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2016年10月31日 (月)

シリアの伝統音楽

ゼアミdeワールド30回目の放送、日曜夕方に終りました。11月2日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。<>内がかけた音源です。

今回は混迷を極めているシリアの音楽です。シリアと言えば、イスラムの4番目の聖地ダマスカスや、日本なら京都や奈良に相当するような古都アレッポ、セレウコス朝シリアの首都だったアンティオキアがよく知られている町です。アンティオキアは新約聖書にアンテオケの名で登場するキリスト教史上の重要都市で、現在はトルコ領アンタキアになっています。このように世界遺産も数多い歴史的に重要な国ですが、平和が再び訪れることがあるのだろうかという状態になってしまっているのが、非常に悲しいことです。

シリアのアラブ古典音楽では、遠く後ウマイヤ朝下の15世紀以前のスペインからの影響とされるアラブ・アンダルース音楽系統のワスラという組曲のような形式がよく知られています。ムワッシャハという形式の歌が頻繁に出てきますが、アラブ・アンダルシア音楽起源のムワッシャハ(本来は恋愛詩を歌う形式)は、15世紀のレコンキスタでスペインから北アフリカ西部(マグレブ)に中心が移った後、18世紀頃からは中東一帯に広まり、特にシリアのアレッポでは深く根付いたと言われます。
これからかけますのは、シリアのアラブ古典音楽の最も優れた伝承者と言われるサブリ・ムダッラルの歌唱と彼の楽団の演奏です。イスラム教の礼拝を呼びかけるアザーンを唱える人をムアッジンと言いますが、ムダッラルはアレッポのモスクの最高のムアッジンという称号を得ている人です。楽器はウード、カーヌーン、ナイ、ダフです。
冒頭のサマーイ・ナハーヴァンドから、ムワッシャハまで続けてかけてみます。

<Sabri Moudallal / Wasla d`Alep - Samai Nahawand, Mouachah>
wasla tarab- sabri mdallal

真ん中の赤い帽子のお爺ちゃんがサブリ・ムダッラルです。

サマーイ・ナハーヴァンドと同じ名の楽曲は、大分前に日本のウード奏者加藤吉樹さんの演奏でもかけたと思いますが、作曲者は異なってもマカームと形式が同じなので、非常に似た雰囲気を持っています。
もう一曲、別な盤からムダッラルの名唱をかけてみましょう。こちらではアンサンブルではなく、彼の歌から始まり、よりフロントに強く出てきます。

<Sabri Moudallal / Chants d`Alep - Ya uyuna ramiyat>
Sabri Mudallal

とにかく素晴らしい燻し銀の歌声!

次に、アラブ・アンダルース系のワスラの流れを汲んでいる、シリア歌謡界の大歌手サバー・ファクリの歌唱です。歌謡とは言っても古典色が強く、自身ウードを弾き語ることもあるようです。彼は1933年のアレッポ生まれで、欧米盤はこのディスクアラブ盤と数点のみのようです。何と10時間無休で歌い続け、ギネスブックに載ったというカラカスでのライヴが伝説となっているという人です。確かに非常にエネルギッシュな歌声です。

<Sabah Fakhri / Au Palais des Congres - Al Foul Wil Yassmine>
Sabah Fakhri --Mawal-- AlFul Yal Yasmeen.


器楽関係も少し聞いておきましょう。1950~60年代の録音で、インドの民族音楽学者デベン・バッタチャリアのダマスカスでの現地録音シリーズの一枚です。現在は聞くことの難しいタイプの音楽もあると思います。ウードとカーヌーンのバシュラフ・サマーイ・ターチュス、アラブ式調弦のヴァイオリンのタクシーム、7月にマタル・ムハンマドの名演をかけました弦楽器ブズクのアジャムを続けてかけてみます。ブズクはマタル・ムハンマドに比べると、随分大人しい演奏です。

<シリアのマカーム~バシュラフ・サマーイ・ターチュス、ヴァイオリンのタクシーム、ブズクのアジャム>
Syriac Orthodox Maqam

シリア正教会でのマカーム演奏のようですが、冒頭のヴァイオリンなどは上記バッタチャリア音源に少し似ていますので、とりあえずこちらをアップ。50、60年代の動画はさすがにないようです。

次に、先ほど出てきたアンティオキアのキリスト教音楽ですが、ユネスコ・コレクションから音源がありましたので、サンクトゥスとコロをかけてみます。現在はトルコ領になっているアンタキアのシリア正教会の録音です。西洋のサンクトゥスと一味も二味も違う古風な無伴奏の混声合唱です。

<Syrian Orthodox Church / Antioch Liturgy - Sanctus、Qolo>
Syriac Orthodox - Qurobo Alohoyo - Abuna Aziz Can - Übersetzung - Oromoyo HD
アンティオキアの教会の映像がありました。教会の雰囲気や装飾まで分って、非常に興味深いものがあります。西洋の教会よりも歌や朗誦の重要性が高そうに見えますが、これはユダヤ教に近い部分かも知れません。

駆け足で色々なシリアの音源をご紹介してきましたが、最後にユネスコ・コレクションの「アレッポのスーフィー音楽ジクル」を聞きながら今回はお別れです。男声の独唱とコールアンドレスポンス、枠太鼓ダフで、熱いイスラーム神秘主義の宗教儀礼の歌を聞かせる実況録音です。
ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<Syria / Islamic Ritual Zikr 抜粋>
Sufi Islam: Hadrah Zikr Tariqa Syadziliyah In Syria (Must Watch)

ダフ以外の歌の部分。段々と熱く高揚して行きます。

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