« 2016年4月 | トップページ | 2016年6月 »

2016年5月

2016年5月31日 (火)

弦楽四重奏曲13番&大フーガ(ABSQ)

先週の放送で追悼曲として流したベートーヴェンの弦楽四重奏曲13番の第5楽章「カヴァティーナ」ですが、全曲通しで聞くと、あの楽章のこの上ない美しさが、より際立ちます。晩年の堪え難い寂寥感の吐露とも言えますが、本来その後の楽章に用意されていた大フーガは、そんな弱さを力を振り絞って乗り越えようとするベートーヴェンらしい音楽になっています。しかし、余りに難解・晦渋・長大な音楽のため楽譜の出版社からOKが出ず、6楽章は別に書き直され、大フーガは独立した作品になっています。13番については何年か前にも取り上げたと思いますが、今回はABSQ(アルバン・ベルク弦楽四重奏団)の名演です。是非13番全曲をお時間のある時に聴いてみて下さい。 カヴァティーナは23分30秒からです。2本目に大フーガを上げておきます。

Beethoven String Quartet No 13 Op 130 in B flat major Alban Berg Quartet

Beethoven - Große Fuge B-Dur Op. 133 - Alban Berg Quartett

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2016年5月30日 (月)

Azerbaijani Folk Song ''Lachin''

今日の一本は、ギターを入れてモダンさも兼ね備えながら、ケマンチェの泣き節をたっぷり聞かせて、耳が吸い寄せられました。旋法は同じくバヤーテ・シーラーズでしょうか。太鼓はタールでしょうか。乾いた音色が音楽はもちろん、バックの景色にも合っています。ムガームの超絶プレイよりも、こういう哀感溢れる民謡の方が、すっと耳に入ってきます。アゼルバイジャンのケマンチェの笛のようにも聞こえる曇った中低音域や、艶のある高音域の音色は、本当に素晴らしいです。

ANNA RF feat IMAMYAR HASANOV - Azerbaijani Folk Song ''Lachin''

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2016年5月27日 (金)

アゼリのサズとケマンチャ

今日の映像は、前半はトルコ系のサズ独奏、後半は一般にペルシアの影響が濃いと言われるアゼルバイジャンのムガーム音楽のタール抜きバージョンと言って良いでしょうか。中央アジアのテュルク系音楽にストレートに繋がるサズに対し、即興性高いケマンチャは、ペルシア的な典雅さと思いきや、やっぱりテュルクの遊牧民的な躍動感が勝っているように聞こえます。タパン?のストイックな叩き方もカッコいいです。

National Azeri Saz and Kamancha Music! Super!

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2016年5月26日 (木)

ハビル・アリエフのケマンチャ

アゼルバイジャンのケマンチャの名手の妙技をもう少し見てみます。「カスピ海の旋律」にあった表記のアリエフ・ガビリ・ムスタファ・オグリか、またはハビル・アリエフか、正確な発音に近い表記がどちらなのか、よく分りませんが、彼の動画も結構上がっているようです。ハビル・アリエフという表記もどこかで見かけましたので、今日はこちらにしておきます。一本目のバヤーテ・シーラーズはメロディ・ラインはシンプルでも、左手の装飾のかけ方が尋常じゃない複雑さなのは、こういう動画を見るとよく分ります。モノクロのセガー・ムガームの方は若い頃の映像で、セガーらしいエキゾチックさが感じられます。とは言ってもイランのセガーとは音階が違うと思いますが。名歌サリ・ゲルンを弾いている映像もありました。

Habil Aliyev Bayat Shiraz Kamanche Azari

Habil Əliyev - Segah muğam

Habil Əliyev - Sarı gəlin / Habil Aliyev - Sari gelin ( Azerbaijan)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2016年5月25日 (水)

追悼特番1

ゼアミdeワールド8回目の収録に行ってきました。
16日に大変お世話になりました音楽プロデューサーの星川京児さんが亡くなられましたので、今週と来週は追悼特集にしました。放送は26日木曜午後5時15分、再放送は29日日曜午後3時からです。宜しければ是非お聞き下さい。

星川さんの追悼曲として、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲13番の5楽章をかけました。併せてキングの旧WMLシリーズの「カスピ海の旋律」から、アゼルバイジャンのケマンチャ演奏も時間まで。(現在のワールドルーツミュージックライブラリーシリーズでは「アゼルバイジャンの音楽」に収録)

葬儀の帰りに奥さんから、星川さんはクラシックにも相当詳しかったと聞きました。クラシックには余りご興味ないかと思って話題にしたことはありませんが、是非色々話をうかがいたかったです。13番の本命である第5楽章「カヴァティナ」は、その寂寥感溢れる無上の美しい旋律で知られています。深遠なベートーヴェン後期作品の中でも白眉と言えると思います。誰かを告別するような、とよく形容されますが、事実葬儀にかけて欲しいと希望する人も多いそうで、数多くの人が、この楽章が奏される中、黄泉路へ旅だって行かれたそうです。この曲だけは、フェイドアウトせずに全曲かけました。放送ではブダペスト弦楽四重奏団の演奏でしたが、ブログではイタリア弦楽四重奏団です。
「近藤君、ベートーヴェンなんてやめてくれよ(笑)」とは言われないと思いますが(笑)

Beethoven: String Quartet No.13 op.130 V. Cavatina Quartetto Italiano


南コーカサスの国の一つ、アゼルバイジャンは言語的にはトルコ系ですが、音楽や楽器の面では南隣のペルシアの影響を強く受けていて、ケマンチャもドゥンベクも楽器名からしてそっくりです。最高の名手アリエフ・ガビリ・ムスタファ・オグリが、イランの古都シーラーズの名を冠した旋法の哀愁の名旋律を聴かせます。この曲は、90年代前半のNHKFM「世界の民族音楽」の星川さん司会の回でテーマ曲に使われていました。星川さんプロデュースの録音です。83年の小泉文夫さん逝去の後、このFM番組を引き継いだ内のお一人です。

カスピ海の旋律  バヤーテ・シーラーズ
Habil Əliyev - Bayatı Şiraz

| | コメント (4) | トラックバック (0)

2016年5月24日 (火)

ヴァイオリン・ソロのデイラーマン

ヴァイオリン独奏によるデイラーマンと言えば、真っ先に思い出すのは、アボルハサン・サバーの演奏ですが、動画で確認できる映像がありました。これは嬉しい! まるでフイゴのように音を送り続ける右手のボウイングの上で、いかに左手で細かく装飾が付けられているかがよく確認できます。
2本目はデイラーマンがグーシェの一つとして入っているダシュティ旋法の独奏ですが、2分過ぎからデイラーマンの節も出てきます。

Violin Ostad Shamlou - Deylaman - Tamrin Dashti Asare Ostad Saba

violin solo iran Dashti.wmv

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2016年5月20日 (金)

デイラーマンとソラリス

なかなかブログを書いている時間がないので、もう一つのアカウントからの転載で失礼します。19日の放送では、以下の内容で進めました。22日午後3時からも再放送がありますので、宜しければ是非お聞き下さい。来週は星川さんの追悼曲として、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲13番の5楽章「カヴァティーナ」をかけようかと思います。併せて90年代前半のNHKFM「世界の民族音楽」の星川さん司会の回でテーマ曲に使われていた「カスピ海の旋律」(アゼルバイジャンのケマンチェ)も。私が実際に星川さんのお声を初めてこの番組で聞いたのは、87年頃のニザーミ・ブラザースの紹介だったと思います。夜のラーガ「ダルバリ」によるカッワーリである等解説されていたのをよく覚えています。ニザーミ・ブラザースの録音はIneditの「アジアのイスラーム音楽」に収録されていました。当時はLPだったかも知れません。小泉文夫さんが83年に亡くなられて、その後この番組を引き継がれた数人の内、成澤玲子さんや星川さん水野信男先生の司会が多かったように記憶しています。

~~~~~~~~~~~~~~

イランのヴァイオリン演奏と西洋クラシックのチェロ演奏をかけてみました。今後こういう民族系とクラシックを並置するパターンを増やそうかと思います。

<アボルハサン・サバー(1902-1957)のデイラーマン 抜粋>
歌か笛のように聞こえるかと思いますが、これはれっきとしたヴァイオリン・ソロで、これほど巧みに歌を模倣している例は他に聞いたことがないほどです。元は北イランの民謡ですが、ダシュティ旋法のレパートリーに入っています。小泉文夫さんが「世界で最も美しい歌」として、どこかにこのデイラーマンについて触れていたように思いました。米作も見られるような日本に似た風景の地方ですから、日本人の琴線に触れる歌が生まれたのかも知れません。
サバーは沢山の楽器を演奏できたそうですが、特にヴァイオリンとセタールの名人として知られ、伝説的な大音楽家Mirza AbdollahやDarvish Khanの弟子ですから、19世紀カージャール朝の音楽を最も正統に継承していた名手と言える人です。彼はFaramarz Payvar, Parviz Yahaghi, Dariush Safvat, Hossein Tehraniなどの演奏者を育て、この中のサフヴァトの始めたイラン伝統音楽保存センターの活動の中からは、Mohammad Reza Lotfi, Hossein Alizadeh, Hossein Omoumi, Parisa, Dariush Talai, Majid Kianiなど、現代を代表する錚々たる演奏家達を排出しています。このようにサバーは現代ペルシア古典音楽の父とも言って良い人です。

比較で、古典声楽と元の民謡を少しずつかけてみます。
<デイラーマンの歌  古典声楽版  ホセイン・ガヴァーミ  抜粋>
<デイラーマンの歌  元歌の民謡  サイド・ホセイン・ミル・アハマディ  抜粋>

youtubeは、バナーンの名唱で。


もう一つ、ヴァイオリンの使用例としてイラン革命前の歌姫グーグーシュの歌唱から、ペルシアの伝統的な舞曲レングの8分の6拍子のリズムによる曲をかけます。グーグーシュのチャーミングな歌も良いですが、トンバク伴奏でヴァイオリンが晴れやかに奏でるマーフール旋法の明るい曲調が素晴らしいです。
<グーグーシュ Shode Shode  抜粋>

最後に4月9日の松山市民会館での無伴奏チェロ組曲全曲演奏会が素晴らしかったナサニエル・ローゼン師匠の「Reverie(空想?)」というアルバムから、J.S.バッハのコラール・プレリュード 『イエスよ、わたしは主の名を呼ぶ』(BWV 639)です。元はパイプ・オルガンの曲で、チェロとピアノに編曲されています。タルコフスキーの映画「惑星ソラリス」に使われたことで有名です。
5月18日には無伴奏チェロ組曲全曲(2枚組)がリリースされました。

<Nathaniel Rosen  J.S.Bach / Jesus Christ,I Implore Thee 抜粋>

Solaris (Солярис)
https://www.youtube.com/watch?v=zf38gxK54dI

Johann Sebastian Bach - Chorale prelude F Minor ( "Solaris" A. Tarkovsky).flv
https://www.youtube.com/watch?v=mGb0tP1Gz5Y

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2016年5月18日 (水)

Ahmad Ebadi & Asadollah Malek

そんなアフマッド・エバーディーと、ヴァイオリンのアサドッラー・マレクのデュオが出ていました。動画で見れないのは残念ですが。エバーディーは、かの有名なミルザー・アブドゥッラーの息子で、19世紀のカージャール朝のペルシア古典音楽を最も正当に継承していたセタールの巨匠(1907-1992)。この人は、あの繊細なセタールから、強靭な音を紡ぎ出します。一方、ホセイン・テヘラーニは1912年生まれ1974年没で、エバーディーの方が大分長生きしたので、あの写真が残ったようです。

Ahmad Ebadi & Asadollah Malek

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2016年5月17日 (火)

テヘラーニのトンバク(ザルブ)

22日の星川さんの葬儀に行くことに決めました。大変お世話になった方ですから。星川さんの訃報は朝日新聞にも載っていました。松戸にいた頃は毎年4月の花祭りにCD即売でも呼んで頂いていた浦和・延命寺で葬儀があります。住職の河野さんにお会いするのも11年ぶり、そして何と9年ぶりの上京です。
先ほどから飛行機と宿の手配にかかりきりでしたが、取り急ぎブログも上げておきます。「現代トンバク奏法の父」ホセイン・テヘラーニのトンバク演奏の諸相を記録した長編で、歌の伴奏や、ソロ、自身歌いながら叩いていると思われる部分まで、色々収録されています。写真の貴重なものがいくつかあり、サントゥール奏者ホセイン・マレクとのツーショットも目に留まりましたが、最後に病床のテヘラーニを見舞っている白髪の紳士は、セタールの巨匠アフマッド・エバーディーではと思いました。もしかしたら、亡くなる直前かも知れません。しかし、何故かここでも黒いサングラスをかけています。

Hosain Tehrani

| | コメント (0) | トラックバック (0)

訃報

星川京児さんが亡くなられたそうです。16日に用事があってメールしたら、16日に入ってすぐ天に召されましたと奥さんから先ほどメールがありました。悲しみと寂しさで言葉になりません。ご冥福をお祈り致します。
ショックで今日は通常ブログは書けません・・・ m(_ _)m

星川さんは80年代には民族音楽情報誌「包」(パオ)の編集長として、近年はキングのワールドルーツミュージックライブラリーなどのプロデュースで知られ、同シリーズ中のナーゼリーのCDのライナーノーツの執筆依頼を頂いたことや、共著参加させて頂いた音楽之友社の「世界の民族音楽ディスク・ガイド」のことなど、色々とお世話になった方です。90年代前半に六本木ウェイヴ内のストアデイズにいた頃に、お客様として知り合いました。谷中アノマでの05年の当店移転前セールをさせて頂いた時の賑わいと楽しさは決して忘れられません。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2016年5月13日 (金)

イランのウード(バルバット)

イランのウード(あるいはバルバット)奏者では、オープニングと3回目の放送でもアブドルワハブ・シャヒーディーをかけていますが、他にもマンスール・ナリマンや、若い世代ではダスタン・トリオのホセイン・ベールズニアーがいます。ナリマンの音源は10年ほど前に活動休止してしまったディスクアラブの盤だけだったので、現在はHPからは名前が消えています。実はこの人のウード教本が手元にありまして、イランでのウードの調弦の仕方がよく分らないので上手く活用は出来ていませんが、少し音楽の構造は分かる感じにはなっています。youtubeには演奏の録音を含むインタビュー中心の2時間近い映像がありました。ご興味ある方は、是非じっくりご覧下さい。

Mansure Nariman

پیکر منصور نریمان، بربط نواز ایرانی دفن شد

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2016年5月11日 (水)

Komm lieber Mai

ゼアミdeワールド6回目の収録に行ってきました。
ペルシア音楽の楽器紹介の途中でしたが、前半はモーツァルトの<春へのあこがれ>をかけました。ウィーン少年合唱団の独唱者の清澄この上ない歌唱です。
5月なのに雨予報が多いので、五月晴れをもっと見れますように、と願いを込めてかけました。
音楽の「照る照る坊主」になればいいのですが。

Komm lieber Mai und mache - Osterlieder zum Mitsingen || Kinderlieder

続いて、6月19日の湯ノ浦ハイツでの今治市民弦楽合奏団(私は合奏団では去年からファースト・ヴァイオリンに回っております)の蘭展コンサートのお知らせをして、最後にトンバクの紹介をしました。ホセイン・テヘラーニのソロと、前回かけられなかったアスガール・バハーリーとテヘラーニのバヤーテ・エスファハーンでの白熱のチャハールメズラーブです。旋律楽器に当意即妙に応じるトンバクの唯一無二の妙技をお楽しみ下さい。
放送は木曜の5時15分から、再放送は日曜3時からです。宜しければ是非お聞き下さい。

Ostad Hossein Tehrani talking about Ostad Saba

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2016年5月10日 (火)

バハーリーのアーヴァーズ伴奏

何と、往年のケマンチェの至宝アスガール・バハーリーが、男性のアーヴァーズの伴奏をしているカラー映像がありました。タハリールたっぷりの部分の伴奏で、旋法はおそらくバヤーテ・エスファハーンだと思います。バハーリーと言えばエスファハーンを即座に思い浮かべるほど、彼のイメージとオーバーラップしています。最初に聞いたユネスコ盤LPの影響は大きいと思いますが、枯れた味わいは何ものにも代え難いものがあると思います。
明日のゼアミdeワールドの収録ではトンバクとセタールを今の所予定していますが、前回ユネスコ盤のバハーリー&テヘラーニのチャハールメズラブ直前で終ってしまったので、トンバクの紹介でその部分をかけようかと思っております。放送は木曜5時15分からです。

Singer:Ali Rostamian Kamanche:Asghar Bahari (1\2)

Singer:Ali Rostamian Kamanche:Asghar Bahari (2\2)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2016年5月 5日 (木)

アスガール・バハーリーのケマンチェ

今日のゼアミdeワールドでは、往年のケマンチェの巨匠アスガール・バハーリー(1905 –1995)とトンバクのホセイン・テヘラーニのデュオ、タールのオマール・シェリフとホセイン・テヘラーニのデュオをかけました。70年代にオランダのフィリップスから出ていたユネスコ・コレクションのLP音源です。79年にこの盤を聞いたので、37年後の今このようなことをしているという、きっかけになった特別な盤です。共に「ケマンチェの神様」と「トンバクの神様」と並び称される、最高の名手の名演です。残念ながらCD化はされていないようです。一本目で出てくる歌手は、若き日のシャジャリアンのようです。これは08年頃に当ブログでペルシア音楽を取り上げていた頃には見なかった動画です。テヘラーニとのデュオ映像も、もう少し探してみようかと思います。

محمد رضا شجریان ، علی اصغر بهاری و.... جشن هنر شیراز

Asghar Bahari

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2016年4月 | トップページ | 2016年6月 »