« 2009年4月 | トップページ | 2009年6月 »

2009年5月

2009年5月31日 (日)

アラブのヴァイオリン Simon Shaheen他

アラブのヴァイオリン、素晴らしいビデオがまだまだありますので、今日は有名どころを。シモン・シャヘーンは、パレスティナ屈指のウードとヴァイオリンの名手で、90年代にドイツのCMPやアメリカのAxiomなどからCDも出ていましたが、現在は手に入り難いタイトルが多くなっています。youtubeは結構あって、前にウードの演奏はアップしたことがありました。このビデオは04年の演奏のようですが、彼の最近の録音は見かけないように思います。

Simon Shaheen and the Near Eastern Music Ensamble

主題に戻った所がちょうど拍手で聞こえませんが、ウム・カルスームの歌も沢山書いたエジプトの作曲家、リアド・アル・スンバティ作曲の有名なロンガ・ナハーヴァンドによる演奏。前半はヴァイオリンのタクシーム。元弓にアップで来た時にさっと返す指弓の技が入っている所を見ると、もしかしたら西洋の奏法も習得したのかも。フレージング全般に下の若手などに比べると、西洋的な要素も感じます。Part of a concert by Simon Shaheen and his Music Ensamble at McDaniel College, March 31, 2004

tahboub playing arabic violin

昨日もアップした人の演奏ですが、いやぁこの人は上手い。西洋的な所の「かけら」も見当たらないです。しかし、何でこんなに歩き回るのでしょうか(笑) Mohammed Tahboub, improvisation on the violin.. (arabic violin)  worth watching! He says he doesn't really know how to improvise, but i thnk he's a liar :)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年5月30日 (土)

アラブのヴァイオリン

ヴァイオリンほど世界中で使われている楽器はないと思われます。その適応力の高さは、ギターやピアノの比ではないでしょう。フレットや鍵盤がないことが、ペルシアやアラブの音楽特有の、平均律にない微分音の演奏を可能にすること、名人芸を思うままに表現しやすいこと、歌を模したデリケートなメリスマの表現に向いていることなどが、理由として上げられると思います。
この楽器の起源ははっきり分かっていませんが、はっきり言えるのは、そのルーツは西洋ではなく、アラブの、しかもベドウィン(アラビア遊牧民)の弓奏楽器ラバーバにあるという見方が強いようです。中世までは北西ヨーロッパはまだ北の片田舎で、当時の先進地域であるアラブの文化がまず流入したルネサンス以降のイタリアから、西洋におけるヴァイオリンの歴史が始まっているのも、非常に興味深いポイントです。
西洋式、ペルシア式を見ましたので、今日はアラブの方に行ってみますが、検索してみてビックリ。収拾がつかない程、素晴らしい内容のビデオが一杯でした。アラブのディーヴァ、ウム・カルスームの昔から、アラブ歌謡の伴奏の中心楽器はヴァイオリンです。ウードよりも重要ではないかと思います。プリマ・ヴァイオリンの超絶技巧と、音楽性の豊かさには目を見張るものがありますが、最大の魅力は、この何とも言えない艶っぽさでしょうか。

Arabic Violin start watching from 1:00

今日の中で、テクニックの華麗さではぴか一。これはもう凄いという外ないです。途中は何かマラゲーニャ風にもなりますが^^  first put on youtube by hani al-ordon-violin- Abood Abd il Aal 1973 -abood 3abd il 3al violin arabic

violon Taksim

度忘れして曲名が出てきませんが(^^;、非常に有名なアラブの曲です。後半はタクシーム。テクニックを誇示するタイプではありませんが、柔らかく味わい深い音色です。

taksim - jamil bashir - iraqi music

イラクのウード名人、故・ムニール・バシールの兄、ジャミル・バシール(1921-77)のヴァイオリン・タクシーム。確かに顔はそっくり^^。Jamil Bashir was born in Mosul, Iraq in 1921 and is the brother of Munir Bashir. His father, who was a singer, oud player and oud maker, started to teach him the oud when he was around six years old. When the Iraqi Music Institute opened in 1936, Jamil enrolled to learn oud with Sherif Muheddin Haydar and violin with Sando Alio. He finished his oud study in 1943 and his violin study in 1946, graduating with honours degrees in both instruments, and then worked at the Institute as an oud and violin teacher. At the same time he became the head of the Baghdad Radio Orchestra and then the Baghdad Radio Music Department. He also wrote a two-volume oud method. Jamil Bashir was also a good singer, but he did not continue singing as he preferred the oud. He died in London on 24th September 1977

arabic violin

現代の若手アラブ・ヴァイオリニストの独奏。ゆったりしたテンポのタクシームですが、なかなかに聞かせます。mohammad tahboub, takseem on violin.

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年5月29日 (金)

ペルシアン・ヴァイオリンの名手

ヴァイオリンついでに、イラン古典音楽のヴァイオリンも見ておきましょうか。HPではちょうどイラン盤がまとめて入りましたので^^ ペルシアン・ヴァイオリンは前に何度か取り上げましたが、今日アップするビデオは初登場。西洋式のチューニングは、下の弦からソ、レ、ラ、ミですが、イランの場合は前にも書いたように、下からド、ソ、ド、ソとかのパターンが多いようです。ドローン的な重音の入ることが多いので、この方が弾きやすいのでしょう。南インド式とは違って、あごに挟む構えは西洋的ですが、出てくる音は明らかにケマンチェを模した感じ。
現代はそれほど古典音楽に用いられなくなったのかも知れませんが、イラン革命前は頻繁に目にしました。ゴルパとハイェーデとデュオのビデオで伴奏していたのも、ヴァイオリンでした。南インド古典音楽の、例えばT.N.クリシュナンのような特別な名人はクレモナの名器を用いることもあるようですが、イランの場合はどうなのでしょうか?

Persian Violin -Shamlou-Shoshtari & Bidad-Taravate Shabnam 2

演奏者はシャムルーという人。朗読で有名なシャムルーと同じ名ですが・・。ダストガー・ホマーユン系のシューシタリーによる演奏のようです。とてもペルシア音楽らしい旋律。トンバクの手もよく見えて良いです^^

Persian Violin -Shamlou - Shoshtari & Bidad- Taravate Shabnam 1

冒頭のマーフール旋法は、パリサー来日の際に演奏されていたあの曲ですね。こちらが上の映像の前半のようですが、やはりシューシタリー~ビーダードの、ホマーユン系の独奏から始まります。これは素晴らしい!

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年5月28日 (木)

ヴァイオリンの聴き比べ

ちょっと寄り道して、昨日に続きヴァイオリンの聞き比べビデオを少し見てみたいと思います。

Hungarian Dance No. 5, Brahms, Gypsy Violin Sound Sample

中学の時にこのブラームスのハンガリー舞曲集にはまり(5番よりは1番とかでしたが)、その後バルトークに移って、そこから民族音楽方面に耳が向きましたから、このブラームスの曲は個人的に思い出深い曲。実はずっとドイツ3大Bの大ファンでもあります^^  間奏曲(Pf)や弦楽六重奏曲、ヴァイオリン・ソナタ、チェロ・ソナタなど、ブラームスの愛好曲も数えきれず。

GYPSY VIOLIN

ジプシー・ヴァイオリンというより、バロックの曲に聞こえますが。こちらもドイツ製オールド・ヴァイオリンの暖かい音色が素晴らしいです。

Passacaglia - Halvorsen - 19th C Schweitzer Violin

初めて聴く曲ですが、J.S.バッハのシャコンヌのアルペジオの辺りを思わせるようなパッサカリア。良い曲ですね。イタリアの名器アマーティを模した19世紀の楽器だとか。

Italian Violin. Sound Sample. Excert of the Vitali Chaconne.

シャコンヌと言えば、J.S.バッハと並んでこのヴィタリの曲が有名。イタリア・ヴァイオリンの明るい音色がぴったりの曲。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年5月27日 (水)

バルトークのヴァイオリン・デュオによるアラブ音楽

昨日少し触れた件のyoutubeを上げておきます。ハンガリーの大作曲家バルトークが、フィールドワーク先のトランシルヴァニアで聴いた民俗音楽のスタイルの原型(元はアラブ~ペルシア起源の曲)を、1913年にアルジェリア中部で偶然見出したという箇所ですが、44の無伴奏ヴァイオリン二重奏の中の「アラブの歌(旋律)」の1stヴァイオリンに、アルジェリアへの取材旅行で得た旋律が使われているようです。件の曲と全く同一かどうかは未確認ですが。このエピソードを知ったのは、伊東信宏氏の「バルトーク~民謡を発見した辺境の作曲家」(中公新書1370)でした。彼の作品には沢山のハンガリーやルーマニアの民謡がモチーフとして使われていますが、アラブの旋律が素材として使われているのは、他には余りなかったかも知れません。

Givens/Tao - Bartók Violin Duets Live (2/2)

この演奏の4分55秒辺りからが、例の「アラビアの歌」。44の無伴奏ヴァイオリン・デュオの42曲目です。男性が1stヴァイオリン。

Solo Sound Sample, German Violin, Excerpt of Bartok, Gypsy Sound

おまけで二本。おそらくバルトークの一番ポピュラーな曲、「6つのルーマニア民族舞曲」の一曲目です。オリジナルはピアノ独奏曲ですが、ヴァイオリンとピアノに編曲した版もよく弾かれます。この曲はタラフ・ドゥ・ハイドゥークスもアルバム「仮面舞踏会」(浅田真央選手のスケートで有名になったあのハチャトゥリアンの曲がタイトル)で入れてました。このヴァイオリンのシリーズは、目の前で聞くヴァイオリンの音の質感がよく分かります。

Bartok Excerpt, German Violin Solo Sound Sample, Nice Sound, Eboyinc

これも同じルーマニア民族舞曲の4曲目。トランシルヴァニアのラメント(哀歌)風な曲調に、ドイツ・ヴァイオリンの柔らかい音色がなかなかマッチしています。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年5月26日 (火)

1932年のクッバンチー楽団

ここ数日取り上げているイラキ・マカームの名歌手クッバンチーですが、他にもまだビデオがありますので、まとめてアップしておきます。いずれも1932年のカイロ会議での録音。一本目がアンサンブル、二本目はウードのタクシーム、三~五本目は昨日少し触れたサントゥールとジョザ(ジョゼとも)のデモ演奏。音はさすがに微弱ですが、現代の音楽家の演奏とは一味違うゆったりした時間の流れを感じます。
バルトークはフィールドワーク先のトランシルヴァニアで聴いた民俗音楽の原型(アラブ~ペルシア起源の曲)を、1913年にアルジェリア中部で偶然見出したそうです。44の無伴奏ヴァイオリン二重奏ではアラブの音楽を取り入れてもいました。地元のハンガリー~ルーマニアだけでなく、バルカン半島、トルコ、アラブ、ロシア(特にマジャール族の故地ヴォルガ中流域)、ウクライナまで視野に入れていた彼の耳に、イラクの音楽はどう響いたのでしょうか?

Maqam Khanabat - al-Chalghi al-Baghdadi (1932)

Iraqi Maqam
Maqam Khanabat
al-Chalghi al-Baghdadi
First Cairo Congress of Arab Music (1932)
Cairo, Egypt. 78rpm recording.
Instrumental performance of Maqam Khanabat by the Iraqi delegation to the First Cairo Congress of Arab Music (Le Congrès du Caire) in Egypt, ِ1932. The Iraqi delegation led by maqam performer Muhammad al-Qubbanchi won the first place and were awarded by King Fuad I.
Santur: Yusuf Hugi Pataw (1886-1976)
Joza: Salih Shumayyil Shmuli (1890-1960)
Tabla: Yehouda Moshe Shammas (1884-1972)
Daff: Ibrahim Salih (?)
Muhammad al-Qubbanchi was the lead singer in the Iraqi delegation, accompanied by a chalghi group consisting of Yusuf Hugi Pataw on the santur, Salih Shemayyel, joza, Ezra Haroun, 'ud, Yusuf Za'rur, qanun, Yehuda Moshi Shammash, dunbuk, and Ibrahim Salih, daff. All the instrumentalists were Baghdadi Jews, mostly illiterate and traditional men, who dressed in the old Baghdadi fashion. Nuri al-Sa'id, the then Prime Minister, was keen to present a modern face of Iraq. He entrusted the one efendi (here meaning dressed in European fashion) among them, Ezra Haroun, known as 'Ezzouri, to dress them in the European style and to train them in appropriate conduct for such an occasion. A funny anecdote was related by Qubbanchi: one evening, while their mentor 'Ezzouri was out, the Iraqi musicians were visited at their hotel by an Egyptian journalist looking for an interview. He enquired about the state of musical arts in Iraq. Pataw, evidently mystified by the question, replied honestly in an archaic Baghdadi Jewish accent. "What art of the graves! We play at weddings, and people drink and start fighting, and soon knives are flying, and we (the musicians) hide in the lavatories." This anecdote comically illustrates the clash between traditional perceptions and practices and the new notion of 'art', which the Cairo Congress was celebrating. (Sami Zubaida, "Entertainers in Baghdad, 1900-1950", in Eugene Rogan, ed., Outside In: On the Margins of the Modern Middle East, London: IB Tauris 2002, p212-230)

Taqsim Oud Maqam Lami - 'Azzuri Harun

Taqsim Santur Maqam Awj - Yusuf Hugi Pataw (1932)

Taqsim Maqam Taher and Hadidi - Yusuf Hugi Pataw (1932)

Taqsim Joza Maqam 'Ushaq - Salih Shemayyel

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年5月25日 (月)

クッバンチーのイラキ・マカーム

カイロ会議の話題から、少しイラクに飛んでみます。イラクの古典音楽イラキ・マカームというのは、クルド・マカームの場合と同じで、旋法を指すと同時にレパートリー自体をも指しているようです。イラキ・マカームは、アラビアン・ナイトの成立した頃、つまりアッバース朝の時代にも遡る部分も残していると考えられるバグダッドの都市歌謡ですが、ご存知の通り、相次ぐ戦争でその継承者が激減しているのではと危惧されます。
往年のイラキ・マカームの名歌手ムハンマド・エル・クッバンチー(ムハンマド・アル・ガバンジとも 1901-1989)は、例のカイロ会議のイラク代表団の中心人物のようで、ディスクアラブからCDが2枚出ていました(Mohamed Elkabbandji / Le Maqam en Irak Vol.1,2 - Congres du Caire 1932)。絶妙な間を生かした歌(語り?)と弦楽器などの合いの手を聴いていると、日本の義太夫や新内のような浄瑠璃を聞いているような錯覚を覚えます。イラキ・マカームの合奏団には、ペルシアからの影響としか思えないサントゥールが入っていて、浮遊感のある微細な音程と音色は、フリーリズムの歌の幽玄美と共に最も印象に残るものではないかと思います。弓奏のジョザの音色もケマンチェとも一味違った良さがあります。一本目はマイミクのAさん(ご主人がイラクの方で、「クッバンチー」という呼び方はその時Aさんからお聞きしました)から大分前に教えていただいていたyoutube。原語で検索しないと出てこない貴重なビデオで、本日ようやくアップのタイミングと相成りました^^  
なおここ数日の参考文献は水野信男氏の「中東・北アフリカの音を聴く」(スタイルノート)です。

m. alqobanchi - iraqi abothia

何と伴奏は、ウードのムニール・バシールとヴァイオリンのジャミル・バシール。これは珠玉の一本です! Violin : Jamil bashir Oud : Monir bashir

mohamed alqobanchi part 1 Iraqi maqam

ここではサントゥールではなくカーヌーン伴奏ですが、これもとても素晴らしい演奏。

mohamed alqobanchi part 2 - iraqi maqam

1 iraqi song

以下2本は1964年の映像のようです。

2 iraqi song

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年5月24日 (日)

カイロ会議のイラキ・マカーム+海王丸

昨日に続いてカイロ会議の演奏から、今日はイラクの古典音楽、イラキ・マカームの映像です。これまたディスクアラブからカイロ会議のCDが2枚出ていたMuhammad al-Qubbanchi(エル・クッバンチーとかエルカバンジとか、カタカナ表記は一定しません)の楽団の演奏家のようです。カーヌーンの典雅な独奏と、ダフのデモ演奏をどうぞ。

末尾に、ここ数日地元今治の港に寄航・停泊中の、帆船・海王丸の写真を。イラキ・マカームに負けず劣らず幻想的な美しさでした。

Taqsim Qanun Maqam Hijaz Diwan - Yusuf Za'rur

Iraqi Maqam المقام العراقي
Taqsim Maqam Hijaz Diwan and Khanabat - Yusuf Za'rur Jr.
First Cairo Congress of Arab Music (1932)
Cairo, Egypt. 78rpm recording.
Improvisation on the qanun in Maqam Hijaz Diwan and Khanabat by master Yusuf Efendi Za'rur Jr. as part of the Iraqi delegation to the First Cairo Congress of Arab Music (Le Congrès du Caire) in 1932. The Iraqi delegation led by maqam performer Muhammad al-Qubbanchi won the first place and were awarded a prize by King Fuad I.

Iraqi Daff Tempos - Ibrahim Salih

Iraqi Maqam المقام العراقي
Iraqi Daff Rhythms
Ibrahim Salih
First Cairo Congress of Arab Music (1932)
Cairo, Egypt. 78rpm recording.
Demonstration of nine Iraqi rhythms on the daff (riqq or tambourine) by Ibrahim Efendi Salih as part of the Iraqi delegation to the First Cairo Congress of Arab Music (Le Congrès du Caire) in 1932. The Iraqi delegation led by maqam performer Muhammad al-Qubbanchi won the first place and were awarded a prize by King Fuad I.
36/4 Samah, 18/8 Ay Nawasi, 4/4 Sharqi, 12/4 Yugrug, 10/8 'Ulaylawi, Wahda 4/4, 6/8 Hachcha, 5/8 Sha'baniyya, 8/8 Muthalath

Ca320404l

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年5月23日 (土)

カイロ会議(1932年)の録音

1932年にエジプトのカイロで催されたアラブ音楽会議は、アラブ音楽史だけでなく、世界音楽史から見てもエポック・メイキングなものでしたが、そこにはアラブ諸国の音楽家や音楽学者のみならず、西洋の大作曲家バルトークやヒンデミットのような大御所も招待されたことでも有名。主催したのは、音楽や文化に理解と造詣の深かった当時のエジプト国王フアード一世でした。その名高いカイロ会議関連の映像が結構youtubeにはあります。音源はディスクアラブからも数枚も出ていましたので、それらも使われているのではと思います。今日はまず導入として一本上げておきます。Redouaneの率いる楽団のナウバ(ヌーバ)演奏はディスクアラブから出ていましたので、その音源では。

Redouane et Larbi Bensari 1932 - Congrès des musiques savantes au Caire.-

Le Baron Rodolphe d'Erlanger ( noble français oeuvra pour le dialogue des cultures) peu avant sa mort, il fut l'organisateur des musiques savantes qui se déroula en 1932 au Caire.

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年5月22日 (金)

シェイフ・レイモンとサミ・エルマグリビ

昨日また名前が出たシェイフ・レイモン、貴重映像が見つかりましたので、今日アップしておきます。併せて同じくユダヤ系名歌手、サミ・エルマグリビの映像も上げておきます。レイモンはマルーフの歌手とされることが一般的なようです。一方エルマグリビ(マグレブに定冠詞が付いた名でしょうか?)の方は、ハウズィの歌手の印象が強いです。例のディスクアラブのハウズィVol.3には彼の歌唱が収録されていました。
今日のビデオ、シェイフ・レイモンの方では義理の息子エンリコ・マシアスの姿が見えます。エルマグリビの方は最初がハウズィ(あるいはシャアビ)、後の方はマシュレクのムワッシャハ系でしょうか? 後者はイスラエルのアラブ・アンダルシア音楽楽団との共演。ユダヤの祈祷帽キパを被った人が確認できます。しかし、こんな貴重映像がどんどん見れるなんて、改めてyoutubeは凄いなと思ってしまいます。

Cheikh Raymond Leyris - Document trés rare

hommage au Cheikh Raymond Leyris Document trés rare de Cheikh Raymond Leyris (27 juillet 1912 - 22 juin 1961 à Constantine) un musicien juif de musique Malouf (ou arabo-andalouse). Il œuvra pour la paix entre les communautés musulmanes et juive de Constantine.
Il est assassiné le 22 juin 1961 sur la Place Négrier de Constantine au milieu du marché juif. Cet évènement contribue à faire fuir la population juive et chrétienne de la ville.

Samy El Maghribi - youm elkhmiss

Samy El Maghribi - omri ma ninsak

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年5月21日 (木)

エンリコ・マシアス

今日はシャンソン歌手として有名なエンリコ・マシアスのビデオを見てみたいと思います。この人がアルジェリアのユダヤ系歌手だというのは、日本でも意外に知られているかも知れません。「コンスタンティヌ」の曲名もありますので、この町の生まれではと思っていましたが、やはりそうでした。濃い~顔立ちも如何にもアラブのユダヤ系という印象。
一本目はマンドーラを弾き語っていますが、まずこれでビックリ仰天。これは本当に驚きました! ウードと見紛うようなプレイに、見事なアラブのコブシ。思わず聞き惚れてしまいました。一昨日取り上げたアンダルス系音楽の巨匠シェイフ・レイモン(実はマシアスの義父)へのオマージュ曲のようです。1962年のアルジェリア独立時には、フランス人を追い出しただけでなく、反ユダヤ感情も吹き荒れ、レイモンはその時に殺されてしまったそうです。二本目のメドレーの2曲目では、彼の№1ヒット「想い出のソレンツァラ」を歌っています。この歌もよく聞くとユダヤ・モード風な所があります。メドレー後半にはアシュケナジームのハシディック・ニグンのような母音唱法の節も聞こえます。
シャンソンと言えば、前に取り上げたジョルジュ・ブラッサンスやブリジット・フォンテーヌ、フランソワーズ・アルディなどが中心で、マシアスはほとんど聞かないで来ましたが、アラブ~ユダヤ音楽の観点から見てみると、この人の歌は非常に面白そうです。上記リンクにあるように、アルジェリア独立後のピエ・ノワールに支持されたそうです。

Enrico Macias - hommage a Raymond

Petit hommage d'enrico macias a son beau pere Cheukh Raymond

Tour De Chant (Part-2) (Olympia 1995)

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2009年5月20日 (水)

ハウズィとシャアビの違い(英訳)

ここ数日のお約束通り、活動停止してしまったマグレブ音楽中心の素晴らしいレーベル、ディスクアラブ(Club du Disque Arabe)から出ていたLa Chanson Populaire Algerienne - Le Hawzi Vol.1 - Poemes de Ben Msayebから、ハウズィとシャアビの違いについてのA.Hachlef氏の記述の英訳を引用しておきます。所々単語の訳を入れておきますので、是非味読してみて下さい。このシリーズは4枚出ていましたが、このレーベルらしいラフな作りになっていて、4枚とも解説が全く同じな上に、英訳が途中で尻切れトンボのまま終わってしまっているのが残念な所(笑) 一方フランス語の方はフルに載っています。
ハウズィとシャアビの両方のルーツが、モロッコのマルフーンにあることは、ここで初めて知りました。文末に出てくるシェイフ・ハマダは、同シリーズVol.4に収録されていました。今日は彼のGALLALを叩き語っているビデオなどをアップしておきます。2本目は確か当ブログ3回目の登場です^^ 一昨日のゲルアビの歌唱もVol.4に入っています。

The differences between HAWZI and SHAABI are neither in the language (both genres have their roots in MALHUN poetry) nor in the music, which derives from Andalusian Arab music in both cases. Then, what about differences? The SHAABI prosody sticks to long metres and, notwithstanding(にも関わらず) the rhymes(韻) being alternate and the division of the poem in verses and refrain, a SHAABI poem is not really what we call a song nowadays. It is rather like a preislamic QASIDAH whereas, in the HAWZI genre, the MALHUN poet writes sets of quatrains(四行詩) comparable, except for the rhymes(韻), with the RUBAYATS(ルバイヤート) found in Persian poetry. In a quatrain of the HAWZI genre we find either alternate rhymes or one and the same rhyme repeated three times, the last line being blank verse, a structure that gives the composer a free hand, after imagining a variety of melodies for the three first lines, to conclude every quatrain with a new "finale" proper to display his great virtuosity. Modern songs have kept that main characteristic up to now. Composers have sometimes overexploited the possibilities offered by such a device, especially those who composed for UM KALTSUM. True to say, she was exceptionally brilliant at developing her variations endlessly.
  I would like to round off this unpretentious presentation of the HAWZI by mentioning that the genre, though it came into existence in towns, has soon been adopted by the Bedouins. Sheikhs HAMADA and MADANI would sing HAWZI poems to Oranese tunes(music of Western Algeria), with flute and GALLAL accompaniment. The GALLAL is a long percussion instrument with only one drumhead made of camel skin. 以下略

Cheikh Hamada, "Aïd el Kebir"

上記のハウズィ・コンピレーションVol.4に収録されていたハウズィ曲。都市歌謡の印象の強いハウズィですが、ベドウィンの歌手シェイフ・ハマダが歌うので、マンドーラではなく、ガスバの伴奏になっていて、そのためサハラっぽく感じられるのが不思議。Un Haouzi de Cheikh Hamada sur un poème du 17è. de Ben Triki E'tlemçani

Cheikh Hamada - Gasba

こちらはいかにもベドウィン(アラブ遊牧民)歌謡的。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年5月19日 (火)

往年のハウズィ歌手

ディスクアラブのHawziから引用(英訳ですが)の予定でしたが、数日前にハプニング(ノートPCのHD死去)があって、交換~再インストールなどしていて時間がなくなってしまいました。今日も往年のアルジェリアの歌手たちを見ておきます。ジャンルはハウズィが近いのでしょうか。

Cheikh Ramond Lyrice - Bacheraf Zidane by le lion du Maroc

シェイフ・レイモンは昔、フランスのレーベルAl Surから3枚シリーズがありました。そのジャケットがビデオに映っています。Cheikh Ramond Lyrice - Bacheraf Zidane, music judeo arabe andalous marocain algerien, malouf, hawzi, haouzi, samy elmaghribi

Cheikh Hadj Mohammed Ghaffour

ウードが中心の古典的なスタイルでは。Maitre incontesté du Hawzi, musique arabo-andalouse

Cheikh Hadj Ghaffour

Abderrezak Bouguetaya - Dar Soltane Aalya

この人は昨日のゲルアビと同じくらいの世代でしょうか。演奏スタイルも似ているように思います。このリズムパターンは、とてもアルジェリアっぽいですね^^

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年5月18日 (月)

ハシェミ・ゲルアビの歌は・・・

再度アルジェリアに戻ります。どうもまだハウズィとシャアビの境目が不明確なままですので、詩の韻律などの違いから説明されている仏Club du Disque ArabeのHawziシリーズから引用しておきたいと思いますが、その前にもう一人名歌手の映像をアップしておきます。この人もハウズィで検索して出てきましたが、一般にはシャアビの歌手として知られていると思います。彼が手にしている楽器、ギターとマンドーラ(マンドリンのルーツと考えられているようです)の合いの子のようです。サウンドホールの菱形は、間違いなくマンドーラのものですが、ギターのように胴のくびれがあります。
ハウズィとシャアビの違い、古典的な度合いだけではないようです。今日のビデオなら、一曲目はハウズィ的、二曲目はシャアビ的と言えるのかもと思っていますが・・・。二曲目ではユーユーが聞こえます。

Hachemi Guerouabi - El Harraz

EL HACHEMI GUEROUABI - NSABLEK YA OMRI

El Hachemi Guerouabi né le 6 janvier 1938 à El Mouradia (La Redoute - Alger et décédé le 17 juillet 2006 à Zeralda - Alger) est un chanteur algérien du genre chaâbi.
Guerouabi fera la joie des mélomanes algériens), chantant la jeunesse perdue.Guerouabi se rendra célèbre avec les poèmes chaabis célèbres comme «youm el djemaâ » « Laachiq, Aouicha ou el Harraz » Gravement atteint d'un cancer, il est décédé le 17 juillet 2006 et a été enterré dans le cimetière du quartier qui l'a vu naître.

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年5月17日 (日)

モロカン・ジュー&パレスティナの歌手の共演

数年前にフランスのBudaから出ていた、モロッコ系ユダヤの女性歌手フランソワーズ・アトランと、パレスティナの歌手兼ウード奏者モネイム・ウドワンとのコラボレーションアルバムNawahから。ビデオの絵がCDのジャケットで、上下はアラビア語とヘブライ語でパレスティナと書いてあります。ここで歌われているのは無伴奏二重唱によるパレスティナ民謡ですが、ウドワンのハイトーンヴォイスとウード、サズ、カンブーシュの弾き語りもかなりの凄腕でした。故オフラ・ハザ(彼女はイエメン系ユダヤ人)のよく歌っていた曲(3)もありました。このアルバムが出た頃のパレスティナは、最近に比べたらまだ小康状態だったように思います。1492年(新大陸発見、と同時にレコンキスタ完了によるイベリア半島からのユダヤ人追放の年)から500周年ということもあったし、まだ政治情勢もましだったので、1992年頃はセファルディー関係のアルバムも続々と登場しましたが、最近はかなり点数も減ってしまっているように思います。

Acham - Palestinian folk song in Hebrew and Arabic

*All rascist comments on the palestinians or the jews will be deleted!
"Acham" a traditional Palestinian song in Hebrew. From the album Nawah, by Francoise Atlan and Moneim Oudwan.

| | コメント (0) | トラックバック (1)

2009年5月16日 (土)

ウェッタール?の名人

大分前にモロッコのギンブリに似た弦楽器演奏をアップしましたが、その楽器(ウェッタール?)の名手と思しき演奏家のビデオを発見。モハ・ルイシャとありますが、モハメドの短縮形のようです。巨大な大蒜のような撫で肩ボディに細めの丸太のようなフレットレス棹は、見ているだけでもインパクト大(笑) 演奏はビルトゥオージティ豊かで、歌声も味があります。こういうベルベル系音楽は、黒人系音楽と並んでグナワの2つの大きな柱では。モロッコはアルジェリアよりはるかにベルベル人口が多いようですが、中世アンダルスの主役だったモーロ人の末裔が多くを占めているのでしょうか。そうだとすると彼らがこういうプリミティヴな楽器を手にするようになったのは、アフリカに渡ってからの黒人文化の影響なのでしょうか? 2本目に出てくる、鋭い女性ヴォーカルを聞くと、シェリファの歌声(仏Long Distance盤あり)を思い出します。もしかしたら本人でしょうか?

MOHA ROUICHA

rouicha mohamed

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年5月15日 (金)

トレムセン

アルジェリア北西部にあり、モロッコとの国境に近い町トレムセンは、中世にアンダルシアからの移住者が多く住んだと言われています。アルジェ、コンスタンティヌと並んでアンダルス音楽の伝統が色濃く継承されていて、トレムセン楽派(Ecole de Tlemcen)という呼名も見かけます。例の仏Club du Disque Arabeからも往年のCheikha Tetmaの素晴らしい音源がありました(既に品切れですが上記リンクにジャケットが載っているAAA067)。1930年代が全盛の女性歌手で、カマン(ヴァイオリンを立てて演奏)を弾き語っていたようです。今日は、そんなトレムセンの町と音楽を紹介するビデオを2本。「小さいエルサレム」と呼ばれた美しい古都の様子が覗えます。ハウズィはトレムセンなどで盛んに歌われてきたようです。

Tlemcen Eternelle

冒頭はアザーンの声、その後はアンダルス音楽だけでなく、民謡も聞こえるように思います。 Tlemcen,jadis on l'appelait "la petite Jerusalem."

Tlemcen de Tetma le doux chant andalou.

上述した往年の女性歌手テトマの歌唱のようです。アンダルス音楽とは言っても、モロッコのナウバなどに比べると素朴な味わい。ユーユーも出てきます。 Tetma est une interprete d'une tradition musicale tlemcenienne. C'est une voix du terroir de Tlemcen qui charme et charmait des generations entieres.

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年5月14日 (木)

カビールの歌手アクリ・ヤヒヤテン

もう一人カビールの男性歌手を紹介しておきます。アクリ・ヤヒヤテンの音源は、例の仏Club du Disque Arabeから出ていました。現在は残念ながら入手不可になっていますが。youtubeにはそのジャケットと同じ若い頃の写真のものと、最近の録音と思われる中年?になってからの写真が見えます。この人の歌はシャアビよりももっと素朴なカビールの歌というイメージがありますが、曲によって女性コーラスも入ったりしますので、やはり「男歌」の伝統を守っているシャアビからは外れるのかな、とも思います。アラブ・アンダルシア系音曲の一つ、ハウズィ直系の吟遊詩の伝統を感じさせるシャアビとは違って、もっと民謡的な歌なのでは。おそらく韻を踏んだりとかの詩の技巧もシャアビにはあるのでしょう。
1本目のように若い頃は素朴でエネルギッシュな歌を歌っていたようです。しかし、カビールのベルベル人(彼もおそらくそうなのでしょう)が住んでいる辺りは、寒村という印象を受ける程で、これがアフリカなのか?と思ってしまいます。アルジェリアの信州のような所なのかも(笑)

Yal Menfi - Akli Yahyaten

"Yal Menfi" est une reprise en arabe dialectal d'un vieux chant d'exil kabyle composé au lendemain de l'insurrection de 1871 et du verdict sans appel : la déportation en Nouvelle-Calédonie de la plupart des meneurs. "Yal Menfi" (l'exilé) évoque les souffrances endurées par les immigrés algériens de toutes les époques.

Akli YAHIATEN: Tamurt-iw tamurt idurar

akli yahiatene inas imlayoun taous

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年5月13日 (水)

知られざるシャアビの名歌手

ユデオ・アラブから、セファルディー~ユダヤ方向に来ていましたが、アルジェリアのシャアビに戻ります。今日のビデオの歌手、ブージェマー・エル・アンキスと読むのでしょうか。何故か音源など見た記憶のない人ですが(仏Club du Disque Arabeにすら)、往年の男性歌手の燻し銀のような味わい深いシャアビという印象です。カビール地方のシャアビになるようです。遠い国の歌謡なのに、どこか懐かしいイメージがあるのが不思議。

Boudjemaa El Ankis "Temziw"Chaabi Kabyle

Boujem3a El Ankis Bahr ettofane by Lunakhod

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年5月12日 (火)

Jewish music in Iran ビーダードとハヴァ・ナギラ

昨日のビデオのリンクから、イランとユダヤ音楽に関する動画がいくつか見つかりました。サントゥール奏者が独奏している内容について・・・。一本目の導入部はホマーユン旋法の演奏だと思いますが、1分過ぎ辺りから聞こえるのは60年代にPooran(またはPouran)が歌って大ヒットしたホマーユン旋法のタスニーフ、Bidad。ビーダートと言うグーシェに基づくために、その名が曲名になったと柘植元一氏の80年のラジオで紹介されていたように記憶しています。このハチロクのレングのリズムに乗った「これぞペルシア!」としか言いようのないイラン的なメロディに続くのは、何とイスラエル民謡(元は東欧・ロシアのハシディック・ソング)のハヴァ・ナギラ。フォークダンス名曲のマイム・マイムと並んで最も有名なイスラエルの曲の一つでしょう。増2度を含んだエキゾチックな音階は確かに似ていると言えそうですが、この2曲は何か関係があるのでしょうか? 単に雰囲気の似たメロディを並べただけだとは思いますが。それから、イランでハヴァ・ナギラを弾いても大丈夫なのでしょうか? またまた疑問だらけです(笑) 余談ですが、プーランの音源は何故か米西海岸のCALTEXやTaranehでも見たことがないです。HayedehやGolpaなどのセミクラシカルの歌手には強いレーベルなので不思議に思っていました。一方彼女のyoutubeは沢山ありますが、残念ながら肝心のBidadが見つかりません(3本目にレング・リズムの一曲をアップしておきます)。2本目もびっくりするような内容のドキュメンタリー。この流れですから、イラン系ユダヤ人のイスラエル・ポップス歌手Ritaのペルシア語ナンバーなど併せてご紹介したいところですが、捜索に時間がかかりそうですので、またの機会にしたいと思います。

Jewish music in Iran

Jews Undercover - Iran
September 2004   It's not easy being a Jewish MP in an assembly that routinely calls for the destruction of Israel, but Iranian Jews' rights are protected by law.

Iran"پوران ديروز و فردا Pooran"

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年5月11日 (月)

イラン系ユダヤ=セファルディー?

マグレブの音楽巡り中ですが、セファルディー関係で見ていたら、大変に驚いた一本がありました。これは看過できないので、今日アップしておきます。イランの古都シーラーズのユダヤ教音楽のビデオですが、紹介文ではセファルディー(スペイン系ユダヤ)となっています。これは初めて聞きました。全く持って初耳です(笑) 何故かと言うと、長らくイラン系ユダヤ人とは、ミズラヒーム(ミズラフ=東、ですので「東方系」と訳されます)だと思っていたためです。ミズラヒームとは、主に第一と第二のエルサレム神殿の崩壊後ディアスポラ(離散)したグループで、1492年前後にイスラム王朝下のスペインから離散したグループとは別のはず。神殿は第一がBC586年、第二がAD70年に崩壊したとされています。15世紀とは余りに年代が違い過ぎます。
ミズラヒームをセファルディーに入れてしまう傾向が昔はあったようにも記憶しています。ミズラヒームのコミュニティー(イエメン、エチオピア、クルド、イラク、イラン、南インドのコーチン等)はいずれも小さく、イエメンやエチオピアほどには孤立してない中東のユダヤ・コミュニティーの場合、後からやってきたセファルディーのグループの影響を色濃く受けたためかも知れません。現代ヘブライ語も、セファルディー(ヘブライ語に近い音で綴ればスファラディーですが)式の発音をベースにしているようです。しかし、イランの場合はどうなのでしょうか? イラン南部のシーラーズ辺りのユダヤ人の場合は、15世紀以降に西からやってきたグループがいたのでしょうか? ビデオを見る限り、やはりより古い伝統を保っているように聞こえます。 

気を落ち着けて(笑)、コメントを見てみたら、This is VERY INACCURATE、とかVery inaccurate. The Persian Jews are NOT Sephardic at all、などのコメントが多いようでした。まぁ歌唱内容が素晴らしいので良しとしましょう(笑)

Sephardi (Mizrachi) Sacred Music of Shiraz, Iran

| | コメント (4) | トラックバック (1)

2009年5月10日 (日)

モロッコ系ユダヤ版コル・ニドレイ他

もう少しモロッコのユダヤ音楽を追ってみたいと思います。毎年秋のユダヤ新年のヨム・キプール(大贖罪日)にのみ歌われる神聖な歌にコル・ニドレイがあります。カントールによって朗々と歌われる旋律は、ドイツ・ロマン派の作曲家、マックス・ブルッフがチェロ用に編曲し、西洋クラシック名曲としても知られていますが、「コル・ニドライ」とドイツ語風な発音になって広まっています。しかし元のヘブライ語式に発音するならコル・ニドレイです。この曲のモロッコ・ヴァージョンのyoutubeが見つかりました(一本目)。西洋的にアレンジされていると思いますが、元の味わいもかすかに残ってそうです。一方ブルッフが編曲したのはアシュケナジーム(東欧系ユダヤ)のコル・ニドレイの旋律。言葉は同じヘブライ語です。こちらは前に一度上げましたが、もう一度上げておきます。この旋律は、一般の西洋社会において一番知られているユダヤ宗教歌だと思います。3本目には他の宗教歌をモロッコのユダヤ人の男性が歌っているもの。モロッコ系ユダヤのコミュニティーは、ミズラヒーム(東方系)ではなく、セファルディーのグループに入るようです。つまり西暦70年後ではなく1492年前後にマグレブに離散してきたグループの末裔ということになります。ミズラヒームに入るイエメン系やエチオピア系程の古めかしさはなくても、十分に歴史のロマンを感じさせてくれる歌の節が残っていると思います。(youtubeにはないかも知れませんが)

Kol Nidrei - The Moroccan Version

Eyal Bitton sings the beautiful & ancient Moroccan version of KOL NIDREI in a modern style. This haunting oath is sung on Yom Kippur by Jewish communities worldwide - Sephardi & Ashkenazi.

Kol Nidre

Moroccan Jewish sacred singing

喋っている言葉はスペイン語に聞こえますので、おそらくラディノ語でしょう。ヘブライのピユティームを歌っています。Leon Azancot, a wonderful 80 year old Tangerine Jew (he should live to 120), sang some piyyutim in Hebrew and explained them in Spanish at his insurance office over the Socco Grande (entrance to the souk) in Tangier, Morocco. Video by Vanessa Paloma,

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年5月 9日 (土)

アンダルス音楽とセファルディーの歌

アルジェリアのユデオ・アラブの音楽家で数日見ましたが、彼らの歌っていたのはシャアビ中心で、セファルディーの民謡そのものは今の所は見当たりません。モロッコの方に移動してみると、セファルディー(スペイン系ユダヤ)民謡をアンダルス音楽の楽団が伴奏しているものが見つかりました。女性歌手フランソワーズ・アトランは、仏Budaからの数枚のセファルディー音楽CDでユダヤ音楽ファンにはお馴染みの人でしょう。「ニムロデ王」は非常によく知られたセファルディー民謡ですが、歌詞の中のLuz de Israel(イスラエルの光)で広く知られている部分を、Luz de ha olam(世界の光)と読み替えているのが興味深いところ。オラムは「世界」「人類」「永遠」などの意味ですが、神の尊称(「天地の主」の意味のアドン・オラムなど)にも使われます。スペイン語が分かる方は、これらの語彙以外はかなり聞き取れるのでは。しかし、よく聞いてみるとビデオの一番の歌詞は、完全にヘブライ語でした。これはアトランのオリジナルでは。

hamid fawzi - tarab el ghernati

若手女性歌手を独唱陣に据えた典型的なモロッコのアンダルス音楽ですが、拍子が変っています。途中で拍子が変る辺りがスリリング。

Françoise Atlan - Cuando el Rey Nimrod

セファルディーの歌で最も有名な曲の一つ「ニムロデ王」。歌詞はラディノ語(ユダヤ・スペイン語)が中心ですが、語彙はAvraham Avinuやha olamなどヘブライ語が結構混じっています。以下の一番の歌詞の訳詩は「ユダヤ音楽の旅」(水野信男・著 ミルトス刊)より。

ニムロデ王が野に出た時
星空を観察し、星座を眺めた
彼はユダヤの星を見た
そして大いなる光、ユダヤの父アブラハムの誕生を知った
(リフレイン)
我らの偉大なる父アブラハム
イスラエルの大いなる光アブラハム

Constantinople & Françoise Atlan - Terres Turquoises

こちらはアラブ、トルコ、イランの楽器からなるグループ、コンスタンティノープルの伴奏で歌っています。後半で大分前に当ブログで取り上げたGazi Gilay Khanの曲が登場。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年5月 8日 (金)

レネット&ブロン・ブロン

例のブダのユデオ・アラブのシリーズには、ブロン・ブロンという人の録音もありまして、アルビノ(白子)だったことから、この芸名がついたようです。リクを叩きながら歌うスタイルは彼独自のもの。レネットのウードとブロン・ブロンの息の合った演奏は、本当に素晴らしいです。この曲はアンダルシア音楽と言うより、サハラ的グルーヴを感じさせ、ユーユーも飛び出します。余談ですが、アルビノの枠太鼓奏者と言えば、カルナティック・フルートの鬼才マハリンガムなどと共演していた南インド古典音楽のカンジーラ奏者、ハリシャンカルを思い出す方がいらっしゃるかも知れません。私は思い出してしまいました(笑) (今日はうとうとしていて、極端に短くなってしまいました(笑) m(_ _)m)

Reinettte L'oranaise et Blond Blond

Petit trésor de la musique Judeo-arabe, Reinette l'oranaise (1915-1998)- Grande dame de la musique algerienne avec Blond-Blond Live au Cadran Magenta all my videos on http://www.dailymotion.com/lutherking

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年5月 7日 (木)

ユデオ・アラブの歌手 リリ・ボニッシュ、リーヌ・モンティ

昨日に続いてユデオ・アラブ(もしくはジュデオ・アラブ)の歌手を見てみます。ジャンルはハウズィ~シャアビということになるようです。ビデオの解説にあるように、リリ・ボニッシュの歌は既にシャアビですが、彼の師匠は古典的なハウズィの歌手だったようです。
「ユデオ・アラブ」と聞いて、アラブ系ユダヤ人のことかと思っていましたが、そうではなくてセファルディーの歌手が多い(ほとんど全て?)ようです。リリ・ボニッシュもセファルディー(スペイン系ユダヤ)でした。アラブ系ユダヤ人とセファルディーはどう違うかと言いますと、ユダヤ人はAD70年のエルサレム第二神殿崩壊後に世界中にディアスポラ(離散)し、アラブ世界にも住んでいたユダヤ人のグループがいるはずなので、そちらかと思っていましたが、ユデオ・アラブと称されるアルジェリアのユダヤ系歌手達は、15世紀にイスラム王朝下のスペインから北アフリカに移住した人々の末裔のようです。表向きは音楽がご法度なイスラームの国において、ユダヤ人やアルメニア人には、そういう宗教的束縛もなく、彼らに自由に才能を開花させた音楽家が多いのは、オスマン朝と同じ状況と言えるのでは。(アルジェリア北部は1830年にフランスが進出するまで300年近くオスマン帝国版図でした)
BudaのTresors de la Chanson Judeo-Arabeが最初に出たのは90年代の前半でしたが(リリ・ボニッシュの来日前でした)、最近再発されたシリーズからはリリ・ボニッシュが抜けているようです。この人だけは高齢ながら現役ミュージシャンで、他のレーベルからもどんどん新作が出ていましたので、そのためかも知れません。レネット・ロラネーズも90年代にありましたが、当時の現物が手元になかったので、収録曲まで全く同じかどうかは確認できていません。

Lili Boniche, Jewish Algerian Chaabi master

ルンバ、パソドブレ、タンゴ、マンボなどとアラブ・アンダルシア系音楽をミックスし、ユニークなスタイルを作り上げたアルジェリアン・シャアビの名歌手。来日は92年頃だったでしょうか。当時結構話題になりましたが、公演を聞き逃してしまって残念。艶っぽい歌をスタイリッシュに歌う、粋でイナセな、かっこいいアルジェリアの爺さんでした。One of the most prominant singers of Algerian popular music, Lili, a jewish singer who sings in arabic straddled religions to produce music that left its heart in modern Algeria. He is one of several still listened to singers that sing in Algerian dialect that are not muslim. Enjoy his most famous song ALGER ALGER together with pictures from Algiers and Oran's now departed Jewish Communities. Over 100,000 Jews called Oran their home. They are now living around the world but their music is a memory of their 500 years in Algeria after the spanish inquisition.

Lili Boniche - Alger Alger

名曲アルジェ・アルジェ。晩年のライブ映像でしょうか。ピアノが入るのもこの辺の歌手に独特なスタイル。ピアニストはモーリス・エル・メディオニか?

Algerian Chaabi (lili boniche line monti renette l'oranaise)

タイトルのように3人連名になっていますが、ここで聞ける歌はリーヌ・モンティのようです。レネットのあのどぎつい歌い方とはかなり印象が違います。彼女は当初シャンソン歌手としてデビューし、アルジェリア独立後にはフランスに亡命。同地で自身のルーツとなる音楽を探究し、その伝統歌謡においてもスターとなった美人歌手。One of the major figures in 1930s and 1940s Algerian popular music, Lili Boniche, died March 6 in Paris. Boniche was known for mixing mixing rumba, pasodoble, tango, mambo, Arab-Andalusian music and writing songs in he called "francarabe".
Lili Boniche was born in 1921 to a Sephardic family of Andalusian origin, in the Kasbah of Algiers. He was only 10 years old when he left his family to be trained in the art of playing the ud, the Arabic lute. His teacher was a master of Hauzi, a regional style of Arab-Andalusian music.

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年5月 6日 (水)

レネット・ロラネーズ

フランスのBudaから出ているTresors de la Chanson Judeo-Arabe(ユダヤ・アラブの歌の宝)シリーズからCDが出ていたレネット・ロラネーズ(1918-98)もyoutubeが見つかりました。一本目の解説によると、この人はセファルディー(スペイン系ユダヤ人)出身で、モロッコ系ユダヤ人のラビ(ユダヤ教シナゴーグの長)の娘とのこと。盲目ながら達者にウードを弾き語る姿は、相当にインパクトが強いと思いますが、いかがでしょうか。アラブ・アンダルスやセファルディーの歌の風合いも強く感じられ、言葉はアラビア語とラディノ語(ユダヤ・スペイン語)で歌われているようです。エル・アンカとの共演もあったようですが、彼とリリ・ボニッシュのスタイルの中間のようにも感じます。
彼女の歌っているジャンルは、アラブ・アンダルシア系のハウズィから、シャアビの過渡的なものになるのでは。ハウズィより大衆性が強く感じられますが、古典的な面も確かに残していて、昨日のハジ・ムリゼクに比べると、少しシャアビ的なのかなと思いました。ジャンルの線引きは、他国人には非常に分かりにくいように思いますが、本国でははっきり区別されるものなのでしょうか? Tresors de la Chanson Judeo-Arabeシリーズは何枚も出ていて、いかにこのジャンルでユダヤ人音楽家が幅を効かせていたかの証左のように思います。
彼女の名前についてですが、名前はレネットのみで、ロラネーズの頭のl(エル)は定冠詞、オラネーズは「オランの女性」の意味ではないかと思います。

Reinette L Oranais Blind Sephardi Jewish Chaabi Singer

1918 to 1998, Reinette L Oranais was the daughter of a Moroccan Rabbi and lived in Oran Algeria. She was also blind from a very young age. She sang in arabic and ladino and was a highly respected chaabi performer, performing with even Cheik El Haj Mohammed El Anka , who made over 130 lps. Even though she was Jewish, she was very loved by Oran's muslim population and left a rich chaabi legacy.. Blind.. and with so much adversity.. she over came and lived a full life. She died in Paris in 1998

Reinette l'oranaise

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年5月 5日 (火)

ハウズィ歌手ハジ・ムリゼク

今日は往年の名歌手の一人ハジ・ムリゼクの映像を。この人の録音も仏Club du Disque Arabeから出ていました。今日の曲はかなり有名だと思いますが、どこで聞いたのか、また誰の歌唱で聞いたのか思い出せません(^^;  彼は1912年にアルジェのカスバに生まれ、1955年に亡くなった夭折の男性歌手。本名はArezki Chaïeb(アレスキー・ハイエブ)というそうです。アレスキーと聞くと、即座に前衛的なシャンソン歌手ブリジット・フォンテーヌの相方を思い出してしまいますが、この名は他にも聞きますから結構アルジェリアにいる名前のようです。彼のハウズィの解釈は非常に人気があったとのこと。中性的にも聞こえるような高い声と巧みな節回しが特徴的です。彼はパリで1938年に最初のレコードを録音したそうです。今日のビデオの映像は何だかシュールで、歌と関係があるのかどうかよく分かりません。歌は非常に印象的だと思います。エキゾチックな増2度音程のメロディと、タイトルにはRebbiという文字が見え、どうもユダヤ的な印象を受けます。この人もユダヤ系でしょうか。

Hadj Mrizek - Ya Rebbi Sahelli Zara

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年5月 4日 (月)

アルジェリアのハウズィ

マグレブ音楽に戻ります。今日は中世アンダルスに生まれた恋愛詩ムワッシャハの流れを汲む伝統歌謡ハウズィ。このジャンルも仏Club du Disque Arabeから詩人別コンピレーションが4枚出ていました。モロッコにはマルフーンというジャンルがありましたが(cf.4/5のブログ記事)、アルジェリアのハウズィと同じムワッシャハ系列でした。この二つは姉妹音曲と言えそうです。また語り部が手にしているのはマンドーラが多いようです。この点だけはシャアビやカビールの歌と共通していますが、音楽は典雅なアンダルス音楽系のもの。ハウズィは、アンダルシアからの移住者が多かったトレムセン、アルジェ、コンスタンティヌの3都市中心に歌われてきたようです。
ハウズィの吟遊詩人は皆、文学史には登場しない口語詩人のようですが、名前を見ると「ベン」と入る人が多いので、ユダヤ系なのかも知れません。ヘブライ語で「ベン」とは息子(転じて男性)の意味で、エリエゼル・ベン・イェフダなどのように、名前の間によく入る言葉です。アラビア語でも同じ意味の言葉がよく入りますが、イブン(例えばイブン・バトゥータ等)とかビン(ビン・ラーディン等)と読む場合が多いと思います。ハウズィの歌はオランでも盛んに歌われ、エジプトで活躍する女性歌手ワルダ・エルジャザイリア(「アルジェリアのワルダ」の意)の歌(youtube)にも継承されているようです。

Algeriacolor - Chaabi - Hawzi - Malouf - Andalous - Photos et Videos d'Algerie2

Dahmane BENACHOUR chanteur Algérien musique arabo andalouse ダーマネ・ベン・アシュールの歌うアラボ・アンダルースとなっていますが、ハウズィのようです。

Hawzi Tlemcen ya hmam par "les airs andalous"

Hawzi de Cheikh BENTRIKI.   Enregistrement des "airs andalous". A l'occasion de la fête de la musique le 21 juin 2008. L'enregistrement au complet sur : www.lesairs-andalous.com シェイフ・ベン・トリキのハウズィ

Algeriacolor - Chaabi - Hawzi - Malouf - Andalous - Photos et Videos d'Algerie4

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年5月 3日 (日)

PhewのMay+80s New Wave

「5月の歌」ついでに、日本の女性歌手Phew(フュー)のMayをアップしておきます。87年発売のアルバムViewに収録されていた曲です。初期の頃に栗本慎一郎氏からDepth Rockと形容された(Fool`s Mateより)危うい歌声は、ロックの枠を超えた深さ、捉え難さを持っていたと思いますが、85年の活動再開の頃から数年は、表面上は比較的聴きやすい歌を歌っていた時期だろうと思います。Mayも鮮烈な詩とともに記憶に残っています。
80年代前半にはクラシックと平行してこの辺の音楽を偏愛していて(当時はまだ民族音楽の情報は限られていましたので)、随分ライヴにも通ったものです。海外では昨日のヴェルヴェット・アンダーグラウンド、日本ではPhewが当時一番のFavoriteでした。今では懐かしさと青臭さの入り混じったような印象でしか見れなくなっていますが・・・(笑)。ですのでLPやCTもほとんど取り出すことはなくなっていますが、まだ結構売られずに生き残っている盤があります(笑) 因みにフューさん、最近もパンク・バンドのヴォーカルなどやられているようですが、さすがにここ数年は全くおっかけてもいません(笑)

当時ライヴに行った中で、今でも覚えているのは以下の辺りです。他にも忘れてしまったバンドが沢山あると思いますが(笑) (このリスト・アップはマイミクのMさんとの大分前の約束でした^^  こんな機会でもないとなかなか書かないので・・) 海外の方は綴りが怪しいのがあると思います。
来日:Einsturzende Neubauten, Psychic TVのジェネシスP.オーリッジ, Echo & the Bunnymen, Monochrome Set, John Cale&Nico, David Bowie等
日本では、Phew以外にはローザ・ルクセンブルク(故どんとのいたバンド)、タコ、あぶらだこ、非常階段、YBO2、ルインズ、泯比沙子&クリナメン、戸川純、原マスミ、須山久美子、あがた森魚、さかな、ミシン、たま、アフターディナー、東京グランギニョール(これは大半は演劇) 等、特に印象に残っています。(ライヴテープも残っていたりもします)
特に印象に残っているライヴ・ハウスは、都立家政スーパーロフト、新宿ロフト、モッコス・フィルム・アーカイヴ(「ピンク・フラミンゴ」や「アンダルシアの犬」などが好評だった映画館ですが、グランギニョールの帝都物語もここでありました)ですね。あれらの場所で会った青白い顔をしたある意味「同士」達は、今はどうしているのかな?、何て時々懐かしく思い出します。案外普通のオジサン、オバサンになっているのでしょうか。(^-^)
LPではSPK, DAF, This Heat, TG(Throbbing Gristle)関係, Bauhaus, Dagmar Krause&Casablanca Moon(Acnalbasac Noom)なども、よくターンテーブルに乗りました。まだどこかにあるはず(笑)

Phew - May (1987)

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2009年5月 2日 (土)

NICOも歌っていた現ドイツ国歌

モーツァルトの名曲ですっかり5月気分が盛り上がりましたので(笑)、今日はヨーゼフ・ハイドン作曲のドイツ国歌Deutschland Uber Allesに行ってみます。多分5月とは関係ないと思いますが、その清々しさから春をイメージしてしまいました^^ この旋律は、ハイドンの弦楽四重奏曲第77番「皇帝」の第2楽章に使われていることで有名。原曲は、ナポレオンによって母国オーストリアが征服されんとする頃にハイドンが書いたオーストリア皇帝賛歌。以前はオーストリア国歌でしたが、現在はドイツ国歌になっています。苦難の中にあっても、どこまでもポジティヴなハイドンの面目躍如たる名旋律だと思います。ナチスのイメージが付いてしまった時期もあるようですが、そんなネガティヴなイメージは跳ね除けるような、しなやかな力に満ちた曲です。
この曲で想い出すのが、20年余り前に来日した女性歌手ニコ(NICO)。アルバム「The End」のラストでこの曲を歌っていました。ニコと言えばフェリーニの映画「甘い生活」に出ていたこともありますが、何と言っても60年代のロック・グループ、ヴェルヴェット・アンダーグラウンド&アンディ・ウォーホルとのコラボレーションが余りに有名。80年代のニューウェーヴ・ブームの頃はカリスマ中のカリスマとして熱い視線を浴びていたと思います。退廃美を極めた「ジ・エンド」の最後を飾っていたのが、このハイドンの名曲。今でも強く印象に残っています。亡くなる前に2回来日して、私は2回とも見に行きましたが(一回はVUのジョン・ケールとの共演)、この曲を歌っていたかどうか、失念しました(^^;

Haydn "Kaiser" Quartet, Op. 76 No. 3, 2nd Movement

ハイドンの弦楽四重奏曲「皇帝」の第2楽章。皇帝賛歌を主題にした変奏曲。テクニックのしっかりした熱い演奏です。Hannah Linz, violin Erica Tursi, violin Julia Pucci, viola Justin Yoder, cello  Recorded Summer 2008 at The Quartet Program, SUNY Fredonia (因みに現在参加している地元の弦楽アンサンブルで練習中 (^^;)

Joseph Haydn - Deutschland Uber Alles

現在のドイツ国歌、Deutschland Uber Alles。  The National Anthem of Germany was composed by Joseph Haydn . It is a part of Haydn's Kaiser Quartet.

the velvet undergound &nico - Femme Fatale
ニコのDeutschland Uber Allesのyoutubeが見当たらないので、取りあえずヴェルヴェット・アンダーグラウンドとの代表曲「ファム・ファタール(宿命の女)」を上げておきます。ウォーホルのバナナのジャケットの1stアルバムから。ルー・リードのギター伴奏でニコが歌っています。この曲は戸川純やPhewもよく歌っていました。

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2009年5月 1日 (金)

Komm Lieber Mai

マグレブ・シリーズ、ちょっとお休みします。こないだ年が明けたと思ったら、もう5月。只々驚きです。さて5月になると、どうしても思い出す歌があります。高校の音楽の時間に「嬉しや五月草木は萌え?~」と習った歌。モーツァルトが最晩年に依頼を受けて書いた子供用の歌曲「春へのあこがれ(Komm Lieber Mai)」です。このメロディは理屈抜きに、ずっと愛好してきました。冒頭の旋律は、彼の最後のピアノ協奏曲第27番の終楽章に使われていますが、これは意外に知られてない事実かも。
因みに、母校今治西高の音楽教師は、テノールの秋川雅史さんのお父様でした。当時はフランソワ・グロリュー(Pf)のビートルズ・アルバムが流行っていた頃で、曲名と誰の作風か作曲者名を結び合わせるテストが出て、満点を取ったのも楽しい思い出です。大学オーケストラに入ってからは、クラシックと言えばフランス近代やバルトーク以降の近現代ばかり聞いて、独墺系を避けていた時期がありましたが、最近たまに取り出して聞くクラシックは明らかに独墺系が中心。これまでに当ブログでも取り上げたJ.S.バッハの無伴奏音楽やベートーヴェンの後期弦楽四重奏が頂点のような気がしますが、結局西洋クラシックの場合ここに戻ってくるようです。ささやかな歌ですが「Komm Lieber Mai」も、私にとってはその頂点を飾る一曲になっています。

Komm Lieber Mai

Vienna Boyschoir : Komm lieber Mai , W.A. Mozart.

こちらもウィーン少年合唱団の演奏。ドイツ語歌詞字幕が嬉しい。

Mozart Piano Concerto No.27 K.595 3M

イングリット・ヘブラーの演奏でピアノ協奏曲27番の第3楽章。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2009年4月 | トップページ | 2009年6月 »