チェロによるシャコンヌ
イラン音楽シリーズの途中ですが、西洋クラシック関係で驚きのビデオが見つかりましたので、今日はそれをアップしたいと思います。よく出入りしているmixiのチェロ関係のコミュで話題になった一本(前半、後半)です。クルドを含め、イラン音楽シリーズをご覧の方、申し訳ございません。数日寄り道する予定ですm(_ _)m
シャコンヌにつきましては、去年の9月24日に一度ミルシタインの演奏入りでアップしてあります。シャコンヌは、J.S.バッハの無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ2番の終曲で、ブゾーニ(プッチーニと同じく、「トゥーランドット」を題材にしたオペラも書いたイタリアの作曲家)がピアノに編曲するなど、ヴァイオリン独奏以外でも弾かれることの多い名曲中の名曲です。この曲をヴィオラで弾くのならまだ分かりますが、大きなチェロで、しかも原調のニ短調(d-moll)で弾いている驚くべき演奏です。後半の3声で動く辺りは特に難しいのではと思っていましたが、やはりチェロなりのアレンジが施されていました。ヴァイオリンでは一番難しい箇所だと思います。
楽器の話になりますが、ヴァイオリンの調弦は下からソ、レ、ラ、ミ(G,D,A,E)で、ヴィオラは5度下のドが下に入って上のミが抜けるため、ド、ソ、レ、ラ(C,G,D,A)となります。チェロはそのヴィオラの音が全てオクターヴ下がった調弦になっています。(全て西洋式のチューニングの話しですが)
シャコンヌの頭のレ、ファ、ラの重音は、ヴァイオリンの場合、下の弦3本で弾きますが、チェロで同じ調性で弾くとすれば、一番下のC線を外した形になるのだろうなぁと思っていました。やはりその通りで、その重音から始まり、続きは上3本の弦のハイポジションを左手親指を駆使しながらヴァイオリンとほとんど同じ音をオクターヴ下で弾くことに成功しています。これはとてつもなく難度の高い技術だと思いますが、それをこのKalman Imreは極めて正確に、しかも暗譜で弾いています。ほとんど完璧ですね。これには驚きました!
ヴァイオリンの指使いを応用できる5度下のト短調(g-moll)の編曲もあるようですが、それだと音が低くて大分鈍重な印象になると思います。ニ短調だとC線はほとんど使わないのかも知れませんが、その代わり高い弦をハイポジで弾くことで、シャコンヌ本来の重音奏法の輝きを失っていないと思います。もちろんヴァイオリンのように4つの重音の場合は一度には押さえられないので、同じ弦で2つ音を取っている箇所も多いです。アルペジオの辺りで、一番下のC線ハイポジ使用の裏技があるように見えます。
Kalman Imreという名前だと、トルコかハンガリー系の人ではと思いましたが、こちらで確認したら、セルビア出身だと分かりました。セルビアは元オスマン帝国領だし、ハンガリー系住民も多い所。同じ旧ユーゴ出身のピアニスト、イーヴォ・ポゴレリッチも、J.S.バッハ演奏を得意にしていたのを思い出しました。彼はよくTVなどで「キリスト教が分からなければ、J.S.バッハは分からない」と言っていましたが、Kalman Imreならどう言うでしょうか^^
※日本のチェリスト、岩崎洸さんもシャコンヌのCDを出されているようです。バロックチェロのアンナー・ビルスマも無伴奏ヴァイオリンのソナタ2番とパルティータ3番を入れていますが、シャコンヌはまだだったように思います。最近のチェリストのレパートリー拡大には驚かされます。
Kalman Imre Cello Johann Sebastian Bach: Chaconne part 1
Kalman Imre Cello Johann Sebastian Bach: Chaconne part 2
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コメント
初めて、お便りします。私は、IMEREさんの、友人で、彼とは、CELLOを、通じて、長年、お付き合いさせていただいています。IMEREさんは、8月に、バカンスで、沖縄にくる予定です。よろしければ、紹介します。気さくな、いい方ですよ。
比嘉
投稿: 比嘉 千春 | 2008年7月22日 (火) 18時07分
>比嘉 千春 様
コメント有難うございました。お知り合いですか。凄いですね。お会いしたいものですが、沖縄はうちからはちょっと遠いですね。今夏の来日では、沖縄以外(東京など)にもいらっしゃるのでしょうか。またイムレさんはCDなどは出されているのでしょうか。長らくクラシックを離れていたので、私が知らないだけかも知れませんが、youtubeで初めてお見かけしました。超絶技巧には大変驚きました。
投稿: Homayun | 2008年7月22日 (火) 23時03分
Imere さんを、評価していただき、友人として、嬉しい、限りです。今回、8月5から19日まで、沖縄に滞在予定で、その後、東京に行く予定だそうです。今まで、何度か沖縄でコンサートをしてきましたが、くる11月に、沖縄と東京でコンサートの予定があります。こちらでは、友人のピアニスト、ドイツ人の、クラウス宅に、お世話になり、チェロの、ワークショップを、開催する予定です。もし、興味のある方がいれば、遠慮なく連絡下さい。cdも、何枚か出版されていて、よろしければ、お送りいたします。比嘉
投稿: 比嘉 千春 | 2008年7月23日 (水) 13時46分
>比嘉様
昼間はお電話有難うございました。私自身できればどちらかで伺いたいものですが、取り合えずチェロ好きの方に告知しておきます。またサンプルが届きましたら、ご連絡いたします。本当に有難うございました。
投稿: Homayun | 2008年7月23日 (水) 23時19分
先週、ピアニストの、クラウスさんより、CDを、送りました。
比嘉
投稿: 比嘉 | 2008年7月29日 (火) 08時48分
>比嘉様
CD有難うございました。確かに受け取りました。
コダーイの無伴奏はよく知っているので、特に楽しく聞きました。とても素晴らしかったです。このCDはハンガリーのHungarotonに装丁がそっくりでした。イムレさんは普段セルビア語とハンガリー語両方話されるのでしょうか。
投稿: Homayun | 2008年7月30日 (水) 18時56分
コダーイは、イムレさん、得意にしていたようです。私は、片言の、日本語と、英語で、話します。ほとんどは、クラウスさんが、ドイツ語で話して、通訳してくれます。イムレさんは、基本的には、ドイツ語で会話し、レッスンは、英語でします。セルビア語と、ハンガリー語に関しては、よくわからないので、今度、確認しておきます。ところで、SKYPEは、お持ちですか?比嘉
投稿: 比嘉 千春 | 2008年7月31日 (木) 21時04分
>比嘉様
スカイプはまだ入れてないです。通話料がかからないから、海外となら大活躍ですよね。
ブログかHPのメールアドレスでのメールのやりとりでも結構ですので、宜しくお願いいたします。
投稿: Homayun | 2008年8月 1日 (金) 23時52分
Homayun様、比嘉様
はじめまして。
同じくmixiにてKalman Imre様の演奏を聴き大変驚き、感銘を受けた者です。
私は楽器は殆ど弾けないのですが、息子がチェロを習い始め1年。一家揃って音楽は大好きです。
東京でワークショップをなさるとのことですが、
私のような専門的なことがよく解らない者でも伺えますでしょうか?また、息子にもImre様のチェロの生の音をぜひ聞かせたく思うのですが・・・
可能でしたらぜひ連絡をいただきたく思います。
何卒よろしくお願い申し上げます。
ぱおりーなこと小倉明美
投稿: ぱおりーな | 2008年8月 2日 (土) 08時48分
イムレさん、ハンガリー語、セルビア語、ロシア語、ドイツ語などが、話せるそうです。コダーイのCDは、お話されていた、HUNGARYの、レコード会社から、出版されたものです。来週の火曜日に、来沖します。その際は、電話します。比嘉
投稿: 比嘉 千春 | 2008年8月 2日 (土) 11時08分
>ぱおりーな様
コメント有難うございました。スケジュールを比嘉さんから教えてもらいましたら、またmixiのチェロによるシャコンヌのトピと、こちらのブログでお知らせいたします。もちろんどなたでもワークショップ参加可だと思いますので、息子さんにも本物のチェロの音を聞かせて差し上げてください。小さい頃に受けたインパクトと言うのは、とても大きいものだと思いますので。
>比嘉様
ユーゴ辺りはドイツ語の影響が強いでしょうし、バッハの言葉でもありますし、セルビア語とロシア語は似ていますから。ユーゴに生まれた人は生まれながらの多言語使用環境にいる訳ですね。8月には沖縄ではワークショップはされないのでしょうか? 11月のスケジュールは、決まりましたら是非お知らせ下さい。
投稿: Homayun | 2008年8月 2日 (土) 15時08分
Homayunさま
ありがとうございます。
比嘉様が私どものブログにも書き込んでくださいました。
"ほんもの"の音はスピーカーを通してとは比べ物にならないくらいのインパクトがありますので、私も息子も(そしてたぶん夫も)楽しみにいたしております。
(いまひとつ根性のない息子がチェロを黙々と続けているのは習い始める前後にYo-yo Ma様と藤村俊介様の演奏会に行った時の生の音の素晴らしさが忘れられないからと思われます…(笑))
mixiでまたお世話になるかと思います。よろしくお願いいたします。
おぐら
投稿: ぱおりーな | 2008年8月 2日 (土) 17時16分
WORKSHOPは、8月に、沖縄で開催する予定ですが、2,3の友人で、口コミで、希望者を、募っているのが、現状です。彼の理解者が増えることを、切に願って、やみません。あなたの存在は、ほんとに心強い、限りです。希望することがあれば、遠慮なくお申し出ください。CDで、お願いすることは、ないですか?
IMREさん、回転寿司が、大好きです。沖縄に到着したら日に、一緒に、行く予定です。
投稿: 比嘉 千春 | 2008年8月 3日 (日) 10時04分
>比嘉様
情報有難うございます。
イムレさんのシャコンヌ演奏が入ったCDというのはないのでしょうか。あればまたの機会に是非聞いてみたいと思っております。
東京の知人に音楽プロデューサーがいらっしゃいますが、もしイムレさんが録音にご興味がおありでしたら、ご紹介いたしましょうか。民族音楽やワールドミュージック(キングがほとんどだったと思います)の方向の方ですが、クラシックも担当されたことはあったように思います。
投稿: Homayun | 2008年8月 4日 (月) 11時45分
シャコンヌの、CDは、ないそうです。録音の件は、明日、IMREさんに、話してみます。ありがとうございます。
投稿: 比嘉 | 2008年8月 4日 (月) 19時54分
WORKSHOP 開催報告
イムレ カルマン チェロ ワークショップ
グーテン モル弦 沖縄
8月17日日曜 PM14.00
浦添市仲間 ちはる歯科クリニック
098-877-6480
参加費 無料 終了後 イムレさんを、囲んで、食事会 <有料>
チェロ愛好家で、興味のある方であれば、どなたでも、歓迎します。遠慮なく、お電話下さい
投稿: 比嘉 千春 | 2008年8月11日 (月) 10時59分
無事、終了しました。WORKSHOPへの、ご理解、ご協力、ありがとうございました。比嘉
投稿: 比嘉 千春 | 2008年8月19日 (火) 08時48分
>比嘉様
無事終わって良かったですね。色々と有難うございました。いつか私もイムレさんの演奏を見たいです。
投稿: Homayun | 2008年8月19日 (火) 23時58分
今日、11月16日 沖縄でのコンサートのチラシを、送付しました。IMREさんの、シャコンヌの、ソロ演奏も、プログラムに、記載されています。よろしくお願いします。
比嘉 9ー24
投稿: 比嘉 千春 | 2008年9月24日 (水) 18時18分
>比嘉様
有難うございます。沖縄ではシャコンヌをやられるんですね。東京ではいかがでしょうか。
ちょっとばたばたしていますが、そろそろ例のプロデューサーの知人に連絡しなければと思っております。
投稿: Homayun | 2008年9月25日 (木) 00時53分
シャコンヌは、東京でも、演奏する予定です。演奏題目は、基本的に、沖縄といっしょで、ソロが、増えるとのことです。比嘉
投稿: 比嘉 千春 | 2008年9月25日 (木) 09時42分
おはようございます。お久しぶりです。
東京のコンサートについてですが、mixiのチェロコミュニティーでご案内している通りです。信時潔作品が加わることが沖縄との違いになってくると思います。
また曲がぶらあぼに掲載されたものと若干異なることになりました。
いろいろな要素のあるヘビーなプログラムとなっておりますがよろしくお願い申し上げます。
イムレさんの日本語バイオグラフィー、http://plaza.rakuten.co.jp/amoreteclat/007000
こちらに掲載いたしました。
投稿: ぱおりーな(yaksini) | 2008年11月 2日 (日) 10時01分
>ぱおりーな様
お知らせ有難うございました。チェロのコミュというのはどちらでしょうか? 最近ミクシを余り見てないのもあって、分かりませんでした。信時潔の作品も興味深いですね。知人がオーケストラ曲を評価していて、私も聞いてみたことがありました。
それから例のプロデューサーの件ですが、7月中頃にでも上京できたら彼に会って話そうと思っていましたが、実現できず、遠隔連絡のみになりそうですので、今回は難しそうです。コンサートはお薦めしてみます。私は今月も上京が難しくなってしまいました。シャコンヌも聞けたのに、残念です。またの機会に東京でイムレさんにお会いできるのを楽しみにしています。
投稿: Homayun | 2008年11月 2日 (日) 11時27分
IMREさん、無事、沖縄に到着しました。今回の、沖縄と東京でのコンサートで、CHACONNE の、ニュウバージョンを、演奏するそうです。日々進化していく、姿勢に、敬意を、表します。
投稿: 比嘉 | 2008年11月15日 (土) 09時44分
>比嘉様
お知らせ有難うございます。
私は残念ながら東京の方も行けなくなってしまいました。
片道7時間かかる上に、日帰りは不可能、更に平日の場合どう調整しても難しかったです。
例のプロデューサの方は、イムレさんに直接ご紹介したかった所ですが、私が行けなくなったため、今回は申し訳ございません。その方にはコンサートをお薦めしておきました。youtubeのシャコンヌも喜ばれてました。
投稿: Homayun | 2008年11月15日 (土) 22時41分
昨日、コンサート、無事終了しました。ピアノ、バイオリン、チェロそれぞれの、個性と、協性が、観衆の、心に響いた様に、思われました。やはり、CHACONNEは、聞く人の、音楽性を、凌駕し、同じ空間を共有できた、喜びを、皆が、感ずることが、出来たのではないかと、思います。
常に、ご配慮下さり、心より、感謝します。比嘉
投稿: 比嘉 千春 | 2008年11月17日 (月) 15時07分