ロシアの古謡 「白樺は野に立てり」 「母なるヴォルガを下りて」
ゼアミdeワールド45回目の放送、日曜夕方に終りました。2月22日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。<>内がかけた音源です。「白樺は野に立てり」と「母なるヴォルガを下りて」を目立たせたいので、他の曲はまた後日当ブログで取り上げます。
今回はロシア民謡の中から、クラシック音楽に使われた例を原曲と並べて聞いてみたいと思います。今日かける曲は、どれも茫洋とした果てしないロシア平原や大河ヴォルガをすぐさま連想させて、個人的に最も好きなロシア民謡のタイプです。
最初は、「白樺は野に立てり」という曲です。18世紀から知られている有名なロシア民謡で、本来はホロヴォードと呼ばれる群舞に際して歌われる踊り歌だそうです。チャイコフスキーが交響曲4番の4楽章第2副主題にこの旋律を使ってから有名になりました。まずは原曲を赤星赤軍合唱団の歌唱でどうぞ。
<赤星赤軍合唱団 / 白樺は野に立てり 3分47秒>
"The Birch Tree" - Nikolay Gres & The Alexandrov Red Army Choir (1965)
この曲だけの赤星赤軍合唱団では見当たらないので(先日のコンサート全映像には入っております)、赤軍合唱団の古い映像で。バラライカの演奏も確認できます。
続いてチャイコフスキーの交響曲4番の4楽章の該当箇所です。華やかに始まった後、15秒くらいから所々にこの民謡旋律が出てきます。ミハイル・プレトニョフ指揮ロシア・ナショナル管弦楽団の演奏でどうぞ。
<チャイコフスキー 交響曲4番4楽章 ミハイル・プレトニョフ指揮ロシア・ナショナル管弦楽団 冒頭の2,3分>
次に「母なるヴォルガを下りて」というロシア民謡ですが、ヴォルガの舟唄やステンカ・ラージンと並んでヴォルガを歌った民謡としては最も有名な曲です。18世紀の民謡集にはその歌詞が収録されているそうですから、既に200年以上歌い継がれて来た歌と言うことになります。何とステンカ・ラージンの仲間達によって作られたという説もある曲です。チャイコフスキーを初めとして色々な作曲家が作品の中に用いてきましたが、民謡としての歌唱では1932年録音のロシアの名バス歌手フョードル・シャリアピンのSP録音で広く知られるようになりました。そのシャリアピンの名唱でどうぞ。
<フョードル・シャリアピン / 母なるヴォルガを下りて 3分25秒>
Ф. Шаляпин - Вниз по матушке по Волге/ Down To Volga Mother-River
同じシャリアピンの歌唱でありました。
続いて「母なるヴォルガを下りて」を第1楽章冒頭の主題に使ったチャイコフスキーの交響曲第2番 ハ短調『小ロシア』です。ホルン独奏がこの曲("Вниз по матушке, по Волге")を吹いていますが、元の旋律が変奏されて憂いに満ちた感じになっていて、すぐには分かりにくいかも知れません。この曲はウクライナ民謡とも言われたので、曲の副題が『小ロシア』になっています。4番と同じくミハイル・プレトニョフ指揮ロシア・ナショナル管弦楽団の演奏です。
<チャイコフスキー 交響曲2番1楽章 ミハイル・プレトニョフ指揮ロシア・ナショナル管弦楽団 冒頭の2,3分>
次はロシア五人組の作曲家の一人、ムソルグスキーの歌曲コリベールナヤ・ペスニャ(Sleep, son of peasants)で、ルキノ・ヴィスコンティ監督の映画「ヴェニスに死す」のラストシーンでつぶやく様に流れた子守唄です。民謡ではないようですが、ロシアの民謡やユダヤの歌などに深い関心を持っていたムソルグスキーらしい民謡風味の濃い一曲です。最初に言いましたような「茫洋とした果てしないロシア平原を連想」させる曲です。ブルガリア出身の名バス歌手ボリス・クリストフの歌唱でどうぞ。
<ボリス・クリストフ / ムソルグスキー歌曲集 コリベールナヤ・ペスニャ(Sleep, son of peasants) 5分39秒>
ここで宣伝です。
うちでやっております賃貸の一角に管理人兼の叔母のカフェが30年ほど前からありまして、徐々にではありますが、管理人業務とカフェも引き継いでいくことになりました。2月13日以降は店に出ております。ZeAmiの実店舗兼の音楽カフェを考えております。在庫は現在多くはありませんが、クラシックや民族音楽の楽器(こちらは非売品ですが)なども若干置く予定です。お近くにお越しの際は是非お立ち寄り下さい。弦楽などの楽譜も置いて、情報交換の場にも出来ればと思っております。 ゼアミdeワールドの過去の放送原稿も全て置いておきますので、あの時何て言ってたのかな、とか気になった方はお声かけ下さい。
〒794-0812 愛媛県今治市北高下町2-1-7
店名:トーク&talk
営業時間 平日10~17時まで 土日祭日休
では最後にフョードル・シャリアピンの名唱でもう一曲「ピーテル街道を下りて」という曲を聞きながら、今回はお別れです。明るく豪快な一曲で、1929年の録音です。ロシアのバス歌手の登竜門に利用される非常に技巧的な民謡として有名です。
もし時間が余りましたら、ルチーヌシカというシャリアピンの絶品の独唱をかけて終わりにしたいと思います。19世紀のはじめ頃からロシヤの織女たちの間で歌われた曲で、肺腑を抉るような言わば「女工哀歌」の一種です。
ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週
<フョードル・シャリアピン / ピーテル街道を下りて 1分57秒>
<フョードル・シャリアピン / ルチーヌシカ 3分26秒>
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