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2016年7月

2016年7月29日 (金)

更にمطر محمد

مطر محمد(マタル・ムハンマド)のブズク演奏の動画はまだまだあるようです。やはり「アラブのジミヘン」のコメントを見かけました(笑) 若い頃の演奏は、とても切れ味が凄いです。色々聞いていると、やはりユネスコ・コレクションのLPの演奏は、アラブ古典音楽の色が一番強いように思います。録音の趣旨を汲んでのことだったのでしょうか。イネディ盤は聴衆の反応で更にエキサイトするような感じでしたが、古い時期のyoutubeはそれに近いノリで、時に大衆音楽寄りな感じにもなっています。2本目のようにダラブッカ伴奏が入る演奏もありました。

Mattar Mohammed buzok old tv

Mattar Mohammed very old arabic bozok

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2016年7月28日 (木)

ブズクのタクシーム

今日もマタル・ムハンマドのブズクの演奏をもう少し見たいと思いますが、マカームは同じくバヤーティでしょうか。昨日のよりも更に色々な技巧がよく確認できます。どう弾いているのか見えない程の高速メズラブ(撥)さばきも凄すぎですが、左手人差し指を押さえたまま伸ばして遠い音を取ったり、逆に上から親指で低弦を押さえたり、正に縦横無尽です。

Matar Mouhammad - Takaseem Bozoq (kabh01)

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2016年7月27日 (水)

レバノンのブズク名人

ゼアミdeワールド18回目の収録に行ってきました。今日からブラジル音楽でしたが、28日と31日に放送されるのは、以下の17回目収録分です。<>内がかけた音源です。

マタル・ムハンマドのブズクの独奏は、1980年頃に聞いたアラブ音楽の音源の中で特に驚いた演奏で、フレットのある3コース復弦の楽器でこんな超絶技巧が出来るのだろうかと、心底驚いた演奏です。蘭Philipsのユネスコ・コレクションのLPの一枚で、CD化はされていない音源です。レバノンやシリアで主に弾かれるブズクは、その名の通りギリシアのブズーキと兄弟の、長い棹を持つ弦楽器ですが、聞こえてくる音楽はアラブ音楽そのもの。典型的なアラブの旋法の一つであるバヤーティによるタクシーム(即興演奏)です。ブズーキよりも深く響く低音が素晴らしく、アラブ古典音楽の迫力を更に増しています。

LPのスタジオ録音とは別の1972年のライブ録音がフランスのIneditから96年にCDで出ていて、ZeAmiのHPで「レバノンのブズク(ブソク)の名手マタル・ムハンマド追悼盤」として紹介しておりますので、コメントを読み上げます。

マタル・ムハンマド(1939~95)はレバノンのブズクの今世紀を代表する名手(ジプシーの家系出身)でありながら、20年位前(70年代後半?)から半身不随で演奏不能になり、Unesco盤のLP位でしか紹介されてなかった。この録音は1972年の最盛期のもので、ライブ録音のためアラブの聴衆のリアルな反応が手に取るように分かる。4つのマカームによるタクシーム(即興)は卓越した技巧による名演である。ブズーキ~サズ系楽器特有の「さわり」の多い、深い音色が素晴らしい。しかし、この情熱的な演奏はやはりジプシー系音楽家の特徴でしょうか。

<マタル・ムハンマド(ブズク)/ タクシーム・バヤーティ LP音源 抜粋>
演奏時間は11分余りで、何とか番組でかけられる範囲ですので、コメントは最小にして出来るだけ長くかけました。

Matar Mohammed

同じバヤーティの独奏です。十八番のマカームだったのでしょうか。映像で見ると、バラライカのように上から親指で押さえたりもしています。

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2016年7月26日 (火)

イラキ・マカームの女性歌手

イラキ・マカームと言えば、ユースフ・オマルやエルカバンジが特に有名で、女性歌手は最近のファリダくらいしか知りませんが、youtubeには往年の歌唱がありました。パスタではシタという女性歌手のウード伴奏の歌唱がキング盤にありましたが、実に可憐な歌声でした。このZohor Hosainという歌手は、もっとイランのタハリールに似た超絶技巧も聞かせる人です。シタとは対照的な激しい歌声です。2本目はおそらくイラキ・マカームではなく、大衆歌謡寄りの歌だと思います。
昨晩はアップの後、猛烈な睡魔に襲われて寝てしまいましたが、しばらくして出てきた強烈なハチロク・リズムに叩き起こされまして(笑) その湾岸ハチロク系が気になっていますが、辿れなくなっております(^^;  明日はゼアミdeワールドの今週分放送で流した、レバノンのブズク名人マタル・ムハンマド関係を見ますが、その後またイラキ・マカーム周辺をもう少し捜索する予定です。

IRAQI MAQAM - DASHT

زهور حسين - 3 - أبوذيه + سوده شلهـّاني

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2016年7月25日 (月)

イラキ・マカームの動画

イラキ・マカームの大御所、ユースフ・オマル(1918-87)の動画がありました。「動くユースフ・オマル」は初めて見ました! しかも名歌手だけあって、この人の映像は沢山あるようです。おそらくバグダッドが平和な頃にビデオを持っていたイラクの方の投稿だろうと思われます。ペルシア音楽からの影響と言われる、サントゥールとジョゼ(ケマンチェが細身になったような擦弦楽器)の演奏も映像で確認できます。イラキ・マカームが、どんな風に始まり展開していくか、手に取るように分りました。リンクからは、ペルシア湾岸のハチロク・リズムの音楽(全てアラビア語表記)がずっとかかっていましたが、こういうタイプと比べると、イラキ・マカームは、凄く洗練された都会(バグダッド)の音楽であることが分るように思いました。あの独特な帽子が、横から見ると烏帽子に似ていることも(笑)

Yusuf Omar

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2016年7月21日 (木)

イラク系ユダヤ人の音楽

昨日のSumer Groupは、おそらくディアスポラ・イラキのウード奏者、歌手とヴァイオリン奏者が、移住先の北欧でスウェーデンとノルウェーの女性歌手と共演し、イラク音楽を見事に演奏した映像のようでした。今日はイラク系ユダヤ人と思われる楽士が演奏するイラクの伝統音楽で、イラキ・マカームの動画のリンクにありました。おそらくイスラエルかどこかにディアスポラしているパターンではないかと思われます。
聖書(タナフ)に次ぐユダヤ教の聖典であるバビロニア・タルムードが6世紀頃までにバビロニアで成立した事実や、マニ教がゾロアスター教をベースにユダヤ教と仏教、キリスト教、グノーシス主義が混合してバビロニアに生まれたことからも分るように、ササン朝ペルシアの頃のこの地で、ユダヤ文化の影響力はかなり大きかったと見ていいのでしょう。イラクの伝統音楽においても、ユダヤ人音楽家の役割は大きかったのではと思わせる映像です。聞き慣れたイラキ・マカームやパスタの断片が所々に確認できます。この映像では器楽ですが、ユダヤ人音楽家の演奏するアラブ・アンダルシア音楽の場合と同様に、歌になるとアラビア語だけでなく、ヘブライ語の歌詞も出てくるのではと思います。そちらも見てみたいものです。

Iraqi Jewish musicians play original instrumental music Iraqi of Iraq

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2016年7月20日 (水)

パスタとイラキ・マカーム

ゼアミdeワールド17回目の収録に行ってきました。今日はレバノンのマタル・ムハンマドのブズクのLP音源(CD化されてない)をアイフォン(クラウド設定)からかけましたが、何と収録中のアイフォンに電話が入りまして、しっかりコール音が入りました(^^; 固定電話からの転送だったので、1分おきに繰り返しかかり、アイフォンから止めることは出来ず、録音は中断。急遽イネディのCDで繋ごうと思いましたが、焦って編集が短くなりすぎて上手く行かず、録り直し。今度は何とか終えることが出来ました。留守電には戻ってから対応すれば良いことなので、携帯への転送設定は切りました。今日は楽勝!と思っていたら、テンパり度№1の収録となりました(^^;(笑) この放送は来週になります。21日と24日に放送されるのは15回目の収録分です。8月はリオ五輪中なので、アラブは少し休んで、2,3回はブラジルの音楽で行こうと思います。ちろりんさんの番組出演の際の音源をもう一度かける予定です。<>内が、かけた音源です。

16回目の放送内容は以下の通りです。
イラン・イラク戦争以来、混迷が続くイラクですが、中世から近世にかけて「アラビアン・ナイト」の頃のバグダッドを中心とするアッバース朝の時代には、世界に冠たる高い文化を誇る国でした。
イラクの古典音楽にイラキ・マカームという歌入りのジャンルがありまして、前回そのレパートリーの断片からムニール・バシールのウード独奏で即興演奏の一部をかけました。今日はイラキ・マカームそのものと、一緒にパスタというジャンルもかけたいと思います。パスタはスパゲティーではなく(笑)、オスマン音楽のベステというジャンルに由来しています。どちらも古典音楽と大衆音楽の中間のようなジャンルで、バグダッドのような都会の流行り歌と言えます。邦楽に喩えるなら、イラキ・マカームは長唄、パスタは端唄・小唄と言えるでしょうか。特に前者は20分前後の演奏時間がありますので、一部になることをご了承下さい。小泉さん監修のLP音源です。放送ではこの曲が、WRMLの「イラクの音楽」(2枚組)に入っているように言いましたが、現在のシリーズには入っておりませんでした。LPのみのようです。
まずパスタ「夜」からです。葦の縦笛ナイのソロで静かに始まり、その後歌が入ってきます。編成は歌とカーヌーン、ナイ、ウード、タブラ(ダラブッカ)、ハッシャービです。

<サレ・アブドル・ガーフォル他 / パスタ「夜」>
Sumer Group/Maqam and Pasta

同じパスタのyoutubeは見当たらないので、他のパスタですが、こんな感じの演奏と言うことでこちらを上げておきました。しっとりとした良いパスタ演奏です。

70年代末のシルクロードブームの頃に、このアンサンブルは来日し、小泉文夫さんと「題名のない音楽会」に出ていたのをよく覚えています。このパスタ「夜」という曲は実に妖艶かつ典雅な演奏で、正にアラビアン・ナイトを連想させる音でした。

次に長唄を連想させるイラキ・マカームですが、このジャンルのCDではユースフ・オマルという男性歌手の録音がフランスのOcoraやIneditから出ていました。その中にMaqam HidJaz Diwanの演奏がありますが、この曲は先ほどのLPでは、パスタ「なつめの実」として入っていました。ヒジャーズ旋法は増2度音程が入った、いかにもエキゾチックなメロディラインで、典型的なアラビア音階とされます。ユースフ・オマルの楽団にはサントゥールや擦弦楽器ジョゼの音が入って、繊細でどこか儚げな音になっています。
それもそのはず?歌詞はこうなっていました。「君の愛が欲しくてあげた薔薇に、君は心を奪われた。そして僕の愛を忘れた。君は美しい、まるで月からその美しさを授かったように。いつも君に取ってあげた棗の実では、もう飽き足らなくなったのか」

<Yusuf Omar / Maqam HidJaz Diwan >
Maqam Bayat - Yusuf Omar

こちらも他のマカームですが、同じユースフ・オマルの歌唱です。

最後にイラキ・マカームの現代的展開として、ファリダという女性歌手の歌唱を取り上げます。彼女はムニール・バシールから大絶賛されたという巨匠の秘蔵っ子で、97年恩師が亡くなった年に祖国を離れオランダに移住し、オランダのSnail RecordsやPan Recordsからアルバムを出しています。2006年にアオラ・コーポレーションから国内発売されたアルバム「曙光」はスネイル・レコーズの音源で、私がライナーノーツを担当しました。 その中から、ナイとダフ伴奏の長いリズム・パターンに乗せてコブシたっぷりのマウワル的な歌唱を聞かせるアル・リクバーニヤという曲をかけながらお別れしたいと思います。ベドウィンの語り歌やモンゴルのオルティンドーのような、絶品の歌唱です。

<ファリダ / アル・リクバーニヤ(ラクダ騎手)>
Farida and the Iraqi Maqam Ensemble

これも別の曲ですが、ファリダは動画が沢山ありました。

放送局 FMラヂオバリバリ
番組名 ゼアミdeワールド
パーソナリティ名 ほまーゆん
毎週木曜 17:15~17:30
再放送 毎週日曜 15:00~15:15

今治以外でも、スマホのアプリTuneinや、PCのサイマルラジオを使えば、世界中どこででも聞けます。よろしければ是非お聞き下さい。民族音楽、クラシック、純邦楽など、色々かけております。
サイマルラジオは以下になります。
http://www.jcbasimul.com/

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2016年7月19日 (火)

シリア正教会のマリア賛歌

ムニール・バシールとレバノンの歌姫ファイルーズに共通の、シリア正教の音楽について少し調べてみようと思います。パレスチナの古代キリスト教にまで溯る訳ではないようですが、東ローマ帝国(ビザンツ帝国)が東地中海一帯を版図にしていた頃からのキリスト教と考えて良いようです。今日の一本は、シリア正教会のマリア賛歌になるようです。キリスト教の聖歌ですが、歌声はメリスマティックでコブシのようなものもあり、伴奏はネイ、カーヌーン、ウードなどの中東の楽器が使われることが多いです。字幕はシリア語のローマ字表記と英訳だと思いますが、同じセム系のヘブライ語やアラビア語にかなり似ているなと思いました。

Syriac Orthodox Hymn "Shlom Lekh"

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2016年7月18日 (月)

Munir Bashir iraq music

またもや、ムニール・バシールの46分にも及ぶカラー動画が見つかりました。フラメンコに流れることなく、オーソドックスで深遠なウード・ソロを聞かせています。マカームはヒジャズカルは確認できました。彼のウードの謎だった最低音の単弦の件ですが、やはり一番高い音の下に付いているようです。別の動画で確認できました。

Munir Bashir iraq music

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2016年7月14日 (木)

ムニール・バシールとファイルーズ、ハンガリー

昨日書いたことに対応するドキュメンタリーがありました。字幕はイタリア語ですが。ファイルーズとの演奏など、もしあったら是非聞きたいものです。同じキリスト教徒同士、音楽的にも合う部分は少なくないのでは。ハンガリーに移住後の映像も多数。非常に興味深いです。明日は所用のため、ブログはお休みしますm(_ _)m (以下昨日の該当箇所をペーストしておきます) 

イスラム教徒が多いイラクでは少数派のシリア正教徒として生まれ、キリスト教会の合唱隊員でもあった父からウードの手ほどきを受けます。続いてトルコ系で近代ウードの巨匠シャリフ・ムヒッディンに就いてウードを習得後、ハンガリーに移り、大作曲家バルトークを知って、更にバルトークと並び称される作曲家コダーイの下で音楽学と大衆芸術で博士号を取っているという、変り種の経歴の持ち主でもあると思います。ハンガリーは当時の民族音楽研究の総本山のような国とも言えますから、とても興味深い事実だと思います。その後ベイルートではアラブ最高の歌姫の一人ファイルーズや近代大衆音楽の作曲家ラハバーニー兄弟と交わるなど、伝統的な古典音楽の枠から逸脱した活動を続け、時にはフラメンコやインド音楽にも近接するなど、刺激的な試みも色々と発表しました。カッワーリのヌスラットも同じ年でしたが、ムニール・バシールが亡くなった1997年はワールドミュージックの大御所が次々世を去った年でした。

Munir Bashir Il liuto la sua voce

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2016年7月13日 (水)

ムニール・バシールの音楽

ゼアミdeワールド16回目の収録に行ってきました。新しいハーバリー・スタジオでの録音も大分慣れましたが、新スタジオでの初回の放送で、喋りのバックの音楽が大きすぎたので、今日はそれを気をつけました。ヴォリューム操作の加減が前のミキサーと違うようです。今日はイラキ・マカームとパスタをかけました。(と言っても、食べるパスタではありません(笑)) この放送は来週になります。14日と17日に放送されるのは15回目の収録分です。

15回目の放送では、1930年生まれで1997年に死去したイラクのウードの巨匠ムニール・バシールの演奏を中心にかけました。よく北インドのシタールが有名になるのにラヴィ・シャンカルを必要としたように、ウードではムニール・バシールが必要だったと言われるほどに、ウードと言えばまず名前が上がる人です。彼の音源は深遠なウードソロも多いのですが、少々とっつきにくいかも知れませんので、親しみやすい演奏として女性歌手ノーナ・エル・ハナをフィーチャリングしたアルバム「ムニール・バシールQuartet」から一曲かけました。ウード、カーヌーン、ダラブッカ、レクの四重奏というシンプルなアコースティック編成の中で、それぞれの詩情が美しくきらめく素晴らしい演奏になっています。CDの端にある記載には、全編を通して四行詩のルバイヤートで有名な11世紀のペルシアの詩人、オマル・ハイヤームの詩のアラビア語訳にムニール・バシール自身が曲を付けたとあります。ムニール・バシールの作品を、彼とその楽団が演奏し、しかも歌入りという、独奏の多い彼には非常に珍しく貴重な一枚です。
<Munir Bachir Quartet featuring Nouna El Hana / Waddaa al Sabra 抜粋>
Lam Yajni لم يجن شيئاً- Munir Bashir / Nouna El Hana

同じアルバムの中の他の曲です。

彼の経歴をざっと紹介しますと、イスラム教徒が多いイラクでは少数派のシリア正教徒として生まれ、キリスト教会の合唱隊員でもあった父からウードの手ほどきを受けます。続いてトルコ系で近代ウードの巨匠シャリフ・ムヒッディンに就いてウードを習得後、ハンガリーに移り、大作曲家バルトークを知って、更にバルトークと並び称される作曲家コダーイの下で音楽学と大衆芸術で博士号を取っているという、変り種の経歴の持ち主でもあると思います。ハンガリーは当時の民族音楽研究の総本山のような国とも言えますから、とても興味深い事実だと思います。その後ベイルートではアラブ最高の歌姫の一人ファイルーズや近代大衆音楽の作曲家ラハバーニー兄弟と交わるなど、伝統的な古典音楽の枠から逸脱した活動を続け、時にはフラメンコやインド音楽にも近接するなど、刺激的な試みも色々と発表しました。カッワーリのヌスラットも同じ年でしたが、ムニール・バシールが亡くなった1997年はワールドミュージックの大御所が次々世を去った年でした。

混迷が続くイラクですが、言うまでもなく中世から近世にかけて「アラビアン・ナイト」の頃のバグダッドを中心とするアッバース朝の時代は、世界に冠たる高い文化を誇る国でした。ペルシアが近いことからその文化的影響も色々見られ、楽器では他のアラブ諸国では使われないサントゥールが用いられます。イラクの古典音楽にイラキ・マカームという歌入りのジャンルがありますが、そのレパートリーの断片からウードで即興演奏を行った31分にも及ぶ録音がありますので、番組の終わりまでかけました。往年のバグダッドの栄華を偲ばせるような演奏です。この曲の入ったメソポタミアと題する2枚組は87年にプライヴェート・スタジオで録音していた音源で、2003年にフランスのChant du mondeからリリースされました。息子のオマール・バシールを含む「ムニール・バシール ウードと伝統音楽芸術国際財団」が設立され、貴重なレコーディングをCD化していくようで、これはその序曲となる一枚でした。

<Munir Bachir / Improvisations an Iraqi Maqams 抜粋>
Munir Bashir - Iraqi Maqams (Mesopotamia)


放送局 FMラヂオバリバリ
番組名 ゼアミdeワールド
パーソナリティ名 ほまーゆん
毎週木曜 17:15~17:30
再放送 毎週日曜 15:00~15:15

今治以外でも、スマホのアプリTuneinや、PCのサイマルラジオを使えば、世界中どこででも聞けます。よろしければ是非お聞き下さい。民族音楽、クラシック、純邦楽など、色々かけております。
サイマルラジオは以下になります。
http://www.jcbasimul.com/

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2016年7月12日 (火)

ラーガのルーツ

ムニール・バシールは、フラメンコや北インド古典音楽にも独自のアプローチで掘り下げる作品を発表していました。フラメンコには、中世イスラム王朝時代のスペインのアラブ音楽の要素が入っていることは、比較的容易に分るかと思いますが、北インドの古典音楽においても、シタールのルーツがセタールの例を出すまでもなく、始まりの頃においてはペルシア音楽の影響が強いことから、(おそらく)間接的にアラブ音楽との繋がりもあると推測してのことだろうと思います。ウードの音色は、シタールよりも、アフガン・ラバーブ~サロッドの系列に近い感じにも聞こえます。しかし、もしかしたら、ラーガの中には、本当にアラビア起源の旋律を含むものもあったりするのでしょうか? このByblos盤は現在は入手が難しくなっているように思います。

Munir Bashir - From the Maqam to the Raga (Raga Roots)

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2016年7月11日 (月)

ムニール・バシールのソロ

イラクのウードの巨匠ムニール・バシールについての放送は、今週木曜ですが、動画がありましたので先に上げておきます。動画を見るのは初めてのような気がします。正に至芸、この人の演奏は決めの音でぐっと惹き付けます。ウード演奏の技法の一つ、トレモロはほとんどない感じですが、たまに奔流のような速いスケールが挟まれ、それがとても印象的です。マカーム(旋法)は1本目がヒジャズカル(後半は不明)、2本目はラストのそれぞれタクシーム(即興演奏)です。お得意のフラメンコっぽい演奏もありますが、オーソドックスなアラブ音楽だけにしておきます。不思議なのは、通常一番上側に付いている最低音の単弦が、一番下に付いていることです。どういう音の並びになっているのでしょうか?

munir bashir ----- حوار العمر 2

Munir Bashir - Taqsim Rast

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2016年7月 7日 (木)

ウム・カルスームの千夜一夜

ウム・カルスームの歌った「アリフ・ライラ・ワ・ライラ(千夜一夜)」も、何と全曲が出ていました。アラビアン・ナイトを直ちに連想させるこの曲名は、その名だけでとびきり魅力的で、音楽だけでなく歌詞でもどんな展開になっているのか、とても気になる曲だろうと思います。最近アラブ・ヴァイオリニストの及川景子さん(昨日のyoutubeのヴァイオリン奏者)の解説と歌詞対訳まで載った盤が出ていますし、やはりCDで聞いた方がしっかり音も聞こえると思いますから、入れてみようと思っております。
2本目で聞ける冒頭のオリエンタルな曲調は非常に有名ですが、中盤以降は滅多に聞く機会がなかったように思います。彼女の歌声は、ハーディヒ・ライラティ(「夜だった」)などが1980年前後に水野先生の「世界の民族音楽」のFM放送でかかったのを聞いたのが確か最初でしたが、この曲の放送もあったかどうかは今となっては定かではありません。(ハーディヒ・ライラティだけはカセットに録音してありました) しかし、長らくウム・カルスームと言ってきたので、どうもクルスームという発音はぴんと来ません。
7日のゼアミdeワールドを確認しましたが、新スタジオになって音楽のヴォリューム調節が前と同じではないので、話のバックで音楽が大きすぎになっていました。次回から気をつけたいと思います。

Oum Kalthoum - Alf Leila we Leila | أم كلثوم - ألف ليلة وليلة

Oum kalthoum " Alf Lila wa Lila"

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2016年7月 6日 (水)

アラブのウード

ゼアミdeワールド15回目の収録に行ってきました。新しいハーバリー・スタジオでの録音も大分慣れました。
今日はムニール・バシールの演奏を2曲かけましたが、この放送は来週になります。7日と10日に放送されるのは14回目の収録分です。13回目では謡曲と新内の歌を少々披露しましたが、謡曲は95年、新内は98年から2005年にかけてやっておりました。世界中の音楽を知り尽くした小泉さんが世界で最も美しい歌と賞賛した、ペルシアの歌と新内の共通性は、フリーリズムの部分の大切さと、裏声を多用することだろうと思います。これまで各ジャンルの珠玉の音源ばかりかけて来ましたので、お耳汚しでしたが、感じは分るだろうと思いましたが、いかがでしたでしょうか。また能楽や新内については、専門の演奏家の音源でいつか取り上げる予定です。

最初にまずウードによる新内流しです。前回新内の歌と一緒にかけてみようと思っていたウードの独奏ですが、これも私自身の演奏を録音したもので、ウードで地の三味線と上調子の音を両方取って弾いております。上調子とは、枷(かせ)というカポタストのようなものを付けて4度音を上げた三味線のことです。低いベース音が地、裏拍で出てくる高い音が上調子です。やはり去年の12月にちろりんさんの番組に呼んで頂いた日に録音しましたが、久々に弾いたのでミスもありました。

ウードの起源は古代ペルシアのバルバットにあり、それが西に伝わってアラブのウードや西洋のリュートになり、東にも伝わって中国のピパや日本の琵琶になったことは、先日も言った通りです。琵琶が正倉院に伝わった頃はイランはササン朝の時代で、高度な文化を誇っていました。97年にトルコ通の知人を介して購入しまして、90年代はオスマン古典音楽の楽譜などで独学しておりました。

当時やっていた新内流しを試しに音を取って弾いてみたら、これがすごくピッタリに思いまして、師匠の富士松鶴千代さんにも聞いて頂いて褒めて貰ったことがあります。(因みに私の名前は富士松千嘉太夫と申します) 現在は今治市民弦楽合奏団のヴァイオリン弾き兼チェロ弾きですが。

新内の節は「影を慕いて」や「酒は泪か溜息か」「湯の町エレジー」のような古賀メロディのルーツとも言われるように、これらの演歌~ナツメロにもウードはぴったりで、90年代末に「ウード演歌」と称して一時かなりはまって弾いていました(笑)

ウードはアラブの弦楽器ですが、古賀政男が確かレバノン辺りに旅行した際に、アラブの音楽は日本人の心にストレートに訴えるものがあるというようなことを言われていました。イランの音楽もコブシの繊細さで心に迫るものがあって、小泉さんの発言も出たのだろうと思いますが、彼は1920年代生まれですから、現代の若い人はどう感じるでしょうか? 新内や古賀メロなんて古臭いなぁで終らないと良いのですが(笑) (新内なんて知んないとはよく言われる駄洒落でもあります)

10年余り前からのベリーダンスのブームもあって、アラブの音楽が関東や関西中心に盛り上がっているように思いますが、これは良い傾向かも知れないと、密かに思ったりもしていました(笑) その流れで、日本の音楽にも目が向くようになると良いのですが。

ちょうどそんな時に、京都のミュージシャンの知人を通して、関西中心に活躍されているウード奏者の加藤吉樹さんから、是非今治でライブをやりたいと私の所に申し出がありましたので、浄土寺さんをご紹介しまして去年の4月9日にお寺ライブが実現しました。沢山のお客様に来て頂きました。
メンバーは、加藤吉樹さんのウード、及川景子さんのヴァイオリン、牧瀬敏さんのダラブッカのトリオ編成に、西山さんと兼久さんのベリーダンスでした。西山さんは先日のワープラでの梅酒まつりにも出られていたので、久々にお会いしてきました。
ここでかけたのは、加藤吉樹さんのウード独奏で、タクシーム(即興演奏)でした。このCDのジャケットは、正に新内流しのような和装の人物がウードを構えている浮世絵風の絵になっています(笑) これは傑作ですね。

最後に、ベリーダンス向きの曲も一曲ご紹介しました。浄土寺でのライブの際に、私がリクエストして、確かアンコールで披露されました「アリフ・ライラ・ワ・ライラ(千夜一夜)」という曲です。ベリーダンサーに人気が高いらしい「ジャリラのラクス・シャルキ」シリーズの3枚目に良い感じのインスト演奏が入っています。バラー・ハムディがエジプトの名女性歌手ウム・カルスームのために書いたオリエンタル・ムード満点の名曲です。

Alf Leyla Wa Leyla~アラブ音楽とベリーダンス~

前にも入れたことがある映像ですが、今治に来られた同じトリオの演奏によるアリフ・ライラ・ワ・ライラですので、再度上げておきます。

次回からは、他のウード奏者などの音源から、アラブの音楽にもっと深く入って行きたいと思います。

放送局 FMラヂオバリバリ
番組名 ゼアミdeワールド
パーソナリティ名 ほまーゆん
毎週木曜 17:15~17:30
再放送 毎週日曜 15:00~15:15

今治以外でも、スマホのアプリTuneinや、PCのサイマルラジオを使えば、世界中どこででも聞けます。よろしければ是非お聞き下さい。民族音楽、クラシック、純邦楽など、色々かけております。
サイマルラジオは以下になります。
http://www.jcbasimul.com/

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2016年7月 5日 (火)

富士松加賀太夫の新内 (ドーコレキーコヒ)

SPの新内もいくつか上がっていますが、この演奏の富士松加賀太夫は、何と1856年生まれ1930年没の太夫で、1925年の録音とのこと。幕末生まれです! 落ち着いた格調高い歌声ですが、割と平坦にも聞こえます。歌舞伎の雰囲気が少し感じられるようにも思いました。節や三味線の手も少し違うようで、とても興味深い記録です。先日ラジオで拙演をかけました四谷の段の部分で、「今更言うも過ぎし秋」は、その直前の文句です。

Vintage Japanese Music-RANCHOU (imasara iumo) 蘭蝶(今更言うも過ぎし秋) 富士松加賀太夫

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2016年7月 4日 (月)

古賀政男の三味線

05年にお会いしたことのある柳家小春さんの新内などの動画を見ていたら、リンクに美空ひばりの都々逸の伴奏を、古賀政男が三味線でしている映像を発見しまして、非常にびっくりしました。いわゆる古賀メロディのギター演奏では有名ですが、三味線の演奏を見るのは初です。とても正確な勘所に味のある演奏。アンコはもちろん「酒は泪か溜息か」です。
2本目では、蘭蝶と並ぶ新内名曲の明烏を、小春さんの弾き語りで聞けるのが何より嬉しいのですが、現代的な面白い試みを重ね合わせています。

「都々逸」 美空ひばり / 古賀政男

柳家小春+テニスコーツ 新内『明烏夢泡雪』(抜粋・エンディングカット)

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2016年7月 1日 (金)

岡本文弥さん

そして、何と新内界の至宝、岡本文弥さんの映像もありました。101歳まで現役で活動された現代最高の新内名人でした。私は亡くなる少し前の96年夏、谷中のご自宅を訪ねたことがあります。私家版カセットを頂くためでしたが、その年の夏はとても暑くて、応対して下さった奥様の宮染さんの向こうの奥の方にいらっしゃった文弥さんは、ご高齢ですから堪え難いご様子と拝察しました。最近90年代に出ていた晩年の録音集成のテイチク盤が再発されましたが、やはり昔のはりのある歌声は特に最高でした。この映像から聞こえてくる歌声、三味線の音、どちらも最高です!

至芸の時 岡本文弥(1)

至芸の時 岡本文弥(2)

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