追悼 赤軍合唱団
ゼアミdeワールド42回目の放送、日曜夕方に終りました。2月1日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。<>内がかけた音源です。
余談ですが、先ほど月曜夜の弦楽合奏の練習に、桑原さんがヴィオラで初参加! 楽しい練習でした。
長らく中東の音楽巡りが続いておりまして、まだまだアラブ圏だけでもエジプト南部やマグレブと続きますので、この辺りで少し寄り道しようかと思います。寒い時期は、寒い所の音楽が似合うということで、去年の2月にちろりんさんの番組に呼んで頂いた際にロシアのバルド(吟遊詩人)の音楽を取り上げたのですが、その内容をもう一度じっくりと思っていたら、ちょうどびっくり仰天するニュースが飛び込んできましたので、ちろりんさんの番組での内容は次回以降にする予定です。
しばらくロシアや東欧の音楽の方に目を向けることにしまして、中東の音楽は暖かくなった頃にまた取り上げたいと思います。
そのびっくりしたニュースと言うのは、「ロシアの誇り」と言われるロシア軍合唱団(古くは赤軍合唱団、後にアレクサンドロフ・アンサンブルに改名)のほぼ全員が昨年12月25日にソチ沖で起きたロシア軍機ツポレフの墜落事故で亡くなったと言う知らせで、チェロと男声合唱もされる知人から教えて頂きました。圧倒的な迫力と低音の魅力、憂いに満ちた旋律美を聞かせる男声合唱の頂点とも言える素晴らしいグループで、その文化的損失は想像もつかないものだと言われます。今回は彼らへの追悼という事で、1928年のソ連時代に始まる歌声を聞いて行きたいと思います。まず赤軍合唱団時代の1930~40年代の歌声で「ポーリュシカ・ポーレ」をどうぞ。ロシア革命後続いた国内戦当時の赤軍の勇姿を描いた1934年のソビエト歌曲です。作曲者のクニッペルはストラヴィンスキーの影響も受けて前衛的な曲も書いていたそうです。
<赤軍合唱団の1930~40年代録音から「ポーリュシカ・ポーレ」 3分8秒>
Red Army Choir: Polyushka Polye
録音年は不明ですが、一本貼っておきます。ライブ映像が無さそうで残念。
私の世代では、いわゆる「うたごえ運動」から間もない時期なので、小中学校の音楽の教科書によくロシア民謡が載っていて、その影響は確実にあったと思います。民族音楽をクラシックと平行して早くから聞き始めたのもロシアやハンガリーの音楽からでした。ロシア民謡と言っても、本当の民謡に該当する作者不詳の古い伝承歌は少数で、大体は19世紀か20世紀に入ってからの流行り歌とか戦時歌謡や軍歌が多いです。ロシアに興味を持ったりするのは、左傾化してきたのかと思われたりも、し勝ちですが、そうではなくて、イデオロギーは抜きにして、旋律やロシア語の響きの美しさから入りました。
ロシア語は代々木にあったミール・ロシア語研究所に、ZeAmiの業務の合間を縫って99年に1年通いまして、寺子屋のようなスパルタの学校だったので辞書を引き引き読めるくらいにはなりました。ロシアはヨーロッパとアジアの間にあるということから、文化に限らず色々な面でその両方が混在していて、その面白さもありますし、旧ソ連の中央アジアやコーカサスについて調べようとすると、必ずロシア語が付いてまわるというのも、ロシア語に目を向けた動機の一つでした。
では次に赤軍合唱団のパリでの1960年のライブから、もう一度「ポーリュシカ・ポーレ」をどうぞ。
<赤軍合唱団 パリでの1960年のライブ / ポーリュシカ・ポーレ 3分26秒>
次も軍歌ですが、1941年にナチス・ドイツと戦う前線で響き渡ったと言う「聖なる戦い」(スヴャシェンナヤ・ヴァイナー)という曲をどうぞ。アレクサンドロフ・アンサンブルに変ってからの歌唱で、リアルに戦時中を連想させるとても熱い歌です。1948~65年の間のソ連時代の録音のようです。
<アレクサンドロフ・アンサンブル 道 / 聖なる戦い 3分17秒>
Священная война (The Sacred War) - Alexandrov Red Army Choir (SUBTITLES)
次は正真正銘のロシア民謡で、日本でも昔から知られているカリンカです。婚礼に際して歌われた踊り歌です。アレクサンドロフ・アンサンブルのソ連時代の歌声です。
<アレクサンドロフ・アンサンブル / カリンカ 4分28秒>
Red Army Choir - Kalinka (SUBTITLES)
次も赤軍合唱らしい一曲で、1825年に専制君主制に反対して結局失敗に終った蜂起を企てたロシア最初の革命家たち(デカブリスト)を描いたシャポーリン作曲のオペラ「デカブリスト」の中の「兵士の合唱」と言う曲です。放送でうっかり12月革命と言ってしまいましたが、それは間違いで、december~decabristと容易に類推できる通り、12月に由来しているというだけでした。
<ソビエト赤軍合唱団 / デカブリスト 兵士の合唱 3分26秒>
The Decembrists (In Memory of the Alexandrov Ensemble)
では、最後に赤軍合唱団のパリでの1960年のライブから「兵士の旅路」という曲を聞きながら、今回はお別れです。ソロヴィヨフ=セドイ作曲の1955年の映画「マクシム・ペレペリツァ」の挿入歌で、戦場に向かう兵士たちを描いた行進曲です。勇ましい中に哀愁の迸る名曲です。
ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週
<赤軍合唱団 パリでの1960年のライブ / 兵士の旅路 3分54秒>
В путь (Let's go) - Red Army Choir (2016)
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