クルドの音楽
アルメニア・シリーズを一応終えましたので、順番では次はアゼルバイジャンですが、先日書きましたように、ナーゼリーさんのライナー執筆(新しいキングWMLの一枚)の件がありますので、下調べを兼ねて今日から月末くらいまでクルド音楽を巡ってみます。今日は歌謡的な所から見てみましょう。コブシ回しの素晴らしい女性ヴォーカル・ビデオがかなり見つかりました。おそらくトルコ側のクルド系歌手の演奏だと思います。
クルド人は古代のメディア王国(BC708-550に存在したイラン史で一番古い王朝)の建設者だったメディア人の末裔と言われているだけあって、その音楽もとても古い伝承を残しています。ペルシアのダストガー音楽のように複雑ではありませんが、現在のクルド・マカームでは、その古風で玄妙な音楽体系を残しています。ダストガーの中にもバヤーテ・コルド(本来はクルドの詩とか歌のような意味)という形で入っています。往年のオスタッド・エラーヒは勿論、シャハラーム・ナーゼリーの音楽にも、現在のクルド・マカーム(一応ペルシアのダストガー音楽とは別物)の形を取って、そのイラン系民族文化の古層を覗かせています。イスラームやスーフィー以前に遡る部分もあるようで、事実エラーヒやアリ・アクバル・モラディの属する宗派ヤルサン(アフレハックとも)は、ササン朝(つまりプレ・イスラム)以前の時代に遡るとも言われています。
クルド人は、現在はトルコ東部、イラン西部、シリア東部、イラク東北部を中心に、南コーカサス(ザカフカス)にもかなり住んでいるようです。ハチャトゥリアンの一番有名な「剣の舞」はクルドの伝統舞踊をイメージして書かれた曲でした。クルドの人口は2000万人近くを数え、国家を持たない最大の民族と言われているようです。各国で独立を求める運動を繰り返し、色々な紛争の火種になっているのは周知の通りです。
その他、色々なデータがありますが、また追々書いていきます。今日はとりあえず以下のビデオをどうぞ。
kurdish song Kijan Ibrahim xayat - maqam
歌も良いですが、ヴァイオリンのかすれたフラジオ混じりの音にとてもクルド的な哀愁を感じます。ウードもなかなか聞かせます。トルコ側の歌手だと思いますが、クルド的な直裁的な熱情は国境を越えたクルディスタン共通のものだと思います。
Kurdish Song Hani - Dlem Tanga Maqam
しかもクルドには目の覚めるような美人が多いようですね^^
Aziz waisi Maqam kurdistan
Khachaturian - Sabre dance
2度目ですが、小沢征爾指揮ベルリン・フィルで「剣の舞」。
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コメント
美しい歌手だこと・・・ウードーとクラリネットをバックに聴かせてくれます。気になるのは真ん中のドラムセット、これをガンガンにたたくと、どんな音楽になるのでしょうね。
投稿: ヒロセ | 2008年3月25日 (火) 00時21分
>hiroseさん
一本目のことですね。こういうフリーリズムの歌ではドラムは出てこないでしょう。周りの枠で多少ミュートするのでは。しかしクルドのフリーリズムの歌、絶品です。
投稿: Homayun | 2008年3月25日 (火) 23時20分
私見ですが、クルドといえど国、地域によって若干差異が見えてきますね。
それがまた面白いのですが、その中の共通項を見出していこうかと思い、いろいろ思案中です。でもそれは日本帰ってからかな。。。
投稿: りーず | 2008年3月26日 (水) 06時23分
>リーズ様
確かに通底するものがあるように思います。あの独特なパッションは間違いなく共通のものでしょうね。ナーゼリーさんのターキッシュ・クルドには、かなり驚きました。スィヴァン・ペルウェルとも面識があるようでした。
投稿: Homayun | 2008年3月26日 (水) 23時11分