ラトヴィアとエストニアの音楽 +アルヴォ・ペルト
ゼアミdeワールド59回目の放送、日曜夕方に終りました。31日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。<>内がかけた音源です。今回もイネディ盤の現地録音が中心ですので、youtube捜索はなかなか困難、もしくは多分データ自体無いと思いますので、似たイメージの曲をアップしておきます。
前回もかけましたフランスIneditの「バルトの声」というアルバムには、ラトヴィアとエストニアも入っておりますので、今回はこの二つの国の音楽をかけてみます。スラヴとゲルマンの間にあって、その言語と同じようにヨーロッパの古層を覗かせているバルト三国ということで、伝統音楽の盤は80年代にライコから出ていた女声合唱のジンタルスを初めとして、他にも何枚か出ているのですが、手元に現在ないもので、今回は「バルトの声」とエストニアの作曲家アルヴォ・ペルトの曲をご紹介しようと思っております。
まずは「バルトの声」から短い曲ですが、女声合唱の「春の歌」と結婚式の歌をどうぞ。
<Baltic Voices~Voice of Spring、Wedding Song 50秒、1分18秒>
Zynu Zynu Tāva Sātu LATVIAN VOICES
ジンタルスというのは、こういう感じだったような気がしますが、どうでしょうか。
Latvian Folksong "Ganu Dziesma"/ LATVIAN VOICES female a cappella
こちらはラトヴィア民謡でも、少し現代音楽寄りにも聞こえる女声合唱です。
前者は典型的な地声の女声合唱で、後者は2声のカノンのようになっていました。
バルト三国の内、中央に位置するラトヴィアは声のドローンを聞けるヨーロッパの北限と言われ、独唱あるいはドローン付きの歌が無伴奏で歌われます。ドローン、つまり持続低音の入った例として、「タルカの声」という曲を2曲続けてかけてみます。女性の声ですから低いとは言ってもそれ程でもないのですが、高度な歌唱技術が聞ける稀有な例だと思います。
<Baltic Voices~Voice of Talka、Voice of Talka 1分37秒、1分34秒>
続いて入っている結婚式の歌も、ドローン的な技巧などを入れた興味深い歌唱です。
<Baltic Voices~Wedding Song 3分11秒>
民謡以外では比較的新しいカンテレに似たツィター系弦楽器コクレによる舞踊曲も入っています。カンテレにそっくりの涼しげな音色が特長です。
<Baltic Voices~Kokle Melody 1分14秒>
エストニアの方は、地声の独唱と合唱がコール&レスポンスで交互に歌われていて、どこかアジア的にも聞こえるところがあります。とにかく、おばあちゃん達の強靭な歌声に驚きを覚えます。大相撲の把瑠都関の活躍で日本でも注目度がアップしたと思われるエストニアですが、スラヴ世界とバルト語派(ラトヴィア、リトアニア)の間にありながら、ヨーロッパ系ではなくフィンランドなどと同じウラル系のフィン・ウゴル語族に属する民族です。
「バルトの声」に入っている音源を歌っているのは、オコラの「セトの歌」と同じ地方の女声合唱のようです。「花嫁の最後の食事」というタイトルで、歌われているのは、準備(食事の?)、オーメンの2曲です。オーメンと言う恐ろしげなタイトルが付いていますが(笑)、オーメンの訳は「前兆」あるいは「縁起」と取れます。時間の都合で今回かけませんが、続く「結婚式のラメント」というタイトルの2曲は、タイトルに反して悲しい感じは全くしない歌でした。
<Baltic Voices~Preparations, Omens 3分26秒、1分58秒>
Seto Leelo, Seto polyphonic singing tradition
セトのポリフォニーを紹介したユネスコの映像がありました!
では最後にエストニアで最も有名な現代の作曲家アルヴォ・ペルトの代表作の一つで、映画監督タルコフスキーを追悼するアルボスから2曲を聞きながら今回はお別れです。私が88年に六本木ウェイブのクラシックに入った頃、正に飛ぶように売れていた一枚です。新古典主義やシェーンベルクの十二音技法から始まり、ミニマリズムの時期を経て、西洋の古楽を深く研究し、それらを融合させた独自の静謐で美しい音楽で新境地を開拓して、大きく注目された人です。プロテスタントと正教会が混在するお国柄もよく表しているように思います。
バルト三国と来ると北欧かポーランドに行きたい流れですが、旧ソ連邦諸国を回っている途中ですので、次回からはコーカサスの方に回る予定です。ポーランド、チェコなど西スラヴや、ハンガリー、ルーマニア方面は、コーカサスから中央アジアへ回ってトルコに移動し、バルカン半島を北上してから、たっぷり回る予定です。現在の予測では、おそらく来年の冬頃以降になるかと思います。
ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週
<アルヴォ・ペルト / アルボス~ アルボス(樹)、私達はバビロンの河のほとりに座し、涙した 2分25秒、6分31秒 ヒリヤード・アンサンブル、シュトゥットガルト国立管弦楽団金管アンサンブル>
1987 - arvo pärt - arbos
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