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2009年3月

2009年3月31日 (火)

ユダヤ人音楽家によるアンダルス音楽

数日前に書いたように、西洋クラシックだけでなく、古典的なアラブ音楽においてもユダヤ人音楽家が活躍していました。今日はその映像を。いずれもアンダルス音楽関連。演奏家を見ると、ユダヤ教徒の祈祷帽キパを被った奏者がほとんど。
個人的には、中世のアンダルス音楽自体にユダヤ文化がどう関わったかが興味の焦点です。何か分かったら、またアップする予定です。

מוסיקה אנדלוסית - תושיא שמעי


アンダルス音楽のトゥシア・サマーイ。

מוזיקה אנדלוסית - ידיד נפש


アンダルス音楽スタイルによるユダヤ教の安息日(シャバト)の祈祷歌イェディッド・ネフェシュ。イェディッドは「愛する方」、ネフェシュは「魂の」の意味。音楽は全く異なりますが、同じ詩が東欧系ユダヤ人の間でも歌われています。この若手歌手の映像は、大分前に一度アップしたことがありました。アルジェリアのグループのようです。

Salim Halali - Mahani Ezzine

アルジェリアのユダヤ人歌手、サリム・ハラリの活動を紹介するビデオ。倒産してしまった仏Club du Disque Arabe(AAA)から、何枚もCDが出ていました。早い時期にスパニッシュなどの外国の音楽の要素を巧みに取り入れたのも、音楽的かつ宗教的束縛から比較的自由なユダヤ人だったからでは。名前のサリムは、おそらくヘブライ語のシャロームと同語根でしょう。ヘブライ語と兄弟言語のアラビア語のサラームも同じ意味です。

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2009年3月30日 (月)

テトゥアン、フェズ、タンジールのナウバ

土曜の探検ロマン・世界遺産で出てきたアンダルス楽団の演奏、大体こんな感じだったという映像を見つけました。番組は昨夜再放送されていましたので、見られた方も増えたのでは。昨日の2本目はもっとアトラス山脈に近い町、フェズの楽団でしたが、テトゥアンはタンジールなどに近い北部の町で、ジブラルタル海峡も間近。(モロッコの地図) ラストのマカームによるナウバの一部のようです。2本目はフェズのアンダルス楽団の若き独唱者のようです。まだまだ表現が硬いように思いますが、頑張って欲しいものですね。3本目はタンジールのアンダルス楽団。独唱のMohammed Arabi-Serghiniは、Pneumaの録音でパニアグワと共演していました。歌、器楽共に、今日の中では一番演奏が素晴らしいと思います。youtubeは最近HQのボタン表示があるビデオは、そこを押すと高画質で見られるようになっています。

Orchestra of Tetouan

MENA Music presents Orchestra of Tetouan. Recorded in November 2008 in a lovely old house near Tetouan, the Orchestra of Tetouan, led by Mehdi Chaachooa, performs songs from Nawbat Rasd. www.menamusic.org

Marouane Hajji sings Samaa

MENA Music presents the 22-year-old Moroccan vocal virtuoso Marouane Hajji. Recorded in a Riad deep in the old Medina of Fes in November 2008, he sings Sufi songs a-cappella. www.menamusic.org

Orchestra of Tangier

MENA Music presented the Orchestra of Tangier. Led by the legendary master Ahmed Zaitouni, the orchestra performs the last part of Nawbat Ouchchaq, featuring the vocalist Mohammed Arabi-Serghini, in New York in September 2007. www.menamusic.org

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2009年3月29日 (日)

アラブ・アンダルースの楽団

今日はアラブ・アンダルシア音楽(ナウバまたはヌーバ)の楽団の演奏を少し見てみます。アルジェリアのライヴTVでは、昨今大人気の往年のシャアビの歌手Dahmane El Harrachiやらアンダルシア音楽やら、興味深い映像が色々出てきますが、モロッコのTVでは今日のような楽団の映像を見た記憶があります。アルジェリア東部のコンスタンティヌの場合、伝承されているアンダルシア音楽はセビリア系になるようですが、モロッコの場合はアンダルシアのどの辺りになるのでしょうか。その音楽と詩内容の深さ、清々しさからは、どうしてもアルハンブラのあるグラナダ辺りをイメージしてしまいますが。そんなイメージにマッチするように、モロッコの場合、白い装束と赤い帽子がとても鮮烈で特徴的。
余談:カマンの構えは常に立ててですが、よく見ると中にはヴィオラもありそうです。ヴァイオリン、ヴィオラ共にカマンと言うのでしょうか。昨日のTVでは更にチェロも楽団の中に発見。これも西洋式の弾き方とはかなり違っていました。(個人的にどうしても擦弦楽器に目が行ってしまいます(^^;)

Amina Alaoui - Ana dini din allah

来日歴とキングに録音もあるアミナ・アラウィの独唱。

Orchestra Otmani of Fes

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2009年3月28日 (土)

アラブ・アンダルス~セファルディーの歌

今日は夜の8時前後にNH<で、ユーミンがスペインとモロッコを旅する番組をやっていました。アンダルシア音楽はCDなどで色々聞いてきましたが、生演奏で見るアラブ・アンダルシア(アル・アンダルス)音楽の楽団の演奏は、とても素晴らしいものでした。特に独唱者の節回しが中心で訳詩もあったのが良かったと思います。アルジェリアのライヴTV等で日本にいながらヌーバの長尺の曲を試聴することも可能ですが、映像は非常に悪いので、今日の放送はとても喜ばしいものでした。料理(超簡単なロシアのシチとフランスのポトフの合の子?)しながらだったもので、ちゃんと見れなかったのが残念ですが (^^;
当ブログでは今月初旬からスカルラッティの音楽でスペインに来ていましたので、ここら辺でマグレブの方からアラブ音楽に飛んでみたいと思います。今日のビデオはフランソワーズ・アトランの歌うスペイン系ユダヤ人(セファルディー)の民謡など。一昔前までかも知れませんが、西洋音楽にユダヤ人音楽家が多いのはよく知られています(先日のブダペストSQの4人もロシア系ユダヤ人)。しかし西洋だけでなく、アラブ音楽においてもかなり活躍していたようです。レコンキスタでイベリア半島からムスリムとユダヤ人が追放されて500年余り。マグレブ諸国ではアンダルシア音楽が、セファルディーが離散したマグレブや旧オスマン帝国ではセファルディーの民謡が、長い時を越えて伝承されてきていました。今日のTVでは前者が紹介されていましたが、今日の一本目は後者のもの。中世スペイン以来のユダヤ・スペイン語(ラディノ語)で歌われています。アルハンブラの全盛の頃までは、スペインではTres Culturas(ユダヤ、クリスチャン、ムスリム)が、比較的平和に隣り合って暮らしていました。セファルディーの歌のバックも、アンダルシア音楽色の強い編成です。
☆音源情報 = セファルディー アラブ・アンダルシア Pneuma

アンダルスの語源ですが、ローマ帝国末期にヨーロッパ中央部に侵入し、北アフリカのカルタゴを中心にヴァンダル王国を建国したゲルマン人の一派ヴァンダル人(アラビア語ではアル・アンダリーシュ)の名前が訛って変化したものと考えられています。

Sephardic Jewish Arabic Moroccan Gitano Flamenco song & dance Al-Andalus

The first song is Nani Nani a jewish sephardic lullaby, and the second song is Tsour Michela both sung by Francoise Atlan. The other songs is a form of Gharnati music, mixed with jewish, arabic and gitano music and flamenco dance. I have no information on the rest of the songs and artists, but if you do please contact me. The lady singing 06:25 is Bahaa Ronda.

luis delgado, the musical dream of al-Andalus

スペインのレーベルPneumaのアンダルス音楽関連でお馴染みの面々が続々登場。

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2009年3月27日 (金)

ギターによるスカルラッティ+G.グールド

先日レオ・ブローウェルの演奏でアップしたように、スカルラッティの鍵盤音楽は、そのスペインらしさからでしょう、何とも言えずギターにピッタリ。ギターのために書かれたのではと錯覚するような時もあります。youtubeを探してみた所、カスタネットと共演しているものも見つかりました(一本目)。youtubeへの出品は06年ですから、例のブダからのFlamenco Baroccoに先立ってこのスタイルで演奏していたのでは。
J.S.バッハのゴールドベルク変奏曲で50年代にセンセーションを巻き起こしたピアノの鬼才グレン・グールド(1932-82)も、そう言えば時々スカルラッティを入れていました。グールドと言えば、対位法音楽のイメージが強いので、スカルラッティの音源があったことをすぐに思い出さなかったです(^^; 彼にしてはかなりオーソドックスな演奏だと思いますが、クリアな音の粒の立ち方と音色から、グールドだ!とすぐに分かります。

Scarlatti: Sonata in A major (K322/L483)

Performed by Eliot Fisk.

Domenico Scarlatti - Sonata K178 transcribed for guitar

これはギターでの装飾の入れ方がリアルに分かる素晴らしい演奏。レオ・ブローウェルの編曲版のようです。

Glenn Gould - Scarlatti sonata in D minor "Pastorale"

鬼才グレン・グールドによるK. 9 (L. 413) のソナタ。「田園」と言う表題で昔から日本でも親しまれてきました。

Glenn Gould - Scarlatti sonata in D major "Tempo di ballo"

こちらはK. 430 (L.463)。表題は「踊りのテンポ」という意味でしょうか。

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2009年3月26日 (木)

再びフラメンコ・バロッコ

ベートーヴェンの重厚な後期SQ作品が続きましたので、気分を変えてカラッとしたスカルラッティに戻ります。9日にアップした「フラメンコ・バロッコ~D.スカルラッティとフラメンコ」(仏Buda)の一曲目のスカルラッティの曲が分かりました。このアルバムは原曲のK.やL.の番号がないのが残念。もう一度ブダ盤を聞いて気が付きましたが、前にアルゲリッチの演奏でアップしたK.141のソナタでした。この曲は本当にフラメンコのパルマ(手拍子)が似合う曲です。6連譜の同音連打の所は、ピアノでは3本?使っているのに対し、チェンバロでは1本で叩くようです。同アルバムには、例のスコット・ロスが555曲中一番と語った曲も入っています。これはフラメンコとは関係がないようなので、このアルバムに入ってるのが少し不思議にも思えます。エイズのため38歳という若さで夭逝したカリスマ・チェンバリスト、スコット・ロスの愛奏曲として、特別に有名だからでしょうか?^^

Aline d'Ambricourt plays Domenico Scarlatti Sonate K.141

Aline d'Ambricourt plays the sonata K.141 of Domenico Scarlatti on the harpsichord Taskin (1787 - Museum of Art, Hamburg) in the musical documentary film "Domenico Scarlatti l'Intemporel" produced by Aline d'Ambricourt.' DVD in sale on www.clavecin.com

martha argerich - scarlatti, sonata k. 141

もう一度アルゲリッチの演奏をアップしておきます。この人の演奏がいかにテンポが速いかがよく分かると思います。

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2009年3月25日 (水)

カヴァティーナの実演

昨日はベートーヴェン後期弦楽四重奏曲シリーズを一まず終わりにします、と書きましたが、昨日イメージ映像でアップした絶美のカヴァティーナの実演が見つかりましたので、せっかくの機会ですからアップしておきます。13という数字からでしょうか(クリスチャンではないので、13という数字を不吉がることもなかったのですが)、余りちゃんと聞かずに来ましたが、深遠極まりない14番よりも分かりやすく、15番以上に美しさが心に沁み亘る曲だというのがよく分かりました。大フーガの代わりに書かれた6楽章も含め、5楽章以外も比較的小粒ながら素晴らしい曲の連続です。今日は見つかった他の楽章も併せて上げておきます。残念ながら6楽章だけ見当たりませんでした。アリアのようにカヴァティーナだけ聞くのではなく、全楽章聞いてこそ5楽章が際立つと思います。

The Fry Street Quartet - Beethoven: String Quartet in B-flat Major, Op. 130, Cavatina

ベートーヴェンのSQ全曲を吹き込んでいるフライ・ストリート・カルテットによる13番の第5楽章カヴァティーナ。至純の響きに心が洗われるようです。

The American String Quartet - Beethoven String Quartet, op. 130 Cavatina

カルテットのプロフィールは調べてみないと分かりませんが、こちらもなかなか良いです。1stヴァイオリンの前に乗り出して語りかけるような演奏が特に良いです。^^

Beethoven Quartet Op 130 1st movt part 1 (Budapest Qt 1960)

ブダペストSQによる第一楽章。この楽章の緩やかな序奏からして非常に印象的です。

Beethoven String Quartet no.13 op.130 2nd movement

同曲第2楽章。カルテット名は不明ですが。小粒ながら味わい深いスケルツォ楽章。

Beethoven String Quartet no.13 op.130 3rd movement

同曲第3楽章。カルテット名は不明ですが。

Beethoven String Quartet no.13 op.130 4th movement

同曲第4楽章。素朴な旋律によるドイツ舞曲のレントラー。どこか懐かしげな響き。

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2009年3月24日 (火)

カヴァティーナと大フーガ

ベートーヴェンの後期弦楽四重奏もシリーズになりましたが、一応今日までにしたいと思います。最後は13番の弦楽四重奏曲の第5楽章カヴァティーナと、当初第6楽章として作曲された大フーガ。13番は大規模な曲の多い後期のSQ作品の中にあって、比較的小さな規模の6楽章という変則的な構成。その幻想的とも言える音楽は、作曲者の嘆きを映す色調を帯びていますが、そのような弱さを超克すべく6楽章に大フーガが作曲されました。しかし演奏者からの拒否に会い、大フーガは単独の作品として発表されることになりました。余りの演奏困難さ、晦渋さが原因のようです。現在の第6楽章は、後に作曲された最晩年の作品。

Beethoven Quartet no.13 op.130 mov.5 cavatina

大フーガの直前に置かれた第5楽章のカヴァティーナ。この筆舌に尽くせない美しい音楽については、以下の文章を引用させて頂きました。
「晩年の堪え難い寂寥感を映し出した悲しい音楽で、ベートーヴェン自身もこの作曲は涙とともに行い、出来ばえには至極満足であったという。充実した響きの上に、無上の美しい旋律が歌われる。」(ブダペストSQの全集の大木正興氏の解説) 
葬儀にはこの曲を(第5楽章「カヴァティナ」)   とやかく申すまでもなく、13番での本命は第5楽章「カヴァティナ」です。最終部で啜り泣く一期一会の旋律。・・・今まで数多くの人が、この楽章が奏される中、黄泉路へ旅だってゆきました。(mixiのSQ13番のコミュニティより)

Beethoven/Alkan: Cavatina

ピアノの難曲を沢山書いたことで知られるロマン派の作曲家アルカンによるカヴァティーナの編曲版。

Beethoven GREAT FUGUE op. 133 Leipzig String Quartet

数ある大フーガのクリップの中から、ライプツィヒSQの演奏で。前半のみで残念ですが。この曲の峻厳極まりない「音楽の追求」は、結果的に現代音楽への流れを準備していた所があるようで、例えばアルディッティSQがGramavisionからの89年のアルバムArdittiで、ナンカロウやクセナキスの前に大フーガを入れていました。

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2009年3月23日 (月)

SQによる歓喜の合唱

ベートーヴェンの後期カルテット、あと二日程続けたいと思います。今日は弦楽四重奏曲第15番 作品132の第3楽章。mixiには「人類史上最高傑作だ! 」というコミュニティがあったりもします。老いと孤独をひしひしと感じていたベートーヴェンが、病を克服した時の喜びを音楽にした一曲。感じ方は人それぞれだと思いますが、この楽章のしみじみした美しさには昔大変に感銘を受けました。
今日もブダペスト弦楽四重奏団の演奏です。彼らの後にジュリアードやスメタナ、ラサールなど、優れたカルテットが沢山出現していますので、オールドスタイルになっている部分はあるようですが、私はブダペストの大らかで温かい音色が一番だと今でも思います。ノスタルジーを醸し出すようなyoutubeのビデオがなかなか良いです。(以下の曲目解説は上記mixiコミュニティーより)

1.主部(第1主題):
モルト・アダージョ Molt adagio リーディア調(ヘ長調)
"Heiliger Dankgesang eines Genesenen an die Gottheit, in der lydischen Tonart"
「病から回復したある一人の者が神に捧げるリーディア調の聖なる感謝の歌」

2. 中間部(第2主題):
アンダンテ Andante ニ長調
"Neue Kraft fuehlend" 「新たな力を感じつつ」

3. 第1再現部(第1変奏):Molt Adagio リーディア調(ヘ長調)

4. 第2中間部:Andante ニ長調

5. 第2再現部(第2変奏、終止部):
モルト・アダージョ Molt adagio リーディア調(ヘ長調)
"Mit innigster Empfindung" 「衷心から感情をこめて」

Beethoven Quartet op 132 3rd movt - Budapest Qt (1/2)

Beethoven Quartet op 132 3rd movt - Budapest Qt (2/2)

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2009年3月22日 (日)

ゴダール映画に使われた最後のSQ

昨日はベートーヴェンの14番(Op.131)のカルテットが全ての彼の最後の作品と書きましたが、間違っていました。16番(Op.135)が最後でした。完成された順番で言えば、SQの番号やオーパス№(作品番号)とずれていて、15、13、14、16の順のようです。16番のカルテットより後のベートーヴェンの完成された作品はありません。深遠極まりない変則的な構成の3曲と大フーガ(当初13番の終楽章として書かれた晦渋極まりない曲)の後に、オーソドックスな4楽章で書かれた曲で、こちらは対照的なまでに素直な曲想。しかしその普通さの裏側を見るべきなのでしょうか。後期のSQ曲は難解さの割りに、すっと聞き手の心に飛び込んでくるところがありますが、16番は逆に難解かも知れません。
昨日書いたように、この16番はゴダールの80年代の映画「カルメンという名の女」に使われていました。2楽章のスケルツォ的なヴィーヴァーチェが、特に強烈な効果を出していました(見たのは20年以上前ですので詳細を思い出せませんが)。
今日は16番を全楽章アップしました。現代最高の弦楽四重奏団の一つと言われる、ハーゲン・カルテット(ドイツ・グラモフォンから全集が出ていて発注も可)の演奏です。2楽章は凄まじいテンポで演奏しています。

Beethoven: String Quartet, Op.135 (Part 1)

Beethoven: String Quartet, Op.135 (Part 2)

Beethoven: String Quartet, Op.135 (Part 3)

Beethoven: String Quartet, Op.135 (Part 4)

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2009年3月21日 (土)

高貴な後期SQ

ベートーヴェンの弦楽四重奏曲は、クラシック中のクラシックと言えると思います。だからZeAmiブログで取り上げるのは、意外に思われる方もいらっしゃるかも知れません。クラシックなら古楽か現代というイメージで見られ勝ちですが、間の古典・ロマン・民族楽派・近代もしっかり聞いてきました。文字通り、グレゴリオ聖歌からジョン・ケージまで。その中で、これまでに取り上げたJ.S.バッハの無伴奏作品や、後期のベートーヴェン、中でも弦楽四重奏やピアノ・ソナタの普遍的価値は、世界の音楽の中においても燦然と輝いていると思います。20年ほどクラシックを余り聞かなかったとは言え、これらの作品への尊敬の念は薄れたことはありません。最初に聞いた後期SQは、中では比較的ポピュラーな15番だったと思います。破格の楽章形式と3楽章の賛歌には深い感銘を覚えました。その後ブダペストSQ(メンバーは全てロシア系)の全集をよく聞いたものです。SQ曲16番はJ.L.ゴダールの「カルメンという名の女」に使われていましたし、ピアノ・ソナタはグレン・グールドの定番レパートリーになっていました。偉大で難解な作品群にも意外にそんなエピソードが散見されます。今日はそんな後期のSQから14番の1楽章と6楽章を。第9交響曲も荘厳ミサ曲も書き上げた後の、文字通り最晩年の作品の中の最後の曲です。

Beethoven Quartet op 131 1st movt - Budapest Quartet (1943)

ブダペスト弦楽四重奏団の演奏で14番の1楽章。この曲は全部で7楽章という変則的な構成。その幽玄かつ峻厳な美しさは喩えようがないです。管弦楽編曲版もあって、バーンスタインやミトロプーロスが入れていました。

Band of Brothers - Why we fight

映像はTVドラマ「Band of Brothers」。弦楽四重奏曲14番6楽章が使われています。出品者が音楽を合わせたようですが、何ともぴったりに思えます。

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2009年3月20日 (金)

ラズモフスキー3番の白眉

ここ数日トルコを離れ、フラメンコからスカルラッティに飛躍し、更にロココ的なクープランに飛びましたが、今日は更に飛んでベートーヴェンの弦楽四重奏曲。ヨーロッパのクラシックも、各国の古典音楽になりますが、と言うことは広義の民族音楽(古典音楽、宗教音楽、民謡・民俗音楽が3つの大きな柱)に入ってしまうことにもなると思います。当ブログでは、民族音楽~クラシック~各国の大衆音楽まで、境目のない遠近両用的複眼を志向したいと思っています。(どこかで聞いたフレーズですが(笑))
さてベートーヴェン中期の名作SQ曲、ラズモフスキー・シリーズの3番目の曲ですが、2楽章がやたらに印象的なのです。駐ウィーン・ロシア大使ラズモフスキー伯爵のために書かれたという3曲には、ロシア民謡が引用される箇所が数箇所あります。3番の2楽章はロシア民謡ではないようですが、独特な歌心が感じられます。チェロのピチカートは最後の審判に呼ばれる弔いの鐘に聞こえるという意見もあるようですが。私がTVで見たのはアマデウスSQが来日した時ですから、20年余り前だと思いますが、この2楽章に目が釘付けになりました。
そろそろ時間切れ間近ですので、取りあえず今日はアルバン・ベルク弦楽四重奏団(略してSQ)の名演の映像をどうぞ。

Beethoven - String Quartet op.59 no.3 - 2nd. movement

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2009年3月19日 (木)

クープラン関係 チェロ、ラヴェル・・

クープランは「神秘な障壁」以外にもクラヴサン名曲は多いのですが、youtubeの良いものは余り見当たらないようです。そんな中で見つけた素晴らしい映像をいくつか。クラヴサンの代表曲「パッサカリア」と「葦」、彼のチェロ・デュオ作品、モーリス・ラヴェルが書いたクープランへのオマージュ曲「クープランの墓」から。

Blandine Verlet plays François Couperin - Passacaille

往年?の女流名クラヴサン奏者、ブランディーヌ・ヴェルレの弾くパッサカリア。Astree等から音源があったと思います。

Alica de Larrocha plays Couperin Les Roseaux

スペインの名女流ピアニスト、アリシア・デ・ラローチャの弾く「葦」。この曲もチェンバロで聞きたかったものですが。

Suite a 2 Cellos de F. Couperin V. Je ne sais quoi

クープランの美しいチェロ二重奏曲。フランスのチェロ音楽の系譜の古さを物語っていると思います。

Monique Haas plays Ravel Le tombeau de couperin - 01 - Prélude

ボレロで有名なフランス近代の作曲家モーリス・ラヴェルの名作「クープランの墓」から1曲目のプレリュード。ラヴェルなどを得意にしていた往年の女流ピアニスト、モニク・アースの演奏。

Ravel Le Tombeau de Couperin - Orchestre National de la Radiodiffusion Française/Cluytens 1953, 1/2

ラヴェルの「クープランの墓」管弦楽編曲版からプレリュード他。アンドレ・クリュイタンス指揮フランス国立放送管弦楽団の演奏。往年のバレリーナ、イダ・ルービンシュタインの裸身の名画が出ていますが、イダはあの名曲「ボレロ」をラヴェルに作曲依頼した本人だからではと思います。「クープランの墓」とも何か関係あるのかは分かりませんが、さすがクリュイタンス、素晴らしい演奏です。バロックから飛躍して、世紀末&ベルエポックの香りが漂ってきます。ロシア出身(ユダヤ系)のバレリーナの彼女は、オスカー・ワイルドの『サロメ』の「7枚のベールの踊り」(リヒャルト・シュトラウス作曲)では一糸まとわぬ姿で踊り、センセーションを巻き起こしました。

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2009年3月18日 (水)

神秘な障壁

昨日のスコット・ロスの記事で名前が出ましたので、ちょっと寄り道してフランソワ・クープランのクラヴサン名曲「神秘な障壁」。「神秘的なバリケード」とか「神秘な防壁」とも言われています。1980年だったと思いますが、偶然FMで耳にして大変に魅了された一曲、というかバロック音楽とは思えない程のモダンさに衝撃を受けました。ベースラインは60年代頃のシャンソンやフレンチ・ポップスに受け継がれているようにも思います。掛け止めといわれる独特なシンコペーションの連続、クープラン特有の装飾技法など、この小曲には色々仕掛けがありますが、譜面自体何と美しいことでしょうか! この曲だけは弾きたいと思って、楽譜を手に入れ中間部以外は暗譜しましたが、ピアノは習ったことがないもので、中間部を乗り越えられないまま、早25年ということになっています(^^;  82年頃にはフランスの女流ピアニスト、アンヌ・ケフェレックのリサイタルでこの曲がアンコール演奏され、主な演目自体、J.S.バッハのパルティータ2番、ブラームスの間奏曲(確か)、ラヴェルの「夜のガスパール」と、偶然私の愛好曲の好演が続いた後だったので、更に強い感銘を受けました。
「神秘な障壁」は両手ともヘ音記号で書かれているので、低い音のみから出来ているわけですが、チェンバロ(フランス語でクラヴサン、英語でハープシコード)のストップの音色のためでしょうか、それ程低音に聞こえないです。80年に聞いた女流名手ユゲット・グレミー・ショーリャック(フランスのCharlin盤)の演奏は、ギターのようなストップの爽やかで軽やかな音色がとても印象的でした。この陰影とニュアンスに富んだ、流麗な演奏に勝る演奏は今まで聞いたことがありませんが、スコット・ロスの演奏(今日の一本目)は比較的近いようにも聞こえます。Ottavaのプレゼンターの一人、林田さんの「クラシック新定番 100人100曲」(アスキー新書)にも、クープランの一曲としてこの曲が取り上げられていました。(「ポップなまでに現代的で朗らかな表情を持ち、知らぬ間に意識を遠くへ連れ去ってくれる和声の精妙な展開のあるこの曲を好む人は多く、(中略)~心が不安や緊張に苛まれるような時には、私の場合神秘的なバリケードを聴くのが一番の特効薬である。本当にこの曲は、疲れた心に高い治癒能力を示すのだ。」(クラシック新定番からの引用)
この曲については、当ブログの最初の方で取り上げたかも知れませんが、今日上げる動画は初のはず。しかしこの曲、タイトル自体が神秘的。どういう深意があるのか、知りたくなりますが、そんな無粋な詮索をしないのが「フランスのエスプリ」なのでしょう^^

Couperin: Les barricades mystérieuses / Scott Ross

スコット・ロスの録音は、確かフランスのStilからクープランのクラヴサン曲全集がありました。そうです! 南インドのフルートの鬼才T.R.マハリンガムの音源が出ている、あのレーベルです(笑) 久しくクラシックから離れていたのでよく分かりませんが、他のレーベルからも彼の音源は出ているのでしょうか?

Marcelle Meyer plays Couperin Les barricades mystérieuses

往年の名女流ピアニスト、マルセル・メイエによる演奏。ショーリャックよりもテンポが速いかも。素晴らしく美しい演奏です。

François Couperin - Les Barricades Mystérieuses

François Couperin (1668-1733) Les Barricades Mystérieuses Francisco Ricardo - Cravo Lisboa, Dezembro de 2008 Cravo Neupert de dois manuais afinado a 415 Hz

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2009年3月17日 (火)

スコット・ロスのK.209とK.208

555曲のスカルラッティのソナタを全曲録音した唯一の演奏家、チェンバロの鬼才スコット・ロスは、「どれか一曲選べと言われたならば、K.208のソナタを選ぶ」と答えたそうです。これまで取り上げた曲のような、フラメンコを思い出させるようなリズムの躍動する曲でも、憂いに満ちた曲でもなく、明るい叙情性溢れる美しい一曲です。少し意外な気もしますが、長い探究の末に名手が語った言葉ですから、重いと思います。スコット・ロスはクープランも得意にしていましたが、優美さにおいてクープランのクラヴサン曲のような、ロココ的な美しさを感じさせる曲です。youtubeはスコット・ロスでは残念ながらなかったので、アンドレアス・スタイエルという人の演奏を上げておきますが、併せてスコット・ロスによる一番違いのK.209を上げておきます。

Domenico Scarlatti - Sonata K.208 in A Major

Domenico Scarlatti - Sonata K.208 in A Major.  Andreas Staier (Harpsichord).

Scarlatti K209

The great Scott Ross plays Scarlatti's sonate K209 in Le château de Maisons-Laffitte (1988). Harpsichord: David Ley

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2009年3月16日 (月)

ミケランジェリのスカルラッティ

スカルラッティ・シリーズも8日目になりました。今日はイタリアの名ピアニスト、アルトゥーロ・ベネデッティ・ミケランジェリの弾くK.27(L.449)他。一曲目はスカルラッティで検索して見た中で最も驚いた映像の一つです。ドイツ・グラモフォンからのドビュッシーなどは昔よく聞いたものですが、この演奏も実に素晴らしいです。淀みなく流れるように動く手指を見ていると、音楽に合わせて踊っているようにも見えます。上記ウィキペディアで読んで驚きましたが、彼はアッシジの聖フランチェスコの末裔らしいとか、あのアルフレッド・コルトーから「リストの再来」と賞賛されたとかのエピソードは初めて知りました。また、奏法の欄にあるように、鍵盤に手が張り付いて、ほとんど上に動かないスタイルは、フェルッチョ・ブゾーニ直系だそうです。そう言われるとシャコンヌのブゾーニ編曲版などもミケランジェリで聞いてみたくなったりもしますが、音源はあるのでしょうか。

Michelangeli - plays SCARLATTI - Sonata in B minor

Michelangeli plays Scarlatti - Sonata in A major

Michelangeli plays Scarlatti - Sonata in C major

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2009年3月15日 (日)

ホロヴィッツの名演 K.466

「今日のスカルラッティ」の7日目ですが、所用(諸々ZeAmi業務の他に地元弦楽ens.でチェロを弾いてきたりもしてまして)ですっかり遅くなってしまいましたので、例のホロヴィッツさんの極めつけの名演を一本上げておきます。3曲繋がって出てきますが、真ん中のK.466(L.118)が何と言っても白眉。例のソニーのアルバムに入っていたヘ短調の叙情的な曲です。快活かつ名人芸を聞かせる3拍子中心の曲の中にあって、異彩を放っていました。とにかく美しいです。Vladimir Horowitz performs Sonata in A Flat Major K 127, Sonata in F Minor K 466 and Sonata in F Minor K184 of Domenico Scarlatti. Recorded in 1982, London. 

Vladimir Horowitz - Domenico Scarlatti (1)

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2009年3月14日 (土)

ポゴレリッチのスカルラッティ

スカルラッティの6日目、今日はユーゴ出身のイーヴォ・ポゴレリッチ。この人もドイツ・グラモフォンにスカルラッティをよく吹き込んでいたなと思って見てみたら、案の定youtubeも結構出ていました。今日選んだのは数ヶ月前に偶然Ottavaで耳にした例の曲だったと思います。Ottavaなので演奏は他の人でレーベルもnaxosの音源ですが、数小節聞いた途端に、28年ほど前にホロヴィッツの演奏に魅了されていた記憶が、パッと蘇りました。
今回のソナタK450(L.338)は、これまでで初めて4分の4拍子の曲で、そのリズムとメロディはタンゴかマーチ風にも聞こえます。しかし3拍子、4拍子問わず、どれも一聴してはっきりスカルラッティと分かる個性が刻印されていると思います。古風なのに何処かモダンな響きを持ち、スペインの要素が見え隠れする、そんな魅力的なプチモンド(表現が古いかも(笑))が555曲もあると言うのは、やっぱり凄いことだと思ってしまいます。昨日のソナタはアルゲリッチの、今日のはポゴレリッチの十八番のようで、音源も見かけます。二人の個性が良く出た選曲のようにも思います。

ポゴレリッチのデビュー当時の以下のエピソードは非常に有名な話。(以下ウィキペディアのアルゲリッチの記事からの引用)

1980年の第10回ショパン国際コンクールの審査員であったアルゲリッチは、ユーゴスラヴィアからの参加者イーヴォ・ポゴレリチが本選に選ばれなかったことに猛烈に抗議して、審査員を辞退した。ポゴレリチのことを「彼は天才よ!」と言い残して帰国した件だけが取り上げられることが多いが、アルゲリッチは「審査席に座った事を恥じる」と述べ、「魂の無い機械がはじき出した点数だけで合否を決めてしまうのではなく、審査員間でも協議するべきだ」と発言した。

Pogorelich Plays Scarlatti

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2009年3月13日 (金)

アルゲリッチのスカルラッティ

スカルラッティの5日目、今日はアルゼンチンの名ピアニスト、マルタ・アルゲリッチの弾くK.141(L.422)。ギターのトレモロ奏法を思わせる6連譜の同音連打に目が釘付けになる曲です。手の交差も多く、アルゲリッチらしい華麗な名人芸を聞かせています。2本目は最近(2000年)の演奏。
この曲、今晩のような「春の嵐」を思わせる雨の夜にはぴったりかも。そういえば、昔は深夜の台風情報の合間によくバロック音楽が流れていました。最近はあの光景もすっかり見かけなくなりました。それに台風自体余り来ないですね^^  この曲も、またまた8分の3拍子で書かれています。

martha argerich - scarlatti, sonata k. 141

Scarlatti, Sonata in D minor Kk. 141 (excerpts) - Martha Argerich

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2009年3月12日 (木)

パルマスを髣髴とさせるK.33

スカルラッティの4日目、今日のK.33(L.424)のソナタは、フラメンコのパルマス(手拍子)がイメージできるような一曲。この曲もホロヴィッツのソニー盤に入っていた曲で、A面1曲目でした。やはり8分の3拍子で書かれていますが(所々4分の4が入ります)、4小節単位で上手くフレーズが切れるので、この曲もまたフラメンコの12拍子を彷彿とさせます。明朗快活にして優雅なスカルラッティの音楽ですが、裏に表に脈々と流れているスペインらしさを嗅ぎ取って聞くと、面白さ倍増だと思います。パルマスを思い出させる点では、一昨日のK.96(L.465)も同様です。今日は併せて12拍子を分かりやすくパルマスとフラメンコ・ギターでデモ演奏しているビデオも上げておきます。

Scott Ross plays Scarlatti Sonata in D major, K 33

チェンバロ、ピアノ両方で確かこの人だけだったと思いますが、唯一555曲のスカルラッティのソナタを全曲録音している鬼才スコット・ロスの演奏。音が悪いのと、遅め、かつテンポを揺らす演奏で好みは分かれそうですが。

Scarlatti - Sonata L. 424

デジタル・チェンバロの演奏? 機械的ですが、音はよく確認できます。

Understanding Flamenco - intro to flamenco guitar-clip 03-10

ソレアについての解説とデモ実演。

Flamenco Palmas 101

12拍の典型的リズムのパルマスの叩き方。パルマスに反応したか、犬が・・・(爆笑)。 可愛くて堪りません^^

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2009年3月11日 (水)

サパテアードを連想させるK. 146

スカルラッティの3日目、今日もホロヴィッツのスカルラッティ・ソナタ集(下の写真)に入っていた曲ですが、やはりホロヴィッツのyoutubeは残念ながらなしでした。8分の3拍子の急速な分散和音の走句による爽快感溢れる一曲。これもフラメンコのリズムやギター音楽の影響を感じさせます。小節2つか4つのサイクルに取って良さそうなフレージングに聞こえますが、前者ならハチロク、後者ならフラメンコなどスペインの舞踊に多い12拍子になります。5~6小節のタタタタタタ、タカタカタカタカタンというリズムなど、フラメンコのサパテアード(足のステップ)を連想してしまいます。

Horowitzscarlatti

なおホロヴィッツのソニー盤ですが、国内盤は現在入手困難になっているようです。定番ですから輸入盤は生きていると思いますが。また、余談になりますが表記について、ウラディミール・ホロヴィッツと書かれていることが多いように思いますが、ロシア語の発音に近く書けばウラディーミルになります。ディにアクセントが来ますので、そこが長母音になります。ウラディ(征服)・ミール(世界)の意味ですから、日本の名前に喩えるなら、征之か征世では^^  因みにウラジオストクを分解すると、ウラディ(征服)+ヴォストーク(東方)ですね。

Ryan Layne Whitney (Scarlatti: Sonata K. 146)

Scarlatti Sonata in G major K 146: Brouwer (7 of 12)

キューバの偉大な作曲家&ギタリスト、レオ・ブローウェルによる編曲自演。

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2009年3月10日 (火)

K.96(L.465)の場合

バロック時代の鍵盤音楽の鬼才ドメニコ・スカルラッティの音楽、二日目はスペインらしさを感じさせるソナタの一曲を。カークパトリック96番(またはロンゴ465番)のソナタですが、例のウラディーミル・ホロヴィッツのソニー盤に入っていた曲。ロンゴとカークパトリックは、一番通用しているスカルラッティのソナタの整理番号で、70年代頃はロンゴの方が広まっていたように思いますが、今はカークパトリックの方が標準になっているようです。
ところで何で突然スカルラッティが気になったかと言いますと、数ヶ月前クラシック専門ネットラジオのOttavaで偶然聞いたためでした。スカルラッティも、ここ20年ほど余り聞かなくなっていましたが、偶然に好きなソナタを耳にし、一気に昔懐かしい記憶が甦りました。やはり昔よく聞いていた室内楽や器楽がよくかかるので、オッターヴァは待ちの時にはRadio DarvishやLast FMと並んでよくかけ流していることの多い局です。今までのFMにはなかった選曲なのと、音質の素晴らしさが何より特筆ものだと思います。

K.96(L.465)のソナタは、猛烈な速さの8分の3拍子で、ギターのトレモロを模したような同音連打が出てくるのと、短音階になる部分はフラメンコの旋法を思わせるところがあります。フラメンコやファンダンゴには12拍子が目立ちますが、それは3×4になっている訳で、やはり3拍子系と言えると思います(こちらが参考になります)。この曲など聞いていると、自然とフラメンコが遠くにイメージできると思います。残念ながらホロヴィッツのビデオはなかったので、ハンガリーの名手シフラとイシャイ・シャエル(ユダヤ人では?)の演奏で。

Cziffra - Scarlatti Sonata K 96 in D major - La Chasse

Scarlatti: Sonata in D, K. 96 - Ishay Shaer

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2009年3月 9日 (月)

スカルラッティとフラメンコ

トルコ・シリーズの途中ですが、実は最近カタログやその他諸々の準備でビデオを吟味している時間や余裕が余りないので、突然ですが当ブログの母胎、ZeAmiの方で入っている特徴的な新譜のご紹介を一つ。スカルラッティ関係で数日関連ビデオを見る予定です。ロンゴ(あるいはカークパトリック)番号別に一日一曲なんて言うのも乙かと思っておりますが(笑) 以下のCD、出たのは07年ですから少し経っていますが、どんなもんかいな?と周りを嗅いでいる内に日数が経っていました(^^;  (以下母胎HPからのペースト)

Flamencobarocco
D.スカルラッティとフラメンコ~フラメンコ・バロッコ

Marc Loopuyt(G), Catherine Latzarus(Cembalo), Laura Clemente(Flamenco Dancer)

バロック時代にスペインで活躍したナポリ生まれの作曲家、ドメニコ・スカルラッティ(1685-1757)の500曲を越えるチェンバロ・ソナタは、現代になってもピアノでも盛んに弾かれ親しまれてきました。私もホロヴィッツやハスキルなどの演奏を長く愛聴した一人ですが、わずか5分前後の曲に盛り込まれたあらゆる斬新な技法と瑞々しい表現にはいつも驚かされます。そんなスカルラッティの鍵盤音楽を聞いていて気付くのが、スペインのファンダンゴなどの民族的なリズムの存在。ソナタ全体の何パーセントかには、明らかにそういうスパニッシュ・リズム(3拍子系)が躍動しています。一方フラメンコが成立したのは、18後半~19世紀前半と言われていますが、スカルラッティの音楽には既にその雛形のリズムが聞き取れると思います。当アルバムは、チェンバロと当時のオリジナル復元ギター(古雅な響きのフラメンコ・ギターです)、フラメンコ・ダンサーによるカスタネットとパルマ(手拍子)による演奏。ギターのMarc Loopuytはウード奏者として仏Budaからのアラブ・アンダルシア音楽等の数枚のアルバムでお馴染みの演奏家でしょう。現在はアゼルバイジャンに住みムガーム音楽に関わっているそうで、仏BudaからCDも出ていました。スカルラッティの鍵盤曲と、彼が耳にしたであろうスペインのリズムを合わせることで、その繋がりを探ろうと言う刺激的な試みの演奏です。

Horowitz - Scarlatti Sonata L23

ウラディーミル・ホロヴィッツの名演(1986年@モスクワ)を一本アップしておきます。ロンゴ23番のソナタです。ファンダンゴではないですが、かすかにスペインらしさも感じられるはず。上記の文中で書いているような、明確にファンダンゴ的なビデオを見つけたら後日アップする予定です。

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2009年3月 8日 (日)

ポマクのペスネ

昨日はバルカン南部やトルコに住むブルガリア系少数民族ポマクについて見ました。キーワードをPomak+Turkと絞っていたので50件ほどでしたが、Pomakだけで検索してみたら150件ほどありました。そして民謡関係や民族の紹介に関するビデオも沢山見つかりました。今日はそれらの中から数本をご紹介。

pomak

ポマクについてのモノクロ映像集。バックの音楽はバルカン・ポマクの音楽では。2分の辺りに、例のKalan MuzikのポマクのCDジャケットが出てきます。

pomak people

ポマクの歴史や民族文化についてのよくまとまった紹介ビデオ。英語字幕が有難いです。

POMATSKİ PESNE - 2(POMAK TÜRKÜLERİ)

これはトルコ側ポマクのようです。サズ伴奏で歌われる歌は一聴トルコの歌ですが、言葉がスラヴ系というのは何とも不思議な気がします(笑) ペスネというのは、明らかにロシア語のペスニャ(歌)と同系統の語彙。

(Halil Cokyürekli) Pomak gaydasi, Kalenin dibinde bir tas ol

ガイダスィという、バグパイプのような名が付いていますが、ダブルリードの管楽器。これはトルコのポマクの演奏家でしょうか。それともポマクの楽器を使って演奏しているだけなのでしょうか。

krayat na pesenta chast 1

ブルガリアのポマクが出てくる映画、のワンシーンのようです。所謂ブルガリアン・ヴォイスでも知られていたと思いますが、ロドピ地方にはポマクが多いようです。

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2009年3月 7日 (土)

トルコのブルガリア人とブルガリアのトルコ人

10年ほど前にトルコの名門レーベルKalan MuzikからPomakのCDが出ていました。トルコに住むブルガリア語を話す人々、ポマクの民謡などを収めた一枚で、トルコにありながらキリル文字を用いる民族の存在に驚いたものです。しかしポマクとは、バルカン半島全域がオスマン帝国支配下だった頃に、キリスト教からイスラム教に改宗したブルガリア人の子孫のことで、広く知られているのはブルガリアに住むムスリムのポマクのようです。ウィキペディアによると、ポマクの名前はポムチェーン помъчен(拷問された) あるいは ポマガーチ помагач(占領者への協力者)に由来しているとのこと。ポマガーチという単語はロシア語と同じですから聞き覚えがありました。ロシア語なら「ガ」にアクセントが来るので、パマガーチとした方が近そうですが。

トルコのポマクのデータはないかなとざっと探してみましたが、やはりトルコ側は12万人程度の少数派ですから、ブルガリア側の映像がほとんどのようです。今日は取りあえず導入で2本上げておいて、何か興味深いことが分かったらまたアップしようかと思います。

POMAKS AND TURKS IN BULGARIA

ブルガリアのポマクとトルコ人についての映像のようです。歌はトラキア・ポップスでしょうか?

Новото РОБСТВО Chapter 2-Part 1-Turkish Politics in Bulgaria

ブルガリアにおけるトルコ人についてのドキュメンタリー。ポマクではなくトルコ人のようです。ブルガリアのTV映像ですので、言葉はブルガリア語。

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2009年3月 6日 (金)

ギュライをもう少し

数日前のニリュフェール・アクバルの時にhasugeさんから頂いたコメントによると、95年のアルバム『Miro』ではクルド語、ザザ語、アルメニア語、トルコ語の4つの言語の歌を歌っているようです。自身の出自であるザザやクルドだけでなく、系統の異なるアルメニア語まで入っているのには驚きです。東部のマイノリティの心をモダンな装いで表現するユニークな存在と言えそうです。
さて、では先日同時に取り上げた女性歌手ギュライの方はどうなのでしょうか。3本アップしてみましたが、どうもマイノリティ文化の要素はこの人には見えないようにも思います。しかしハルクらしからぬようにも思える洗練美には毎度魅了されます。

İstanbul Ağlıyor Gülay Klip

イスタンブールの美観が沢山の一本。サウンドも町の風景にピッタリの美しさ。

GÜLAY- Beyaz Giyme Toz Olur

Gülay - Unutursun Mihribanim

サズ群中心のバックでハルクを歌っていますが、やはり垢抜けた印象。

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2009年3月 5日 (木)

アタテュルク追悼の歌

昨日は往年の名アシュク、アシュク・ヴェイセル(1894-1973)にふれながら、彼の歌は十分に聞けてないので、今日は彼のビデオに行ってみたいと思います。その中で「アタテュルクの追悼」と題するビデオに激しく反応してしまいました(笑) 現在もトルコ国民から深い敬愛を受けるケマル・アタテュルク(1881-1938)は、近代トルコの国父とまで呼ばれる偉大な人物。一本目の最初の方に出てくるのは、オスマン軍楽のジェッディン・デデン等で、後半がヴェイセルの歌。トルコ共和国建国の父に対する尊敬と追慕の念を聞き取れるように思います。アタテュルクは、前にシャルクの時に触れたように、オスマン古典音楽を深く愛好するという文人政治家的な一面も持っていたようです。オスマン朝の頃からそういうスルタンも多かったとは言え、確かにモノクロの写真からでも見て取れるこの人の風格は、外国人から見ても只事ではないですね。

ATATURK-Asik Veysel den agit

Aşık Veysel - Atatürk'e Ağıt

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2009年3月 4日 (水)

アシュク・ヴェイセルの曲をギターで

トルコ音楽に戻ります。偶然見つけたビデオですが、数日前に名前が出てきた盲目の吟遊詩人アシュク・ヴェイセル(1894-1973)の曲を、ギターで演奏しているもの。トルコの微分音というのは、ビブラートをかける位の音程差(あるいはそれより狭いかも)が多いと思いますので、大体はギターでも行けるかも知れません。(トルコ音楽にはビブラートと言う概念はあるのでしょうか?) この美人ギタリストの演奏を見ていると、サズに似た音を引き出そうと工夫しているのが覗えます。チョーキングのような奏法も取り入れ上手く表現しています。

yagmur siva-kara toprak by asik veysel-turkish folk music

Yagmur Siva plays "Kara Toprak - Black Earth" by Asik Veysel Satiroglu at Fiuggi 2008

Kara Toprak - Aşık Veysel ve Ricardo Moyano

この曲をアレンジしたリカルド・モヤーノ本人による演奏。おー、これは素晴らしいですね。微分音はヤームール・スィヴァの方が上手く処理しているように思いますが。しかし、どういう経緯でスペインのギタリストがトルコのアシュクに出会ったかに興味が沸いてきます。

Asik Veysel
アシュク・ヴェイセルの歌とサズ。トルコの上の3本と同じ、カラ・トプラク(黒い大地)を演奏しているようです。

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2009年3月 3日 (火)

うれしいひなまつり~シェヘラザード

今日は真冬に逆戻りしたような一日になりました。伊予でも最高気温が6度! 東京の方では雪が積もりそうだとか。寒い寒い桃の節句は、トルコ・シリーズを一日お休みして、今日にふさわしい一曲を。正月だけでなく、今日も日本のメロディで行きたいものです^^
童謡作曲家・河村光陽が昭和11年に書いた「うれしいひなまつり」は、娘の河村順子さんの歌唱で有名になりましたが、この歌ではやはり彼女の歌声が一番だと思います。今はほとんど廃れてしまったかのように思える、美しい日本語(発音や抑揚も含め)と情緒が息づいているなぁと思います。この録音を含むコロムビアから出た童謡復刻シリーズはとにかく最高で、「月の沙漠」なども極め付きの歌唱ばかりでした。残念ながら往年の童謡歌手達のyoutubeは見当たらないようですが。

千芽々の篠笛日記~うれしいひなまつり~

篠笛による演奏。細かい節回しが良いですね。序奏、後奏つき

うれしいひなまつり

月の砂漠

併せてケーナによる「月の沙漠」。こういう哀切な曲には、素朴な管楽器がピッタリですね。砂漠となっていますが、正しくは沙漠です。映像に出てくる御宿海岸のこの歌の記念碑には、80年代にオーケストラの合宿で行ったことがあります。(南房総は、サーフィンだけでなく面白いスポットが多いので、お薦めです!)大昔に子供向けSFドラマ?のエスパーで、少年が月面で歌っていたのを、もの凄く懐かしく思い出します(*´ー`)

また93年にイランの楽士が来た時には(キングのWRMLに入っているセイエド・アリ・ハーンのグループだったと思います)、アンコールで「月の沙漠」を演奏していました。イラン協会の方(オールド世代?)がリクエストしたのでは^^ 確かにアラビアン・ナイトを思わせる歌ですから、イメージ的にはピッタリだったと思います。若い王子と王女という設定では、リムスキー=コルサコフのシェヘラザードの3楽章(今日の3本目)ともイメージがダブります。こちらは哀切ではなく、どこまでも美しくロマンティック。中間部にはイランのレングのリズムが出てきます。

Rimsky Korsakov Scheherazade OSMC 3rd Mvt

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2009年3月 2日 (月)

東トルコ ザザ人歌手のクルドの歌

昨日の記事にhasugeさんから貴重なコメントを頂きました。(本当にいつも有難うございます。m(_ _)m) 以下に部分転載し、新たに関連のビデオを上げてみました。
ギュライは1970年にイスタンブルで生まれ、ニリュフェール・アクバルは1967年に東トルコ生まれ。ニリュフェール・アクバルの民族的出自はザザ人で、おまけにアレヴィーだそうです。トルコ語の歌だけでなく、クルド語やザザ語の歌も歌っていて、昨日の2番目のビデオは、Arixという題名のクルド語の歌で、1939年のエルズィンジャン地震で75人の犠牲者を出したこの名前の村を歌ったものらしいとのこと。
今日の一本目は、そのArixのスタジオ録音ヴァージョン。諦念に彩られたような、もの哀しい歌声と言う印象は、間違いではなかったようです。その諦念や哀感が洗練美に結び付いているところが、彼女の歌のユニークな点では。10年ほど前にアルバム(すぐにタイトルが出てきませんがf^^;)を一聴し、忘れられない印象を残したトルコの歌手の一人です。

Nilufer akbalnilüfer akbal Arix

Nilüfer Akbal - yar

こちらは映像からして、荒涼とした印象。例えばベルクス・アッカレは、こういう歌は歌わないでしょうね^^

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2009年3月 1日 (日)

ニリュフェール・アクバルとギュライ

今日は、トルコの民謡をベースにしたハルクを歌う女性歌手を二人。ニリュフェール・アクバルとギュライを2本ずつ。二人はザラより少し上、ハシュハシュよりは少し下の世代位でしょうか。二人に共通するのは、民謡系なのに泥臭さは余り感じられず、しっとりとした洗練美があるところでは、と思います。それがベルクス・アッカレなどとの大きな違いでしょうか。アッカレは洗練と言うよりも、トルコのディープ・ソウルを感じさせます。3人ともターキッシュ・ビューティーなのは同じですが、一方は物憂げな哀感を帯びた歌声、一方は逞しいアナトリアの歌声、と個性がまるで違うように思います。日本でも、物憂げな歌の多い地方と陽気で逞しい歌の多い地方(南の方)など、相当な地域差がありますが、トルコの場合もそういう違いはありなのでしょうか? 

Nilüfer AKBAL 2007

Bin Yılın Türküsü - Nilüfer Akbal (Arıx)

ニリュフェール・アクバルが、サズ弾き語りを聞かせている珍しい一本。

gülay hastane önü incir ağacı

GÜLAY-Sen gelmez oldun-Klip(埋め込み禁止)

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