エルデーイとハンガリー本国のフィドル・テクの比較
色々見てくると、ハンガリー音楽においては、やはりフィドル・テクニックの面白さが際立ちます。それぞれ似ているようで、地方によってその違いは万華鏡のように変わります。エルデーイの素朴で荒削りなテクニックが、どういう風にブダペスト中心のチャールダーシュにおいてあのように洗練されていったのかが興味の焦点ですが、それを解明するのは難しいのかも知れません。おそらくオーストリアなどのドイツ語圏の音楽の影響を受けたのでしょうが、そのブレンド具合が絶妙だと思います。(不思議なことにラカトシュ以外の本場チャールダーシュは日本では余り人気がないように思いますが、何故でしょうか。思うに、歌入りが多いので歌詞が重要になってくる点かも知れません)
と言う訳で、今日はエルデーイとハンガリー本国のフィドル(ヴァイオリン)テクニックをなるべくソロ中心に少し見比べてみましょうか。これまでこのシリーズで見てきたグループや地方名、踊りの名前などが続々と登場します。
Székely verbunk Levestől (Szászcsávás band) - XVI. Székelyföldi népzene- és néptánctábor
サースチャーヴァーシュ・バンドのメンバーによるセーケイのヴェルブンク。この磨きぬかれたテクニックを間近で見ると、凄いとしか言いようがないです。ヴェルブンクのあの激しいステップとヴェルブンコシュの勇ましい様子もダブって聞こえます。
Kommandó Kocsma Part 3 of 4
これも凄いですが、ここまで松脂をこびりつかせてるのも滅多に見ません。上の方は真っ白です(笑) Csányi Sándor accompanied by his son Alin (viola) (members of the Szászcsávás Band from a village in Erdély (Transylvania) と解説にあります。チャーニ・シャーンドルがサースチャーヴァーシュ・バンドのメンバーなのでしょう。立てて構える伴奏のヴィオラ(ヴァイオリンのことも多いですが)は強烈な重音を出し易いように変則調弦らしいです。
Verbunk - Alcsíki prímás / Szekler Hungarian fiddler
セーケイ(チークかも)のフィドラーが演奏しているのは、チークのヴェルブンク他。フレーズ的に少しユダヤのクレズマーに似ています。解説にverbunk tunes from Csík County and Homoródalmás/Mereşti (Udvarhely County)とあります。後者については不明。
Prímásverseny - Boda Gellért
これは都会のチャールダーシュ風な演奏ですが、エルデーイを思わせる小編成になっています。チャールダーシュの洗練された憂愁美の後ろに、ルーツの荒削りなフィドリングの片鱗が見えます。ハンガリー中部のケチケメトでの09年のコンペティションの模様のようですが、何とハンガリー系住民の多いスロヴァキアのAbaújszinaのハンガリー音楽でした。
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コメント
1曲目、ヨーロッパなイメージの曲ですね。
私のヨーロッパの音楽のイメージは、細かい細かい音が吹雪のようにやってきて、休まなくて終わらなくて、聴いているうちに、全然別の感じがして、細かい音がひびきあって、大きな絵みたくなって・・・
って、そんなイメージでした。
投稿: 百本八本 | 2011年2月 4日 (金) 23時02分