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2016年7月13日 (水)

ムニール・バシールの音楽

ゼアミdeワールド16回目の収録に行ってきました。新しいハーバリー・スタジオでの録音も大分慣れましたが、新スタジオでの初回の放送で、喋りのバックの音楽が大きすぎたので、今日はそれを気をつけました。ヴォリューム操作の加減が前のミキサーと違うようです。今日はイラキ・マカームとパスタをかけました。(と言っても、食べるパスタではありません(笑)) この放送は来週になります。14日と17日に放送されるのは15回目の収録分です。

15回目の放送では、1930年生まれで1997年に死去したイラクのウードの巨匠ムニール・バシールの演奏を中心にかけました。よく北インドのシタールが有名になるのにラヴィ・シャンカルを必要としたように、ウードではムニール・バシールが必要だったと言われるほどに、ウードと言えばまず名前が上がる人です。彼の音源は深遠なウードソロも多いのですが、少々とっつきにくいかも知れませんので、親しみやすい演奏として女性歌手ノーナ・エル・ハナをフィーチャリングしたアルバム「ムニール・バシールQuartet」から一曲かけました。ウード、カーヌーン、ダラブッカ、レクの四重奏というシンプルなアコースティック編成の中で、それぞれの詩情が美しくきらめく素晴らしい演奏になっています。CDの端にある記載には、全編を通して四行詩のルバイヤートで有名な11世紀のペルシアの詩人、オマル・ハイヤームの詩のアラビア語訳にムニール・バシール自身が曲を付けたとあります。ムニール・バシールの作品を、彼とその楽団が演奏し、しかも歌入りという、独奏の多い彼には非常に珍しく貴重な一枚です。
<Munir Bachir Quartet featuring Nouna El Hana / Waddaa al Sabra 抜粋>
Lam Yajni لم يجن شيئاً- Munir Bashir / Nouna El Hana

同じアルバムの中の他の曲です。

彼の経歴をざっと紹介しますと、イスラム教徒が多いイラクでは少数派のシリア正教徒として生まれ、キリスト教会の合唱隊員でもあった父からウードの手ほどきを受けます。続いてトルコ系で近代ウードの巨匠シャリフ・ムヒッディンに就いてウードを習得後、ハンガリーに移り、大作曲家バルトークを知って、更にバルトークと並び称される作曲家コダーイの下で音楽学と大衆芸術で博士号を取っているという、変り種の経歴の持ち主でもあると思います。ハンガリーは当時の民族音楽研究の総本山のような国とも言えますから、とても興味深い事実だと思います。その後ベイルートではアラブ最高の歌姫の一人ファイルーズや近代大衆音楽の作曲家ラハバーニー兄弟と交わるなど、伝統的な古典音楽の枠から逸脱した活動を続け、時にはフラメンコやインド音楽にも近接するなど、刺激的な試みも色々と発表しました。カッワーリのヌスラットも同じ年でしたが、ムニール・バシールが亡くなった1997年はワールドミュージックの大御所が次々世を去った年でした。

混迷が続くイラクですが、言うまでもなく中世から近世にかけて「アラビアン・ナイト」の頃のバグダッドを中心とするアッバース朝の時代は、世界に冠たる高い文化を誇る国でした。ペルシアが近いことからその文化的影響も色々見られ、楽器では他のアラブ諸国では使われないサントゥールが用いられます。イラクの古典音楽にイラキ・マカームという歌入りのジャンルがありますが、そのレパートリーの断片からウードで即興演奏を行った31分にも及ぶ録音がありますので、番組の終わりまでかけました。往年のバグダッドの栄華を偲ばせるような演奏です。この曲の入ったメソポタミアと題する2枚組は87年にプライヴェート・スタジオで録音していた音源で、2003年にフランスのChant du mondeからリリースされました。息子のオマール・バシールを含む「ムニール・バシール ウードと伝統音楽芸術国際財団」が設立され、貴重なレコーディングをCD化していくようで、これはその序曲となる一枚でした。

<Munir Bachir / Improvisations an Iraqi Maqams 抜粋>
Munir Bashir - Iraqi Maqams (Mesopotamia)


放送局 FMラヂオバリバリ
番組名 ゼアミdeワールド
パーソナリティ名 ほまーゆん
毎週木曜 17:15~17:30
再放送 毎週日曜 15:00~15:15

今治以外でも、スマホのアプリTuneinや、PCのサイマルラジオを使えば、世界中どこででも聞けます。よろしければ是非お聞き下さい。民族音楽、クラシック、純邦楽など、色々かけております。
サイマルラジオは以下になります。
http://www.jcbasimul.com/

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