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2009年1月

2009年1月31日 (土)

Özdal ORHONも歌っていたシャルク

Özdal ORHONという女性歌手の音源が、トルコの名門レーベル、カランから出ていました。色々な作曲家のシャルクを収めた復刻集で、カーヌーン、ケメンチェ、チェロだけの静かな伴奏で、たおやかに儚げに歌われるシャルクには、優美さと共に独特な香気がありました。それを思い出して、youtubeを探してみましたが、本人のは見つからず、どうも彼女が歌っていたらしいシャルクを、前にも取り上げましたGül YAZICIが歌っているビデオがありました。ギュル・ヤズュズも現代の素晴らしいディーヴァの一人だと思います。イェサリ・アスム・アルソイという作曲家(この曲は作詞も)については、ちゃんと調べてみないと分かりませんが、ヒュッザムらしい、エキゾチックな中にも移ろいやすいデリケートな美しさに溢れた曲。いかにもORHONに似合いそうな歌です。40代の若さで夭逝した往年の歌姫を偲んで、今日はこの一曲のみアップしておきます。    
Gül YAZICI-Ümitlerim hep kırıldı yârim artık gelmeyecek (埋め込み不可)
Makam: Hüzzâm   Güfte / Beste: Yesârî Asım Arsoy 


オズダル・オルホン(1941-86)/arsiv serisi      土Kalan Muzik Yapim

最後に、hasugeさんから一昨日の「更にKimseye etmem sikayet」の記事に詳しいコメントを頂きましたので、今日は転載しておきます。しかし、この憂い節の歌を、あのアタテュルクが愛好していたとは驚きました。hasugeさん、いつも有難うございます。m(_ _)m

Kimseye etmem sikayetは、「文句は言わない」というよりは、「不平は言わない」の方がニュアンス的には近いのではないかと思います。「(私は)泣いたり、震えたり、恐れおののいたりすることがあっても、不平は言わない」といった歌ですから。この歌はトルコ建国の父であるケマル・アタテュルクが好きだったそうですね。彼の苦難の生涯を考えると、納得できるような気がします。

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2009年1月30日 (金)

ザラの歌うハルク

昨日アップした女性歌手ザラの他の曲を見てみたいと思います。若手らしからぬ芸域の広さを感じさせる人です。先輩歌手のベルクス・アッカレのような迫力のあるタイプの歌唱ではありませんが、華やかな声で、またソフトな語り口で聞かせるトルコのコブシは、これまた魅力的。しかも中々のターキッシュ・ビューティです。

Zara - derdim çoktur

昨日のオスマンのシャルクとは一転して、ハルク(民謡)の歌唱。これまで出た音源から見ても、おそらくこちらの方が得意分野では、と思います。アシュクの歌と音階的にもそのままと言えると思います。ドゥドゥクやバラバンに似たダブルリードのメイの音が特徴的。

(Zara) Kahpe felek sana nettim neyledim

こちらも民謡を(幾分)現代的にアレンジした一曲でしょう。冒頭にメイの演奏シーンが出てきます。

Zara - aglama gozlerim

サズがフロントに出てくる伴奏。典型的なハルクという印象です。çok güzel!

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2009年1月29日 (木)

更にKimseye etmem sikayet

昨日のオスマン名曲Kimseye etmem şikayetについて、マイミクのふぁどさんからコメント頂きました。ふぁどさんはモスクワ在住ですが、一昨年の北カフカスで書いたようにロシアからはブログへの書き込みが出来ないようなので、mixiメッセージで頂きました。ふぁどさん有難うございます。m(_ _)m  この曲ですが、和訳すると「だれにも文句は申しませんわ」となるとのこと。また、昨日のSevval Samという歌手ですが、こちらの記事にあるように、最近公開された映画でも彼女の歌声が流れているそうです。
名曲故に他にも沢山ビデオがありました。男性歌手のものもあわせて、いくつかアップしておきます。それから、25日のDemedim miの記事について、hasugeさんから詳細なコメントを頂きました。25日のコメントを是非ご覧下さい。hasugeさん、いつも有難うございます。

Zara - Kimseye Etmem Şikâyet

民謡歌手のイメージの強い女性歌手ザラですが、このオスマンのシャルクを歌っています。

Kimseye Etmem Şikayet-İddia Ediyorum En İyisi Bu!!!

Muzaffer LEKESİZという男性歌手と合唱。

Ahmet Özhan - Kimseye Etmem Şikayet

アフメト・オズハンの二重唱。もう一人は不明。男性が歌う方が、大衆歌謡よりのサナート的に聞こえるようにも思います。

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2009年1月28日 (水)

オスマン名曲選 Kimseye Etmem Şikâyet

今日はオスマン名曲選第二回ということで、シャルクの名曲「キムセイェ・エトメム・シカーイェト」の聞き比べ。オスマン朝末期のKemani Sarkis Efendi(ケマニ・サルキス・エフェンディ 1885-1944)作曲のニハーヴェント旋法の 曲です。ニハーヴェントらしい、やるせないムードが堪りません^^ この歌、シャルクのアルバムで結構耳にするように思います。クリップも沢山ありますが、取りあえず女性歌手を4本。

なお名前の前のケマニですが、ケメンチェやケマン(ヴァイオリン)を専門とする音楽家の称号です。同様に、タンブールの名手はタンブーリ(例:Tanburi Cemil Bey)、ウードの名手はウーディ(例:Udi Hrant Kenklian)となります。

Seçil AK-Kimseye Etmem Şikâyet
セチル・アクによる歌唱。可憐なルックスとは対照的にも思える、アルトの艶かしくしっとりした歌声が良いですね。

Eda Karaytuğ-Kimseye etmem şikayet
前に一度アップしたエダ・カライトゥーの歌唱。

Şevval SAM - KİMSEYE ETMEM ŞİKAYET

この後2本は埋め込み可でした。シェッヴァル・サムという女性歌手、聞いた事がないように思いますが、なかなかです。

Ufuk Caba / Kimseye etmem şikayet ağlarım ben halime

前にもアップしたウフク・ジャバの歌唱。70年代風?メガネがインパクト大ですが、いい節を持ってる歌手です。

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2009年1月27日 (火)

ブルハン・オチャル2

ブルハン・オチャルの芸、もう一日追ってみます。彼の弦楽器演奏を見たかったのですが、見つからず、全て打楽器になりました。弦楽器は昨日のバーラマだけかも知れません。彼が率いたイスタンブール・オリエンタル・アンサンブル以来、最近のトラキア・オールスターズまで、担当楽器は打楽器中心になっているようですが、何故そうなったのでしょうか。弦楽器だとトルコ音楽の狭い枠に収まってしまう、と考えているからでしょうか。もう一度彼のタンブールでDemedim miを聞きたいものですが、古めかしいオスマン音楽は卒業してしまったのでしょうか?(笑)

BURHAN ÖÇAL & TURAY DİNLEYEN

トゥライ・ディンレイェンのヴァイオリンの伴奏でダルブッカ?を打奏。ヴァイオリンの演奏は、トルコ音楽と言うよりブルースのように聞こえます。

(Burhan Öcal) Ritim show 4

世界の素焼き太鼓を叩くオチャル氏。右は南インドのガタムだと思いますが、左のタジン鍋を重ねたようなのは何でしょうか?(笑) セネガルのウドゥと聞こえますが、モロッコのタジン鍋が南に伝わったのでしょうか?(笑)

(Burhan Öcal) Ritim show 3

やはりこの人の演奏、トンバク風テクニックが入ってますね。

Burhan Öcal-Fazıl Say-Patricia K-42nd Montreux Jazz Fsetival

トルコのピアニストのファジル・サイが弾くファンキーなトルコ行進曲(モーツァルト作曲)をダラブッカで伴奏^^  モントルー・ジャズ・フェスティヴァルでの映像。

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2009年1月26日 (月)

ブルハン・オチャル

ブルハン・オチャルは、色々な打楽器と弦楽器を操る名手で、カリスマ的な音楽家と言えるでしょう。昨日名前が出たので見ておきたいと思いますが、90年代にやってたようなタンブール・ソロを探してみましたが、最初の方にはほとんど見当たらないようです。近年は担当楽器はダラブッカなどの打楽器が中心になっているようですね。その中から、何本か上げてみました。

Burhan Ocal Ritm1

ダラブッカでベリーダンスの伴奏。踊り子とのインタープレイですね。もっときれいな映像で見たいものですが^^

burhan ocal - Sehnaz Longa

この有名なロンガ・シャーナズは、エジプトのリアド・アル・スンバティの曲だったと思います。

(Yavuz Bingöl) Evlerinin önü Mersin

ヤヴズ・ビンギョルのサズ弾き語りの相方のバーラマを、オチャルが弾いています。サズの弾き語りは、言うまでもなく、これまで見てきたオスマン古典音楽とは違って、ストレートに中央アジアの音楽に繋がる、もう一つのトルコ音楽。アラブ~ペルシアの影響の強い前者に対して、純テュルク的です。

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2009年1月25日 (日)

オスマン名曲選 デメディム・ミ

今日で記事数が500になりました。記念に前から個人的にかなり気に入っていたトルコの歌、Demedim miを。96年頃だったと思いますが、スイスの今は無きレーベルAmoriから出ていたBurhan Öcalの、曲名と同名のアルバムで聞いたのが初だったと思います。ブルハン・オチャルが、まだロマ色を前面に押し出した活動を始める前でした。この頃、彼はイスタンブール古典合奏団の音楽監督で、ピアニストのマリア・ジョアオ・ピリスや、ジョー・ザビヌル(ex.ウェザー・リポート)等と共演していたようです。西洋のハイセンスな音楽家との共演だけでなく、l`empreinte digitaleからはタンブールの独奏盤もあって、その後オスマン古典でいくのだろうとばかり思っていましたが。(笑)
デメディム・ミは、ウシュクダラなどと同じニハーヴェント旋法で、日本人にとっても大変親しみやすいメロディだと思います。Demedim miで検索すると、何と237も出てきました。今日はその中から数本。残念ながらオチャル版は見つかりませんでした。Amori盤も今は手元に残ってないので、曲の解説も分からなくなってしまいました。

Özer Özel - Ercan Irmak - Demedim Mi

タンブール&歌がオゼル・オゼル、ネイがエルジャン・イルマク、のようです。メヴレヴィーの精神性を現代的にアレンジしたステージ、と言えば近いでしょうか。

Sami Özer - Demedim mi

多分この曲はメヴレヴィーの旋回舞踏と何か関係があるのでは、と思っていたら、裏付けるようなビデオがありました。サミ・オゼルの歌とメヴレヴィー旋回舞踏のコラボ。別な演奏にはMakam(マカーム): Nihâvend  Beste(作曲): Hafız Hüseyin Sebilci  Güfte(作詩): Pir Sultan Abdal とありました。ハーフズ・ヒュセイン・セビルジで更に調べてみます。

Mevlana Demedim mi?

これを見て、明らかにメヴレヴィー教団の開祖、メヴラーナ(ルーミー)の教義や祈りの文句と関係がある(あるいはそのまま?)だろうということが分かりました。

iLAHi -- Demedimmi...!!!

これは原曲の宗教歌なのでしょうか。神秘的で素晴らしいですね。

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2009年1月24日 (土)

ケメンチェのアップ映像

ここ数日登場しているトルコの小型弓奏楽器ケメンチェですが、イフサン・オズゲンで検索した中に、サバー旋法のタンブーリ・ジェミル・ベイのタクシームが収録された映像がありました。この不思議な浮遊感のある音色が特徴的なケメンチェの細部の材質や、糸巻き部分、弓の持ち方などが見て取れると思います。大分前に取り上げたギリシア南部の島、クレタのリラにも似ている訳ですが、おそらくトルコのケメンチェは指板に付かない、宙に浮いた状態で発音しているものと思われます。リラは指板についているようにも思います。イランやアゼルバイジャンなどのケマンチェ(キャマンチェ)は、しっかり付いて発音していたと思います。指が浮いた状態でフラジオレットにならない秘密は、この弦の太さと右手の圧力にあるのでしょうか。それにしても、ジェミル・ベイのケメンチェ・ソロは、本当に素晴らしいです。なお、イスタンブールを背景にジェミル・ベイとオズゲンとケメンチェを描いたドローイングは、出品者(若手ケメンチェ奏者のErhan Bayram氏)によるものとのこと。今日の一文が、この忘れられない楽器の思い出の一助になれば幸いです。

Klasik Kemençe - Saba Taksim Cemil Bey

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2009年1月23日 (金)

オスマンとビザンツ

ケメンチェ奏者のイフサン・オズゲンで今日も見ていたら、チェロ演奏はない代わりに、オスマン音楽とビザンツ音楽の接触を思い起こさせるビデオが見つかりました。アラブ音楽やペルシア音楽と、古代ギリシア~ヘレニズム期の近東音楽の関係も興味の尽きないテーマですが、オスマン帝国の場合は、もっと時期が下って中世~近世のギリシア(ビザンツ帝国)との音楽的繋がりがかなりあったはず。その辺りの調査と言うのは、トルコ本国では進んでいるのでしょうか。一本目は、その辺を探っている内容のようです。オズゲンも出てきますが、トルコとギリシアの音楽家が交互に登場します。

Byzantine Ottoman Greek Turkish shared musics

Kemençevi İhsan Özgen Mahur Şarkı; Aşığa Bağdat Sorulmaz

イフサン・オズゲンのマーフール旋法のケメンチェ演奏(シャルク)のようです。映像がないのが残念ですが。彼はタンブーリ・ジェミル・ベイなどの流れのオスマン朝時代のケメンチェ演奏を最も正統に継承している一人だと思います。前に取り上げたタンブールのネジデト・ヤシャルは、セルチュクの60年代頃の伴奏者としてよく名前を見かけましたが、ほぼ同世代のオズゲンも名を連ねている録音があったように思います。

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2009年1月22日 (木)

ジヌチェン&オズゲン登場

Raks Muzikからソロ盤があったイフサン・オズゲン(İhsan  Özgen)というチェロ&ケメンチェ奏者で検索してみたら、これまた貴重映像が見つかりました。収録は70年代かと思いますが、映像はモノクロ。オズゲンは、ここではケメンチェを弾いていますが、何とウードがジヌチェン・タンルコルルでした。4本目で素晴らしいタクシームを披露しています。男性歌手はBekir Sıtkı Sezgin(ベキル・ストゥク・セズギン) という人のようです。5本でトータル30分くらいになるでしょうか。オズゲンのチェロ演奏を見てみたいのが主目的でしたが、今日は一まず往年のオスマン古典の名手達の、しっとりした名演をお楽しみ下さい。

Bekir Sıtkı Sezgin 1/5

Bekir Sıtkı Sezgin 2/5

Bekir Sıtkı Sezgin 3/5

Bekir Sıtkı Sezgin 4/5

Bekir Sıtkı Sezgin 5/5

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2009年1月21日 (水)

セルチュクの曲 独唱編

セルチュクの曲、昨日は合唱による演奏を上げましたが、今日は独唱を見てみます。セルチュクをIEでyoutube検索してヒットするのは242もありましたので、現代の歌手による独唱だけでも数え切れないほどあると思います。それ程彼の曲は現代でも愛好されている、ということだろうと思います。1900年前後生まれと言えば、日本で言えば東海林太郎さんの世代でしょうか。彼の歌には三味線がかなりの曲に入っていましたし、古き良き日本の情緒が息づいていたと思います。しかし、現在の日本の歌は・・・、根っこの部分がどこかに行ってしまいましたね(笑) デラシネというのでしょうか。デラシネならば、母胎を忘れないでいて欲しいものですが。

Leyla Bir Özge Candır

ウフク・ジャバの歌唱。トルコの繊細な節回しに、メヴレヴィー的な古典器楽伴奏が良いですね。

NURTEN DEMİRKOL SIRMAN £££ Varalım Kûy-i Dilaraya

ケマン(ヴァイオリン)のタクシームから始まる女性独唱。

ZEKAİ TUNCA £££ Gümüş Saçlarına Eğdim Başımı

たまには男性歌手も(笑) といってもやはり女性歌手のビデオが多いようです。ゼカイ・トゥンジャの独唱。

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2009年1月20日 (火)

セルチュクのコロス曲

ミュニール・ヌーレッティン・セルチュクですが、モジラでは15しか出てきませんでしたが、IEですと、その10倍くらいありました。モジラでyoutube検索した場合、トルコ文字を認識出来てないのではと思われます。今日はその中から、セルチュク作曲の合唱中心の曲を選んでみました。Chorusはトルコ語でKorosuと表記されます。コーラスという言葉が古典ギリシア語起源であることをストレートに思い出させる綴りです。オスマン・トルコの合唱は、おそらく西洋からの輸入だと思いますが、アナトリアの地にセルジューク朝が出来るまで存在したビザンティン帝国の合唱の名残もあるように思えて仕方ありません。セルチュク作品だけでみても、色々なタイプの合唱曲があることが分かります。これまで見てきたメリスマティックな独唱の素晴らしさとは異なる、ゆったりと穏やかでありながらエキゾチックな表情にも限りない魅力を感じますが、いかがでしょうか。

TÜRK MÜZİĞİ KOROSU £££ Vur Pençe-i Ali'deki Şemşir Aşkına

あの有名なトルコ軍楽(「トルコ行進曲」のルーツ)のリズムがはっきり出ています。メヴレヴィー的な一曲でもあります。マーフールの明るく爽快な曲調。

TRT-Koro-1-Erdi bahar 2-Aşıka Bağdat sorulmaz
ラスト旋法らしい爽快な曲調。メヴレヴィー風に感じるのは、3拍子だからでしょうか。

Aşiyan Korosu - Yar Senden Kalınca Ayrı (M.Nurettin Selçuk)

これは色々な音源でよく聞く曲。確か独唱もあったように思います。

TÜRK SANAT MÜZİĞİ KOROSU - Endülüs'te Raks (Zil, Şal ve Gül)

キュルディヒジャズカル旋法のこの曲は、大分大衆歌謡よりに聞こえますが。

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2009年1月19日 (月)

女性歌手 Yeliz Caglarman

トルコの古典歌唱の歌手別に戻ります。数日前にアップされたばかりのビデオ2本に出てくるYeliz Caglarmanという女性歌手、新進の人ではと思います。去年の5月、ベルリンでのコンサートの映像です。瑞々しく美しい歌声がとても良いですね。それぞれの冒頭に出てくるタクシームも、実に聞かせる内容です。余談ですが、ヨーロッパの場合、-manが付く苗字にはユダヤ系が多いという通説がありますが、トルコの場合はどうでしょうか。カタカナにするとすれば、イェリス・ジャグラルマン? ちょっと違う気がしますf(^^;

Yeliz Caglarman - Gittin de biraktin beni aylarca kederde

ミュニール・ヌーレッティン・セルチュク作曲のヒジャーズ旋法の曲。曲名はCamlibelか? 冒頭はGöksel Baktagir(ゲクセル・バクタギル)のカーヌーンの華麗なタクシーム。Yeliz Caglarmanの歌は、真ん中辺りから。曲も歌唱も、最高! Beste: Münir Nurettin Selcuk / Güfte: Faruk Nafiz   Makam: Hicaz / Usul: Yürük Semai

Yeliz Caglarman - Kaderimde hep güzeli aradim

ユルダル・トクジャンのニハーヴェントのウード・タクシームに始まります。このタクシームも実に素晴らしいです。Beste: Avni Anil / Güfte Fethi Dincer  Makam: Nihavend / Usûl:Semâiとのこと。作曲のアヴニという名もユダヤ系に多いように思います。

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2009年1月18日 (日)

トルコ・チェロ

トルコのチェロ独奏のビデオがいくつか見つかりましたので、今日はそれらを。前にウイグルの時に出てきたように、ヴァイオリンは中央アジア~アラブ辺りに起源があるとの説が有力ですが、ヴァイオリン族で最大のチェロは、西洋で独自に大型化した楽器。面白いことに、J.S.バッハの頃までは股に挿んで弾くとは限らなかったようです。その頃までは肩からつるして弾くスタイル(ヴィオロンチェロ・ダ・スパッラ)も多かったことは、前に寺神戸さんの無伴奏チェロ組曲演奏で触れた通り。
西洋の音楽文化との接触も多かったアラブやトルコでは、各国の古典音楽にチェロがよく使われています。奏法はほとんど西洋と同じ(股に挿んで弾く方ですが^^)ですが、出てくる音は紛れもないアラブやトルコの音。アラブではアンサンブルの低音楽器としてのみのようですが、トルコの場合はマカームに則ったチェロ・ソロのタクシーム(即興)も頻繁に演奏されています。有名どころでは、あの有名なサズ・セマーイを何度もアップしたメスード・ジェミル。タンブールだけでなく、チェロの名手でもありました。カランから2枚組が出ています。

楽屋で練習中と思しき一本目は、おそらくロマ系の音楽家ではないかと思いますが、歌心たっぷりの超絶技巧を披露しています。トルコの細かい歌の節の模倣が基本ですが、この奔放なスタイルは間違いなくロマ(ジプシー)のものでしょう。しかし指の動きの何と美しいことでしょうか! これには驚きました。ハイポジションでの左手親指使用も完璧。

cello

özer arkun

これは民謡的な曲か、オリジナルか不明ですが、やはりトルコの歌の特徴がよく出ています。

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2009年1月17日 (土)

セルチュク4曲

どうしてもセルジューク朝を想像してしまう名前の大歌手セルチュクの二日目。(関係あるのでしょうか?) ミュニール・ヌーレッティン・セルチュクのビデオは20本くらいはあるでしょうか。彼の実演の映像は昨日の2本の他には見当たらないようですが、音源的にはまだ素晴らしいビデオがありますので、今日はまとめて見てみます。

MUNIR NURETTIN SELCUK-YILDIZLAR

ユルドゥズラル(スターたち)というタイトルですから、出てくるのはトルコの女優たちでしょうか? セルチュクには、女性のヴォーカル・アンサンブルを従えた歌唱がとても多いような気がします。

Münir Nurettin Selçuk Dök Zülfünü

この歌も同じく女性コーラスをバックにたおやかに歌われていますが、拍子は2+2+2+3の9拍子でしょうか? さりげなく、ごく自然な感じで変拍子(というか複合拍子)が出てくるところがトルコ音楽。

münir nurettin söyle sevgili

ペルシアのアーヴァーズのトルコ版のように聞こえる一曲。トルコの方はどこまでもたおやかでおっとりした美しさがあります。

Varalim Kuy-i Dilaraya Gonul - Munir Nurettin Selcuk

ファスルの編成の合唱&合奏団によるセルチュク作品。現代もこうして盛んに演じられているようです。

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2009年1月16日 (金)

ミュニール・ヌーレッティン・セルチュク

昨日はココログでエラーが出て、アップしたら16日になってしまいました。保存を押した時に時々エラーが出て、書いてたデータが消えてしまうことがあります(`ε´)  保存のボタンを押す前にソースでコピーしていますので、書いた内容がパーにはなりませんでしたが、日付変更線を越えてしまいました(笑) youtubeを見て選んでいる内に、ログインから大分経ってしまったからでしょうか。
さてトルコの古典声楽、16日の2回目は、男性歌手のミュニール・ヌーレッティン・セルチュク。1899年生まれ1981年没。オスマン朝末期からの大歌手で、後のトルコの古典的大衆音楽への流れを作った人と言われています。幾分西洋的な歌唱法を取り入れたり、タキシードに蝶ネクタイという衣裳も、トルコでは彼から始まったようです。デデ・エフェンディなどのオスマン名曲を歌うだけでなく、自作の優れたシャルクなども沢山書き残しました。タンブールを弾くダンディな姿も、トルコ歌謡ファンにはお馴染みでは。タンブールは日本における三味線のような、歌手にとっても不可欠の基本的な楽器だったのかも知れません。私自身Buda盤やYKY Muzikの4枚組は、トルコ音楽ではここ数年一番の愛聴盤でした。

MÜNİR NÛRETTİN SELÇUK £££ Sana Dün Bir Tepeden Baktım

サフィイェ・アイラの時も出てきた番組でしょうか。ドキュメンタリーの中には、歌うシーン、語るシーンなど貴重映像が出てきます。

Münir Nurettin Selcuk

映像はありませんが、歌声は素晴らしい。最高ですね。

Munir nurettin selcuk-bu hulyalar diyarindan

セルチュク自身が合唱の伴奏で歌っています。音のレベルが異様に低いですが、これは大変貴重な映像でしょう。

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ネスリン・スィパヒ

トルコ古典音楽の女性歌手、今日はネスリン・スィパヒ。現在70代位でしょうか。この人のビデオは前に何度か取り上げたように思いますが、確かクリミア・タタールの時でした(今日の4本目に再度UP)。黒海北岸ではなく、今度はオーソドックスなオスマン音楽。彼女のドイツのCMPの音源も廃盤になってしまいましたが、トルコ盤で若い頃の音源(確かOdeon)があったと思います。CMP盤はクツィ・エルグネルのアンサンブルとの共演。オスマン古典声楽の粋のような名盤だったと思います。シャルクをSharki(iの上に点がないのが正しい綴り)と綴っていたのは、まだシャルクが欧米などでは余り知られてなかったと思われる91年くらいですから、しょうがないのかなと思いますが。華やかで艶っぽい歌声は、オスマン声楽の典型ですが、サフィイェ・アイラのような翳りは全く感じられない、明るい声質。youtubeを見ていると、オスマン声楽の枠に留まらず、色々な音楽との混合を試みたことがよく分かります。

Nesrin Sipahi - Havada Bulut Yok

ヤイリ・タンブールの伴奏で一節。これは素晴らしい! Sadun Aksüt çalıyor, Nesrin Sipahi söylüyor: Havada Bulut Yok (Hüseyni)

Nesrin Sipahi / Zil şal ve gül ( Endülüstte raks )

フラメンコ風な味付けが見えますが、節はシャルク

Nesrin Sipahi - Ankara Rüzgarı

こういう歌は、トルコのナツメロのようなものになるのでしょうか・・。

Nesrin Sipahi - Siytosman

後ろにあるペナントは右がトルコ共和国、左がクリミア・タタールだったと思います。

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2009年1月14日 (水)

サフィイェ・アイラのSP

往年のトルコの歌姫、サフィイェ・アイラの艶っぽい歌声をもう一日。この人の頃は当然SPだった訳ですが、その静止画像とともにSP音源が数曲アップされています。safiye aylaでyoutube検索すると150ほどヒットしますが、彼女自身の歌声が入っているのは大体昨日と今日アップするビデオくらいかも知れません。やはり昨日もアップした彼女の「動く動画」は非常に貴重だと思います。
おまけの一本は彼女も歌った歌をトルコのブラスと合唱で演奏したら、という内容でしょうか。こんな風に演奏されると、トルコの軍楽のようでもあり、クレズマーのようでもあり、何やら不思議^^

kanun taksimi safiye ayla yanık ömer

冒頭にカーヌーンのタクシームが入った一曲。

safiye ayla bir ihtimal daha var

safiye ayla menekşelendi sular

Ata'yı Anma Konseri 04

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2009年1月13日 (火)

往年の名歌手 サフィイェ・アイラ

トルコ古典音楽の女性歌手をここ数日見ていますが、今日はおそらく最も有名なサフィイェ・アイラ。トルコ現代歌謡の元祖的な歌手の一人で、これまでに見た歌手たちの大先輩。1910年代生まれ(1907年説もあり)で98年に亡くなったそうです。トルコの名門レーベル、Kalan Muzikや、Coskun(ジョシュクン)から若き日の素晴らしく瑞々しい歌声がたっぷり堪能できる音源が残されています。Rounderの「トルコ音楽の巨匠達」の1曲目には、彼女が歌う、余りにも有名な「ウシュクダラ」が収録されていました。かつてジョシュクンの2枚に「オスマン末期の爛熟した文化を感じさせる妖艶さを漂わせた名唱」とコメントしたことがありましたが、youtubeを見て尚更そう思います。1本目は民謡、2本目は後のサナートに繋がるような大衆的な歌謡、3本目は純オスマン古典的な歌唱と、対照的な3本を選んでみました。彼女の芸域の広さと、どの分野でも優れた歌手だったことを物語っています。 音源情報はこちら

"Katibim" by Safiye Ayla

日本では江利チエミの歌唱で有名になった「キャトビーム(ウシュクダラ)」。コメントにShe was Greek and her original name was Sofia とありますが、本当でしょうか? 色が浅黒いので、もしかしたらロマの血が入っているのかと思ったこともありましたが、真相は如何に。 Recorded 1949

SAFİYE AYLA TARGAN -- Çile Bülbülüm Çile

この人の関係のビデオも130本くらいありますので、未確認ですが、動いている所を見られる貴重な映像ではないかと思います。60年代くらいでしょうか。可憐かつ妖艶な歌声と、ロングトーンの息の長さ、さすがに聞かせます。一昨日も出てきたサーデッティン・カイナクの名曲。Makâm : Muhâyyer(ムハッイェル)、Usûl : Düyek(リズム周期:デュイェク)、Bestekâr(作曲) : Sâdettin Kaynak(サーデッティン・カイナク)、Güftekâr(作詞) : Vecdi Bingöl(ヴェジディ・ビンギョル)

safiye ayla

こちらは弓奏のヤイリ・タンブールの伴奏でオスマン音楽らしい繊細な節を聞かせています。

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2009年1月12日 (月)

女性シャルク歌手 Gül Göre Yazıcı

トルコの古典歌曲(シャルク)の世界を、あと数日女性歌手別に見てみたいと思います。今日はGül Göre Yazıcı。カタカナにすればギュル・ゴレ・ヤズゥズュが近いでしょうか。ギリシア出身のディーヴァ、マリア・カラスに似たルックスにアルトの声。う~ん、印象的な歌手ですね。モノクロ・フィルムのステージも素晴らしいです。1本目は、何度も取り上げたYine Bir Gul Nihalを書いた大作曲家ハマーミザーデ・イスマイル・デデ・エフェンディの曲。彼の曲らしいメヴレヴィーの旋回舞踏風なアレンジとリズムが聞き取れます。2本目の前半はヴェリ・デデ作曲の名高いヒジャーズ・フマーユンのペシュレヴ(Kudsi ErgunerのアンサンブルがAuvidis Ethinicのファスル・アルバムの冒頭で弾いていた曲)で、一昨年一度取り上げたことがあります。それに続く後半が、スルタン・メフメト2世の曲のようです。今日も映像状態が悪くて、埋め込み禁止なのが残念。この人のビデオも一杯ありますが、きりがないので、今日は4本にしておきます。

Gül Göre Yazıcı-Bülbül âsâ rûz-ü şeb kârım neva
Keman taksimi(ケマン=ヴァイオリンのタクシーム):Turay Dinleyen
歌詞
Bülbül âsâ rûz-ü şeb kârım neva
Mübtelâyım mübtelâyım ben sana
Söylesin ey gül sana bâd-ı saba
Mübtelâyım mübdelâyım ben sana
Makam:Evç(エヴチ)  Beste:Hamâmîzâde İsmail Dede Efendi(ハマーミザーデ・イスマイル・デデ・エフェンディ)

Gül Göre Yazıcı- Ah söylemez mi dil sana
Hicaz Hümayun Peşrev  Ah söylemez mi dil sana  Makam:Hicaz  Beste:Sultan II.Mahmut と解説にありますが、前半のペシュレヴはVeli Dedeの曲。シャルク名はAh söylemez mi dil sanaのようです。

Gül GÖRE YAZICI - Yadımda o sevdalı yeşil didelerin var
歌詞
Yadımda o sevdalı yeşil didelerin var
Ölsem de unutmam seni kalbimde yerin var
Sînemde açılmış ebedî yârelerim var
Ölsem de unutmam seni kalbimde yerin var
Makam : Muhayyer(ムハッイェル)  Beste : Şükrü Tunar(シュクリュ・トゥナル)

Gül GÖRE YAZICI-Gülüp Geçtin Ben Ağlarken
歌詞
Gülüp geçtin ben ağlarken,şimdi sitemin niye
Yalvarırdım senelerce,dinle ruhumu diye
Beyhûdedir bu dönüşün,seni gömdüm mâziye
Yalvarırdım senelerce,dinle ruhumu diye
Makam:Sûznâk(スズナーク)  Beste:Muzaffer İlkar(ムザッフェル・イルカル)  Güfte:Rıfat Ayaydın(ルファト・アヤイドゥン)

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2009年1月11日 (日)

女性シャルク歌手 Eda KARAYTUĞ

エダ・カライトゥーと読むのだと思いますが、トルコ古典声楽のシャルクなどを歌う女性歌手。CDは見たことがないように思いますが、youtubeビデオが沢山見つかりました。良い節を聞かせる美貌の歌手ですね。映像が悪くて全て埋め込み禁止なのが残念ですが。この種のビデオになると、コメントはほとんどトルコ語のみ。バックの楽団は、カーヌーンを中心にタンブール、ウード、ケメンチェ、ネイ、チェロ、リク。皆さんはどの曲、どのマカーム、どの楽器の音がお好きでしょうか?

Eda KARAYTUĞ-Anlatılmaz Bin Dert İle Makam(マカーム) :Hicaz(ヒジャーズ) Beste / Güfte(作曲/作詞):Erdoğan Yıdızel(エルドーアン・ユドゥゼル)

Eda KARAYTUĞ-Bir Hüzzam şarkı gibi
ヒュッザム旋法のシャルク。この旋法はよくよく考えると、ギリシアのレベティカの節に少し似ています。youtubeにトルコ語の歌詞あり

Eda Karaytuğ-Ezelden aşinanım ben
Makam : Hüseynî(ヒュセイニ)  Beste(作曲) :Şerif İçli(シェリフ・イチリ)  Güfte(作詞) : Mehmet Akif Ersoy(メフメト・アキフ・エルソイ)

Eda KARAYTUĞ-Ne yaptım kendimi nasıl aldattım
Makam:Uşşak(ウッシャーク)  Beste:Sadettin Kaynak(サーデッティン・カイナク)  Güfte:Vecdi Bingöl(ヴェジディ・ビンゴル)  オスマン朝末期から活躍した大歌手にして作曲家のカイナクの曲。

Eda KARAYTUĞ-Kalbim Yine Üzgün
Makam:Beyâtî(ベヤーティ) Beste:Selâhattin PINAR(セラハッティン・ピュナル) Güfte:Yahya Kemal BEYATLI (ヤフヤ・ケマル・ベヤトリ)  Yurdal Tokcan(ユルダル・トクジャン)のウード・タクシームに始まります。ピュナルも大変有名な作曲家。

Eda Karaytuğ-Kimseye etmem şikayet
Makam:Nihavend(ニハーヴェント)  Beste: Kemanî Sarkis(ケマニ・サルキス・エフェンディ)  やっぱりニハーヴェントの哀愁味溢れる大らかなメロディは素晴らしいですね。

Eda KARAYTUĞ-Dönülmez Akşamın Ufkundayız
Makam: Segah(セガー) Beste: Münir Nurettin Selçuk(ミュニール・ヌーレッティン・セルチュク) Güfte: Yahya Kemal Beyatlı(ヤフヤ・ケマル・ベヤトル)  日本でもよく知られている大歌手セルチュクの作曲。同じ名ですがイランのセガーとは全く異なるオスマン風に大らかな調べ。これも曲、歌唱共に素晴らしい。

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2009年1月10日 (土)

女流ウード奏者 ギュルチン・ヤフヤ

今日もトルコのウード独奏を見てみます。ギュルチン・ヤフヤという女流奏者は、ソロ・アルバムがトルコのKaf Muzikから出ていました。やはりジヌチェン・タンルコルルの弟子のようですが、昨日の二人の女性ウード奏者よりも、もっと内省的でデリケートなオスマン古典のウード独奏を聞かせる人です。そのたおやかな風情からは、タンブールをウードに置き換えただけのような印象も持ちます。
一本目のヒジャーズ旋法のペシュレヴ(器楽による前奏曲のような楽曲形式)の作曲者レフィク・フェルサン(1893-1965)は、20世紀初頭に活躍したタンブール奏者/作曲家。オスマン朝末期の代表的音楽家の一人で、巨匠タンブーリ・ジェミル・ベイの弟子で、大歌手ミュニール・ヌーレッティン・セルチュクとは同世代。二本目はシェドアラバン旋法のタクシーム(即興)。シェドアラバン・ゲチシュとありますが、ゲチシュというのは移調とか移り変わりという意味のようです。確かに(西洋で言う)調性を渡り歩いているような曲調です。三本目は詳細不明ですが、ヒジャーズ関係の演奏。これも素晴らしいです。
この人のビデオは他にも何本かありますが、シェドアラバンとヒジャーズはエキゾチックなメロディゆえに私自身好きなマカームなもので、独断と偏見で選んでみました^^

Hicaz Peşrevi (Refik Fersan )

Şedaraban Geçiş Taksimi (Gülçin Yahya Kaçar)

Gülçin YAHYA - Şölen (www.emirudlari.com)

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2009年1月 9日 (金)

久々のトルコ音楽

12月22日以来のトルコ音楽。オスマン音楽に残るビザンティンの痕跡→ビザンティンのクリスマス音楽→コプト教会→エチオピアの正教会とユダヤ教、と来て年明けでした。中東のキリスト教周辺は、東方諸教会やグノーシス的宗教の音楽(何とこれもyoutubeがあります)など、まだまだ見るところも沢山ありますので、また近い内に。

お屠蘇気分?の純邦楽が続きましたので、ウォーミングアップに、今回もメスード・ジェミルのニハーヴェント旋法のサズ・セマーイから。 12月22日の演奏者Coskun Sabahですが、ジョシュクン・サバーではなく、ジョシュクン・サバハと表記する方が一般的になっているようです。

NIhavend Saz Semai

このウード、やけにネックが長く見えますが、これはアングルのせいでしょうか? なかなかに心地いいパラフレーズです。 This is a very famous piece by the tanbur player Masud Cemil, it is so beautiful and fun to play, enjoy!

2UD NİHAVEND Sazsemâisi (M Cemil-C Tanrıkorur)__B İLHAN + G GÖRE(埋め込み禁止)
ジヌチェン・タンルコルルによる2本のウードへの編曲版のようです。彼の弟子筋の二人の女性奏者(ギュル・ゴレ&バシャク・イルハン)による演奏。
MESUD CEMIL's NİHÂVEND SAZSEMÂİSİ For 2 OUDS
Composer/Bestekâr: MESUD CEMİL-CİNUÇEN TANRIKORUR
Opus/Beste no. 154 (Ankara 1.5.1985)
Performed by GÜL GÖRE & BAŞAK İLHAN in 1997

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2009年1月 8日 (木)

義太夫のyoutube

松の内も過ぎましたので、そろそろ邦楽は終わりにしようと思いますが、もう一日だけ見てみます。今日は義太夫。浄瑠璃の中で一番古い語り物です。浄瑠璃というと義太夫のことか、と勘違いされる方もいるのではと思うほど、文楽の人形浄瑠璃のインパクトは強いと思います。youtubeには2本だけですが、義太夫として鑑賞できるビデオがありました。人間のあらゆる情感を描き出す語りの迫力は勿論ですが、太棹三味線の音色も江戸系浄瑠璃に比べて骨太な印象を聞き手に与えると思います。新内初め、浄瑠璃をやる者は、義太夫を聴かねばならないとよく言われます。浄瑠璃の中の浄瑠璃、それが義太夫と言えましょうか。レパートリーも諸浄瑠璃が継承しているだけでなく、歌舞伎の義太夫狂言は、歌舞伎の中心的な演目になっています。『菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)』・『義経千本桜(よしつねせんぼんざくら)』・『仮名手本忠臣蔵(かなでほんちゅうしんぐら)』が「義太夫狂言」の3大名作として知られています。更に嬉しいことに、明治以降の名人の録音も沢山残されています。音源の豊富さでも義太夫はダントツでしょう。(義太夫関係の音源情報はこちら
男の太夫と同じく、裃を着けて語られる女流義太夫の危うい魅力も特筆もの。明治頃から発祥の地の大阪だけでなく全国で大流行しました。現在も一部で脈々とその伝統が受け継がれています。2本目はその女流義太夫の名手。余談ですが、女流義太夫はジョギと略されることがあります。ジョギと言うとインドの地方音楽を思い出してしまいますが^^ 

日本の旋律集 竹本弥乃太夫・義太夫曲節集

義太夫協会常務理事重要無形文化財総合指定保持者竹本弥乃太夫師の実演46曲節を完全 収録したDVDのご紹介。

【女流義太夫】竹本越孝 / 鶴澤寛也 / 伊勢音頭恋寝刃 (Women's gidayu )

youtubeビデオに詳しい解説があります。

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2009年1月 7日 (水)

ヴァイオリン演歌と晋平節

新内で他にも良いビデオがあれば良いのですが、一昨日の3本位のようです。中山晋平の重要な歌をアップしてませんでしたので、今日はまとめて追加しておきます。彼の歌は演歌師もよく取り上げていて、録音も残っています。一本目の「籠の鳥」は大正の演歌師、鳥取春陽の作曲。この頃の世相を表す歌としてよく取り上げられると思います。NHKの連ドラ「あぐり」に出てきたのを記憶しています。「船頭小唄」は代表的な晋平節ですが、3本目は何と鳥取春陽の歌声。これは凄い雰囲気を持ってますね。「ゴンドラの唄」と「カチューシャの唄」は、説明不要の名曲でしょう。どちらもロシア文学がらみで生まれた唄というのが、興味深いです。

籠の鳥

出品者による歌唱でしょうか? 節は正確ですし、レトロな映像がなかなか面白いです。大道楽レコードから鳥取春陽自身の貴重録音がありましたが(「街角のうた~書生節の世界」)、これも残念ながら廃盤。

船頭小唄 (埋め込み禁止)
最後の演歌師と言われた桜井敏雄による 「船頭小唄」。映像に出てくるのはソニーから出ていたCDのジャケットですが、残念ながら廃盤になっていたと思います。フォークシンガーのなぎら健壱との対談も楽しい一枚でした。

船頭小唄 鳥取春陽

雑音をアップするなと叱られそうですが、この船頭小唄が吹き込まれたのは大正十二年で、当然ラッパ録音であります。十年に野口雨情が作詞、中山晋平が曲をつけたものです。鳥取春陽は岩手出身、あの「籠の鳥」や「シーハイルの歌」の作曲者でもあります。また我が国最初の「レコード会社専属歌手」でもあります。音盤は三十年前に廃棄してしまいましたが、テープに保存しておいたものがあり、それをお聴きいただきます。 (出品者の解説)

ゴンドラの唄

これも中山晋平の歌で忘れてはいけない一曲。ツルゲーネフ『その前夜』の劇中歌で、詩は吉井勇。佐藤千夜子さんのオリジナル歌唱。演歌師もよくやっていましたが、残念ながらyoutubeは無し。

カチューシャのうた

中山晋平の唄で、おそらく一番有名だと思いますが、演歌師のyoutubeはありませんでした。こちらは関西のソウルフラワーモノノケサミットの演奏。彼らの演奏は10年位前に大変人気を博しましたね。私も97年にライヴを見に行きました。カチューシャの唄は、島村抱月と松井須磨子らが旗揚げした「芸術座」による、トルストイの『復活』に基づく公演の劇中歌。女優・松井須磨子の歌によって大流行しました。コロンビアに彼女の録音が残っていますが、そのぶっきらぼうとも思える歌い方にもの凄い存在感がありました^^

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2009年1月 6日 (火)

ゲイシャ・ワルツ

新内と言えば、思い出してしまう流行り歌が、昭和27年の芸者ワルツ。神楽坂はん子さんの最大のヒット曲でした。4番の歌詞の「遠く泣いてる 新内流し、 恋の辛さが 身にしみるのよ」の箇所をどうしても思い出してしまうのは、私だけでしょうか(笑) 「新内は究極の邦楽」(三味線音楽と言った方が良いかも知れませんが)と、よく私の師匠が言っていましたが、恋愛の艶と哀切さを粋に表現する点において、確かに並ぶ音曲はないかも知れません。それにあのフリーリズムと裏声を多用する難しい唱法は、確かにペルシア声楽に通じる難しさと美しさがあります。もちろんゲイシャワルツは、直接には新内と関係ないですが、新内にも通じる哀切さを、コミカルさと三拍子で包んだ秀逸な流行り歌だと思います。

この歌のビデオを見ていていつも不思議に思うのが、三拍子なのに聴衆が一拍ごとに手拍子していること。だから最初の小節では一拍目と三拍目、次は二拍目に手拍子が入ります(笑) 何で一拍目に入らないのか不思議でしたが、思えばこれは日本人にとって三拍子が把握し難いことの現われかも知れません。

[Geisya] ゲイシャ・ワルツ(神楽坂はん子)

ゲイシャ・ワルツ
【作曲】古賀政男【作詞】西条八十【歌手】神楽坂はん子

神楽坂はん子:東京都出身。両親の反対を押し切り、神楽坂で芸者をしていたところに作 曲家の古賀政男がやってきて、「私、芸術家って大嫌い」と発言したり、その竹を割ったような性格が気に入られ、コロムビアへスカウトされた。昭和27年に古賀作品の「こんな私じゃなかったに」でデビューする。同年の、江利チエミの「テネシー・ワルツ」に対抗して作られた「ゲイシャ・ワルツ」が大ヒット。一躍スター歌手となる。その後も「見ないで頂戴お月様」「こんなベッピン見たことない」などのヒット曲を放つ。ビクターからは神楽坂浮子という歌手も登場するほどの人気ぶりだったが、昭和30年に身許引受人 の意向で引退。公には結婚のための引退だと報道された。
(出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)
 
あなたのリードで 島田もゆれる
チークダンスの なやましさ
みだれる裾も はずかしうれし
芸者ワルツは 思い出ワルツ

空には三日月 お座敷帰り
恋に重たい 舞扇
逢わなきゃよかった 今夜のあなた
これが苦労の はじめでしょうか

あなたのお顔を 見たうれしさに
呑んだら酔ったわ 踊ったわ
今夜はせめて 介抱してね
どうせ一緒にゃ くらせぬ身体

気強くあきらめ 帰した夜は
更けて涙の 通り雨
遠く泣いてる 新内流し
恋の辛さが 身にしみるのよ

芸者ワルツ

映像は小暮美千代と若き日の若尾文子が主演した「祇園囃子」のようです。

ゲイシャ・ワルツ(1972)神楽坂はん子

神楽坂はん子(1972年、なつかしの歌声)

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2009年1月 5日 (月)

新内 蘭蝶と滝の白糸

昨日の「影を慕ひて」で江戸の浄瑠璃、新内節(しんないぶし)の名が出ましたので、youtubeを調べてみました。去年新内の話(故・小泉文夫氏が「死ぬ前に聞きたい程に好きな歌」として世界中の数多の音楽の中からペルシアの歌と並んで取り上げた云々の話に始まりました)を書いた頃は全くなかったのですが、今回は何本か見つかりました。
一本目の新内の代表曲「蘭蝶」は18世紀に鶴賀若狭掾が書いたと言われています。その哀婉な節回しと、「粋の源流」とも言われる風情が味わいどころ。新内流しの手も、この蘭蝶の三味線の手から生まれています。女性の浄瑠璃(語り)はもう一つかなとも思いますが、地の三味線の鶴賀喜代寿郎さんは現役最高の新内三味線弾きの一人として活躍中。右の上調子はどなたか不明。蘭蝶のサビの俗称「縁でこ」の部分だけ上げておきますが、続く「~心底話」までアップされています。縁でこに先立つ四谷の箇所も聞いてみたいところ。
二本目は新内にもよく取り上げられる明治生まれの小説家、泉鏡花の「滝の白糸」をテーマにした石川さゆりの同曲のステージから。30秒辺りから出てくる二挺三味線が、あの有名な新内流し。しかし、有名な割りに意外にも節はちゃんと知られてないように思います。その後の石川さゆりの前半の歌唱は、新内そのもの。「滝の白糸」による新作新内ではなく、蘭蝶の一部ですが。

新内蘭蝶お宮口説1浄瑠璃

♪云わねばいとど堰かかる 胸の涙の (お宮)「やる方なさ あの蘭蝶どのと夫婦の成り立ち 話せば長い高輪で 一つ内にて 互いに出居り衆」
♪縁でこそあれ末かけて 約束固め身を固め 世帯固めて落ち着いて ああ嬉しやと思うたは

滝の白糸(新内入り) 石川さゆり 2001年 Ishikawa Sayuri

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2009年1月 4日 (日)

晋平節と古賀メロデー

皆さんは正月三箇日はいかがでしたでしょうか。どなたもやはり正月には大なり小なり日本のイメージが恋しくなるのでは。松の内くらいは、今年も和物で行こうかと思います^^  元旦に奈良光枝さんを取り上げましたが、今日は流行り曲の元祖と言えそうな中山晋平の代表曲4曲と、その後に続いて流行り歌の世界を確固たる物にした巨匠、古賀政男の名歌「影を慕ひて」を取り上げてみました。いずれも30年位前までなら間違いなく日本の愛唱歌のベスト10を占めるような名歌ばかり。現在はどういう結果が出るか分かりませんが(笑)  「影を慕ひて」は、中山晋平の唄を沢山歌って世に広めた佐藤千夜子(さとうちやこ)のオリジナル歌唱と、藤山一郎のリバイバル・ヒット・バージョンのカップリング。西洋的唱法を取り入れた千夜子さんの晋平節の歌声3曲、中でも「東京行進曲」は、モガ的イメージの歌唱と言えるのでは。

影を慕いて (埋め込み禁止)
佐藤千夜子の「影を慕いて」と、 藤山一郎の「影を慕いて」を続けてどうぞ。最近なら森進一版が最高峰でしょうか。この曲や、「酒は泪か溜息か」「湯の町エレジー」などの古賀メロの憂い節には、新内の影響が濃厚なように思います。新内の上調子の手に余りに似た箇所が目立ちます。

波浮の港

唄  佐藤千夜子(1928)

作詩 野口雨情
作曲 中山晋平

磯の鵜の鳥ゃ 日暮れにゃかえる
波浮の港にゃ 夕焼け小焼け
あすの日和は
ヤレホンニサ なぎるやら

船もせかれりゃ 出船の仕度
島の娘たちゃ 御神火ぐらし
なじょな心で
ヤレホンニサ いるのやら

島で暮らそうにゃ とぼしゅうでならぬ
伊豆の伊東とは 郵便だより
下田港とは
ヤレホンニサ 風だより

風は潮風 御神火おろし
島の娘たちゃ 出船のときにゃ
船のともづな
ヤレホンニサ 泣いて解く

磯の鵜の鳥ゃ 沖から磯へ
泣いて送らにゃ 出船もにぶる
明日も日和で
ヤレホンニサ なぎるやら 

さすらひの唄 佐藤千夜子

北原白秋:作詞、中山晋平:作曲。昭和九年。奈良光枝さんもカヴァーしていた名歌。トルストイの「贖罪」を戯曲化した「生ける屍」の劇中歌。

東京行進曲 佐藤千夜子

西條八十:作詞、中山晋平:作曲。昭和四年。晋平&千夜子コンビの最大のヒットの一つ。モボモガの時代を彷彿とさせる歌です。銀座の柳は今もありますね^^

天竜下れば

市丸(1969年)  去年の元旦にも取り上げた市丸さんの「天竜下れば」。これは中山晋平作曲の新民謡。

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2009年1月 1日 (木)

奈良光枝の名唱再び

明けましておめでとうございます。本年も宜しくお願い致します。
東方教会を巡っていましたが、正月ですので、去年と同様に和物で行ってみたいと思います。去年の夏以来緊張と興奮の連続でしたので、ちょっと一息といった所(笑)  去年の正月も取り上げた往年の歌姫・奈良光枝さんのビデオですが、一度削除されていましたが、また復活していましたので、名唱再びと言うことで元旦の今日取り上げます。戦後間もない混乱の時代に愛唱された彼女の歌には、今の日本(の歌)が忘れてしまった何かが詰まっているように思います。

なお、2日と3日はブログをお休み致します。

悲しき竹笛

これは昭和21年に大ヒットした奈良光枝さんの出世作。古賀政男作曲。この録音は昭和40年代だろうと思いますが、若い頃よりも熟成された薫り高い名唱だと思います。音頭風ながら物憂く気だるいリズムに、ルバート気味に乗る歌唱が最高。テーマが被る現代の映画(五番館夕霧楼との意見あり)をあわせているようです。

影を慕いて(1949)

1949年製作映画「影を慕いて」からの抜粋。上原謙(加山雄三の父)の指揮で次々登場する名歌手の中に、昭和24年当時の奈良さんが「悲しき竹笛」で登場。全て古賀政男の曲で、歌手は伊藤久男、二葉あき子、藤山一郎、奈良光枝、近江俊郎、霧島昇の順。

青い山脈

この名歌は、藤山一郎&奈良光枝のコンビがオリジナルでした。奈良さんの1969年の独唱版。

シクラメン咲けど  奈良光枝

作曲者・古賀政男のギター伴奏でしっとり歌われた「シクラメン咲けど」。これも良い歌です。

秋草の歌

1954年に三越ホームソングとして放送された歌。作詩 西条八十、作曲 古関裕而。

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