ですが、その辺の話しは11月に書きましたので、省略します。爪先立ちは、バレエが最初なのか、コーカサスの踊りが最初なのか、どちらなのでしょうか。低音の豊かなリズムはカッコ良すぎ!w  しかし、膝の着地は痛そうです。

SUKHiSHViLi

女性も入った華やかなステージ。これは8分の6拍子の典型的レズギンカ型のリズム。コーカサスには、とにかく3拍のリズム型が多いわけですが、レズギンカはその代表格。

Sukhishvili

ダブルリード管楽器のドゥドゥキの伴奏から始まる舞台。アルメニアの兄弟楽器ドゥドゥクはもっと哀しげで瞑想的な音色ですが、グルジアのドゥドゥキの素朴な風合いも実に素晴らしく忘れられない音色です。

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2008年2月22日 (金)

チェチェンからグルジアへ

さて、予告しておいた通りスラヴ世界の音楽めぐりを一まず置いて、今日からコーカサス山脈を南下し、グルジアの方へ行ってみましょう。ロシアではザカフカス(「ザ」は英語のTheではなくロシア語のзаで、「~の向こう」の意味)と言われてきた、グルジア、アルメニア、アゼルバイジャンです。
11月の北コーカサス特集の時に地図入りで概説しましたように、チェチェンはヴァイナフ、アディゲやチェルケスはサーカシアンという様に、コーカサス諸語のそれぞれのグループに属します。グルジアやグルジア北西部のアブハジアは単独グループのようです。同じ語族でも言葉はかなり違うようですが、音楽はというとこれがかなり似ている部分が多いと思います。先日もアップしたチェチェンの古い映画「ダイモク(祖国)」の別なクリップには、男声合唱や器楽もしっかり入っていましたので、今日はグルジアのクリップと対比させてみます。

the best chechen clip ever...daymexka lamnash..

チェチェンの古い映画「ダイモク(祖国)」から。これはやはり実に素晴らしい映像です。この音楽と景色を見ると、昭和45年頃の明治屋?のCM(日曜夕方のサンダーバードの合間に放映されていた)を思い出します。あの舞台はグルジアでしたが。
あれは確かヨーグルトのCMでした。グルジアの場所を地球儀を回して「ここですよ」と母が息子に教えるシーン。そこでグルジアのセピア色のモンタージュが出てきたのを覚えています。一つ違うのは、チェチェンでは山に樹木がほとんど見当たらないことでしょうか。
しかしグルジアは黒海に向いているのに、グルジア・ルーツのヨーグルトが「カスピ海ヨーグルト」と呼ばれるようになったのは何故でしょうか? 因みに、うちでは2002年から作り続けていましたが、昨年遂に駄目になってしまいました。

Georgian Legend - Satia

グルジアの民族アンサンブルのステージから。Satiaというのがグループ名でしょうか。ベース、ドラムが入っていますが、画像が綺麗なのと、パンドゥーリ(前に何度か話題に上った弦楽器)の合奏、後半では男声合唱も聞けます。意外にも伝統的なままの合唱クリップがほとんど見当たりませんので、今日はこの辺りで。

Ibereti - Qalav sicocxle

解説にgeorgian folk song - "Qalav sicocxle'とあります。この歌をテーマにした映像になっているのでしょうか。これも華やかな伴奏つきですが、興味深い映像です。リズムやメロディラインはもとより、伝統衣装、男性の被り物、山々の景色など、何と北コーカサスと似ていることでしょうか。

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2008年2月21日 (木)

スラヴ教会の音楽とハザールの話

ベラルーシの3日目は、宗教音楽の方を見てみましょう。youtubeのメンテナンスがあるようなので、慌ててアップしています^^;  一定時間見られないかも知れませんが、どうぞご了承下さい。また前にアップした中に、著作権問題に引っかかったのか、その後見られなくなっているクリップ(ナツメロ関係)もあります。youtubeは、いつも、またいつまでも見られるとは限りませんので、そこの所はどうぞご了解下さい。

さて今日のファイルについて。ロシア、ウクライナでは教会音楽は見なかったのですが、ベラルーシではファイル数が少ないこともあって、すぐにこちら方面が出てきました。スラヴの正教会と、カトリックではないかと思われるものも混じっています。正教会が80%、カトリック、プロテスタントなどが20%くらいのようです。
いきなりルーツの話になりますが、東スラヴの世界がギリシア正教を受け入れたのは、ハザール(中世にユダヤ教を国教に定めたチュルク系民族の帝国)攻略のため、キエフ・ルーシ(ロシアの前身)の支配層だったヴァイキングがビザンツ帝国と連合したためと見られています。この連合のため政略結婚がなされ、キエフ・ルーシはギリシア正教を採用し、後のロシア世界に正教が広まりました。ロシア系文字がギリシア文字から来ているのもそのためのようです。ハザールと言うと、東欧ユダヤ人(アシュケナジーム)のルーツ説にばかりスポットが当たっているように見受けられますが、スラヴ世界との間でも結果的に大きな役割を果たした民族だったのですね。

ハザールがユダヤ教を国教に採用したのは、イスラム教のサラセン帝国とキリスト教のビザンツ帝国の間にあって、どちらとも上手く亘り合うため(両国から敵視されない宗教を選んだ)と言われています。一方、黒海~カスピ海の間にハザール帝国がなかったら、ヨーロッパへの東からのイスラーム流入に歯止めがきかなかったとも言われます。
1月の初めに取り上げたチュルク系少数民族のカライムは、まず間違いなくハザールの末裔ではないかと思われます。だとすれば、ドイツ系の混成言語であるイディッシュ語を話していた何百万というアシュケナジームのルーツが丸々ハザールと考えるのは、かなり無理があるように思います。カライムはトルコ語に似た言葉を今も喋っている訳ですから、東欧系ユダヤ人もトルコ語を話してないと辻褄が合わないように思います。 

Aliluja

ベラルーシのアレルヤ(ハレルヤ)唱。解説にはPublic prayer for Belarusan youth at St. Cyril's of Turau Cathedral とあります。

Aliluja, glas 5

会衆によるアレルヤ。ここにはByzantin chantとありますので、確かに正教の方ですが、ただ国名が出てないので、ベラルーシかどうか不明。コメントの一つには「Serbian choirでは?」ともあります。ベラルーシ、セルビアのいずれにしてもスラヴの正教会ではあります。ドローン(持続音)とその上で動く旋律が綾なす響きは、とても美しいものです。

Church music in Minsk, Belarus

これはカトリック教会でしょうか。日曜の礼拝のビデオのようですが、流れてくる聖歌は正教的に聞こえない気がします。隣のポーランドはカトリックですから、混ざっているのかも知れません。

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2008年2月20日 (水)

ベラルーシ関係4本

今日はベラルーシのフォーク・ダンスとフォークソングと、パルティザン関連の名画から。

Belarusian Folk Music Dance

解説にChildren's Folk Group fromm Minsk, Belarusとありますが、高校生くらいでしょうか。沢山あるクリップの内の一本です。ご興味のある方は、再生後のリンクから続きをどうぞ。やはり動きがポーランドの踊りに似てくるような気がします。

Nagual in Minsk, BELARUS

首都ミンスクのNagualというグループの演奏。女性のツィンバロムと男性の太鼓叩き語り中心。歌は喉歌(ホーミーはその代表的唱法)になっている部分もあります。昨日のヴァイキング系トラッド、オランダのレーベルPanからCDが出ていたIvan Kirchuk、そして今日のこのグループと、「ロシア」離れしたワイルドな魅力を放つグループが結構いるようですね。

Za tumanam, Kriwi

Kriwiというグループの歌唱。北国の哀愁味がしみじみ感じられる佳曲です。多少民謡の要素も感じられます。

Come And See (with English subtitles). Part 1 (1 of 7).

Belarus Partisanで検索しましたが、残念ながらパルティザン・ソングは見つからず。約半分はこの映画「Come and See (Russian: "Иди и смотри"」のファイルでした。この映画、20年ほど前にTVで見た記憶があります。主役の少年の迫真の演技は、今でもよく覚えていました。ご興味とお時間のある方は、再生後のリンクから続きをご覧下さい。確認していませんが、全部見られるのかも。

Come and See (Russian: "Иди и смотри", Idi i smotri) is a 1985 Soviet war movie/psychological horror[1] directed by Elem Klimov and starring Aleksei Kravchenko and Olga Mironova in the leading roles. The film is set in 1943 in various villages in Belarus during the Nazi occupation.
The screenplay was written by Ales Adamovich in collaboration with Elem Klimov. The words Come and See ("Иди и смотри" in Russian) quote from The Apocalypse of John, chapter 6, ...and I heard one of the four living creatures saying, as with a voice of thunder, "Come and see!" (In Russian: "...и я услышал одно из четырех животных, говорящее как бы громовым голосом: иди и смотри.")

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2008年2月19日 (火)

ベラルーシのビッケ

チェチェンが数回続きましたので、このまま同じコーカサス系のグルジアに入ればスムースなのですが、東スラヴのベラルーシが残っていましたので、ベラルーシに数日かける予定です。言うまでもなく、ロシア、ウクライナ、ベラルーシの3つが東スラヴです。
ソ連時代にはウクライナは小ロシア、ベラルーシは白ロシアとも呼ばれていました。ポーランドに接しているので、やはり音楽でも一番ヨーロッパ色が強いように思います。第2次大戦ではポーランドの隣という場所柄、戦死者を多く出し、対独レジスタンス(ゲリラか?)が盛んでした。その頃作られたパルティザン・ソングも残っているようです。(youtube見つかると良いのですが)

Stary Olsa

ベラルーシの古楽か、トラッドか、詳細不明ですが、解説にPerformance of the Ensamble STARY OLSA. Festival of Vikings. Wolin 2006. とあります。東スラヴの世界は、中世にスカンジナヴィア・ヴァイキングの影響を強く受けた訳ですが、Stary Olsaはその頃の響きを復元し奏でるグループのようです。ソ連時代には難しかったベラルーシ人のルーツ探しの一つなのでしょう。

stary olsa - in taberna

タベルナって、ギリシア語だと思っていましたがw  タベルナでの饗宴は大変な乱痴気騒ぎ。ヴァイキング文化のワイルドさを表現しているビデオ、ということでしょうか。

Biaseda Cossack Song

ベラルーシのコサック・ソング。ロシアのピャトニツキーのような地声合唱。コサックらしい勇壮さよりも、ほのぼのした感じの歌です。

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2008年2月18日 (月)

チェチェンの器楽

歌を見たついでに、今日はチェチェンの楽器編。11月にも少し取り上げましたが、その後素晴らしいビデオが見つかりましたので。

Chechen Music 6 Merz Ponder Saxab

前にアップした時はDechk Pondarとなっていましたが、ここではMerz Ponderとなっています。どう違うのかはよく分かりません。グルジアのパンドゥーリに音色、和声共にそっくりですが、おそらく奏法も似ているのでしょう。しかしこの人のテクニックは凄い! 特に右手の技には目を見張ります。バラライカで代用されることも多いのですが、この楽器の侘び寂びの音色は本当に素晴らしいです。冒頭のアップ・ストロークの右手の使い方からは、クルドのタンブールも思い出してしまいます。

Chechen Music 3 Ponder Umar Sagaipov

昨日アップしたマッカ・サガイーポヴァの父上、ウマル・サガイポフのアコーディオン演奏。チェチェンの国民的アコーディオン名人らしいです。沢山クリップがありますが、これが一番オーソドックスなレズギンカらしい演奏でした。

DAYMOHK ANSAMBLE (in Turkey)

「ダイモク(祖国)」という名の舞踊団の、イスタンブールでの映像。このチェチェン少年少女舞踊団「ダイモク」を撮ったドキュメンタリー映画「踊れ、グローズヌイ!」、日本各地で上映会が開かれていました。詳しくはこちらで。残念ながら終わってしまいましたが。子供たちの踊りっぷりも勿論素晴らしいですが、音の高さの違うカフカス・ドラムのリレーが凄まじいです。DAYMOHKですが、ダイモクかダイモフか、表記に迷う言葉です。

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2008年2月17日 (日)

チェチェンの女性歌手

今日は何人かチェチェンの女性ポップス歌手のクリップを見てみましょう。伝統色の濃淡は色々ですが、共通しているのは、レズギンカ型のリズムが頻繁に出てくるということ。現在のチェチェン・ポップスでも、かなりこのリズムが出てくるようです。4拍子に取れても、一拍が「タンタ、タタタ」の6つに細分化されて、さながらパルス・ビートのようです。これは慣れると病みつきになるかも。ゆったりした曲では、4拍子が「タンタ、タタタ、タンタ、タタタ」と8分の12のように聞こえるパターンが多いようです。

Noxchi eshar

ビデオのコメントには、この女性歌手はMalika Ucaevaとありましたが。チェチェンの演歌的な位置にいる歌手でしょうか。しかし少しロシア的にも感じる歌です。

Kavkaz (Кавказ) - Makka Sagaipova

ここ数年、全カフカスで大人気のマッカ・サガイーポヴァの「カフカス」。これはロシア語による歌唱。この曲もちょっと80年代の歌謡曲的にも聞こえますが、若手歌手の歌とは思えない哀愁味がたまりません。コブシも巧みで、日本でも(特にオヤジ世代に?w)絶対受けると思うのですが。(ブログに2回目の登場かもw)レズギンカのパルス・ビートが良いです。イスラムの聖地メッカをアラビア語では「マッカ」と言いますが、彼女の名前はそこから来ています。いやぁしかし、チェチェン美人ですね^^

Фатима Турпулханова Fatima Turpulhanova WebkavkazClub.net

ファティマ・トゥルプルハノヴァ、でしょうか。マッカさんよりは若手に見えます。歌唱力では大分落ちるなぁと思いますが、やはりもの凄い別嬪さんですね~^^ 何曲かありましたが、レズギンカ・ビートはこれだけでした。チェチェン語は子音が豊富で、喉の奥を使って出す音に特徴があります。

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2008年2月16日 (土)

チェチェンと北コーカサスの音源登場

今日もまず昨日の訂正から。
ユダヤ音楽の記事ですが、95年にMacで書いていた文章をペーストしたため、よく似た漢字に変換されている箇所が沢山見つかりました。よーく目を凝らさないと分からないものがほとんどで、後でびっくりしました。マックからウィンドウズに移すとよく起こるんですね。礼拝が札拝とか、ちょっと洒落にならないような誤変換もありました。お詫びして訂正いたします。昨夜遅くに訂正を入れてあります。(もうないとは思いますが・・)

さて、HPと重複しますが、今日はこのCDにスポットを当てます。

チェチェンと北コーカサス諸国の音楽
Defiancechechnya SONGS OF DEFIANCE: Music of Chechnya and the North Caucasus
Recordings and compilation by Michael Church

政情不安定なため、神秘のヴェールに包まれたかのような北コーカサス。ロシア連邦の最南部に位置し、黒海とカスピ海の間の険しいコーカサス山脈北麓に住むコーカサス民族の地は、やはり容易に辿り着けない土地なのでしょうか。この録音もかなり困難な状況の内になされたようです。去年の11月に、当ブログでyoutubeを入れながら北コーカサス特集をやりましたが、願いが通じたかのようにTopic Recordsからこの音源が登場しました。20世紀初頭のグラモフォン録音に続き、2枚目の快挙です。まだ未入荷ですが、非常に楽しみなCDです。
チェチェンはロシア語ではチェチニャ、チェチェン語ではノフチーと言います。曲名に出てくるNokhchoやNokhchiychyoは、ノフチーの変化形だと思います。タイトルは日本語に訳すと「挑戦の歌」か「反抗の歌」ということになりますが、確かにレズギンカ型(多くは8分の6拍子)の強靭なリズムには、ロシアなど外部の圧力に屈しない誇り高きコーカサス山岳民族の心意気が表れているようにも思います。北コーカサス最西部のアディゲなどでは、見る要素の強い芸能がほとんどですので、映像も見たくなりますが。雅びな伝統舞踊曲のKafaやCircassian Danceも、アディゲやその東のチェルケス辺りの舞踊曲。アディゲ、チェルケス、カバルディンのコーカサス系3民族をまとめてCircassian(サーカシアン)とも言います。チェチェンとイングーシは、北オセチアを挟んで東隣になります。
収録曲の多いアズナシ・アンサンブルは、仏Arionから単独盤が出ていた女性のみのチェチェン伝統音楽グループ。戦火の絶えない祖国を離れ、グルジアで活動しているようです。1曲目と20曲目は仏Arion盤にも入っていた曲。gimnは、Hymn(聖歌)のチェチェン語では。
カラチャイやバルカル、それからダゲスタンのノガイとクムィクなど、チュルク系民族の音源は今回ほとんど入っていません。(14曲目だけバルカルの曲かも)もしかしたらこれから別に出るのでしょうか。イラン系の北オセチアではそれ程でもありませんが、チュルク系とコーカサス系では、音楽も結構違ってきます。

イギリスのレーベルらしく、作曲家のギャヴィン・プライヤーズとマイケル・ナイマンが評を寄せています。

"Just when you think you have a grasp on indigenous European music, along comes something that blows away all your preconceptions. This music seems to come from some mysterious other place, with its rough-hewn energy and its passionate social engagement. Much of the material ? text as well as music ? is profoundly moving and very beautiful. Michael Church does us a great service by bringing it to our attention" Gavin Bryars

"Sounds that will enlighten even the most jaded ear" Michael Nyman

曲目
1.Aznach Ensemble / Nokhtchiin gimn
2.Cherim Nakhushev(Vo,Accordion) / Khatkhe Mahomet Guaz
3.Sahab Mezhidov(Vo,Balalaika) / Daimohk
4.Sahab Mezhidov / Ya yish ekush dagna yaznarg
5.Aznach Ensemble / As Khastambo
6.Timur Losanov(Accordion) / Adighian Dance
7.Zhoukhar Ensemble / Laalur,Laalur
8.Cherim Nakhushev / Kafa    
9.Batu Dzugaev People`s Choir / Gezdenti Efsimerte Zareg
10.Batu Dzugaev People`s Choir / Tsitsidon
11.Valid Dagaev(Vo,Balalaika) / Nokhcho vu so
12.Tamara Dadasheva(Vo) / Ma hiezha kant
13.Tamara Dadasheva(Vo) / Nokhchiychyo, so khan yoh yu
14.Shirvani Chalaev(Vo) / Barkhaldal Doldiban
15.Illi Male-Voice Ensemble / San Nana, san Nana
16.Lydia Bachaeva(Vo) / Djuldouz
17.Zuber Ivazov(Violin) / Kabardian Dance Tune
18.Adigh Ensemble / Kiaperish
19.Khazret Ramazanovich Chich(Violin) / Circassian Dance
20.Aznach Ensemble / Vai deli Allah vu
21.Aznach Ensemble / Biezamuo
22.Aznach Ensemble / Stiglara
23.Aznach Ensemble / Daimohk
24.Aminat Akhmadova(Vo) / Daimohkan Biezam

※ダイモク(Daimohk)は、前に何度か書きましたが「祖国」の意味

Uork Kafa - Уэркъ Къафэ (Орк Къашъо)

アディゲ・スタイルのカファのお薦めビデオ。11月に続いて再登場です。

Lezginka a la adyge-2 - Лезгинка по-адыгски-2

アディゲ・スタイルのレズギンカを、アディゲ舞踊団の団員が踊っています。私服なのでステップがよく分かります。

Noxchi Kino "Даймохк" (part 1)

チェチェン映画「ダイモク(祖国)」。伝統音楽がバックに流れる渋いけど素晴らしい映画です。全編見たいものです。ソ連時代の映画でしょうか。ナレーションはロシア語です。続きが再生後のリンクから見られますので、ご興味のある方はどうぞ。

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2008年2月15日 (金)

聖書とディアスポラ

一昨日予告しておいたラティーナ(Latina)の記事を、ユダヤ音楽のガイドとして転載しておきます。古いもので恐縮ですが、ユダヤ関係の話題も最近度々出てきておりますので。1995年5月号の特集「クレズマー~ユダヤ音楽の遥かな旅」に載った拙稿です。一部改訂してあります。ディスク情報を文中に入れてありましたが、廃盤などの理由で現在では半分近く手に入らず、ほとんど役に立たないので、その部分は削除しました。
他にも、音楽之友社から出ている「ユーロ・ルーツ・ポップ・サーフィン」(99年)と、「世界の民族音楽ディスク・ガイド」(02年)でも、ユダヤ音楽をほぼ全部担当しました。
前者は、うちの会報ページに一部ですが、公開中。こちら
後者では、イラン、中央アジア、コーカサス、ロシア、トルコ、アラブもかなり書いています。
これらは売り物としてまだ現役ですので、ブログへ丸丸転載することは出来ません。Amazonなどをご参照下さい。(以下ラティーナからの引用 写真は同誌掲載の図)

聖書とディアスポラ~ユダヤ音楽のヴァリエーション
ユダヤ教と離散の歴史の中から生まれた、ユダヤ音楽のいろいろを見る

Latina95jewish  この稿ではクレズマー音楽との関連で、どのようなユダヤ音楽があるか見ていきたい。まず音楽の話にいく前に、ユダヤ民族史を概観した図を示しておこう。と言うのは、ユダヤ教について見るときに歴史の知識が不可欠なように、音楽においても大変理解の助けになるからである。
 クレズマーも本来祭礼音楽の一種だから、タイトルや歌詞の端々にユダヤの宗教や歴史の片鱗が見られる(例えば曲名によく出てくる「二ーグン」「フレイラフ」等は東欧ユダヤ教神秘主義ハシディズムから出てきた言葉だ)。それほどユダヤにおいては生活の端々までユダヤ教に根差しているといえる。


Ⅰ 聖書の音楽

 古代イスラエルの頃から現在まで続くユダヤ音楽の基礎になっているのは何かというと、聖書時代からの朗唱や祈祷歌だと言えるだろう。ここで言う聖書とはキリスト教の旧約聖讐のこと。BC1200年頃から約1000年かかって徐々に形成されたユダヤ教の根本の聖典である。その註解である口伝律法のミシュナーやタルムード、中世の力パラー文献なども聖書なしには存在し得なかった。
 第一神殿時代からパビロン捕囚までは、エルサレムの神殿を中心とした儀札の宗教で、そこでは様々な楽器が使われていたことが聖書に記されているが、パビロニアからパレスチナに帰ってからは、神殿の他にシナゴーグ(ユダヤ教の会堂)という場所を設け、そこでは声楽優位の礼拝が持たれるようになった。この頃の音楽を考証、再現を試みたのがS‐H‐ヴァントゥーラ女史による音源である(仏Harmonia Mundi盤。 楽譜も出版されている)。
 そして第二神殿も口ーマに滅ぽされ、離散(ディアスボラ)せざるを得なくなったユダヤ人は、移動先にシナゴーグを立ててコミュニティを形成し、ユダヤ教を守っていくが、そこでは神殿崩壊に対して喪に服そうという気持ちから、楽器の使用をショファルという牡羊の角笛以外やめてしまった(改革派教会ではオルガンを用いるところもある)。
 それ以後トーラー(聖書の中でも最も重要なモーセ5書と呼ばれる冒頭の5書)の朗唱や祈祷歌を徹底した口伝で代々伝えてきた。西洋においては西洋音楽の源流であるグレゴリオ聖歌に多大な影響を与えていて、最も古い形をとどめているもののひとつと言われるイエメン系コミュニティの旋律には、あるグレゴリオ聖歌にそっくりなものが見いだされるという研究もなされている(祈祷歌は地域別にいろいろCDも出ているが、トーラーの朗唱は安息日にのみなされ、この日は録音禁止のため、ごく例外的にプハラのもの、サマリア人のものくらいでしか聞けない)。
 このようにユダヤのいろいろな典礼歌が古い形を保ち得た秘密は、聖書が書かれた言語であるへプライ語で、ただ読むのではなく抑揚をつけて口伝されてきたことによるらしい。AD3世紀にはへプライ語は完全に日常語としては用いられなくなったので、聖書の朗唱を正確に伝えるためにタアメイ・ハミクラアという記号(抑揚とアクセントを示すもの)が考案され古いメロディが保存されるようになった。古い祈祷歌で有名なものにクラシックに編曲されていて有名な「コル・ニドレイ」がある。増2度音程が特徴的な典型的東欧系ユダヤ旋法「アハヴォ・ラボ」による旋律で、大購罪日の始まりに唱えられる。
 筆者は時々行く東京・広尾のシナゴーグで、これらのトーラー朗唱や祈祷歌がカントール(ハザンとも言う朗唱の専門職)によって歌われているのを聴くが、それはCDなどで聴くよりはるかに素靖らしいと思う。思わず聴きほれてしまうような力ントールにも何度か出会った。礼拝後会食(これも宗教的な意味を持つ)の場が持たれるが、この時にはハシディック・ソングや宗教的内容の民謡が歌われる。これも力ントールの歌と同じように地域差がかなりあり、聖書の同じ箇所を歌っていても随分感じが違い、それぞれの出身地のメロディを出しあって交流を深めている。筆者はイスラエル人の夫妻(職業的歌手ではない)が南インドはコーチンのメロディーで素晴らしい重唱をされたのを聴いたが、毎土曜日に唱え、歌う習慣があると、素人でもこんなに名歌手になるのだろうかと驚いてしまった。

Ⅱ ディアスポラの音楽
(a)アシュケナジーム

 図に示したように、ユダヤ人は大きくわけて3つのグループに分かれる。現在最も人口が多く、「ユダヤ人」と言ったときに我々がイメージするのは、アシユケナジームと呼ばれる、ロシア~東欧出身のグループであろう。中世にフランスなどから移住してきた人々が現在のドイツに住み着いて、イディッシユ語という中世のドイツ語をベースに、へプライ語やスラヴ系の言語の語彙を取り入れた混成言語を使用するようなった。生活言語としては、19世紀に蘇ったへプライ語より古い歴史を持ち、ゲットー暮らしの悲哀などを歌ったイディッシユ民謡は、ユダヤ人の生活に根差したメロディである(代表的な曲は「ドナ、ドナ」「トゥン・バラライカ」など)。
 アシュケナジームの世界の結婚式、バル・ミツヴァー(ユダヤの成人式 但し13歳)や、ハヌカーなどの年間の祭日の際に楽師によって演じられたのがクレズマー音楽である。この音楽は踊り楽しむための音楽で、周囲の東欧の様々な伝統音楽を盛んに取り入れながら、近世以来東欧ユダヤ民衆の心のよりどころであったハシディズムの歌をベースにしたものである。
 ハシディック・ソングは、ホラというパル力ン半島やルーマニア特有の踊りのリズムを取り入れたものが多く、短い宗教的文句を繰り返し歌いながら段々と早くなり、最後には恍惚の状態に至るというもので、二ーグン(ニグンと書いた方が元の音には近い)と呼ばれる母音唱法で歌われることも多い。ハシディック・ソングはクレズマーやイスラエル民謡(誰でも知っている「マイム・マイム」もそのひとつ。この曲も歌詞は聖書のイザヤ書の中の一節)に取り入れられ、近世ハシディズムの最盛期を過ぎた今日でも、ユダヤ人の心にしっかり生きている。ポーランド映画『宿屋」、トボル主演アメリ力映画『屋根の上のヴァイオリン弾き」には、このハシディズムの世界がリアルに描かれている。
(b)セファルディーム
 スベイン系ユダヤ人のグループは、中世以前からスペインの地に住んでいて、イスラム帝国のもとで特に学芸の分野で繁栄を享受していたが、1492年のレコンキスタで、キリスト教勢力によってイスラム教徒と共に追放され、地中海沿岸(北アフリ力、トルコ、イタリア、ブルガリア、ユーゴスラヴィア、ギリシア)やオランダなどに逃げ込んだ。それぞれの土地で15世紀以前の古いユダヤ訛りのスペイン語(ラディノ語)を用い、当時の古謡も今に伝えている。離散の哀しみを歌う吟遊歌人として、日本でも人気の高いエステル・ラマンディエの歌で有名になったセファルディーの歌だが、現代風にアレンジされた楽しめるCDも増えてきた。
(c)ミズラヒーム(東方系)
 先の2グループよりも早い時期に枝分かれして、それぞれ孤立した状況下にあることが多かったので、聖書の朗唱などにおいて非常に古い形を保っていると言われる。イエメン系はオラ・ハザで有名になったが、彼女の歌のパックでも鳴っていた石油缶は、政治的事情で楽器を持てなかった彼らの伝統楽器である。ミズラフとはヘブライ語で「東」の意味で、イームが付く語尾は男性複数形。

http://homepage1.nifty.com/zeami/s-j.html
http://homepage1.nifty.com/zeami/s-j.klezmer.html

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2008年2月14日 (木)

グヤーシュのレシピ&アグネス

昨日の記事のコメントにも入れましたが、大きな間違いがありましたので訂正しておきます。ブルータスや月刊ミルトスではなく、音楽雑誌ラティーナや月刊ミルトス、でした。
大変失礼致しました。余りに昔のことで雑誌名を間違えていました^^;
当時スタジオヴォイスにもクレズマー関係の記事を書きましたが、あの頃はPCどころかワープロも持ってなかったので、データを見本誌から入力しなければいけませんが、それもいずれブログに復活させましょうか。CDデータは古過ぎて役に立ちませんが。

さて、今日のタイトルに戻ります。グヤーシュとはハンガリーの有名な煮込み料理ですが、去年の10月頃にマイミクのりーずさん(イランでセタール、タンブールの修行中)に、私家版グヤーシュのレシピをうpするという約束をしておりました。それをようやく今日実現しました^^;
このレシピは、指揮者の小林研一郎さんがTVの料理番組に出られていた時のもので、コバケンさんがハンガリーに留学している時にお世話になったというハンガリー婦人からの直伝グヤーシュです。

<Recipe>

Gulyas ・オリーヴオイルかラードで玉葱のみじん切りをよく炒める。
・玉葱が透き通ったら、人参の賽の目切りを入れよく炒める。
・次に塩、胡椒で下味をつけた鳥肉を入れ、白くなるまで炒める
・一度火を止め、パプリカのパウダーを入れ、よく馴染ませ(絶対焦がさないように!)、次にキャラウェイ・シードを入れて混ぜ、火を付ける。
・トマト(生よりカット・トマトとピューレが良いかも)を入れ、ブイヨンを注ぐ。勿論マギーとかでOK。好みで赤唐辛子少々入れても良し。
・最初強火であくを取ってから、ふたをして30分程煮込む。ジャガイモは煮崩れしないように大きめに切って早めに入れるか、賽の目に切って終わり近くに入れるか、それはお好み。
・皿に盛って出来上がり。(写真は材料大き目の時の自作品w)

※分量はいつも材料と相談しながらやるので書いていませんが、4人分の量に対してパプリカは大匙1杯、キャラウェイは小匙1杯位でしょうか。パプリカを多めに入れたほうが、赤い色が鮮やかに出て、味もオーチン・ハラショーです。(何故露語?w)
ヴァリエーションとして、一番最初にニンニクの微塵を入れて炒めたり、パウダーに加え生のパプリカの賽の目切りを入れたり、トマトを入れる前に赤ワインを入れるやり方もありますが、味はヘヴィーになります。その場合、コリアンダー・シードとクミン・シードを入れる作り方もありますが、これは当然エスニック風になります。コバケンさんヴァージョンは、ハンガリー家庭料理らしい、爽やかで飽きの来ない味わいです。キャラウェイが程よい爽やかさを演出しています。この寒い季節にはぴったりの料理です。キャベツも入れて、シチのようにしても美味しいです。是非お試し下さい。

・チキン・グヤーシュと言えば、映画「ストレンジャー・ザン・パラダイス」を思い出しませんか?w  
・吸血鬼ドラキュラの小説の中にもグヤーシュに似たパプリカ料理が出てきます。あれはビストリツァ辺りのトランシルヴァニア料理かも。

Herczku Agnes & Nikola Parov - Ha te tudnad

現在のハンガリー・トラッド界で活躍されているHerczku Agnes(アグネス・ヘルツクと発音するのでしょうか?)のビデオを一本上げておきます。この曲は余りハンガリーっぽくはないのですが、動画はこれだけのようです。Buda盤などで素晴らしい歌声を聞かせてくれた歌姫です。美形の多いハンガリー音楽界の中でもSzalóki Ágiと並ぶ美人歌手では。

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2008年2月13日 (水)

オデッサのクレズマー

昨日はルテニアのジプシーの演奏するユダヤ・メロディを見ましたので、今日は黒海北西岸の港町オデッサのクレズマー・バンドの演奏に行ってみましょう。港での演奏とステージの模様です。
オデッサの辺りは前にちょっと触れた昔の地方名のベッサラビアに入るところで、戦前はユダヤのクレズマーたちが活躍した土地です。これらの地方の北側にあったガリツィア地方にユダヤ人は最も多かった訳ですが、その南のベッサラビアでは様々な音楽(ルーマニア、トルコなども)が混合する土壌がより豊かにあったのではないでしょうか。その中でクレズマーたちは水を得た魚のように、活躍していたのでしょう。
昔のこの地の録音は独Wergoなどから色々出ていますし、そのスタイルで現代の名手(Joel Rubin等)が演奏したものも同じレーベルから出ていました。このビデオの解説には以下のようにありますので、ユダヤ系の演奏家ではないようです。ドイツ系のクラリネット奏者とウクライナのブラスバンドによる演奏のようです。昔オデッサなどでも鳴り響いたユダヤの旋律をウクライナ人が演奏するのは、面白い試みです。
The Dnieper Princess Klezmer Heritage Tour arrives at the port in Odessa, Ukraine, and is met by Konsonans Retro, a colaboration betwen German klezmer clarinetist Christian Dawid and the ukrainian brass village band of Kodym, UA. check out http://www.konsonans.com/index.html
ウクライナ最西部のルテニアとベッサラビアのクリップは見ましたが、その間のブコヴィナはまだです。ここも面白いエリアです。いつになったらベラルーシに行けるやらという感じですが、明日以降訪れるかも知れません。ユダヤ音楽につきましては、95年頃に方々(音楽雑誌ラティーナや月刊ミルトスなど)に書いた記事がありますので、古いものですが近々ガイドとしてアップする予定です。諸々事情もありまして、ここ10年位ユダヤ・マイ・ブームは沈静していましたが、やはり今一度もっとちゃんと調べなければいけないと思っている今日この頃です。95年当時はユダヤ音楽評論家とか言われてレクチャやラジオに出たこともありましたね~そういえばw

Konsonans Retro plays at port of Odessa

Konsonans Retro - Live in Berlin, 11.03.2007

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2008年2月12日 (火)

ルテニア~カルパチアのジプシー・バンド

ウクライナ西部のカルパチア山脈の辺りは、ルーマニアのトランシルヴァニアやマラムレシュ、ハンガリー、スロヴァキア、ポーランドと接している地方で、この辺りは昔からルテニアと呼ばれていました。ルテニアのジプシー・バンドの珍しい映像が見つかりましたので、今日はそれをアップしてみました。
当地のTecso Bandが、ブダペストで演奏した時の映像のようです。音楽的にはハンガリーの農村ジプシー音楽系ですが、ウクライナ側に出ているので、少し音楽の雰囲気が違うように思います。ハンガリーでは、バスドラのような太鼓は東部以外ではあまり使わないと思いますし。その東部(というか東北部)はサトゥマール地方という所で、この辺りの音楽にはやはりそっくりだと思います。国境を挟んだ両地方に共通するのは、古いユダヤ系のレパートリーを持っていることで、ハンガリーのクレズマー(ユダヤの楽士)達が昔演奏していたユダヤ・メロディを、ジプシーの楽士たちが今でも忘れずに記憶しています。今日の3つ目のビデオはその演奏。往年のクレズマーたちの多くは、悲しいことにホロコーストで亡くなってしまいました。

Hutsul Tecso Band at Fono pt.1

Tecso Band: Hutsul Tsymbaly (cimbalom) solo

テチョェー・バンド(無理やりカタカナにするとこんな感じでしょうかw)のツィンバリ奏者のソロ。ルテニアのTsymbalyは、勿論ツィンバロムの兄弟楽器です。

Hutsul band From Tecso plays old Jewish Melody "7:40"

この分かりやすい歌謡性を帯びた哀愁味あるメロディは、典型的東欧ユダヤの旋律。90年代前半にHarmonia Mundi系のQuintana(その後消滅したレーベル)から出ていたカルパチア音楽のCDにもこの曲が収録されていました。

以下一本目のビデオの解説文の転載
The village band from Tjaciv, Karpatho-Ukraine (called Técső in Hungarian, Tetch in Yiddish) play at the Fono Music House in Budapest. The musicians are Gypsies, Josika (bayan button accordion) and Yura (drum and plonka) Csernovics with Ivan Popovic, the fiddler. Missing here is the tsymbaly/cimbalom player,Misha, who was ill when this was recorded, and sadly, has since passed away. Yura plays plonka while drummig - it is a piece of negative film (originally birch bark) held between the gums and lips in the mouth, and blown as a reed. Técső is a majority Hutsul/Ruthenian village located just across the Tisza river from Romania, near the Hungarian border, and thus preserves a unique repetoire of all nationality's dance musics, including old Carpthian Jewish music.

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2008年2月11日 (月)

こんな合唱

昨日のドニエプル川を歌った合唱曲ですが、PLAYA SOUND盤で聞いた演奏とは、こんな感じでした。近い演奏を見つけましたので、今日はそれを。youtubeの星の数は当てにならないなと今回も思いました。昨日の曲は赤軍合唱団の演奏ではUkrainian Poemeとなっています。お持ちの方は是非ご確認下さい。作詞したシェフチェンコは、抑圧されたウクライナ人の悲しみを詩に表現したことで知られる19世紀の有名な詩人。
ウクライナのこの見事はポリフォニックな合唱は、やはりコサックの伝統合唱の影響のようです。民間でこういうポリフォニーが出来るなんて、羨ましい限りです。歌詞と相まって愛国的な調子を帯びている曲も多いのでしょう。PLAYA SOUND盤で指揮をしていたレフチェンコは、ソ連時代にウクライナの自由を歌った曲を指揮したため職を奪われたそうです。ペレストロイカ後に復帰し、件の録音を残しました。

На святого Миколая (part 5)

この盛り上がりですから、プログラムの最後か、アンコール曲でしょう。

На святого Миколая (part 2)

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2008年2月10日 (日)

ウクライナ絶唱

昨日から食あたり?でダウンしていましたが、昨日の記事は何とかアップ。今日は少しよくなりました。で、更にウクライナでこれはというのを何本か見つけました。バンドゥーラ関係もまだまだありますが、きりがないので。
前にちょっと予告した「ドニエプルの荒波」(邦訳はないので我流ですが)を見つけました。ここではReve Ta Stogneになっていますが、間違いなく同じ曲です。仏PLAYA SOUNDから93年に出ていたウクライナの民謡合唱盤(Ukrainian Voices おそらく廃盤)では、英訳が「The Dnepr roars and moans」になっていました。直訳だと「ドニエプルは轟々とうなり呻く」でしょうか。どことなくイスラエル国歌のハティクヴァを思い出させる悲愴美があります。PLAYA SOUND盤を聞いて最初に強く印象に残った曲で、特に女声の切々と迫ってくる表現には鳥肌が立ちました。赤軍合唱団もレパートリーに入れていた曲ですが、地元ウクライナの合唱は一枚上でした。
このビデオでも、普段はロック系の音楽を演奏しているグループのようですが、楽器を置いてアカペラのコーラスでポリフォニックに粛然と歌われています。どういう民族的な思いがこめられた歌か分からないのが残念ですが、ウクライナ絶唱と言っていいように思います。Kobzaと言えば、ルーマニアのウード系弦楽器の名前ですが、それで目に留まった次第(笑

Kobza - Reve Ta Stogne

Кобза - "Реве Та Стогне" (НПК "Україна" 8 Березеня 2006) vocal instrumental ensemble from Ukraine

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2008年2月 9日 (土)

バンドゥーラの妙技

ウクライナの弦楽器バンドゥーラは、これまでにも何回かアップしましたが、今日のVictor Mishalowという人は、見た中では一番の名手です。器楽的に可能性を探求しているように見えますので、民族色は希薄かも知れませんが。彼はオーストラリア生まれで現在はカナダ在住のようです。結構ウクライナ人も外に出ているんですね。(バイオグラフィーは名前のリンクをご参照下さい)
何本か最近の収録と思われる独奏をアップしておきます。この楽器、どういうチューニングになっているのでしょうか。多分クロマティック(半音)になっているのでしょうが、謎は低音の部分で、フレットレスの棹は押さえることもあるのでしょうか。下のふちにアジャスター(というかペグ自体か?)が並んでいるように見えます。

Victor Mishalow: The Captives' Market

演奏は真ん中辺りから。エリック・サティのグノシェンヌ風のエキゾチックな音階。あの曲はルーマニア音楽にヒントを得て書かれていますが、西ウクライナにはルーマニア風の音楽がありますから、このモードが出てきて不思議ではないように思います。

Victor Mishalow: Turkish Dance

こちらはトルコ風の演奏。確かにカーヌーン的にも聞こえます。

Victor Mishalow: Snow Dance

こちらは一番スラヴ的な曲調。バンドゥーラのイメージに一番ぴったりに聞こえます。

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2008年2月 8日 (金)

ウクライナの犬 (アニメ)

今日は一転してハートウォーミングなアニメを一本。ルイス・ブニュエルの映画「アンダルシアの犬」を思い出させるタイトルを付けてみましたが、ああいうシュールな内容ではありません。ウクライナ民話に基づいてソ連時代に制作されたようですが、動物愛と歌と踊りを愛するウクライナ人の等身大の姿が見えてきそうな秀逸なアニメだと思います。人間はほとんど喋らず、犬の会話中心に進みます。チェコのアニメのように前衛的ではありませんが、独特な雰囲気と素朴な作画が素晴らしいと思います。民謡が方々で出てきますし、犬猫好きの私としましては、是非アップしようと思った次第です。老犬のペーソス溢れる人間臭い表情が良いです。(民謡はウクライナというよりはロシア風に聞こえますが)

Zhil byl pes.

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2008年2月 7日 (木)

Драбына(梯子)

今日はウクライナ・フォークのグループ、ドラビナ(Драбына)の演奏。
ギリシア正教が入ってくる前の、アニミズム時代を思わせるようなビデオです。不思議なトーテムポールのような人形が夢に出てきそうです。でもよく見ると十字架がありますねw スラヴ神話の魔女バーバ・ヤーガとかのイメージでしょうか。呪術的な演奏、森の中を徘徊するカメラワークに彼らのセンスが現れています。楽器は民族的な縦笛(名前は不明)、ハーディーガーディー(手回しヴァイオリン)、フィドル、枠太鼓(ボドランか?)など。いかにもトラッド的な編成ではあります。こういうのは、ソ連時代にはまずなかったタイプの演奏です。しかし、吸血鬼伝説が生まれたのもスラヴ世界のようですから、魔女くらいで驚いていてはいけないのかも知れませんw 
以下はビデオの解説文の転載:
Folk and country band "Atel'e Drabyna" is from Kharkiv (Ukraine). It is named Atel'e because we also write paintings, collect and restore Ukrainian traditional dress and music instruments besides making music. It is Drabyna because Drabyna is a ladder in Ukrainian, it is the ladder between the deep past of our Europian culture and people in the modern 21st century.
The wide range of our music includes the Ukrainian Middle Age songs from the East of Ukraine (Kharkiv area) and other areas of the country, Europian folk music such as Irish and Scottish, music of the peoples of the world, for instance country and bluegrass of the States.

Drabina

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2008年2月 6日 (水)

ベッサラビア、ドゥムカ、バンドゥーラ

今日はヴァラエティー豊かなウクライナの音楽と踊りを何本かアップしました。ウクライナ西南部のベッサラビアと、ドゥムカの名唱、昨日に続きバンドゥーラ弾き語り(今日はソロ)です。ハンガリーやスロヴァキアとの国境近くのルテニア辺りも探してみたいと思いますが、見つかるでしょうか...。民族詩人のシェフチェンコが詩を書いた「ドニエプルの荒波?」も探していますが、なかなか見当たらず。赤軍合唱団も中心レパートリーにしていた名曲ですが。
ウクライナは現在人口は5000万近くに達し、面積はロシアについでヨーロッパで2番目の国。チェルノブイリの悲劇も遠い昔の話になりました。

"DOR BASARABEAN" Romanian Folk Ensemble from Ukraine

ベッサラビア(またはバサラビエ等)とはロシア帝国時代における中央ヨーロッパ領土の一部分で、現在のモルダヴィア共和国のほとんどと、現在のウクライナの一部を加えた地域のこと。ユダヤのクレズマーたちが活躍した舞台としても有名です。このビデオはウクライナ側ベッサラビアのルーマニア民族アンサンブルの演奏。冒頭に演奏されているのは、ルーマニアのネットTV、TVRの伝統音楽番組Tezaur Folcloricのテーマ曲です。コマネチのふるさとのルーマニア東部モルドヴァ地方の音楽と踊りに瓜二つ、というかそのものに聞こえます。

Magomaev Muslim - Dumka

アゼルバイジャン生まれの有名なソヴィエトのオペラ歌手、ムスリム・マゴマーエフ(この名前ですからイスラム教徒でしょう)がピアノ弾き語りでウクライナの代表的な民謡ドゥムカを聞かせます。1969年キエフでの演奏。ドゥムキーとは英訳すればThoughtの意。単一の曲ではなく、叙事的な民謡のジャンルのようです。こちらには「ドゥムカとは哀歌とも訳され、18世紀にポーランドで起こった叙事詩による民謡の形式」とありました。

Bandura

バンドゥーラ演奏、今日は女性の弾き語りで。この涼しげで哀愁漂う音色は、フィンランドのカンテレと似て聞こえます。同じように叙事的な哀歌風の歌が歌われます。(もしかしたら、どちらもヴァイキングから伝来したものなのでしょうか?)

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2008年2月 5日 (火)

ウクライナ民謡の色々

東スラヴ語族はロシア、ウクライナ、ベラルーシの3つですが、言葉の近さで並べると、ロシア語、ベラルーシ語、ウクライナ語、ポーランド語(西スラブ語族)の順になるとどこかで読んだことがあります。ウクライナ語は、3つの中では一番ポーランド語に近い部分があるようです。文字もロシア語とは少し違って、同じキリル系ですがウクライナ語独自の文字があります。
ソ連時代にはウクライナもベラルーシもロシアと一緒くたに見られていたように思いますが、ウクライナだけをとっても地方色が豊かで、色々な民族の歴史が重層的に重なっている所です。古くは古代のイラン系遊牧民族スキタイ、中世には東スラヴ3カ国共通の源流のキエフ・ルーシがウクライナの地から興りました。そこでの当初の支配者は、北からのノルマン人(ヴァイキング)でしたが、彼らはスラヴ世界に混血、同化していきます。キエフ・ルーシも近世にはモンゴルに倒され、数百年間いわゆる「タタールのくびき」が続きます。その他にも、フン族、チュルク系諸族、オスマン帝国など、両手で数えられない程の民族が通過していきました。中世には、あの謎のハザール帝国の版図にも一部入っていました。14世紀にコサックが最初に登場したのも、ウクライナの地です。
当然人種的には混合が進んだと思われますが、音楽で見る限り、現在の姿はロシアとかなり似通っていると言えると思います。そんな中で、今日は何曲か特徴的なビデオを見てみましょう。

Kraina Mriy 2007 - Song of Ukrainian Steppes

South of Ukraine (Kirovograd region)の民謡。ロシアの地声女性コーラスに非常に似た感じです。

Banduryste, Orle Syzyj - Ukrainian Bandura, Lviv

ピアノの中身を取り出したようなウクライナの弦楽器、バンドゥーラの弾き語り合奏。この叙情性はウクライナ的で、ロシアの歌とは大いに異なる点です。

Ukrainian kozak song

ウクライナのコサック民謡。ちょっと男声が弱い気がしますが。
先日書き忘れましたが、「コサック」とは英語読みで、ロシア語ではカザーク、ウクライナ語ではコザークです。ロシア語の方はカザフ(kazakh)とほとんど同じ綴りです。

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2008年2月 4日 (月)

ステンカ・ラージン

一体いつまでロシア巡り?という感じになってきました。年末年始にバッハの無伴奏チェロなどを挿んだとは言え、ロシア・マイナーから入った11月から3ヶ月続いていますのでw
まだまだ興味深いクリップはありますが、今日のステンカ・ラージンでひとまずロシアを終わりにして、明日からはウクライナ~ベラルーシ~ザカフカス(グルジア、アルメニア)と見ていく予定です。その後は中央アジアか、いきなりインドかという流れで考えています。いずれアラブやユダヤ、東欧諸国なども個別に回る予定です。

さて、ステンカ・ラージンですが、ドン・コサック合唱団やフョードル・シャリアピンの歌で有名になった「ロシア民謡」の名曲の一つ。ステンカ・ラージンは、17世紀に実在したドン・コサックのアタマン(首領)でした。ステンカは愛称で、本名はステパン・ラージンです。彼は農奴制に抵抗し、農民一揆を起こした英雄として知られています。この歌は19世紀になって作られ民謡化した曲ですが、歌詞はペルシア遠征の際にラージンが捕虜にしたペルシアの姫との故事が中心になっています。その2年後の1671年には大反乱軍を率いてモスクワの中央政府自体に攻め上がろうとしましたが、捕らえられ、最後は40歳そこそこの若さでモスクワの赤の広場で処刑されました。
以来ロシアの民族的英雄として語り継がれ、民謡も何曲か作られましたが、特に有名なのがこの曲です。昔ロシア語で歌う合唱団に参加した際に、男声合唱で歌ったことがありますが、胸のすくような豪快な歌で、歌っていて興奮しました。最後はペルシアの姫をヴォルガ河に投げ込むという残酷な結末なのですが、不満が出てきていたグループをまとめるため、コサックの首領として筋を通したのでしょう。「雄々しい歌声を響かせ、姫の魂を慰めよう」と締めているのが、せめてもの救いです。

詳しくは以下の参考文献で!
ユーラシアブックレット№17 伊東一郎著 「マーシャは川を渡れない ロシア民謡の中の文化」 東洋書店
同№70 山之内重美著 「トロイカから私を呼んでまで 続・ロシア愛唱歌集」 東洋書店

Stenka Rasin - Soviet Army Chorus

腹に響くようなロシアの燻し銀のバスが魅力。ソヴィエト軍合唱団の演奏。

Kremlin Zoria Massed Band Final

クレムリン前でのブラス・バンドとバグパイプの大合奏でロシア・シリーズを締めましょう。最初は雪山賛歌に似て聞こえてしまいます。何曲かメドレーで演奏しています。

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2008年2月 3日 (日)

ピャトニツキーXOP

今日は何度か来日公演もあったロシアの民族合唱団、ピャトニツキーの演奏を何本か。地声で歌われる歌は、ブルガリアン・ヴォイスを連想させます。ブルガリアのように不協和音や変拍子が出てくることはほとんどありませんが、同じスラヴ系ですから、似ている部分は確かにあると思います。レパートリーも、これまで見てきた赤軍系(ソ連)のもの、白軍系(帝政ロシア)のもの、ジプシー・ロマンス、コサック歌謡と大体全てありますが、それらよりも古い伝承の民族的な歌唱法の民謡(作者不詳)をどちらかといえば得意にしている合唱団です。ロシア各地での民謡現地録音もソ連崩壊後に登場していますが、それらは非常に渋く地味なもの。ピャトニツキーなどの歌の雛形ではありますが、プロではない田舎の古老の声に聞き入るのも根気が必要です。ピャトニツキーはそれらをトラッドなアレンジで、美しく楽しく聞かせる合唱団と言えるでしょう。バックの民族楽器のアンサンブルにも名手が揃っています。因みに、XOP(ホール)とはロシア語でコーラスの意味。

Patnitsky's Choir

これは古い伝承歌かスラヴの正教聖歌では。ブルガリアン・ヴォイスに似た神秘的な感じがあります。

My Golden Land of Russia. Pyatnitsky Folk Ensemble

ロシアの美しい景色と一緒に。

Step - "Golden Gates" - Russian Folk Song

こちらはサンクト・ペテルブルク(旧レニングラード)のGolden Gatesという女声合唱団の演奏。レパートリーはピャトニツキーと同傾向ですが、古い民謡のみを歌っているグループかも。ソ連時代にはなかなか聞くことの出来なかったタイプでしょう。

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2008年2月 2日 (土)

クバン・コサック

昨日は子供版をアップしましたが、今日はクバン・コサックの歌と踊りを見てみましょう。ドン・コサックはドン川流域に、クバン・コサックはクバン川流域に住んでいるコサックです。場所ですが、11月に特集しましたコーカサス系やチュルク系の民族が住む北コーカサスの高山から出て、アゾフ海に流れ込んでいる川です。アディゲなどはごく近くのようです。紛争の絶えない北コーカサスに近いため、ロシア軍のメンバーとして紛争鎮圧に参加しているのかも知れませんが、音楽で見る限り、近くのウクライナ、北コーカサスの要素がかなり入っているようです。

The Kuban Cossack Сhorus

これは軍隊の行進曲でしょうか。音楽は西洋のマーチ風です。

Kuban Cossacks Chorus - Кубанский Казачий Хор 4

男性の踊りはいたってロシア的ですが、女性が出てくる部分では、北コーカサスのレズギンカのリズム(タンタ、タタタの8分の6拍子が特徴的)が出てきます。別なファイル(音が大きいのでご注意下さい)ではレズギンカリズムの上に、短剣の踊りまで出てきました。途中から登場するのは、曲自体アディゲかチェルケスのものです。

Kuban Cossacks Chorus 05

伴奏の楽器の中には、大小のバラライカやドムラに混じって、ウクライナのバンドゥーラ(ピアノの中身状の楽器を竪琴のように弾いています)があります。女性の歌にもウクライナ民謡的な哀愁と叙情性が感じられます。と思ったら、コメントの中にAnd this song is pure Ukrainian, not Russian.とありましたw

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2008年2月 1日 (金)

女性と子供のコサック歌謡

これまでに見てきましたように、同じロシアの歌でも、ドン・コサック合唱団はポーリュシカ・ポーレ(赤軍の軍歌)は歌わないし、逆に赤軍合唱団はロシア正教の歌(おそらく「夕べの鐘」なども)は歌わないようです。たまには例外もあるかも知れませんが。共通しているレパートリーは、今日の1本目のカチューシャでしょうか。先日書きましたように、この歌は民謡ではなく戦時歌謡ですが、歌の中に赤軍は出てこないし、ロシア正教とも関係がないからではないかと思います。それに今でも№1の愛唱歌ですから。この子供たちはクバン・コサックの子息たちではないかと思われます。歌の上手さにビックリです。
今日の2,3本目は女性の歌うコサック歌謡です。仏Ineditから素晴らしい録音がCDで出ていますが、この二人も同じようなコサック集団の伝統を受け継ぐ女性陣なのでしょう。この独特な民族衣装が、誇り高き「半農武装集団(士族)=コサック」の妻らしいように見えます。録音レベルが小さいのが少々残念ですが。

Cossack Choir

Cossack Song Iz-za Gorochki

Cossack folk song Vo Sadu-Sadochku

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