デイラーマンとソラリス
なかなかブログを書いている時間がないので、もう一つのアカウントからの転載で失礼します。19日の放送では、以下の内容で進めました。22日午後3時からも再放送がありますので、宜しければ是非お聞き下さい。来週は星川さんの追悼曲として、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲13番の5楽章「カヴァティーナ」をかけようかと思います。併せて90年代前半のNHKFM「世界の民族音楽」の星川さん司会の回でテーマ曲に使われていた「カスピ海の旋律」(アゼルバイジャンのケマンチェ)も。私が実際に星川さんのお声を初めてこの番組で聞いたのは、87年頃のニザーミ・ブラザースの紹介だったと思います。夜のラーガ「ダルバリ」によるカッワーリである等解説されていたのをよく覚えています。ニザーミ・ブラザースの録音はIneditの「アジアのイスラーム音楽」に収録されていました。当時はLPだったかも知れません。小泉文夫さんが83年に亡くなられて、その後この番組を引き継がれた数人の内、成澤玲子さんや星川さん水野信男先生の司会が多かったように記憶しています。
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イランのヴァイオリン演奏と西洋クラシックのチェロ演奏をかけてみました。今後こういう民族系とクラシックを並置するパターンを増やそうかと思います。
<アボルハサン・サバー(1902-1957)のデイラーマン 抜粋>
歌か笛のように聞こえるかと思いますが、これはれっきとしたヴァイオリン・ソロで、これほど巧みに歌を模倣している例は他に聞いたことがないほどです。元は北イランの民謡ですが、ダシュティ旋法のレパートリーに入っています。小泉文夫さんが「世界で最も美しい歌」として、どこかにこのデイラーマンについて触れていたように思いました。米作も見られるような日本に似た風景の地方ですから、日本人の琴線に触れる歌が生まれたのかも知れません。
サバーは沢山の楽器を演奏できたそうですが、特にヴァイオリンとセタールの名人として知られ、伝説的な大音楽家Mirza AbdollahやDarvish Khanの弟子ですから、19世紀カージャール朝の音楽を最も正統に継承していた名手と言える人です。彼はFaramarz Payvar, Parviz Yahaghi, Dariush Safvat, Hossein Tehraniなどの演奏者を育て、この中のサフヴァトの始めたイラン伝統音楽保存センターの活動の中からは、Mohammad Reza Lotfi, Hossein Alizadeh, Hossein Omoumi, Parisa, Dariush Talai, Majid Kianiなど、現代を代表する錚々たる演奏家達を排出しています。このようにサバーは現代ペルシア古典音楽の父とも言って良い人です。
比較で、古典声楽と元の民謡を少しずつかけてみます。
<デイラーマンの歌 古典声楽版 ホセイン・ガヴァーミ 抜粋>
<デイラーマンの歌 元歌の民謡 サイド・ホセイン・ミル・アハマディ 抜粋>
youtubeは、バナーンの名唱で。
もう一つ、ヴァイオリンの使用例としてイラン革命前の歌姫グーグーシュの歌唱から、ペルシアの伝統的な舞曲レングの8分の6拍子のリズムによる曲をかけます。グーグーシュのチャーミングな歌も良いですが、トンバク伴奏でヴァイオリンが晴れやかに奏でるマーフール旋法の明るい曲調が素晴らしいです。
<グーグーシュ Shode Shode 抜粋>
最後に4月9日の松山市民会館での無伴奏チェロ組曲全曲演奏会が素晴らしかったナサニエル・ローゼン師匠の「Reverie(空想?)」というアルバムから、J.S.バッハのコラール・プレリュード 『イエスよ、わたしは主の名を呼ぶ』(BWV 639)です。元はパイプ・オルガンの曲で、チェロとピアノに編曲されています。タルコフスキーの映画「惑星ソラリス」に使われたことで有名です。
5月18日には無伴奏チェロ組曲全曲(2枚組)がリリースされました。
<Nathaniel Rosen J.S.Bach / Jesus Christ,I Implore Thee 抜粋>
Solaris (Солярис)
https://www.youtube.com/watch?v=zf38gxK54dI
Johann Sebastian Bach - Chorale prelude F Minor ( "Solaris" A. Tarkovsky).flv
https://www.youtube.com/watch?v=mGb0tP1Gz5Y
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