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2017年11月 6日 (月)

アブハジアからグルジアへ

ゼアミdeワールド81回目の放送、日曜夕方に終りました。8日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。<>内がかけた音源です。ビクター盤の映像はやはりありませんでした。

今回からグルジアの音楽巡りの予定ですが、前回メロディア盤ラストの11分を越える婚礼の歌が、冒頭の2分ほどしかかけられなかったので、まずこの曲を全曲かけてからにしたいと思います。アブハジアの男声合唱が出てきますので、後でかけるグルジアの男声合唱との比較にもなると思います。曲名はApsua charaです。そのものの動画はありませんでしたが、10年ほど前にアップした「山岳部のリズム」とロシア語で出ているカフカス太鼓四重奏など関連映像が色々ありました。おそらくApsuaと言うのが婚礼の意味ではと思います。

<Abkhazian Music - Abkhazian State Folk Song Ensemble / Apsua chara (Abkhazian Wedding Song 11分21秒>

Apsua a chara a koshara


APSUA AKUASHARA


グルジアの伝統音楽のCDですが、私が把握しているだけでも欧米盤中心に20枚余りはありますが、コーカサスや中央アジアの音楽はよく売れるもので、私の手元に現在残っているのは8点ほどです。その中からご紹介していきます。
グルジアの音楽では、何といっても男声合唱が有名で、その歴史は非常に古く、紀元前4世紀のギリシアの歴史家クセノフォンがグルジアの歌について、紀元前1世紀には地理学者のストラボンが、グルジアの合唱団は交互に歌うことを書き残しています。
また特筆すべきエピソードとして、ロシア20世紀の大作曲家ストラヴィンスキーは、ハッサンベグラという曲を聴いて「人類の作った最高の音楽」と称賛したそうです。深遠な美しさだけでなく、その中でヨーデルのような裏声パート「クリマンチュリ」の暴れ方が一種のバーバリズムを醸し出し、歌以外にも、喋り、叫びなどの発声も交えた複雑なリズムとハーモニーのポリフォニーになっていて、いかにも「春の祭典」などで知られるストラヴィンスキーの心を捉えそうに思います。
そのハッサンベグラという曲をまず聞いて頂きましょう。アメリカのTraditional Crossroadsから出ている「グルジア共和国での最初の録音 1902-1914 Drinking Horns & Gramophones」に収録されているSP音源で、20世紀初頭のソヴィエト以前の、まだ帝政ロシア時代のグルジア録音です。正にストラヴィンスキーが聞いた頃の録音でしょう。

<グルジア共和国での最初の録音 Drinking Horns & Gramophones~Khasanbegura 3分40秒>
The first recordings in the Georgian Republic Khasanbegura 1907


同じハッサンベグラを、ビクターJVCワールドサウンズシリーズの「サカルトベロ 奇蹟のポリフォニー」の新しい演奏でも聞いて頂きたいと思いましたが、この盤が行方不明で今回はかけられませんので、今回はその続編の「マルトゥベ 奇蹟のポリフォニー」から数曲ご紹介します。サカルトベロとは、グルジア語での自称です。この盤について音楽之友社の「世界の民族音楽ディスク・ガイド」に書いた拙稿を読み上げてみます。

1978年に結成された少年と若者達による合唱団。マルトゥベとはひな鳥の意味で、このサカルトベロの合唱シリーズ3枚は老若男女のグルジア合唱を網羅している。シリーズ1に収録の平均年齢75歳のグループと合唱のスタイルはほとんど同じである。この込み入ったポリフォニーを少年がやってしまうのだから凄い。特にドローンの深々とした音色がいい。この若年にしてこの表現、驚きである。自身著名な歌い手である指揮者エルコマイシビリの育て上げた、青年からボーイソプラノまでの広い音域を誇る合唱団で、首都トビリシのグループだからだろう、グルジア各地の民謡を歌っている。レパートリーは仕事歌、旅の歌、恋愛歌、戦争の歌など。

このように書きました。何度か言いましたが、この本は10年ほど前に今治中央図書館に寄贈してありますので、宜しければ是非ご覧下さい。音楽の棚に並んでいます。

この盤から、まず一曲「シャイレビ・カフリ」という曲をかけてみます。少年達がお互いをからかい合っている冗談歌ですが、グルジアらしいハーモニーが聞ける親しみやすい曲です。

<マルトゥベ 奇蹟のポリフォニー~シャイレビ・カフリ 2分30秒>

2曲目には、戦争で死んだ兵士についての歌「ワラド・アプハズリ」という曲が入っていて、グルジアの合唱の静謐で神秘的な一面が表れた印象的な曲です。

<マルトゥベ 奇蹟のポリフォニー~ワラド・アプハズリ 2分19秒>

次は17曲目に飛びまして、ツィンツハロという恋愛の歌です。泉のほとりで男が美女に出会い、彼女に求愛するが、かなわず失恋するという物語が歌われています。サカルトベロの代表的な名曲の一つです。

<マルトゥベ 奇蹟のポリフォニー~ツィンツハロ 3分41秒>

最初のアブハジアの盤の終曲が音飛びして最後までかからなかったので、時間が余ってしまいました。予定を変更してマルトゥベのラストを飾っているナドゥリという曲を聞きながら今回はお別れです。最後にふさわしい華やかな曲で、節の中で音を下げるような歌い方には度肝を抜かれました。これは驚愕の唱法だと思います。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<マルトゥベ 奇蹟のポリフォニー~ナドゥリ 3分15秒 抜粋>

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