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2017年10月

2017年10月30日 (月)

アブハジアの伝統音楽

ゼアミdeワールド80回目の放送、日曜夕方に終りました。1日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。<>内がかけた音源です。

今回はグルジアの北西部の黒海沿岸に位置するアブハジアと、見つかればチェチェンの兄弟民族イングーシの音源も考えておりましたが、イングーシの方が見つからず、あっても古い録音が1,2曲だけですので、アブハジアの音源をご紹介します。
アブハジアは、コーカサス山脈の南に位置しますが、アブハズ語は言語的にはグルジアよりも、山脈の北側のアディゲ、チェルケス、カバルドなど北西コーカサス諸族に近く、アルメニアと並んで世界最古のキリスト教国として知られるグルジアの中では、イスラム教徒も割と多く、16パーセントほどいるようです。ソ連崩壊後のアブハジア紛争の後も、国際的にはジョージア(或いはグルジア)の一部とされますが、実質的には独立状態にある国です。余談ですが「ジョージア」という現在の正式な呼び名については、昔から「グルジア」と言い慣らして来た者にとっては、アメリカの州の名前か、缶コーヒーのようで非常に違和感がありますので(笑)、今後もグルジアで通します(笑)
これまでにチェチェンやサーカシアの音源をご紹介してきましたロシアのレーベルMelodiyaのAnthology of folk musicのシリーズには、旧ソ連各国のソ連時代の貴重音源が網羅されていまして、アブハジアだけで1枚当てられています。今回はその盤を取り上げます。国内仕様盤では副題が「黒海の真珠」となっております。黒海に面した温暖な気候により、ロシア帝国・ソビエト連邦時代には「黒海の真珠」と称され、リゾート地としても栄えた地方で、アブハズ人、アルメニア人、ロシア人などにより構成されています。伝統音楽には、コーカサスらしい幽玄な美しさのポリフォニーを聞かせる男声合唱と、伴奏にはアコーディオンや数種類の笛や太鼓が用いられます。この盤の録音は1970年-1987年のようです。

まずは一曲、冒頭のアフィルティン・アンサンブルの男声合唱による民族舞踊曲をどうぞ。やはりグルジアの男声合唱にそっくりですが、違いがどこかにあるはず。それを見つけるのも一興でしょう。

<Abkhazian Music - Ensemble Song and Dance Afyrtyn / Auraash`a 2分6秒>

次も同じアフィルティン・アンサンブルの男声合唱による婚礼の歌唱です。花嫁が初めて花婿の家を訪れた場面で歌われるようですが、こんな壮麗な歌を歌われたらどんな気分でしょうか。

<Abkhazian Music - Ensemble Song and Dance Afyrtyn / Radeda 2分52秒>
Didgori Choir•Radeda•(Abkhazia region)


次は7曲目で、やはり同じ男声合唱によるオブズバクについての歌とあります。この盤は解説が簡略なため詳細が不明ですが、アブハズ人、アディゲ人、チェルケス人、オセット人、ウビフ人などの北コーカサス諸民族には、ナルト叙事詩という古い語り物がありまして、ギリシア神話やイギリスの『アーサー王伝説』との関連も議論されてきましたが、オブズバクと言うのはその登場人物の一人かも知れないと思いましたが、どうでしょうか。常々気になっていますが、日本のアニメのナルトとも関係があったりするのでしょうか?
アーサー王の話は、イギリスとコーカサスでは場所が飛び過ぎの気もしますが、この伝説が形成された時代に北フランスに移住した、オセット人の祖先にあたるアラン人が伝えたという説があるようです。

<Abkhazian Music - Ensemble Song and Dance Afyrtyn / Ozbak iashva ( Song about Obzbak) 1st version 2分10秒>
Ozbak - Abkhazian folk song - Abkhazian Ensemble


続く8曲目も同じ男声合唱ですが、太鼓(おそらくナガラ)と手拍子で賑やかに伴奏しています。このサマフアというのもナルト叙事詩かもと見ましたが、どうでしょうか。また調べてみてブログで報告したいと思います。今回はかけませんが、16曲めにはグループ名がNartaaという、いかにもナルト叙事詩を思わせる団体がありました。

<Abkhazian Music - Ensemble Song and Dance Afyrtyn / Samakh`khuaa iashva ( Song about Samakhua) 1st version 1分9秒>

9曲目は、先ほどのSong about Obzbakの2nd versionとありまして、歌っているフェルズバ・ファミリーは、女性と子供と思われます。男声以外でも同様のコーカサス特有のすばらしいポリフォニーを聞かせます。

<Abkhazian Music - Ferzba Family / Ozbak iashva (Song about Obzbak) 2nd version 1分37秒>

10曲目には羊飼いの歌となっていますが、笛の独奏で、ここで吹かれている牧笛Acharpyn pipeは、声との二重音声になっていて、同様の笛は、東欧各地やコーカサスの北のバシコルトスタンなど方々で見られます。

<Abkhazian Music - E.Bagatelia / Auasarkhviga (Shepherd`s Song) 1分15秒>

11曲目は女性のアンサンブル、グンダの演奏で、グルジアの大人気女性トリオTrio Mandiliを思わせるようなチャーミングなコーラスを聞かせます。

<Abkhazian Music - Girls` Ensemble Gunda / Azamat 1分55秒>
Abkhaz Folk Song "AZAMAT" (Азамат)


少し飛んで15曲目には「ヒブラについてのユーモラスな韻」と題が付いていまして、コーカサスらしい男声合唱と西洋の古楽が融合したようなユニークな音楽になっています。ラストの11分を越える婚礼の歌と並んでこの盤の白眉だと思います。

<Abkhazian Music - Folk VIA Ertsakhu / Alaf iashva Khibla (Humorous Rhymes about Khibla 3分5秒>

では最後に、そのラストの11分を越える婚礼の歌を時間までかけて今回はお別れです。男声合唱や独唱、器楽も多彩で、盛り沢山なステージが髣髴とされる曲です。次回からグルジアの色々な音楽を聞いて行く予定です。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<Abkhazian Music - Abkhazian State Folk Song Ensemble / Apsua chara (Abkhazian Wedding Song 11分21秒 抜粋>
Abkhazian Wedding Song

同じ曲ではないようですが、こんなノリがあります。自然に湧いて出るような男声合唱。素晴らしいです。Apsua charaは放送で2分弱しかかけられなかったので、次回全曲かけます。

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2017年10月27日 (金)

北コーカサスの合唱とナルト

ダゲスタンのラクやその他の民族でもう少し、と思いながら、なかなかピントが絞れず、睡魔や用事に追われ通しでした(-_-;)(笑) 色々見ている内に、チェチェンと北オセチアになりますが、チェチェンが古い女声合唱、オセチアは次回の放送内容とも重なる北コーカサスの民族叙事詩ナルトを思わせるタイトルの、やはりコーカサスの合唱です。チェチェン語の喉の奥から出す音の響きとポリフォニーの美しさに魅了され、オセチアの方は奥深い合唱の背景に、ナルト叙事詩が垣間見えてくる映像です。こういう素晴らしい歌唱を聞くと、他のコーカサスのポリフォニーも、テキストから聞き直す必要性を感じます。

NUR-ZHOVKHAR • the ancient Chechen folklore

Narti bægæni (Narts beer) Ossetian folk song of "Nart Saga"

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2017年10月23日 (月)

アヴァールとラクの歌

ゼアミdeワールド79回目の放送、日曜夕方に終りました。25日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。<>内がかけた音源です。蘭Panの音源はyoutubeに上がっていたようですが、ブロックされて見れなくなっておりましたので、1曲目のアイラザットを再度アップしておきます。

Ay Lazzat


今回もオランダPanのCD「Songs and Melodies from Dagestan」からご紹介します。この盤の後半の、コーカサス系のアヴァールとラクの歌が中心です。
まずコーカソイドについて、前回少し説明が足りず、コーカサス的=西洋的のような誤解を招く間違いもありましたので、補足しておきます。コーカソイドとは一般に白人を指す用語で、コーカサスに由来しておりまして、主要な居住地はヨーロッパ、西アジア(中近東)、北アフリカ、西北インドです。
以下ウィキペディアから少し引用しておきます。「人類学が成立したヨーロッパはキリスト教圏であり、ユダヤ・キリスト教に由来する価値観が重んじられていた。ヨーロッパのキリスト教徒にとって、『創世記』のノアの方舟でアララト山にたどり着いたノアの息子たちは現在の人類の始祖であった。人類学の父とされるドイツのブルーメンバッハをはじめとするヨーロッパ人学者たちは、アララト山のあるコーカサスに関心を抱いていた。~ コーカソイドとはヨーロッパ人がキリスト教的価値観に基づいて自己を定義するために創出された概念である。」以上のようにありました。
何度か言いましたが、コーカサス諸語はヨーロッパの主要言語が属するインド・ヨーロッパ語族とは全く別系統ですが、人種的には同じコーカソイドというくくりになるようです。チェチェンとイングーシが属するコーカサス諸語の中のヴァイナフ語派の「ナフ」というのが創世記のノアに由来しているらしく、チェチェンの自称ノフチーは「ノアの子孫」を意味する点などは、ヨーロッパ側からの視点ではなくても聖書に由来している興味深い事例として上げられると思います。
さてオランダPanのCD「Songs and Melodies from Dagestan」から聞いていきましょう。

11曲目 Hiramunikha(Lovely Girl)
コーカサス系のラク語の歌で、この言葉の歌は男性歌手のアリ・オマル・アリエフが担当しています。ヒラムニハと言うのは、愛しい少女と訳せるようですが、内容は「君は立ち去り、私に残されたのは月の無い夜と、からっぽの家だけ」という、何とも切ない愛の歌です。

<Songs and Melodies from Dagestan - Hiramunikha(Lovely Girl) 2分37秒>

12曲目 Heychali(Talisman)
この「お守り」と言う曲もアリ・オマル・アリエフのアコーディオン弾き語りによるラク語の歌で、戦争で夫を失った女性の悲しい歌です。他の曲ではパンドゥールとクムーズを弾いていたムタイ・ハッドゥラーエフがここでは擦弦のチャガナを弾いています。「私がこんなに不幸な訳を教えて。誰が悪いの? 私?それともお守り?」というこれまた切ない歌です。

<Songs and Melodies from Dagestan - Heychali(Talisman) 2分25秒>

14曲目 Kh'uwativ sh'ai qu'at'azav (Where are you?)
非常に読みづらい長いタイトルに見えますが、訳すと「あなたはどこにいるの?」と至ってシンプルです。サニジャト・スタノヴァによるアヴァール語の歌で、ダゲスタンの古典的な詩人の「コハブロソのマフムード」による詩です。「愛する人との逢瀬を辛抱強く待っている女の子の愛の歌で、彼女の心は切れた糸から外れたビーズのように粉砕されている」という切ない女心を歌ったラブソングです。

<Songs and Melodies from Dagestan - Kh`uwativ sh`ai qu`at`azav 2分45秒>

15曲目 Kiv vughiv mun kiv vughiv (Where are you, Hero of my Dreams?)
綴りはかなり違いますが、この曲も「あなたはどこにいるの?」と訳せるようです。後半には「私の夢の英雄よ」と付いています。やはり愛する人を辛抱強く待っている若い女性の愛の歌です。サニジャト・スタノヴァによるアヴァール語の歌で、若い女性歌手が歌うのが常のようです。

<Songs and Melodies from Dagestan - Kiv vughiv mun, kiv vughiv 2分56秒>

16曲目 K`aydar
再びアリ・オマル・アリエフのアコーディオン弾き語りによるラク語の歌で、グカルの要塞の防衛のリーダーだった17世紀ラクの英雄カイダールについて歌われています。「もしそれが山々と谷を襲ったら、祖国のためにカイダールが正に鷲のように立ち上がるだろう」こんな内容の歌です。

<Songs and Melodies from Dagestan - K`aydar 3分>

18曲目 Ak'lu tle ebel (Ask your Mother for Advice)
サニジャト・スタノヴァによるアヴァール語の歌で、母に捧げられた古いアヴァールの歌です。「あなたの母に尋ねて、アドバイスをもらって」というような内容のようです。この後3曲はライブ音源のようです。

<Songs and Melodies from Dagestan - Ak`lu tle ebel 4分9秒>

19曲目 Chiyak rod'kli kogegi (Hopeless Love)
英訳に「希望のない愛」とあるアヴァールの愛の歌で、結婚した男性に決して愛を打ち明けられない若い女性の苦しい胸の内を歌っているようです。解説には以上のようにありましたが、18曲目と同じ旋律に聞こえます。

<Songs and Melodies from Dagestan - Chiyak Rod`kli Kogegi 4分6秒>

20曲目 Farewell Song
ラストの曲のタイトルは「お別れの歌」とありまして、タイトル曲のアイラザットと同じく、アヴァール人女性歌手サニジット・スルタノヴァと、ノガイ人女性歌手ズーラ・シャンディエヴァが最後に一緒に出てきて軽快に歌っています。 この曲を聞きながら今回はお別れです。ダゲスタンにはアヴァール、ラク、クムイク、ノガイ以外にも主要民族だけで6つはいますが、伝統音楽のyoutube映像は見つかっても、CD音源は見当たらないので、ダゲスタンは今回で最後にしまして、次回はグルジアの北西部に位置するアブハジアと、見つかればチェチェンと北オセチアの間のイングーシの音源も聞いて行く予定です。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<Songs and Melodies from Dagestan - Farewell Song 2分20秒>

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2017年10月20日 (金)

タバサランのレズギンカ и ガムザトフのドキュメンタリー

アヴァールより人口の少ないダゲスタンのコーカサス系民族の中で、ダルギンについては最初にマリナ・ムスタファエヴァをご紹介しました。もう一つ名を上げていたタバサランで探すと、ポップス系かレズギンカですが、いくつかありました。コーカサス諸語民族の居住場所で見ると、レズギンカの故郷レズギンとダルギンの間に住んでいるタバサラン。レズギンカも本家本元に近いノリがあるのでしょうか。タバサラン人の有名人に、女子棒高跳びの選手エレナ・イシンバエヴァがいます。父がタバサラン人、母はロシア人で、コーカサスから結構離れたヴォルゴグラード生まれです。(と言ってもヴォルガ下流に近く、モンゴル系のカルムイクとアストラハンに接している州ですが)
2本目は、先日アップしました「鶴」の詩を書いたアヴァールの詩人ラスール・ガムザトフのドキュメンタリー「私の道(マヤ・ダローガ)、ラスール・ガムザトフ」です。この人の関連映像は結構あります。土日にじっくり見られてみてはいかがでしょうか。私も関連映像もちゃんと見てみて、「鶴」関連の映像があったりしたら、またアップします。

tabasaran lezginka

Моя дорога. Расул Гамзатов

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2017年10月18日 (水)

ダゲスタンの旋律 Мелодии Дагестана

今日の収録でダゲスタンの音楽巡りは終わりにします。次回はアブハジアと、あればイングーシ、その後はコーカサス系最大の国、グルジアです。前回の放送でコーカソイドについて言葉足らずだったので、修正・補足しておきました。もっとクムイクのクムーズ演奏や、他のダルギンやタバサランなどのコーカサス系民族の音源も入れたかったのですが、CDでは音源が見当たらないもので、ブログの方であればアップします。
今日の映像はдагестанские фильмыとあるので、ダゲスタンの映画のシーンでしょうか。男性の群舞、女性の群舞、女性歌手の独唱(バックの海はカスピ海でしょう)、アゼルバイジャンのサズ弾き語りそっくりな演奏などを見ることが出来ます。古い時期(ソ連時代?)のように思いますが、どれも素晴らしいです。

Мелодии Дагестана

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2017年10月16日 (月)

アヴァールの器楽 Shamil Imam等

ゼアミdeワールド78回目の放送、日曜夕方に終りました。18日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。<>内がかけた音源です。youtubeが見つかったのは、Shamil Imamのみでした。

先週に続いてオランダPanのCD「Songs and Melodies from Dagestan」からご紹介します。後半はコーカサス系のアヴァールの音楽が中心ですが、コーカサス系のラクやテュルク系のクムイクの音楽も若干入っております。ノガイから聞いてくると、アヴァールからがらっと変るような印象も受けます。

8曲目「シャミル・イマーム」は、コーカサス系のアヴァールの歌で、いかにもコーカソイド(白人を指す用語で、コーカサスに由来)の風貌の、つまり西洋的な顔立ちの女性歌手サニジャト・スルタノヴァの歌唱です。ロシアと戦った19世紀の伝説的なアヴァールの戦士シャミル・イマームについての歌で、伴奏はノガイと同じで、擦弦楽器チャガナ、打楽器ナガラ、アコーディオンです。

<Songs and Melodies from Dagestan - Shamil Imam 3分36秒>
Shamil imam -Daghestanian Avar music with "pandur" enstrument.

同名曲のパンドゥール独奏は幾つかありましたが、歌では今の所見つかっておりません。同じ曲かどうか、今の所不明です。ダゲスタンのアヴァールで非常に名高いテーマであることは確かなようです。

9曲目「ニッティハッサ・バレイ」という曲は、この盤の中に数曲入っているラク語の歌で、アヴァール語と同じコーカサス諸語ですが、ダゲスタンの中では多数派のアヴァールに比べると少数派の言語です。この言葉について調べていて、初めてパーロチカというロシア文字(あるいはキリル文字)にはないコーカサス諸語に特有の文字の名称を知りました。パーロチカは、ローマ字のアイかエルのように見えますが、通常独立した音価は持たず、前の子音が放出音であることを表すようです。この音があるのは、世界で他にはエチオピアのアムハラ語やナイジェリアのハウサ語、南部アフリカのブッシュマンなどのコイサン語族があるくらいで、珍しい発音と言えると思います。パーロチカは、チェチェン語、イングーシ語では喉頭蓋破裂音を表すそうです。これもコーカサスの言葉特有の音です。
この曲は母についての歌で、テュルク系のノガイだけでなく母への尊敬と思慕の強さはコーカサスの諸民族に共通のようです。

<Songs and Melodies from Dagestan - Nittikhassa baley (Song about Mother) 2分59秒>

10曲目は「二つのアヴァールの旋律」というタイトルの弦楽器パンドゥールの独奏曲です。ZeAmiブログの方では弾き語りでyoutubeを色々見ていた楽器ですが、ここでは素朴な音色のソロが聞けます。演奏は先のラクの曲で伴奏をしていたMutay Khadullaevです。

<Songs and Melodies from Dagestan - Two Avar Melodies 4分25秒>

13曲目には「クムイクの旋律とチェチェンの踊り」という曲が入っておりまして、こちらはクムイクのクムーズで演奏されています。アヴァールのパンドゥールとの聞き比べと言う事で、2曲続けてかけてみます。柔らかいパンドゥールの音と、おそらくスチール弦と思われるクムーズのクリアな音色と躍動的なコーカサスのリズムは好対照のように思います。こちらも演奏は同じくMutay Khadullaevです。アヴァール、クムイク、ラクの曲まで、系統の異なる民族の音楽もダゲスタン内なら何でもこなす弦楽器奏者ですが、このクムイクとチェチェンの曲が最も鮮烈な印象があります。彼はアルバム・タイトル曲のアイラザットとノガイの曲では、擦弦楽器チャガナを弾いていました。

<Songs and Melodies from Dagestan - Kumyk Melody and Chechen Dance 3分32秒>

お知らせ

9月14日木曜夜から4回、5時にゼアミ実店舗兼のカフェ、トーク・トークを閉めた後、初の弦楽ナイト(仮称)を開催しました。今治市民弦楽合奏団のメンバー4、5人が集まり、大体は近々の11/12の文化祭に向けての補講になっておりますが、構想としては、弦楽四重奏や管楽器などの人も入っての様々なセッションも出来ればと思っています。
毎木曜日、時間は5時から6時か6:30まで、見学自由、入場無料、閉店後なのでドリンクは各自持ち込み、ゴミは各自持ち帰りと言うことで、お待ちしております。宜しければ見学にお越し下さい。メンバーが集まらない時は私が無伴奏チェロでも弾きます。駐車場は店の右手に数台あります。

場所
今治市北高下町2-1-7 ハイツ近藤2の1階
Cafe トーク・トーク マスター  ゼアミ店主
兼 今治市民弦楽合奏団 代表 近藤博隆

因みに演奏曲目ですが、11月12日の今治文化協会の文化祭(音楽祭)では、チャイコフスキーのアンダンテ・カンタービレと、ジブリ映画の「天空の城ラピュタ」の主題歌「君をのせて」の2曲です。

大分先ですが、来年2月4日には第11回今治総合芸能祭がありまして、こちらでは琴と尺八の葉風会との共演で森岡章作曲の「月に寄する三章」という曲を弾きます。作曲された昭和40年代の雰囲気が色濃く感じられる、ロシア民謡とナツメロ、琴の曲の入り混じったような印象の静謐な曲です。唯一快活な2曲目は、ペルシアの舞曲レングに似た感じにも聞こえます。11月、2月とも今治中央公民館での催しで、どちらもヴァイオリンで出ます。宜しければ是非お越し下さい。


ダゲスタンのアルバムに戻りまして、今回は撥弦のパンドゥールとクムーズだけでなく、擦弦のチャガナまでこなすMutay Khadullaevの演奏に焦点を当てております。17曲目のAvar Dance Melodiesでは、ナガラとアコーディオンの伴奏でチャガナのソロを聞かせています。ダゲスタンの南に隣接するアゼルバイジャンのケマンチェ演奏と聞き比べたいような独奏です。
この曲を聞きながら今回はお別れです。次回はこの盤の後半のアヴァールとラクの、歌の方を聞いて行く予定です。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<Songs and Melodies from Dagestan - Avar Dance Melodies 5分33秒>

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2017年10月13日 (金)

ノガイの歌 3曲

何かとバタバタでアップが飛びました。加えて近頃年のせいで0時まで起きかねていますので(笑)、ブログはなるべく店の5時閉店の終わりの辺りまでに上げられたらと思っています。そうしないと帰ってからZeAmiの作業が出来ないのもありますし。
「西カザフ」とどこかで見たようにも思うノガイ人は、言葉はテュルク系ですが、外見はモンゴル的で、本当に日本人そっくりな人がたくさんいます。民謡もどこかストレートに訴えかけてくるものがあるように思いますが、いかがでしょうか。例の蘭Pan盤からTurnalar (Cranes 鶴)と、Sabantuy(穀物が束に縛られる最初の祝日のための歌)だけですが、そのまま上がっていました。日本にも千羽鶴というものがありますが、ノガイやアヴァールで歌われる「鶴」と近いものを感じます。旋律も切なくノスタルジー溢れる一曲だと思います。3本目は、よりカザフやキルギス(と言うよりトゥヴァやモンゴルかも)との繋がりを強く感じさせる音楽です。

Turkic-Nogai Folk Song From Caucasus - Turnalar (Cranes)

Turkic-Nogai Folk Song From Caucasus - Sabantuy

Nogay Tatarlar . Ногайлар . Ногъайлыла . Nogai Tatars

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2017年10月 9日 (月)

テュルク系 ノガイの音楽

ゼアミdeワールド77回目の放送、日曜夕方に終りました。11日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。<>内がかけた音源です。ノガイについては、簡単には見つかりそうにないので、また水曜以降に調べてみます。

今回はもう一つのダゲスタンの音源であるオランダPanのCDから聞いて行きたいと思います。
1曲目は、ダブルリードのズルナ、打楽器ナガラ、アコーディオンによる古いアヴァールの旋律という短かい曲に始まりまして、続く2曲目はアルバムタイトルでもあるアイ・ラザット(Ay Lazzat=Oh Pleasure)という曲です。アヴァールとノガイに共通の歌で、今風に訳すなら「いいね」となるでしょうか。西洋的な典型的コーカソイドの顔立ちのアヴァール人女性歌手サニジット・スルタノヴァと、日本人と見紛うようなアジア的な顔立ちのノガイ人女性歌手ズーラ・シャンディエヴァが一緒に歌っています。ダゲスタンには元々両方が住んでいるのが面白いところです。アイ・ラザットは、この民族混成のグループ名にもなっていて、弦楽器も同系統ですがアヴァールのパンドゥールとノガイのクムーズの両方が出てくるようです。

<Songs and Melodies from Dagestan - Old Avar Melody、Ay Lazzat (Oh Pleasure) 42秒、3分25秒>
Folk Song from Dagestan - Ay, Lazzat


3曲目は「父の家」と訳せるノガイの歌で、子供たちに馬の乗り方を教えているほのぼのする3拍子の歌です。擦弦楽器チャガナ、打楽器ナガラ、アコーディオンの伴奏です。

<Songs and Melodies from Dagestan - Ata yurtum (Father's House) 3分22秒>

4曲目は「鶴」というタイトルのノガイの歌で、アヴァールとノガイの違いはありますが、前回ご紹介しましたガムザトフの「鶴」をすぐ様思い出してしまいます。「秋には鶴が無限の草原を離れ、私たちは遠くなる彼らを眺める。さようなら、鶴よ」このような内容の歌です。ガムザトフの詩のような絶唱ではなくても、とてもノスタルジー溢れる一曲です。

<Songs and Melodies from Dagestan - Turnalar (Cranes) 3分14秒>

5曲目は、ノガイの宗教的な歌で、穀物が束に縛られる最初の祝日のための歌です。

<Songs and Melodies from Dagestan - Sabantuy (Spring Celebration) 3分46秒>

6曲目は、母に捧げるノガイの歌で、「母によって我が人生の道が開かれた。私の星は母によって照らされ、昼も夜も母は私の心にいる。」 こんな内容です。

<Songs and Melodies from Dagestan - Anama (To Mother) 3分57秒>

7曲目Khastugan (Born)は、16世紀ノガイの詩人Dosiambet Azov-ulyが書いたスピリチュアルな叙事詩で、常にアカペラで歌われるそうです。16世紀のノガイとヴォルガ河口付近に住むモンゴル系のカルムイクの間の戦闘で、カスピ海の北東側にあったノガイの国が亡ぼされ、南のコーカサスと一部はクリミアとルーマニアにまで追放されるという悲劇の始まりを歌っているようです。
ここまではノガイの歌で、擦弦楽器チャガナ、打楽器ナガラ、アコーディオンの伴奏でした。いずれもズーラ・シャンディエヴァの歌唱で、キルギスの民謡にも通じるようなノスタルジックな曲が多く、全てご紹介しました。ノガイは、かつてキプチャク・ハン国を構成した遊牧民族の末裔であるとされ、言語系統はテュルク系に分類される民族です。
この曲を聞きながら今回はお別れです。次回はこの盤の後半のアヴァールの音楽の方を聞いていきます。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<Songs and Melodies from Dagestan - Khastugan (Born) 3分52秒>

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2017年10月 6日 (金)

アヴァール語の響きとパンドゥール

先日のアヴァールのパンドゥール弾き語りの発音の件は、やはりアヴァール語の発音の特殊性のようです。何本かで確認できました(特に3,4本目)。日本でも「キ」と発音する際に、口の横から息が漏れるような発音の方がいますが、そんな音です。コーカサス諸語も言葉によって発音が色々なのでしょうか。チェチェン語などにはなかったように思いますので。
アヴァールのパンドゥールについては弾き語り映像が膨大にありました。クムイクのクムーズよりも検索しやすく、数が多いように思います。胴の上の方が後ろに大きく膨らんでいる特異な形もよく確認できます。フェスティヴァルなどでの長尺の演奏がありましたので、今日はそれらを中心に貼っておきます。(アヴァールは放送では来週の予定です) クムイクのクムーズのイラン北西風演奏の捜索が難攻しておりましたが、また来週はノガイだけでなくそちらも見つかったらアップする予定です。

Цамаури. Конкурс исполнителей на пандуре и чагане "Играй, душа!"

Расул Омаров - МагIарулал. Фестиваль Золотая осень - 2012

Синдиков - Песня о Магомеде Шабанове

гаджилав гаджилаев Gadjilav Gadjiaev tanpur

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2017年10月 4日 (水)

アヴァールのパンドゥール弾き語り

今日の動画の演奏者について調べてみましたら、АБАКАР ДЖАМАЛУДИНОВ 5 - Шуайнат ( Авар Пандур )と出ていました。アバカル・ジャマルディノフ (アヴァール、パンドゥール)とありましたので、アヴァール人の歌い手と分かりました。アヴァールは、古代においてはテュルク系遊牧民として知られますが、現代のアヴァールはコーカサス諸語のダゲスタン語派に属していて、同じアヴァールという名前ですが、別系統のようです。クムイクのクムーズに形は似ていますが、パンドゥールはグルジアのパンドゥリに名前だけでなく柔らかい音色も似ています。一番興味深いのは、この男性歌手(吟遊詩人)の言葉で、カ行で不思議な発音が色々と聞こえます。これがアヴァール語の特徴なのか、彼の発音の癖なのかはっきり分かりません。どちらでしょうか。

Абакар Джамалудинов - Песня о Сайгидпаше Умаханове

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2017年10月 2日 (月)

Folk Melodies of Daghestan B面とЖуравли

ゼアミdeワールド76回目の放送、日曜夕方に終りました。4日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。<>内がかけた音源です。露MelodiyaのダゲスタンB面に入っているイラン北西部の音楽に近い感じのクムーズ演奏がなかなか見当たらないので、コーカサス音楽ど真ん中のような演奏ですが、Гьажимурат Абдуллаев(ガジムラート・アブドゥッラーエフ)の演奏を上げておきます。こちらも味わい深い演奏です。агъач-къомуз(アガチ・コムズ)と言うのがクムイク人のクムーズと全く同じものか、演奏地域が異なるのか、その辺りがまだ不明です。

ダゲスタンの音楽の2回目は、ロシアのメロディア盤B面から行きたいと思います。先週はクムイクの弦楽器クムーズの合奏を中心にかけましたが、B面では「山並みに沿って」という曲に始まり、古いアヴァールの旋律が4曲、「兵士の手紙」というタイトルのクムイクの歌、古いダルギンの旋律、レズギンの旋律、ラクの旋律と入っておりまして、前回のラストは1曲目の後のクムーズソロの一曲目で終りました。一曲目は短かい曲なので、今日はもう一度最初から18分通しでかけたいと思います。テュルク系民族クムイクの弦楽器クムーズは、いかにも中央アジア、キルギスタンのコムズなどに繋がる音色でしたが、B面では同じクムーズを使っていてもイラン北西部の音楽にかなり似通った感じから始まります。こちらのクムーズ演奏はRamazan Magomedovという人です。ぐぐってみましたが、ベラルーシのボクサーが出てきただけで、プロフィールは解らずじまいでした。典型的コーカサス音楽のA面とは対照的に、イラン北西部アゼルバイジャン地方辺りの弦楽器独奏を聞いているのかと錯覚してしまう音楽です。太鼓Doholと擦弦楽器Chaganaも出てくる冒頭の華々しさの後は、ソロで地味ではありますが、貴重なロシアのレーベルMelodyaの貴重なアナログ音源ですので、全て通しでかけます。

<Folk Melodies of Daghestan B面 18分4秒>


前回、チェチェンは四国より少し小さく、ダゲスタンは大体九州くらいの広さと言いましたが、後者は間違っておりましたので、訂正します。正確に調べてみましたら、チェチェンは15,300km2、四国は18,800km2、ダゲスタンは50,300km2、九州は36,750km2でしたから、最初の比較は大体合っていますが、ダゲスタンは九州の1.4倍位ありました。北コーカサスの他の国を全て合わせた位の広さがある国でした。

ダゲスタンと言えば、是非ご紹介したい曲があります。一般にはロシア歌謡として知られている「鶴」という曲ですが、ダゲスタンのアヴァール語の詩人ラスル・ガムザトフ(1923-2003)が歌詞を書いていて、その内容は、死者たちの魂が鶴の群れとなって地上の生者たちと交感する様を歌っています。コーカサスらしい叙情性と死生観も感じさせる1969年の名歌で、日本でもダークダックスが歌って広く知られるようになりました。この詩はガムザトフが1965年に来日した際に広島の原爆資料館で受けた強い衝撃をモチーフに書かれています。ロシア民謡の歌手として有名な山之内重美さんの訳詩と歌唱でどうぞ。せりふは岸田今日子さんで、ここでは恋人を戦争に奪われた女性の歌として歌われています。
この曲を聞きながら今回はお別れです。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<山之内重美 / つる 5分15秒>
【ソ連音楽】Журавли / 鶴【日本語字幕】

ジュラーヴリ(鶴)は、手持ち音源には多分山之内さんの盤だけでしたが、youtubeには色々現地音源が出ています。字幕で原詩の意味がよく分かります。

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