H mol Csardas
昨日は「エルデーイとハンガリー本国のフィドル・テクの比較」と題しながら、本国の方が少なかったので、チャールダーシュの代表曲の映像で追ってみたいと思います。今日のタイトルは「ロ短調のチャールダーシュ」という意味ですが、これは例の「エチェル村の結婚式」収録のチャールダーシュで、作曲者不詳ですがジプシー達の間で弾き継がれてきた有名な旋律です。この盤の中ではハ短調で演奏されています。youtubeも探せばかなりあります。ヴァイオリンの名人芸の切れ味もさることながら、低弦のビートと迫力も聞きもの。
こういうジプシー楽団の名人芸的演奏は、本当のハンガリー音楽(5音音階の民謡に代表される)でも、また本当のジプシー音楽(ケレマスキ・ジリやメセラキ・ジリ)でもないとバルトークやコダーイが主張するまでは、フランツ・リスト(ハンガリー狂詩曲を書いた名ピアニスト&作曲家)の誤った見解が通用していた訳ですが、それでも一種の混成音楽としてのチャールダーシュ自体の魅力は、これはこれでいささかも変わることはないと思います。哀愁美が迸る深い表情は、この音楽特有のものでしょう。
18世紀頃からヨーロッパ中を演奏旅行していたジプシー楽団の妙技を聞いて衝撃を受けたスペインのサラサーテがツィゴイネルワイゼン(これはもろチャールダーシュ)を書き、ドイツのブラームスがハンガリー舞曲集を書き、そしてイタリアのモンティが「チャールダーシュ」を書いた、それらは確かな事実です。
この曲は、ツェー・モル(ハ短調)で弾かれることが多い曲ですが、ハー・モル(ロ短調)や、アー・モル(イ短調)で弾かれることもあるようです。
c-moll csárdás
これは唯一「エチェル村の結婚式」の演奏に近いアレンジ。
Gipsy music c moll csárdások
H mol csardas (Budapest Gypsy Symphony Orchestra)
これだけ大編成の演奏も珍しいでしょう。
Roby Lakatos Galaspektakel Gypsy Csardas
ロビー・ラカトシュがいないのが残念ですが、ツィンバロム中心でこのチャールダーシュを演奏しています。
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コメント
ツィンバロム、と言うのですか?チェンバロに似た言葉ですね。
見惚れてしまいました。
投稿: 百本八本 | 2011年2月 6日 (日) 11時17分
百本八本様
いつも有難うございます。4本目に出てくるソロ楽器がツィンバロムです。イランのサントゥールがルーツですが、ヨーロッパに伝わってツィンバロムやダルシマーなどの打弦楽器になり、それに鍵盤がついてチェンバロになりました。
そして、そこにハンマーが取り付けられてピアノになった、ということになります。
イランのサントゥールは今でも盛んに弾かれています。大分前に当ブログでも取り上げてあります。
投稿: Homayun | 2011年2月 7日 (月) 00時27分