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2011年11月14日 (月)

シャジャリアン父子の歌声

最近は、ルーマニア~南コーカサス~チェチェンなどを巡って来ました。一見脈絡がないようにも見えますが、共通しているのは、いずれも旧オスマン帝国領だと言う事。いかにこの国が広大だったかが分かります。
最近ホマーユン・シャジャリアン他のCD3枚組で、ショウグナーメという大作がBarbadから出ました。実は、試しに入れた盤がたまたま不良盤でした(^^;(笑) 2枚目がダブっていて3枚目が入ってなかったのですが、2枚目まで聞いて気がついたのは、非常にオスマン音楽的に聞こえるという点です。特に一曲目はアブデュルカディル・メーラギー(Abdulkadir Meragi 1350-1435))作曲のRast Nakis Besteそのものでした。
この曲は、14~15世紀という古い時代ですが、オスマン古典音楽の名曲として知られていて、Kalan Muzikの「トルコ古典音楽の遺産(14~20世紀の作品) Miras」など、入っている盤はかなりあると思います。(余りに耳に残る名調子なもので、私も昔ウードでメロディをなぞって弾いたことがありました) 
それもそのはず、このショウグナーメは、セルジュク朝末期~ティムール朝期初頭にかけ、中世イラン音楽の音楽理論を書いた、ティムール朝期のアブドゥルガーデル・マラーギー(イランではこの表記が一般的なようで)の文献を、このアルバムの監修のMohammad Reza Darvishiが解釈した内容そのものでした。しかしメーラギーとマラーギーが一致していなかったため、その耳馴染みのラスト・ナキシュ・ベステが冒頭いきなり飛び出し、非常に驚いてしまった次第(笑) 
ジェム・ベハール著「トルコ音楽にみる伝統と近代」によると、メーラギーは14、15世紀の南アゼルバイジャン出身のトルコ系音楽家、となっています。この頃はティムール朝だったのでしょうが、オスマン初期の作曲家として知られている程、この時期のこの辺りの歴史は、イランなのかトルコなのか判別がつかない程、混沌としていたということでしょうか。
ペルシア音楽好きの方には周知の事実ですが、ホマーユン・シャジャリアンは、あの大歌手モハメド・レザ・シャジャリアン氏の息子さんです。アーヴァーズだけでなく、トンバクも巧みに叩き歌われることでも知られています。ショウグナーメ自体のyoutubeは現在探していますので、今日はシャジャリアン父子の絶品アーヴァーズ・ソロをたっぷりお聞き下さい。Rast Nakis Besteは、明日以降トルコ音楽枠で取り上げる予定です。

Homayun Shajarian

Homayoun Shajarian

Shajarian Bidad

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ペルシア音楽」カテゴリの記事

コメント

アブデュルカディル・メラギについてですが
http://www.turkishmusicportal.org/composer.php?id=40&lang2=tr
によれば生年ははっきりしないとのことです。
(およそ1353年から1360年の間)

ラスト・ナクシュ・ベステですが、個人的には1435年没というアブデュルカディル・メラギの作曲した歌が今に伝えられて残っているのには無理があるように思えます(あまりに古すぎる)ので、本当にアブデュルカディル・メラギが作曲したものなのか疑問に思っています。オスマン朝期の芸術音楽の世界では後代の人が過去の有名な人物の名前を借りて作った作品があるようですので。(ファーラービー[870年頃~950年]作曲のペシュレヴというのもあります。これはいくらなんでも古すぎて明らかに後代の偽作だと思います)一番古いらしいイラーヒー(イスラームの聖歌)でもザキリ・ハサン(1622年没)の作のものということですし。もっとも後代の偽作だったとしてもラスト・ナクシュ・ベステの歌の旋律の価値が低いわけでは無く、素晴らしい旋律だと思いますが。

アブデュルカディル・メラギの生まれは上述のURLではアゼルバイジャンのメラガ出身とのことです。
「アゼルバイジャンのメラガ」については良く分かりませんが、杉山正明「興亡の世界史09 モンゴル帝国と長いその後」(講談社、2008年)にある「アゼルバイジャン地方のマラーガ」のことではないか、と思っています。
この本によれば、マラーガはモンゴル帝国を築いた英雄チンギス・カンの孫フレグの国フレグ・ウルス(通称イル・カン国。モンゴル帝国の後継国家のひとつで、中東のペルシャの地を支配した。アゼルバイジャンを本拠地にしていた)の主要都市で(その他にタブリーズも主要都市だった)、フレグはマラーガに天文台を建設させた。そこには天文学者ナスィールッディーン・トゥースィーがいた、とのことです。

マラーガをアラビア語のニスバの形にするとマラーギー(マラーガ出身の)で、Meragiなのかな、と思います。つまりアブデュルカディル・メラギで「マラーガ出身の全能者のしもべ(アブデュルカディル)」なのかなぁ、と。(アブド=しもべ・奴隷、カーディル=能力ある、万能の、全能の→全能者=アッラーの事)

上述のURLではアブデュルカディル・メラギの人生は良く分からないと書いてあります。どこまで信用していいのか分かりませんが、Wikipediaには詳しく書いてあって、それによると、

アブド・アル=カディル・アル=マラギ・ブン・ガイビ Abd al-Qadir al-Maraghi b. Ghaybi(14世紀中頃生-A.D.1435年没)はペルシャ人の詩人、音楽家、芸術家。イスラーム百科事典(エンサイクロペディア・オブ・イスラム Encyclopedia of Islam)によれば、彼は最も偉大なペルシア人の音楽に関する著作家である。

人生

アブド・アル=カディル・ブン・ガイビ・アル=ハフィズ・アル=マラギ Abd al- Qadir b. GHaybi al-Hafiz al-Maraghiは14世紀の中頃イランのマラガ Maraghaで生まれた。彼は1379年頃、ジャライル朝(注※1)のスルタン・フサイン1世(注※2)の宮廷吟遊詩人のひとりになった。ジャライル朝のスルタン・アフマド(注※3)の元で、彼は宮廷吟遊詩人の長に任命された。ティムールがバグダードを1393年に攻略したとき、彼はティムール朝の首都サマルカンドに移送された。1399年に彼はティムールの気まぐれな息子ミーラーン・シャー(注※4)の役務でタブリーズにいた。アブド・アル=カディルはミーラーン・シャーのとっぴな振る舞いの原因とされ、ティムールは彼を捕らえるために迅速に行動した。しかしアブド・アル=カディルはあらかじめ警告されおり、バグダードのスルタン・アフマドのジャライル朝宮廷に逃げた。ティムールは1401年にバグダードを再び奪回し、アブド・アル=カディルをサマルカンドに連れ帰った。アブド・アル=カディルはティムールの息子シャー・ルフ(注※5)の宮廷で才気あふれる人物のひとりとなった。彼はまた1421年にオスマン帝国のスルタン・ムラト2世(注※6)のために音楽論文(Maqasid al-Alhan)を書いた。彼は1435年にサマルカンドで没した。

※注1 ジャライル朝:1340年 - 1411年。イルハン朝(フレグ・ウルス)の解体後にイラン西部からイラクにかけての旧イルハン朝西部地域一帯を支配したモンゴル系のイスラム王朝。

※注2 スルタン・フサイン1世:ジャライル朝の第3代君主。在位1374年 - 1382年。1382年に弟のアフマドによって暗殺された。

※注3 スルタン・アフマド:ジャライル朝の第4代君主(在位:1382年 - 1410年)。第3代君主フサイン1世の弟。ティムールがイラン方面に進出してきた際、アフマドは東部アナトリアを支配するトルコ系の遊牧部族連合黒羊朝と結んで対抗したが、圧迫されてタブリーズからバグダードに退却。さらにティムールに敗れてバグダードを奪われた。

※注4 ミーラーン・シャー:ティムールの子でアゼルバイジャン・タブリーズのアミール(総督)だった。弟はティムール朝第3代君主シャー・ルフ、孫はティムール朝第7代君主アブー・サイード。

※注5 シャー・ルフ:1377年8月30日生、1447年3月12日没。ティムール朝の第3代君主(在位:1409年 - 1447年)。初代君主・ティムールの4男。

※注6 ムラト2世:1404年生、1451年2月3日没。オスマン帝国の第6代皇帝(在位: 1421年-1444年、1446年-1451年)。2度即位している。

投稿: 白いりんご | 2011年12月18日 (日) 02時43分

白いりんご様
いつも詳細な情報を有難うございます。
やはりイランやトルコの古い時期の音楽家については、そのような状況なんですね。
マラーギー氏は、ティムール朝期に、音楽活動のために監獄に入れられたこともあるらしいと聞きました。
ショウグナーメは、彼の名を冠したアンサンブルによる演奏で、イラン現代の中心的な音楽家が集まっていることからも、今後も何か展開があるように思います。

投稿: Homayun | 2011年12月20日 (火) 01時07分

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