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2016年6月15日 (水)

アリザーデの音楽

ゼアミdeワールド11回目の収録に行ってきました。
今日はタール、セタール、タンブールの名手でもあるホセイン・アリザーデの音楽について取り上げました。これまで往年の巨匠を中心に紹介してきましたので、1951年生まれのアリザーデさんは若い方ですが、現在30代以下くらいのタール、セタール奏者には彼に教わったという人がかなり多いです。演奏だけでなく、教育者としても第一人者のようです。私は93年頃の六本木ウェイブにいる頃から注目していて、アリザーデさんの紹介も兼ねて95年出版の雑誌Etceteraに「ペルシア古典音楽の昔と今」という記事を寄稿しました。この記事はZeAmiHPにリンクしてある会報のページに転載してあります。今でも「ペルシア音楽」でぐぐると、この記事が3件目に出てきていました。その箇所↓を読み上げました。

アリザーデも77年シーラーズでのコンサートで、パリサーのバックでタールを弾いていた人だが(現在はキング「イランの音楽~栄光のペルシア」に収録)、80年代以降、独創的な古典音楽作品を次々と発表していて、2本のタールとザルブによるハムナヴァーイ(「音楽表現において一つになること」)に始まる自身のレーベル、ケレシュメなどから出ている。私が最初に聞いたのは、ネイ・ナヴァー(ナヴァー旋法によるネイとオーケストラの協奏曲)という曲で、故五十嵐一氏の解説で90年頃FM放送された。「雅びということを感じますですねー」と言っておられたのを懐かしく思い出すが、弦の透明な響きの上にネイの音がたゆたう大変美しい曲である。彼はまたモーリス・ベジャールの「ゴレスターン」というバレエのための音楽も書いている。(ギリシア通のベジャールがペルシアに目を付けるのは慧眼と言えるだろう。その上アリザーデはベスト・キャストだと思う)最近では、フランスのBudaから2枚組みのオーソドックスなダストガー音楽を出しているが、パリサーの伴奏をやっていた時から共通した「アリザーデの音」になっていると思う。それは、何かを追い求めるような音で、現代イランの古典音楽家のなかでも異彩を放っている。今後の活動が非常に楽しみな音楽家である。

文中に出てきました2本のタールが鮮烈に対話するハムナヴァーイをかけました。(この曲のyoutubeは見当たらないので、替わりにネイ・ナヴァーを入れました。)
Hossein Alizadeh - Ney Navâ (Darâmad, Naghmeh & Dance Os Samâ)


この記事は書いたのがもう20年余り前ですので、「今後の展開」は色々と出てきております(笑) また、文中に出てきたBuda盤については、これまで何度か話しました音楽之友社の「世界の民族音楽ディスクガイド」のレビューでは次のように書きました。

「孤高の」という形容が似合う51年生まれの名手ホセイン・アリザーデが、マジッド・ハラジ(トンバク)と組んで行った94年パリでのライヴ2枚組。タールでナヴァー、セタールでホマーユンの即興演奏。西洋音楽も導入した80年代の作品等がKereshmehから出ていたが、ここでは古典の枠内で大胆な妙技を展開。ハラジもインスパイアされてハイテンションな超絶技巧を披露。ノーブルでノスタルジックな音を響かせるタールと、繊細で蠱惑的な音色のセタールがそれぞれの旋法に実に合っている。革命前の77年にはあのパリサーとも共演し、80年代初頭は一時欧米に活動拠点を移し、その後イランに戻り現在に至っている。時は変われど彼の胸に迫る表現は昔も今も同じ。

というようなことを書きました。「孤高の」というイメージは少し違ったのかなとも思いますが、2000年代からはアルメニアのドゥドゥク奏者のジヴァン・ガスパリアンと組んだEndless Visionで2006年グラミー賞ワールド・ミュージック部門にノミネートされたり、古い弦楽器サッラーネーを復原・蘇演したり、注目作を連発しました。しかし、彼の創造した最も特筆すべきスタイルは、4人ほどの歌い手が「タハリール合戦」を繰り広げるかのようなハムアーヴァーイー(「声をあわせて歌う」というような意味)を生み出したことだと思います。西洋の古楽からヒントを得たそうですが、これは「アーヴァーズ」からの造語で、ハムアーヴァーヤーン・アンサンブルとして2004年には日本公演も果たしました。彼は2002年と2004年に来日し、初回はホマ・ニークナムの歌、マジッド・ハラジのトンバクとのアンサンブル、二回目はハムアーヴァーヤーンを率いての公演が実現しました。
実は主催のアリオン音楽財団の担当者から、2001年頃からアリザーデさんについて色々聞かれていて、当時一時的に入手が難しくなっていた音源や映像資料をお貸ししたり、専門家やイラン協会をご紹介しまして、そんな経緯で来日が実現しました。その勢いで2006年にはナーゼリーも来日し、パイプが出来たことから、今ではイランに音楽留学する人も出てきて、帰国されてライブ活動も展開しているようです。ペルシア音楽について、ほとんど情報のなかった90年代前半とは、隔世の感があります。

最後に2004年<東京の夏音楽祭>でも披露されたアリザーデさんとハムアーヴァーヤーン・アンサンブルの演奏で、Raze No(新しい秘密)からダード・ビーダードをかけました。ラストのラーゼ・ノウよりも、これから4つのアーヴァーズがタハリールを交えながら合わさる、始まりの美しい瞬間を捉えている音楽だと思います。(以下のyoutubeは別な箇所です)
Mohsen Keramati Ft Afsaneh Rasaie Ft Homa Nicknam

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