トゥンバラライカ
ここ数日登場しているエステル・オファリームの歌唱は、見れば見るほど素晴らしく、どこか懐かしい感じも覚えます。60~70年代風というのは世界共通の雰囲気もあるように思います。彼女の歌はちゃんと取り上げてみようと思いますが、レパートリーの大半はヘブライ語の歌ですので、また後日にして、今日はトゥンバラライカというイディッシュ・ナンバーに行ってみます。この曲も色々なアルバムに収録されていて、イディッシュ・ソングをよく聞かれる方は、よくご存知だと思います。(イディッシュ・ソングの音源はこちら)
以下に訳詩(水野信男著「ユダヤ音楽の歴史と現代」アカデミア・ミュージックより)を上げておきますが、この哀愁のメロディだけでなく、しみじみとした箴言風な歌詞もヘブライの智慧を感じさせる内容で素晴らしいです。バラライカが出てくるから、ロシア系のユダヤ民謡でしょうか。
彼;雨が降らなくても育つものは何?
いつまで経っても燃え尽きないものは何?
涙を流さずに泣けるものは何?
彼女:雨が降らなくても育つもの、それは石。
いつまでも燃え尽きないもの、それは愛。
涙を流さずに泣けるもの、それは心です。
トゥンバラ、トゥンバラ、トゥンバラライカ
tumbalalaika spezzone prendimi l'anima roberto faenza
Pete Seeger & Ruth Rubin - Tumbalalaika (Dumbala Laika)
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コメント
私が中学生時代にナナ・ムスクーリという女性歌手が「Over and Over」という標題で英語で歌って大ヒットしました。
トニー・ガトリフというロマ(ジプシー)の血を引くフランス人映画監督の「僕のスウィング(Swing)」という映画をYoutubeで見つけて、音楽を聴いていたら、イディッシュで歌われているこの曲に出会いました。よぉーく聞くと、ドイツ語の方言みたいなものだと気づきます。アルファベットに書き下すとドイツ語とは思えないのですが、音を聞くとドイツ語だと気づきます。
投稿: tei | 2012年11月 1日 (木) 03時05分
tei様
コメント有難うございます。
ナナ・ムスクーリと言えば「日曜はダメよ」の印象が強いですが、トゥンバラライカも歌っていたのですね。トニ・ガトリフの映画もそれほど見てないので、知りませんでした。
イディッシュ語は中世のドイツ語を中心に、ヘブライ語の語彙や、周囲のスラヴ語(ポーランド語中心だと思いますが)も混じって成立したようです。
ですから研究者には、日本の場合はドイツ語ドイツ文学の専門家が多いですね。すぐ思い出すだけでも、上田先生、小岸先生がいらっしゃいます。
投稿: Homayun | 2012年11月 1日 (木) 10時56分
ZeAmi様
つたないコメントにお答え下さりありがとうございました。"Over and Over"は1969年発売ですね。中学校3年生でした。この曲で覚えた英単語と熟語は"over and over"と"whisper"かな。
実は、トゥンパラライカで初めてイディッシュの発音を聞きました。ドイツ語を学習したときに、中央ヨーロッパのユダヤ人が話すドイツ語に似た言葉だとは知っていましたが…。
ついでに言うと、ドイツ語のネイテイヴと初めて話したのが5年前53歳の時、ドイツ語学習35年目のことでした。それまでは、ドイツ語はまさしく独語(ひとりごと)でした。
投稿: tei | 2012年11月 1日 (木) 14時35分
tei様
遅レスで済みません。イディッシュ語に入っているヘブライ語の語彙については、少しは分りますが、スラヴ語の方は分りにくいように思います。ヘブライ語の方は明らかに宗教語中心のようですが、シャバト(安息日)がイディッシュ語ではシャベスとなるように、音が少し変わっています。
ギリシアではセファルディーのメロディが入っていたりもする例も見かけますが、ナナ・ムスクーリがセファルディーでなくイディッシュの方に目を向けたというのは、面白いです。
投稿: Homayun | 2012年11月28日 (水) 01時09分
たいへん参考になる記事をありがとうございました。イディッシュで歌っている歌手はChava Albersteinがよく知られていますが、彼女はこの歌を歌っていないのでしょうか。
投稿: 野田浩夫 | 2015年1月11日 (日) 01時59分
野田浩夫様
コメント有難うございます。イディッシュの歌と言えば、ここ20年ほどはハヴァ・アルベルシュタインが特に有名で、その前はタリラだったかなと思っています。
アルベルシュタインのCDが手元に残ってなかったので、すぐに確認できませんでしたが、ちょっと調べた限りでは、トゥンバラライカは入ってなかったようにも思います。
投稿: Homayun | 2015年1月14日 (水) 18時35分