ブルガリアのスペイン系ユダヤの歌
ブルガリアは近世までオスマン・トルコ領だった訳ですが、そのブルガリアに中世以来のユダヤ訛りのスペイン語(ラディノ語)を話すユダヤ人がいたことはほとんど知られてない事実かも知れません。バルカンのスラヴ世界にスペイン語? まるっきりヨーロッパの東西の端どうしではないか? 関係があるのか? というのが大方の感想でしょう。
15世紀末のレコンキスタの時期のスペインから、イスラム教徒と共に追放されたユダヤ人が移り住んだ先は、対岸のマグレブ(現在のモロッコ、アルジェリア、チュニジア)や、東地中海方面のオスマン帝国領内が中心でした。オスマン帝国内と言うのは、現在のトルコだけでなく、バルカン半島ではブルガリア、旧ユーゴ諸国が中心で、更にはパレスティナ(16世紀から20世紀初頭にイギリスの委任統治領になるまで長らくオスマン帝国領でした)にもセファルディーのコミュニティーがあったことはIneditの音源「ハザヌート」でも明らかです。スペイン系ユダヤ人(セファルディー)などのユダヤ音楽については、当ブログにも度々触れていますが、併せてこちらの拙文(かなり前のものですが)もご参照下さい。
セファルディーの歌では、女性の歌う哀切なロマンセ(物語歌のようなジャンル)が大変に美しく、80年代のエステル・ラマンディエの来日の頃から日本でも比較的知られているかと思います。大分前にTitanicレーベル(現在はおそらく活動してないと思います)からVoice of the Turtleというグループのセファルディー歌謡のCDが3枚ほど出ていました。ハヌカーのコンサート、トルコのセファルディー、ブルガリア&ユーゴのセファルディーの3枚で、こういう盤が出る位、どのセファルディー民謡がどこのセファルディーのコミュニティーに由来する歌か分かっているようです。
明らかにブルガリアのセファルディーの歌だと分かる名曲Una Pastoraがyoutubeにありましたので、今日はこの一曲を上げておきます。歌詞については、時間切れになってしまったので、また明日に回します。この曲は色々なCDに収録されています。ディスコグラフィーはこちら
セファルディーの歌は、一般のブルガリア人にとって、どう聞こえていたのでしょうか。これも前から気になっていた点です。余談ですが、ブルガリア・セファルディーの有名人の筆頭は、作家エリアス・カネッティだろうと思います。
Yasmin Levy Una Pastora (Sentir 2009)
上のディスコグラフィーの一枚目、ヤスミン・レヴィの最近作センティールから。
לאדינו :"אונה פסטורה" תיעוד ד"ר יצחק (איציק) לוי
こういう一般のスペイン系ユダヤの婦人の歌う独唱が本来の姿でしょう。
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