レバノンのブズクの名手
レバノンのブズクについても、前に少し触れたかも知れません。しかし、今日のマタル・ムハンマドの映像をアップするのは初だったと思います。こんな映像まであるとは、本当に驚きです。ライヴ映像から弾き語りまで、驚きの連続でした。この人の録音は仏Ineditから「レバノンのブズク(ブソク)の名手マタル・ムハンマド追悼盤」がありました。私がこの人の演奏を初めて聞いたのは、オランダ・ユネスコのLP(国内発売は日本フォノグラム)が初めてでしたが、余りのスーパー・プレイにしばし呆然となったものです。それは1979年頃の話で、このシリーズにはイランの古典音楽(アスガール・バハーリー、ホセイン・マレク、ハッサン・キャサイー、オマール・シェリフ、ホセイン・テヘラーニ他)や、南インドのヴィーナ(スルヤナラヤナ)など、70年代初頭の各国音楽の名演を収めた名盤が結構ありました。CD化がほとんどされなかったのが、残念です。イネディと同じマカームで演奏していましたが、LPの演奏の方が緊迫感が強く、より輝かしい音色で素晴らしかったと思います。(以下は上記Inedit盤の紹介拙文)
マタル・ムハンマド(1939~95)はレバノンのブズク(ギリシアのブズーキの祖。長い棹を持つフレット付きリュート系弦楽器)の20世紀を代表する名手(ジプシーの家系出身)でありながら、20年位前から半身不随で演奏不能になり、Unesco盤のLP(PC-1715)位でしか紹介されてなかった。この録音は1972年の最盛期のもので、ライヴ録音のためアラブの聴衆のリアルな反応が手に取るように分かる。4つのマカームによるタクシーム(即興)は卓越した技巧による名演である。ブズーキ~サズ系の「さわり」の多い、深い音色が素晴らしい。(しかし、このパッショネートな演奏はやはりジプシー音楽家の特徴でしょうか。)
Matar Mohammed
Mattar Mohammed very old arabic bozok
Mattar Mohammed buzok 1
Mattar Mohammed buzok 2
Mattar Mohammed buzok 3
Mattar Mohammed buzok 4
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コメント
とても凄い演奏ですね。
楽器と体が一体化しているみたいです。
もうちょっと録音状態が良くて、3度和声が無ければ…
投稿: 白いりんご | 2010年5月17日 (月) 00時23分
白いりんご様
いつもコメント有難うございます。
3度和音のような西洋的なところですが、彼はロマの音楽家ですので、客を楽しませてなんぼの面が大きいからかも知れません。引き出しを多く持っているほど、聴衆は喜ぶと思いますから。
一方例のユネスコLPのバヤーティのタクシームなどでは3度和音などは出てきませんが(これは純アラブ的タクシームでは)、70年代以降の多くの聴衆を前にした演奏では、そういう取っ掛かりの良いフレーズが出てきているように思います。やはり当時のレバノンの音楽界も少なからず西洋的な要素が入ってきていて、聴衆にアピールするためにはそういうキャッチーな(かどうかははっきり分りませんが)表現が必要だったのかも知れませんね。
投稿: Homayun | 2010年5月18日 (火) 00時43分