« タジク族のポップス&ラワプ | トップページ | ホータンの音楽 »

2008年8月28日 (木)

クルドのマジュヌーニー旋法

突然ですが、一日イランのクルド音楽に戻ります。
3月末にアップしたタンブールの名手、アリレザー・フェイゼバシプール氏の以下の演奏ですが、ナーゼリーが2006年の日本ライヴで披露したマジュヌーニー旋法(クルド・マカームの一つ)らしいということが判明しました。演奏はMajnooniからTarze Rostam(?)への移動ではないかとのこと。マイミクのりーずさんからの情報で、「あ~やっぱりそうだったか!」と膝を打ちまして、この件、是非ブログに書いておこうと思いました。
クルド・タンブール特有の右手のアップストローク、微妙な間の取り方など、このタンブール・ソロはとにかく凄いです。2本目も一度アップしたものですが、ナーゼリーのマジュヌーニー旋法(おそらく仏Buda音源)の歌唱で、「ライラとマジュヌーン」らしき独特な絵が印象的。勿論バックのタンブールはバシプールさんです。
しかし来日時の演奏は、冒頭の日没、マジュヌーニー、ビジャンの再生を仏Buda盤より拡大して演奏していて、その代わりロスタム~ジェロシャーヒー以下はカットされていました。後半の展開も出来たら聞きたかったものですが、前半のマジュヌーニーなどの緊迫感溢れる演奏は、仏Buda盤以上の素晴らしさでした。後半のカットは何か意図があったのか、ただ時間がなかっただけなのか、今となっては分かりませんが^^  サハリー旋法も仏Buda盤にはない曲で、マジュヌーニーとの境目が微妙ですが、ビジャンの再生に至る前奏のようにも聞こえます。

Tanbour Alireza Feyz Bashipoor

Shahram Nazeri- Maghaame Majnooni, Moye bar marge Leili

☆以下は、シャハラーム・ナーゼリーの芸術(キングレコードWorld Roots Music Libraryの一枚)のライナーノーツ拙稿からの抜粋

 クルド人は古代のメディア王国(BC708-550に存在したイラン史で一番古い王朝)の建設者だったメディア人の末裔と言われているだけあって、その音楽もとても古い伝承を残している。主にクルド・マカームで用いられるタンブールは、中東の最も古い弦楽器の一つと言われ、クルドでは「神聖な楽器」とみなされている。直接には近世のカージャール朝(18~20世紀初頭)の宮廷音楽がルーツのペルシア古典音楽よりも古く、言わば「イラン音楽の古層」を覗かせているとも考えられるのがイランのクルド音楽。特にヤルサン(あるいはアフレハック Ahl-e Haqq)と言われるクルドの宗教は、イスラーム以前(更に言えば3~7世紀のササン朝期以前という説も有り)の古代ペルシアの信仰に起源があるとも言われ、クルディスタン人口の3~10%いるという推計もある。古代ペルシアの信仰にルーツがあるとは言っても、勿論イスラームと全く関係がない訳ではなく、イスラーム神秘主義(スーフィズム)の中に、古代において大流行した新プラトン主義やグノーシス思想、更にはキリスト教や仏教の影響までが見えるように、ヤルサンの何かがスーフィズム自体に流れ込んでいる(あるいはその逆も)部分もあるのではと考えられる。

●「クルドのシャーナーメ」について
Nazeriwrml  2006年のナーゼリー来日公演のプログラム1部(左のCDの 1~4曲目)は、ヤルサン(アフレハック)の宗教儀礼音楽をベースに、アリー・レザー・フェイゼバシプールが作曲したもの。オリジナルアルバムは、 2001年にフランスのBudaレーベルからMythical Chant(神話の歌)としてリリース(左下)。同内容のイラン盤ではAvaz-e-Asatir Shahnameh Kurdi(アサティールの歌 - クルドのシャーナーメ)となっていたが、アサティールと言うのが 「神話」に当たるアラビア語起源のペルシア語の言葉。この曲の場合 「神話」とはシャーナーメ(王書)や「ライラとマジュヌーン」を指していて、その形態の全体が「クルドのシャーナーメ」と呼ばれている。ヤルサン独自ではないが、クルド・マカームの中ではこの2つがイランの歴史のシンボルとして頻繁にテーマとして登場する。
 中東版のロミオとジュリエットと言われたりもする悲恋物語『ライラとマジュヌーン』は、アラブの伝説をもとに、12世紀の詩人ニザーミーが著したペルシア語のロマンス叙事詩がよく知られるが、この曲の場合「ライラとマジュヌーン」は愛の象徴として入れられていて、ニザーミーの作品と直接関係はない。イラン中の都市や各地域にそれぞれの「ライラとマジュヌーン」の物語があり、その中でニザーミがまとめたものが特に有名になっている、ということに過ぎない。

2)マジュヌーニー旋法
恋人ライラの死を嘆くマジュヌーンを愛の象徴として歌い上げたもの。

|

« タジク族のポップス&ラワプ | トップページ | ホータンの音楽 »

クルド」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: クルドのマジュヌーニー旋法:

« タジク族のポップス&ラワプ | トップページ | ホータンの音楽 »