ハシディック・ソング
ゼアミdeワールド34回目の放送、日曜夕方に終りました。30日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。<>内がかけた音源です。
今回で34回目の放送になりました。アラブ音楽巡りの途中なので、余り深入りしない予定でしたが、どうしてもハシディック・ソングだけは少し取り上げておきたいと思いましたので、イスラエルの音楽3回目、番外編ということで、ユダヤ教敬虔派の宗教歌ハシディック・ソングを少し聞いておきたいと思います。ユダヤ音楽の「本丸」の一つと言っても過言ではない、重要な音楽です。特に90年代から日本でも一部で人気を集めたクレズマー音楽においては、そのスピリット的な部分にハシディック・ソングがあります。ロックやジャズのルーツにブルースがあるように、クレズマーのルーツにはハシディック・ソングがあると思います。またジャズの曲名に「スイングしなけりゃ意味がない」というのがありますが、これになぞらえれば、ハシディックのグルーヴ感がなければクレズマーじゃないとなるでしょうか。クレズマーにはルーマニアを始めとする東欧各地の伝統音楽が豊富に入っていますが、ハシディックの芯が一本通ってないと、ジプシー音楽や東欧音楽とユダヤ音楽の差がなくなってしまいます。ブルースの根幹にある黒人霊歌(ゴスペル)=ニグロ・スピリチュアルになぞらえれば、ジューイシュ・スピリチュアルと言えましょうか。
シンギング・ラバイ(歌うラビ)と呼ばれたラビ・シュロモ・カルリバッハは、聖書の文句などに作曲した、哀愁のある親しみやすいハシディック・ソングの名曲を沢山残しました。まずヴェハエル・エイネイヌという曲からどうぞ。
<ラビ・シュロモ・カルリバッハ / ヴェハエル・エイネイヌ>
Veha'er Eineinu - Rabbi Shlomo Carlebach
ヴェハエル・エイネイヌはヘブライ語ですが、和訳すると「我らの瞳を照らせ」となります。歌詞は聖書ではなく、以下のような内容になります。「我らの瞳を汝の律法に照らせ。そして汝の戒律に我らの心を密着せよ。そして我らの心を愛と汝の名を畏れることにおいて一つとせよ。恥じることも、うろたえることもない。そして永遠につまづくことはない。」 こういう熱い信仰の歌です。
次にかける曲も同じベスト盤からで、「これはその日」と訳せるタイトルですが、曲の詳細は不明です。なかなか好きな曲なので、かけてみます。
<ラビ・シュロモ・カルリバッハ / ゼー・ハヨム>
Ze Hayom - Rabbi Shlomo Carlebach
イスラエルのHed Arziから出ている彼のベスト盤から、もう一曲「オッド・イシャマー」をどうぞ。聖書のエレミア書33章10~11節のヘブライ原文が歌詞になっている結婚式の歌です。
<ラビ・シュロモ・カルリバッハ / オッド・イシャマー>
Od Ishama 2 - Rabbi Shlomo Carlebach
曲の後半は歌詞が消えてメロディだけをアイ・ディ・ディなどと歌っていますが、これはハシディック・ソングのニグンという「ことばのない歌」に当り、これぞ黒ずくめの衣装に髭を蓄えたハシディームたちの歌の真髄という部分です。ニグンは昔は記譜されることなく口伝で伝わったそうです。
ニグンのバリエーションに当るようにも思いますが、同じ文句を繰り返して段々早くなることも有り、ユダヤ神秘主義カバラーの流れを汲むハシディック・ソングの法悦感を醸し出しています。ユダヤ魂の奥底から湧き上がる旋律と言えるでしょうか。そういうタイプの例としてベルギー在住のユダヤ人歌手ジャッキー・ジュスホルツのTzaveという曲をどうぞ。
<ジャッキー・ジュスホルツ / Tzave(ユダヤ人に自由を)>
16 Tzave
解説では、ルーマニア起源の舞曲ホラ調のハシディズムの民謡で、女声コーラスをバックにユダヤ人の解放の喜びが歌われる、とあります。短い文句は一応ヘブライ語のようですが、東欧系ユダヤのイディッシュ語訛りの強い綴りに見えます。
ラビ・シュロモ・カルリバッハの歌に戻りまして、聖書の詩篇118編14節につけられたPischu Li(Open the Gate)という曲をどうぞ。1963年にVanguardから出たまだ40歳前くらいの活動初期のアルバムの一曲目です。カルリバッハの若々しい歌声と聴衆の熱い反応がとても良いです。
<Rabbi Shlomo Carlebach / Pischu Li>
Pischu Li - Rabbi Shlomo Carlebach
この曲は上記ヴァンガード盤とは別録音。
Rav Shlomo Carlebach - Pe'er Vekavod Notnim Lishmo - 1973
最高のライブ映像も併せて
次に、90年前後に日本でもクレズマー・ブームが始まりましたが、その頃入っていた英ARCのLutz Elias & Massel Klezmorimの演奏にもハシディック・ソングがそのまま入っていてヘブライ語で歌われていますので、その曲をかけてみます。歌詞は聖書の雅歌2章8節から取られています。イディッシュ語の民謡とクレズマー音楽中心の2枚シリーズでしたが、ヘブライ語の歌が何曲かありました。
<Lutz Elias & Massel Klezmorim / Kol Dodi>
Kol Dodi - Shoshana Damari
ルッツ・エリアスではなかったので、イエメン系の名歌手ショシャナ・ダマリの歌唱で
では、最後にカルリバッハ作曲のハシディック・ソングで、エレー・ハムダー・リビーという曲ですが、前回取り上げましたキング・オブ・クレズマー・クラリネットと称されたクラリネットの名手ギオラ・ファイドマンの演奏で締めたいと思います。それでは、時間までどうぞ。
ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週
<ギオラ・ファイドマン / エレー・ハムダー・リビー>
Ele chamda libi - Klezneytral live@Alsergrund[08]
ギオラ・ファイドマンの演奏でこの曲は見当たらないので、Klezneytralの演奏で。
Ele Chomdo Libi
放送ではちょっとしかかけられなかったので、他のクレズマーグループの演奏も。Klezmeraniansというグループのようです。
Klezmer Techter Hassidic Song
女性のクレズマー・トリオKlezmer Techterの間で、演奏を見守るギオラ・ファイドマンの姿が見えます。
| 固定リンク
「ユダヤ音楽」カテゴリの記事
- 98年以降のアンディ・スタットマン(2023.11.03)
- ヴェゾヘル V'zocher(2023.10.27)
- カルリバッハ晩年のライブ オッド・イシャマー(2023.10.26)
- ヴェハエル・エイネイヌ(2023.10.25)
- シンギング・ラバイ(歌うラビ) ラビ・シュロモ・カルリバッハ(2023.10.23)
「イスラエル」カテゴリの記事
- Adon Olam(2023.10.18)
- Ele Chomdo Libi(2023.10.12)
- ギオラ・ファイドマンのライブとエリ・エリ(2023.10.06)
- シャローム・アレイヘムとスィム・シャローム(2023.10.05)
- ヤリボン(2023.10.04)
「ハシディック」カテゴリの記事
- 98年以降のアンディ・スタットマン(2023.11.03)
- ヴェゾヘル V'zocher(2023.10.27)
- カルリバッハ晩年のライブ オッド・イシャマー(2023.10.26)
- ヴェハエル・エイネイヌ(2023.10.25)
- シンギング・ラバイ(歌うラビ) ラビ・シュロモ・カルリバッハ(2023.10.23)
「ゼアミdeワールド」カテゴリの記事
- Brave Old Sirbas(2023.12.04)
- バサラビエ(ベッサラビア)(2023.11.27)
- A Jumpin' Night In the Garden of Eden(2023.11.20)
- 最近のクレズマー・コンサーヴァトリー・バンド(2023.11.13)
- カペリエのチキン(2023.11.06)
コメント