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2016年10月24日 (月)

中東のキリスト教音楽

ゼアミdeワールド29回目の放送、日曜夕方に終りました。26日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。<>内がかけた音源です。

キリスト教の祭のハローウィーンやクリスマスが近づいているということで、今回は中東のキリスト教音楽です。 この2回は中東レバノンの歌姫ファイルーズを中心にご紹介していましたが、まずここでレバノンと言う国について少し見てみましょう。とても複雑な歴史が重層的に重なった土地であることが分ります。

現在のレバノンに相当する地域は、古代においてはフェニキア人のルーツの地で、その後は順にアッシリア帝国、新バビロニア、アレクサンダー大王のマケドニア王国、セレウコス朝シリア、ローマ帝国、ビザンツ帝国(東ローマ帝国)と続き、続いて7世紀にはアラブ人に征服されてイスラム世界に組み込まれ、住民のアラブ化が進みました。
レバノンは歴史的にはシリアの一部でしたが、山岳地帯は西アジア地域の宗教的マイノリティの避難場所となり、キリスト教マロン派(マロン典礼カトリック教会)、イスラム教のドゥルーズ派の信徒らがレバノン山地に移住して、近世以降のオスマン帝国からも自治を認められて独自の共同体を維持してきたそうです。
現在のレバノンでは、40パーセントがキリスト教徒、それ以外の大多数がイスラム教徒ということなので、相当キリスト教徒が多く、音楽家でもファイルーズやマジダ・エル・ルーミーなどクリスチャンが目立ちます。他にマロン派の有名人には、日産の社長のカルロス・ゴーンさんがいます。中東と言うとイスラム教だけなのでは、と思ったりする傾向もあるかも知れませんが、古代にキリスト教が生まれたのは中東のパレスティナであり、現在も古代以来の、あるいはビザンツ帝国以来の、西洋を介さない古いキリスト教の文化が、音楽に限らず古来の伝統を伝えていることは、特に日本では余り知られてないことだと思います。

これからかけます曲を歌っている人は、マリー・ケイルーズという修道女にして宗教歌の歌手で、ファイルーズと名前も似ています。89年に出た「ビザンティンの聖歌 受難と復活」というアルバムから、アレルヤをまずお聞き下さい。タイトルからすぐお分かりかと思いますが、西洋のハレルヤと同じで、「神を賛美する」という意味です。

<Marie Keyrouz / Chant Byzantin ~Alleluia>
Sister Marie Keyrouz - Alleluia


ファイルーズはトルコ石という意味でしたから、偶然かも知れませんが、名前がそっくりなこともありますし、東方的なコブシをきかせた神聖な歌唱に89年のリリース当初かなり衝撃を受けまして、当時勤めていた六本木ウェイブのクラシックコーナーで、この盤を中心に90年に企画を組んだことがあります。タイトルの多さとボリュームから目立っていたのはギリシアのレーベルOrataからのビザンチン音楽シリーズでしたが、それよりも実はケイルーズの歌唱に惹かれての企画立案でした。古楽などに注目盤の多いクラシック名門レーベル、フランスのHarmonia Mundiの名盤の一つで、今も現役盤という多分数少ない一枚です。リリースから大分経って2003年にはGramophone Awardsを受賞したようです。
一時「キーロウズ」という表記が割と一般的になっていましたが、フランス語の場合Keyは「ケイ」と発音するでしょうし、後半のrouzはファイルーズのフランス語綴り後半と同じですから、総合的に考えて「ケイルーズ」ではないかということで、ケイルーズとしております。

これまでに何度か名が出ましたが、2002年刊の音楽之友社「世界の民族音楽ディスクガイド」に書いたこの盤の拙稿レビューを読み上げてみます。この本は今治市立図書館に寄贈してありますので、是非ご覧下さい。

「1989年リリースなので大分前の盤だが、未だに型番も変らず生き続けているので、フランスでも定評のある盤なのだろう。レバノン出身の修道女にして宗教歌の歌手であるマリー・ケイルーズが歌う、ビザンツの受難と復活の聖歌集。歌詞はギリシア語やアラビア語。この国は宗教の博物館といわれるように、シリア正教会やマロン派等のキリスト教各派がひしめいている。男声のドローンをバックに歌われる節はメリスマティック(つまりコブシが豊か)で、同国のアラブ世界を代表する歌姫ファイルーズの歌声にも何処か似ている。彼女は東方教会のみならず西方教会の単旋律聖歌も研究し、マルセル・ペレスのアンサンブル・オルガヌムのメンバーでもある。」

次に聖木曜日の日課からアポスティコン(マグダラのマリアの祈り)という曲をかけてみましょう。「主よ、多くの罪を犯した女が」と副題のあるアラビア語の歌です。

<マリー・ケイルーズ / 聖木曜日の日課からアポスティコン(マグダラのマリアの祈り)>
soeur Marie Keyrouz ''priere de marie -madeleine''(Mercredi saint)


マリー・ケイルーズは、その後同じ仏Harmonia Mundiから他にも「マロン派の伝統聖歌」「メルキート教徒の聖歌」など、数枚の中東キリスト教音楽のアルバムを出していますが、「マロン派の伝統聖歌」からクリスマスの聖歌をかけてみます。この盤ではアラビア語やシリア語の原文歌詞と英独仏訳まで載った解説が付いていましたが、残念ながら廃盤になったようです。またこの演奏ではカーヌーンやウードのような中東の伝統楽器が伴奏に使われています。マロン派の起源は7世紀頃に遡ると言われ、レバノンのキリスト教では多数派です。曲名はSchubho-Ihaw qoloで、英訳がGlory to the Word of Godとなっています。

<マリー・ケイルーズ/マロン派の伝統聖歌 Schubho-Ihaw qolo Glory to the Word of God>
Sister Marie Keyrouz: Traditional Maronite Chants from Lebanon


比較で、前々回かけましたファイルーズのアルバム「聖金曜日 東方教会の聖歌」からWa Habibiと言う曲をどうぞ。非常に甘美な旋律です。

<Fairuz / Good Friday-Eastern Sacred Songs ~Wa Habibi >
Fairuz - Wa Habibi


最後にマリー・ケイルーズの「ビザンティンの聖歌」から聖木曜日のリトルギアからキノニコン(聖体拝領唱)というアラビア語の歌を聞きながら今回はお別れです。
ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<マリー・ケイルーズ / 聖木曜日のリトルギアからキノニコン(聖体拝領唱)>
youtube無しのようです。

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