アルマンドにはアウフタクトあり
かなりラフで刺激的な意見が続きましたので(笑)、ここで正確な情報を確認しておきたいと思います。
アルマンドという舞曲はドイツ風とされていますが(フランス語でドイツのことはアレマーニュと言いますので)、バロック期に元の舞曲から発展して器楽的に発達し、今では元々どういう風に踊られていたのか分からなくなってしまったようです。アルマンド、クーラント、サラバンド、ジーグがバロック音楽の組曲の中心ですが、冒頭にはプレリュードが、サラバンドとジーグの間にはメヌエット、ブーレ、ガヴォットのいずれかが入ることが多くなっています。中核の4曲は、おおむね緩急緩急のテンポ設定になっていると思いますが、冒頭のアルマンドが一番抽象的な性格を早くから持ち、これが後に交響曲のスタイルにまで繋がって行くようです。アウフタクトから始まる(後述)ことに加え、標準的に思える4拍子ですが、アクセントのつき方も特徴があったように思います。
アルマンドの特徴として、アウフタクトで始まる、というポイントがありました。「タターン」という感じに、頭の小節から前にはみ出た8部音符1個、もしくは16分音符1個のアウフタクトが付くのが特徴です。J.S.バッハの6曲の無伴奏チェロ組曲の第2曲アルマンドの中で、3番だけが三つの音のアウフタクトがあります。これは無伴奏チェロ組曲に限らず、例外的なものでした。参考書籍:鈴木秀美著「無伴奏チェロ組曲」東京書籍 (指番号なしのスコア付き 全6曲詳解書)
昨日はソルブ民謡との比較のために、明朗快活な調子の無伴奏3番と4番のアルマンドを選びましたが、今日は対照的な短調のアルマンド3曲で揃えました。明日以降、ソルブに限定せず東独のフォークミュージックで、アウフタクトで始まる曲がないか、探してみたいと思います。見当たらなければ、またポーランドに戻る予定です。
Bach - Cello Suite No.5 ii-Allemande
5番のアルマンドも、この通りアウフタクトから。しかしマイスキーの5番は最高!
J. S. Bach: Partita in d minor, 1. (Itzhak Perlman)
終曲のシャコンヌで有名な無伴奏ヴァイオリンのパルティータ2番冒頭のアルマンド。やはりアウフタクトから始まります。イツァーク・パールマンの往年の名演。
Bach, BWV 1013, Allemande, Galway-Flute
無伴奏フルート・パルティータの冒頭のアルマンドの場合も、アウフタクトから始まっています。ゴールウェイの見事な演奏で。
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コメント
バッハ、いいですね。器楽曲好きです。
アルマンド、クーラント、サラバンド、ジーグなどは、もともと舞曲なのですね。
歌舞は、一体なものなのですね。音楽だけの場合も。
投稿: 百本八本 | 2011年9月23日 (金) 17時05分
百本八本様
いつも有難うございます。アルマンドだけ舞曲としての輪郭が不明確なので、いつも気になっていましたが、そういう訳でかなり元の姿が分からなくなっているようです。
アンナ・ビルスマの古楽アプローチが出てきてからでしょうか、舞曲の側面を強調した演奏が増えたように思います。マイスキーのはどちらかと言えば今では時代と逆行したロマン的な解釈かも知れませんが、私は彼の演奏も好きです。
投稿: Homayun | 2011年9月26日 (月) 00時37分