アヴァールとラクの歌
ゼアミdeワールド79回目の放送、日曜夕方に終りました。25日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。<>内がかけた音源です。蘭Panの音源はyoutubeに上がっていたようですが、ブロックされて見れなくなっておりましたので、1曲目のアイラザットを再度アップしておきます。 Ay Lazzat 今回もオランダPanのCD「Songs and Melodies from Dagestan」からご紹介します。この盤の後半の、コーカサス系のアヴァールとラクの歌が中心です。 まずコーカソイドについて、前回少し説明が足りず、コーカサス的=西洋的のような誤解を招く間違いもありましたので、補足しておきます。コーカソイドとは一般に白人を指す用語で、コーカサスに由来しておりまして、主要な居住地はヨーロッパ、西アジア(中近東)、北アフリカ、西北インドです。 以下ウィキペディアから少し引用しておきます。「人類学が成立したヨーロッパはキリスト教圏であり、ユダヤ・キリスト教に由来する価値観が重んじられていた。ヨーロッパのキリスト教徒にとって、『創世記』のノアの方舟でアララト山にたどり着いたノアの息子たちは現在の人類の始祖であった。人類学の父とされるドイツのブルーメンバッハをはじめとするヨーロッパ人学者たちは、アララト山のあるコーカサスに関心を抱いていた。~ コーカソイドとはヨーロッパ人がキリスト教的価値観に基づいて自己を定義するために創出された概念である。」以上のようにありました。 何度か言いましたが、コーカサス諸語はヨーロッパの主要言語が属するインド・ヨーロッパ語族とは全く別系統ですが、人種的には同じコーカソイドというくくりになるようです。チェチェンとイングーシが属するコーカサス諸語の中のヴァイナフ語派の「ナフ」というのが創世記のノアに由来しているらしく、チェチェンの自称ノフチーは「ノアの子孫」を意味する点などは、ヨーロッパ側からの視点ではなくても聖書に由来している興味深い事例として上げられると思います。 さてオランダPanのCD「Songs and Melodies from Dagestan」から聞いていきましょう。 11曲目 Hiramunikha(Lovely Girl) コーカサス系のラク語の歌で、この言葉の歌は男性歌手のアリ・オマル・アリエフが担当しています。ヒラムニハと言うのは、愛しい少女と訳せるようですが、内容は「君は立ち去り、私に残されたのは月の無い夜と、からっぽの家だけ」という、何とも切ない愛の歌です。 <Songs and Melodies from Dagestan - Hiramunikha(Lovely Girl) 2分37秒> 12曲目 Heychali(Talisman) この「お守り」と言う曲もアリ・オマル・アリエフのアコーディオン弾き語りによるラク語の歌で、戦争で夫を失った女性の悲しい歌です。他の曲ではパンドゥールとクムーズを弾いていたムタイ・ハッドゥラーエフがここでは擦弦のチャガナを弾いています。「私がこんなに不幸な訳を教えて。誰が悪いの? 私?それともお守り?」というこれまた切ない歌です。 <Songs and Melodies from Dagestan - Heychali(Talisman) 2分25秒> 14曲目 Kh'uwativ sh'ai qu'at'azav (Where are you?) 非常に読みづらい長いタイトルに見えますが、訳すと「あなたはどこにいるの?」と至ってシンプルです。サニジャト・スタノヴァによるアヴァール語の歌で、ダゲスタンの古典的な詩人の「コハブロソのマフムード」による詩です。「愛する人との逢瀬を辛抱強く待っている女の子の愛の歌で、彼女の心は切れた糸から外れたビーズのように粉砕されている」という切ない女心を歌ったラブソングです。 <Songs and Melodies from Dagestan - Kh`uwativ sh`ai qu`at`azav 2分45秒> 15曲目 Kiv vughiv mun kiv vughiv (Where are you, Hero of my Dreams?) 綴りはかなり違いますが、この曲も「あなたはどこにいるの?」と訳せるようです。後半には「私の夢の英雄よ」と付いています。やはり愛する人を辛抱強く待っている若い女性の愛の歌です。サニジャト・スタノヴァによるアヴァール語の歌で、若い女性歌手が歌うのが常のようです。 <Songs and Melodies from Dagestan - Kiv vughiv mun, kiv vughiv 2分56秒> 16曲目 K`aydar 再びアリ・オマル・アリエフのアコーディオン弾き語りによるラク語の歌で、グカルの要塞の防衛のリーダーだった17世紀ラクの英雄カイダールについて歌われています。「もしそれが山々と谷を襲ったら、祖国のためにカイダールが正に鷲のように立ち上がるだろう」こんな内容の歌です。 <Songs and Melodies from Dagestan - K`aydar 3分> 18曲目 Ak'lu tle ebel (Ask your Mother for Advice) サニジャト・スタノヴァによるアヴァール語の歌で、母に捧げられた古いアヴァールの歌です。「あなたの母に尋ねて、アドバイスをもらって」というような内容のようです。この後3曲はライブ音源のようです。 <Songs and Melodies from Dagestan - Ak`lu tle ebel 4分9秒> 19曲目 Chiyak rod'kli kogegi (Hopeless Love) 英訳に「希望のない愛」とあるアヴァールの愛の歌で、結婚した男性に決して愛を打ち明けられない若い女性の苦しい胸の内を歌っているようです。解説には以上のようにありましたが、18曲目と同じ旋律に聞こえます。 <Songs and Melodies from Dagestan - Chiyak Rod`kli Kogegi 4分6秒> 20曲目 Farewell Song ラストの曲のタイトルは「お別れの歌」とありまして、タイトル曲のアイラザットと同じく、アヴァール人女性歌手サニジット・スルタノヴァと、ノガイ人女性歌手ズーラ・シャンディエヴァが最後に一緒に出てきて軽快に歌っています。 この曲を聞きながら今回はお別れです。ダゲスタンにはアヴァール、ラク、クムイク、ノガイ以外にも主要民族だけで6つはいますが、伝統音楽のyoutube映像は見つかっても、CD音源は見当たらないので、ダゲスタンは今回で最後にしまして、次回はグルジアの北西部に位置するアブハジアと、見つかればチェチェンと北オセチアの間のイングーシの音源も聞いて行く予定です。 ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週 <Songs and Melodies from Dagestan - Farewell Song 2分20秒>
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