ファイルーズのダブケとシェヘラザード3楽章
ゼアミdeワールド27回目の放送、水曜21時に終りました。今回は無事放送されました。3日にお知らせしましたように、来週の9日と12日の2回もこの初回分が流れます。よろしければ是非お聞き下さい。<>内がかけた音源です。 今回で27回目の放送になりました。4月から26回は木曜夕方に15分の枠で放送してきましたが、10月から放送の日時が変わりました。こちらでも宜しくお願い致します。 4月からイラン、イラクと中東の音楽を廻って、8月はオリンピック期間中ということでブラジル音楽特集をして、その後は日本民謡などを少し取り上げました。 民族音楽と言うと、真っ先に思い浮かべるのがシルクロード各地の音楽だったもので、中東の音楽から始めましたが、この後は東西南北ヨーロッパやロシア、その他のアジア、アフリカ、南北アメリカにも回っていく予定です。 アラブ音楽と言うのは、アラビア語が日常的に使われているアラブ民族中心の国々の音楽ですから、まだ中近東にはヨルダン、シリア、レバノンがありますし、アラビア半島にはサウジアラビア、イエメンなど、北アフリカにはエジプト、リビア、チュニジア、アルジェリア、モロッコ、西サハラ、モーリタニアに、それぞれ注目すべき音楽が多数ありますので、しばらくはそれらをじっくり取り上げる予定です。 まずは、レバノン出身の女性歌手ファイルーズの歌唱です。アラブ世界では、エジプトの往年の女性歌手ウム・カルスームと並んで、最も人気のある歌姫です。7月にレバノンのブズク名人のマタル・ムハンマドを取り上げて、次にはファイルーズをと思っておりましたが、ちょうどそんなところに、ラヂバリの長寿番組、続・音楽狂時代のケーシーさんからのリクエストもありました。 私が聞いた中ではオリエンタル色の最も強いアルバムのOriental EveningからTebka Beldenaと言う曲をかけてみましょう。男性歌手のワディ・アル・サフィなどと共演したオペレッタスタイルの演奏の中に、アラブ音楽のエッセンスがぎゅっと詰まった一曲です。とりわけ、西洋の音階にない微分音程に外れるところが聞きものです。 <Fairuz / Oriental Evening ~Tebka Beldena> فيروز نصري شمس الدين وديع الصافي 3分28秒辺りからがTebka Beldenaと同じ音源。写真はファイルーズとナスル・シャムスッディンです。 Dabket Lebnan - Fairuz and Nasri Shamseddine モノクロなので、下の1976年よりは古い映像では。Tebka Beldenaの中の曲が聞き取れます。躍動感が凄いです。 دبكة لبنان - فيروز و نصرى شمس الدين .حديقة الأندلس6 197 1976年の男性歌手ナスル・シャムスッディンとのステージ。ここでもTebka Beldenaの中の曲が聞き取れます。 Tebkaと言うのは、レバノン辺りの舞曲のダブケのことかと思いますが、メドレーで様々なアラブ音楽の要素を散りばめた魅惑的な一曲です。列を作って腰を動かしながらステップを踏むリズミカルな民族舞曲のダブケが、ベイルートのような都市で発展し、国際的に知られるようになったのがベリーダンスという説もありますが、確かにエジプト南部のガワジーの踊りなどと並んでルーツの一つだと言えると思います。 「ファイルーズ」とはアラビア語で「トルコ石」の意味で、この表記はレバノン辺りのアラビア語の口語に由来するものだそうですが、エジプト方言ではフェイルーズと表記されます。80年代末頃に彼女のアルバム「愛しきベイルート」が大ヒットした頃は、フェイルーズの表記の方が広く使われていました。1935年生まれですから、もうかなりのご高齢ですが、妖艶な美しさは余り変らないように思います。彼女はムスリムではなく、東方教会の一つであるマロン派キリスト教徒の家庭に育ったので、キリスト教音楽のアルバムも幾つか出しています。歌詞はアラビア語で歌われています。50年代にプロデューサー兼作曲作詞家のアーシー・ラハバーニーと結婚してからは、同じ東方教会の一つであるギリシア正教に改宗しているそうです。 これからかける曲がマロン派とギリシア正教のどちらかは不明ですが、リリース年が1962年と言う事は、79年の離婚より前なので、ギリシア正教になるでしょうか? 彼女のアルバム「聖金曜日 東方教会の聖歌」からAnal Oum el-Hazinaと言う曲をどうぞ。 <Fairuz / Good Friday-Eastern Sacred Songs ~Anal Oum el-Hazina> Ana Al Oum ElHazina - Good Friday- Fairouz 最後に、一日も早く中東に平和が訪れることを願って、前々回取り上げた童謡名曲「月の沙漠」をかけた際に、テーマ的な類似性から引き合いに出しましたリムスキー=コルサコフの交響詩「シェヘラザード」の第3楽章「若い王子と王女」をかけてみましょう。どちらもアラビアン・ナイトを連想させるロマンティックな名曲です。このメロディは最近、平原綾香さんが日本語の歌詞を付けて歌われていたのを聞きましたので、耳にされた方も多いのではと思います。中盤に出てくる8分の6拍子のリズミカルな部分は、ペルシアの舞曲レングやコーカサスのレズギンカにそっくりです。そういう所は、また追々お話します。 ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。ではまた来週 <リムスキー=コルサコフ 交響詩「シェヘラザード」 第3楽章「若い王子と王女」トーマス・ビーチャム指揮ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団 抜粋> Rimsky-Korsakov: Scheherazade - Celibidache, RSS (1982) チェリビダッケ指揮の全曲がありました! 25分40秒過ぎからが第3楽章。
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