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2018年1月

2018年1月31日 (水)

Djivan Gasparyan - Ojakhum

ジヴァン・ガスパリアンのソロ動画が見つからないままでしたが、昔の名演を収めた映像はありました。こういう演奏の間近からの動画を見たいものですが、さすがに今年90歳の名人の生映像はなかなか残っていないようです。残念ですが。
アルメニアの名歌Sari Gelinについても、もう少し掘り下げてみたいものですが、なかなか資料も出てこず、しかし何年か前に当ブログでこの曲について書いたと思いますので、コーカサスのカテゴリーで探してみて下さい。どこでどうやってこの歌について調べたのか、今となっては分からすで(笑) 一見曲にそぐわないような派手なルックスの若手女性歌手の熱唱がありましたので、とりあえず貼っておきます。

Djivan Gasparyan - Ojakhum

Sarı gelin

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2018年1月29日 (月)

ホセイン・アリザーデ&ジヴァン・ガスパリアン / Endless Vision

ゼアミdeワールド93回目の放送、日曜夕方に終りました。31日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。先週もばたばたで、金曜にブログアップした後、トップの変更も出来ずでした。

アルメニア音楽の3回目になります。今回はペルシア古典音楽の巨匠ホセイン・アリザーデとジヴァン・ガスパリアンの共演盤/Endless Visionをご紹介します。このライブ録音は2004年にまずイランのHermes Recordsからリリースされまして、その後フランスのWorld Villageからもライセンスリリースされております。2007年にはグラミー賞ワールド・ミュージック部門にノミネートされています。タールやセタールの巨匠として知られるアリザーデですが、ここでは彼の考案した6弦の弦楽器シュールアンギーズを演奏しています。
ゼアミHPに書きましたこの盤の紹介文を読み上げてみます。冒頭にフランスの詩人ロートレアモンの『マルドロールの歌』に対する形容を思い出させるキャッチコピーを書いてみました。「鴬の声」とは、ペルシア古典声楽アーヴァーズを喩える有名な形容です。

鴬の声とドゥドゥクの美しき出会い!
*アリザーデとアルメニアのドゥドゥクの巨匠ガスパリアンの注目の共演盤。バックは2004年東京の夏音楽祭での演目Raze No(新しい秘密)などでお馴染みの、ペルシア古典声楽アンサンブルのハムアーヴァーヤーン。その一見奇抜とも思える組み合わせに驚いていたが、聞いてみてそんな心配は吹き飛んだ。隣の国だから似た部分は元々多いのだろう。アルメニア語はペルシア系と思われていた時期もあった位だから。「東京の夏」音楽祭で来日した女性歌手二人はアルメニアの歌も歌い、これが実に素晴らしい。また弦楽器シュールアンギーズの陰影に富んだ音色は、とてもアルメニア音楽向きに聞こえる。タンブールを更に内省的にしたような音色。弦楽器、ドゥドゥク、歌のいずれも哀感に溢れた絶美の演奏。2003年テヘランNiavaran Palaceでのライヴ録音

パーソネルは次のようになっております。

ホセイン・アリザーデ(Shourangiz) 
  ジヴァン・ガスパリアン(Duduk)

ハムアーヴァーヤーン・アンサンブル
アフサーネ・ラサーイー(Vo), ホルシド・ビアーバーニー(Vo), M.アリ・アハディ(Vo), アリ・サマドプール(Vo)
   アリ・ブスタン(Shourangiz), M.レザ・エブラヒミ(Oud), ベーザード・ミルザーイー(Tombak,Daf,Naghareh)

アルメン・ガザリヤン(Duduk) ヴァズゲン・マルカリアン(Bass Duduk)

最初のBirdsという22分の曲から8分ほどおかけします。

<1 Hossein Alizadeh & Djivan Gasparyan / Endless Vision ~Birds 22分20秒>
Hossein Alizadeh & Djivan Gasparyan - Birds


イランのHermes Records盤にはアリザーデの短かい序文が出ておりますが、言語や音楽において共通性の多いイランとアルメニアを、音楽の対話において結び合わそうという考えが窺えます。そこで彼が合わせるペルシア音楽の旋法は、シュール、ダシュティ、チャハールガーなどのどれが良いだろうかと述べたりもしています。
では、非常に美しいアルメニアの曲サリ・ゲリンという曲を聞いてみましょう。あちらこちらで聞くことの多いとても有名な曲です。両国のメンバーが一緒に演奏しています。

<3 Hossein Alizadeh & Djivan Gasparyan / Endless Vision ~Sari Galin 7分40秒>
Hossein Alizadeh & Djivan Gasparyan - Sari Galin


有名な話だと思いますが、ガスパリアン以外にもアルメニア人の名前の終わりには~イアンが付くことが多く、グルジアのアルメニア人作曲家ハチャトゥリアンとか、シャンソン歌手シャルル・アズナヴールの本名のアズナヴーリアン、ヴィオラ奏者のキム・カシュカシアン、アンサンブル・タッシの女流ヴァイオリニスト、アイダ・カヴァフィアンなど、有名人の名前にも表れています。現代ペルシア古典声楽の巨匠シャジャリアンもそうなのかと思いまして、95年にイランの太鼓トンバクを教わっていたイラン人の先生に聞いたら、ばかなことを言うなと怒られました(笑) シャジャリアンは違うようです。トンバクは、ゼアミdeワールドの冒頭のテーマ曲の最初に出てくる太鼓です。
もう一曲、一つ戻って2曲目のガスパリアンのドゥドゥクが非常に美しいArmenian Romancesをおかけしたいと思います。この演奏はドゥドゥクの即興ですが、ペルシアの一番重要な旋法シュールに則っているそうです。

<2 Hossein Alizadeh & Djivan Gasparyan / Endless Vision ~Armenian Romances 3分7秒>
Armenian Romances - Hossein Alizadeh, Jivan Gasparyan - Endless Vision


では最後に7曲目のラストを飾っているルーミーの詩によるタスニーフ・パルヴァネを聞きながら今回はお別れです。このEndless Visionが出た2004年に東京の夏音楽祭で来日されていまして、アリザーデさん始め、ハムアーヴァーヤーンの歌手のアフサーネ・ラサーイーさん、ホルシド・ビアーバーニーさん、アリ・サマドプールさんにはお会いして、アリオンの担当者と一緒にワークショップに同行しまして、一緒に食事した思い出があります。東京芸大での絶美のセタール独奏やアーヴァーズには感涙を禁じえず、小泉文夫さんが言っていた「世界で最も美しい歌」という表現を実感しました。
来週は、グルジェフかコミタスの音楽を取り上げる予定です。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<7 Hossein Alizadeh & Djivan Gasparyan / Endless Vision ~Tasnif Parvaneh Sho 7分13秒>
Hossein Alizadeh & Jivan Gasparyan - Tasnif Parvaneh Sho

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2018年1月26日 (金)

ジヴァン・ガスパリアンの動画

ジヴァン・ガスパリアンのコンサートなどの動画は意外に少なく、今日の2本がとりあえず見つかりました。もっとアルメニアの伝統音楽自体の独奏を先日のHow to play Dudukのような近い映像で見れれば最高ですが、そういう動画は今の所見当たりません。1本目は映画グラディエーターの曲を演奏しているようです。2本目はロシア語で「アルメニアの旋律」と題が出ている映像で、所々ガスパリアンも出てきます。アルメニアのドゥドゥクと言えば、ジヴァン・ガスパリアン、という時代が長く続きましたが、今はどうなのでしょうか。何と今年で彼も90歳。1本目は83歳の時の映像ですが、年を感じさせません。

Jivan Gasparyan "Gladiator Theme", 65 Years on Stage - Live in Concert - 2011

Мелодии Армении

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2018年1月25日 (木)

篳篥の魅力

雅楽における旋律楽器の篳篥は、西域のドゥドゥクやメイと兄弟のような楽器で、一方西洋のオーボエの祖先の古楽器ショーム(:Shawm)のルーツを辿ると、中東のズルナになるようです。柔かい音色のドゥドゥクやメイと、けたたましいズルナも、親戚と言っていいダブルリード管楽器だと思いますが、柔かいグループのはずの篳篥が、結構けたたましかったりするのも面白いです。篳篥の話を、篳篥奏者の中村さんの映像で聞けました。メイなどの話も出てきました。中村さんには20年余り前に東京で勤務していた店で一度お会いしたことがありますが、西域のルーツも視野に入れた活動もされているのは、この映像で初めて知りました。楽器のルーツから雅楽を聴きなおす必要性を改めて感じました。メイを吹かれているところも、是非見てみたいものです。

「クラシック・ニュース」 篳篥奏者:中村仁美リサイタル!篳篥の魅力は!

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2018年1月24日 (水)

ドゥドゥク、バラバン、メイの聞き比べ

雅楽の篳篥のルーツは、中央アジアの亀茲国にあるそうです。亀茲は現在のウイグルのクチャ辺りで、2000年前の当時はアーリア人(インド系?)が住んでいたようです。このダブルリードの笛が東に亘って日本の篳篥になり、西に行った方はアルメニアのドゥドゥクやクルドのバラバン、トルコのメイになったと考えられます。アルメニアは亀茲国時代とアーリア繋がりでもあります。トルコも元はビザンツのギリシア人やクルド人、アルメニア人が住んでいたので、同じと言えば同じでしょうか。
音色の類似は明らかですが、それぞれの個性が、それぞれの民謡を引き立てます。実はメイだけ20年余り前から持っておりまして、久々に吹いてみましたが、大体1オクターブほどしか音域はないようです。狭い音域ですが、細かいメリスマを哀感を込めて表現できる楽器としては傑出していると思います。1本目はドゥドゥク、バラバンの順に吹いているようですが、メイは演奏寸前で終わっているようです。しかし、循環呼吸を上手く取り入れて、息継ぎ無しで演奏しています。2本目はメイの独奏ですが、なるほどこういうメリスマ(コブシ)を付けるのかと、大変参考になります。トルコのウズン・ハワに合うのは、やっぱりこの音色です。今週は後は、篳篥やオーボエとの聞き比べ、そして何よりもガスパリアン御大の動画があれば是非アップしたいと思っております。

Mey - Duduk - Balaban - Traditional Music of Turkey with Wooden Instruments

Mey İle Ne ağlarsın benim zülfü siyahım

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2018年1月22日 (月)

I Will Not Be Sad In This World

ゼアミdeワールド92回目の放送、日曜夕方に終りました。24日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。先週はばたばたで、金曜にブログアップした後、トップの変更も出来ずでした。

アルメニア音楽の2回目は、アルメニアの代表的な民族楽器ドゥドゥクの名手で、アルメニアの至宝とも呼ばれるジヴァン・ガスパリアンの名演をご紹介したいと思います。ダブルリード管楽器と言うと、西洋のオーボエや日本の雅楽に用いられる篳篥、中東のズルナ、中国のチャルメラなどがありますが、ドゥドゥクのような全くけたたましくなく柔かい音色を持っているダブルリードの笛は、トルコのメイなど、余り他にはないと思います。実は私はメイ(葦笛ネイではなく)はもっておりますが、なかなか音出しが難しく、ガスパリアンのように音をコントロールするのは神業に近いことが吹いてみてよく分かりました。ドゥドゥクの柔かく美しい音色の秘密は、杏の木で出来ていることにもあるのかも知れません。

前回アルメニアとその音楽について概要を色々お話しましたので、今回は「世界で最も悲しい音色の笛」とも呼ばれるドゥドゥクの瞑想的な深い音色を続けてご紹介します。おかけするのは1983年初出の露Melodiya音源からのライセンスでアメリカのWarner Bros.(OPAL)から1989年にリリースされた盤で、タイトルはI Will Not Be Sad In This Worldです。この盤も現在は廃盤ですが、どこかから再発されていたようにも思います。演奏はドゥドゥクのソロがDjivan Gasparyan、バックで静かに吹かれている持続音のドローン・ドゥドゥク(アルメニア語でdum)がVachagan Avakianです。アルメニア民族の悲劇の歴史を表すかのような悲哀に満ちた音色をたっぷりご堪能下さい。終わり近くになりましたら、また曲目ご紹介で出てきます。

Djivan Gasparyan / I Will Not Be Sad In This World

1 A Cool Wind Is Blowing 4分3秒
2 Brother Hunter 4分7秒
3 Look Here My Dear (Album Version) 4分6秒
4 I Will Not Be Sad In This World (Album Version) 6分18秒

Djivan Gasparyan - I Will Not Be Sad In This World


以上4曲続けて聞いて頂きました。
この盤には解説がほとんどないので詳細は不明で、アメリカ盤のため曲名も全て英語になっておりますが、その内容はアルメニアの吟遊詩人サヤト・ノヴァの曲などを演奏しているようです。ジヴァン・ガスパリアンは、これまでに『グラディエーター』『最後の誘惑』といった映画音楽においても演奏を披露していますし、ジャパンのリーダーだったDavid Sylvianの1999年のアルバムDead Bees On A Cakeにゲストで出ていることを今回調べていて初めて知りました。次回以降に、ペルシア古典音楽の巨匠ホセイン・アリザーデとジヴァン・ガスパリアンの共演盤/Endless Visionもご紹介する予定です。
この後の5曲目を聞きながら今回はお別れです。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

5 Little Flower Garden (Album Version) 5分4秒

Djivan Gasparyan - I will not be sad in this world (1989) [Full Album]

廃盤音源だからでしょうか、全曲アップされていました。

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2018年1月19日 (金)

How to play Duduk

ドゥドゥクと言う笛の素晴らしさ凄さは、動画を見ると手に取るように分かります。特に今日のHow to映像は凄いなと思いました。こういうアンブシュアー(口の構え、くわえ方)なのかとか、吹く時はディジ・ガレスピーのように頬が膨らんでるな(笑)とか、CDだけでは分からないことも手に取るように分かります。悲しい旋律を吹かせたら、確かに右に出る楽器はないかも知れません。この細かいコブシはたまりませんね。似た柔らかい音色のトルコのメイやバラバンとの比較も来週は出来たらと思います。しかし、今日の映像を見ていて、アルメニア語の響きはペルシア語に似ているなと思いました。印欧語の中では単独の語派ですが、昔はペルシア語派に入れられていたこともあるのも分かる気がします。
今週は家族がインフルから肺炎を起こして入院したり、丸一日食品衛生講習があったり、バタバタの一週間でした。来週はもう少しブログもちゃんと書ければ良いのですが、どうでしょうか。

How to play Duduk (Part 1) || Music of Armenia

How to play Duduk (Part 2) || Music of Armenia

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2018年1月17日 (水)

少年ドゥドゥク奏者

今日の92回目の収録では、アルメニアの代表的な民族楽器ドゥドゥクの名人、ジヴァン・ガスパリアンの音源を取り上げました。放送は21日ですので、今週中は他の演奏家の映像を見ておこうかと思います。オーボエ、ズルナ、篳篥、チャルメラなどと同じダブルリードでも、けたたましい音ではなく、柔かい音色が特徴。トルコのメイ(葦笛ネイではなく)は音もドゥドゥクに似ています。等々、そんな話をしました。
今日は、おそらく天才的な少年ドゥドゥク奏者の動画を上げておきました。超一流、人間国宝級名人のガスパリアンの映像を見るよりも、この楽器の奏法や音色の作り方の秘密が少し見えてくる気がします。(特にレッスン風景)

Music of Armenia Exclusive | Tatul Hambardzumyan - The 7 year-old duduk prodigy

Armenian Kid Playing Duduk

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2018年1月15日 (月)

つばめ 哀愁のアルメニア

ゼアミdeワールド91回目の放送、日曜夕方に終りました。17日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。<>内がかけた音源です。有名なアルメニア民謡「つばめ」以外の曲は、探すのに少しかかると思いますので(あるいは無いと思います)、また後日にします。

今回から南コーカサスの国の一つ、アルメニアの音楽を聞いて行きたいと思います。グルジア、アルメニア、アゼルバイジャンの3カ国は、ロシアから見てカフカスの向こうと言う意味で、ロシア語で「向こう」の意味のザを頭に付けたザカフカスと言う言い方があることをコーカサスの最初でご説明しました。グルジアで8回でしたから、アルメニアも最低6,7回は予定しております。アゼルバイジャンも同じ位にはなると思います。欧米盤で把握しているだけでグルジアが20枚余り、アルメニアについては少なくとも33枚はありますが、アゼルバイジャンは更に多いです。ただし、コーカサスの音楽は回転がいいもので、大体が売れてしまって手元に残っている盤が限られているため、その中からのご紹介になります。
アルメニアとグルジアは、ローマ帝国より先にキリスト教を国教にしたことも前にお話しました。共に彫りの深い端整な顔立ちに比較的黒い髪のコーカソイドという点では共通しますが、言語においては、グルジアが非印欧語族のコーカサス系に属するのに対し、アルメニアは印欧(インド・ヨーロッパ)語族に属します。ヨーロッパのギリシア語やラテン語と、インドのサンスクリットの繋がりを研究する際に、間に位置するアルメニア語と比較対照することで見えてくることが多いと、ある本で読んだことがあります。
ロシア、ペルシア、オスマン・トルコ、モンゴルなどの大国の間にあって、数々の悲劇と離散を経験した国として知られ、中でも第一次大戦中のオスマン・トルコ末期に起きた国民の半数を失うというアルメニア人大虐殺の悲劇はよく知られています。
音楽の大まかな特徴としては、グルジアはポリフォニックな多声音楽が多いのに対し、アルメニアではモノフォニックな単旋律の語りものの性格を強く持っています。その語り部はアシュグと呼ばれ、この名から容易に類推できますが、おそらく周囲のペルシアやトルコの吟遊詩人アシュクの影響が強いように思われます。
アルメニアの最も特徴的な楽器に、もの悲しく柔かい音色のダブルリード管楽器ドゥドゥクがありまして、その一番の名手ジヴァン・ガスパリアンは最も広く知られるアルメニア人音楽家です。彼の音楽はまた後日取り上げます。その他に、中東の代表的な楽器として知られる、琴やツィターに似たカーヌーンや、擦弦楽器のカマンチャも、アルメニア音楽でよく使われます。
まず今回は、ソ連崩壊後にアルメニアが独立する数年前のペレストロイカの頃にリリースされたArt & Electronicsというレーベルの「つばめ 哀愁のアルメニア」という盤からご紹介します。廃盤音源のためゼアミHPには載せてないアイテムで、1988年当時起きて間もなかったアルメニア大地震の犠牲者救済のためのアルメニア民謡集です。ソ連時代末期の録音ですから、現在は余り聞けないような大編成の民族アンサンブルの演奏になっていて、それが今では新鮮でもあります。作曲家アラム・マレングリアンの名を冠したマレングリアン民俗アンサンブルの演奏で、18世紀の代表的なアシュクであるサヤト・ノヴァの曲などが演じられています。間で曲名を入れながら最初の5曲をご紹介します。

まずは柔かい音色のドゥドゥクがフィーチャーされた1曲目の「エレジーと舞曲」からどうぞ。

<1 つばめ 哀愁のアルメニア~エレジーと舞曲 2分47秒>

2曲目のタイトルはカノンのコンチェルティーノとありますが、カノンとはカーヌーンのことで、この楽器の華やかな音色と技巧をクローズアップしている曲です。

<2 つばめ 哀愁のアルメニア~カノンのコンチェルティーノ 6分36秒>

3曲目の「シャト・マルド・カッセ」という曲には、中東の名高い恋物語「ライラとマジュヌーン」が出てくるようです。吟遊詩人アシュクの本来の特徴は、第1に愛に関する歌を歌う歌手であること、第2に放浪芸人であること、第3にイスラムの托鉢僧デルヴィーシュやファキールであること、とされますが、少なくとも第1の要素を満たしたロマンティックな歌のようです。この曲はペルシアの8分の6拍子の舞曲レングにそっくりです。

<3 つばめ 哀愁のアルメニア~シャト・マルド・カッセ 3分32秒>

4曲目の「アリ・インズ・アンガチ」という曲には、代表的アシュグであるサヤト・ノヴァの名が登場します。この曲の曲調は、アゼルバイジャンの伝統音楽のムガームに似て聞こえます。

<4 つばめ 哀愁のアルメニア~アリ・インズ・アンガチ 3分1秒>

アルバムタイトルにもなっている5曲目の「つばめ」は、ロシア民謡に入ってロシア語でも歌われているので、最も広く知られたアルメニアの歌だと思います。この曲を聴きながら今回はお別れです。ドルハニヤン作曲のこの歌は「つばめよ、どうしてそんなに空高く飛べるのか、私の故郷の老いた母の許へ飛んで行って、私のことを伝えておくれ。そこにはお前のための巣が待っていることだろう。」と、明るい旋律の内に、民族流亡の悲しみの感情が切々と歌い込まれています。

今後の予定として、アルメニア伝統音楽以外にも、
イランのペルシア古典音楽の巨匠ホセイン・アリザーデ&ジヴァン・ガスパリアン/Endless Vision
アルメニア出身の神秘思想家グルジェフのピアノ曲
アメリカ現代のアルメニア系作曲家アラン・ホヴァネス
これらの音楽を予定しております。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<5 つばめ 哀愁のアルメニア~つばめ 3分19秒>
(Swallow) - Armenian Folk Song for Children

Dzidzernag-Vartuhi Khachatrian Swallows are an important part in Armenian iconography and nature, among eagles, storks, swallows are very precious to Armenians.と解説にありました。Dzidzernag-Vartuhi Khachatrianが女性歌手でしょうか?

The Swollow - "Tzizernak"

現地のオーケストラとピアノによる器楽演奏。

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2018年1月11日 (木)

グラズノフとプーランク

ルーマニアの女流ヴァイオリニスト、シルヴィア・マルコヴィッチはyoutubeは結構貴重映像が色々と上がっていました。その中から、80年頃の彼女の代名詞のような曲になっていたグラズノフのヴァイオリン協奏曲と、詩人ガルシア・ロルカの死を悼んで書かれたフランス近代の作曲家プーランクのヴァイオリン・ソナタもありましたので、この2曲を上げておきます。グラズノフは80年頃LPも出ていた曲ですが、この映像は1972年の彼女がまだ二十歳の頃の映像です。指揮は何とあの名指揮者ストコフスキー! 一方、プーランクは50歳前後の映像。ピアノ伴奏しているのは、彼女の息子のAimo Paginです。この頃のリリースは余りチェック出来てないので、どこかのレーベルから出ていたのかも知れません。このソナタは、私は東芝の「フランス音楽のエスプリ」シリーズのLPで80年代前半に初めて聞いて魅了された曲。追悼曲ではあっても、洒脱さを失わないプーランクの音楽が魅力的です。演奏はユーディ・メニューインでした。(マルコヴィッチもメニューインもユダヤ系というところは共通しています) その後、どちらの曲も楽譜を手に入れ少し弾いてみました。

Glazunov: Violin Concerto - Silvia Marcovici, violin; Stokowski conducts the LSO

Silvia Marcovici - F. Poulenc, Violin Sonata

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2018年1月10日 (水)

ポルンベスクのバラーダ

ポルンベスクのバラーダの話が出たところで、大分前にブログに上げたかも知れませんが、少し見てみました。この曲は天満敦子さんが93年に取り上げる前に、「曲自体の日本初演はルーマニアの女流ヴァイオリニスト、マルコヴィッチにより、1980年5月10日、NHK教育TVの午後7時30分からのコンサートで行われた」とありましたが、実は私はこの番組を見ておりまして、更にTVから録音もしていて、現在もそのカセットテープを保存してあります。今もデータがiPhoneに入っていて時々聞きますが、大木正興氏の解説も懐かしく、このシルヴィア・マルコヴィッチの演奏とバラーダは私の中では完全に結びついていました。なので、93年に天満さんの「望郷のバラード」が出て、とても話題になっていると聞いた時は非常に驚きました。マルコヴィッチは82年か83年に来日したので、新宿文化センターの最前列で妙技を拝聴しました。演奏はもちろんですが、非常に美しい人だったのもよく覚えています。残念ながらバラーダは演奏されませんでしたが、ブラームスのヴァイオリン・ソナタ3番の名演を聞くことが出来ました。天満さんは楽譜も出版されていたので10年ほど前に購入しました。その楽譜を見ながら、昔を思い出し、ちゃんと取り組んでみようかと思っているこの頃です。マルコヴィッチは結婚出産以来ほとんど録音を見かけなくなりましたが、スウェーデンBISからのシベリウスのヴァイオリン協奏曲はゲット。YouTubeでは、大分前に最近の演奏のフォーレのヴァイオリン・ソナタ1番を見かけました。

C.Porumbescu - Ballade für violine und streichorchester - Ion Scripcaru

Ciprian Porumbescu, Balada , cello and harp

チェロによる演奏もありました。

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2018年1月 8日 (月)

今年も「春の海」から

ゼアミdeワールド90回目の放送、日曜夕方に終りました。10日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。<>内がかけた音源です。今回の放送はFMでは無事流れましたが、サイマルラジオとTuneinのネットラジオ環境では、ネットワークトラブルのため流れませんでした。時々こういうことがありますが、新年の一回目がネットで流れなかったのは残念です。原因を聞いておきます。黒柳さんの父と天満さんのヴァイオリン版は、さすがにyoutubeにはないと思いますので、去年も上げましたが、ルネ・シュメーのヴァイオリンに宮城道雄の自作自演の定番演奏を上げておきます。

宮城道雄:春の海 シュメー Chemet


明けましておめでとうございます。本年もどうぞ宜しくお願い致します。と新年のご挨拶をしましたが、ラヂオバリバリが30日から5日までお正月休みですので、実は12月27日に収録しております。選曲のために一足早いお正月気分を味わっておりました(笑) 放送されるのは本放送が7日と言うことで、辛うじて松の内です。

お正月と言えば、宮城道雄の「春の海」を思い出す方が多いのでは、と去年も始めましたが、去年かけてない音源を選んでご紹介します。1930年の宮中歌会始の勅題として公示されていた「海辺巌(かいへんのいわお)」に因んで、前年の暮れに作曲した筝と尺八の二重奏曲で、宮城道雄の父の出身地である広島県の鞆の浦を訪れた際の、瀬戸内海の印象を三部形式に乗せて標題音楽風に作曲したこの曲は、今では彼の代表作として親しまれています。正月中はどこに行っても耳にする曲ですが、この曲だけの色々な編成の録音を集めた「春の海 大響演」という2枚組が出ておりまして、その盤からのご紹介です。

まず宮城道雄の自作自演ですが、尺八は広門伶風(ひろかどれいふう)という人で、宮城道雄の肉声と、奈良岡朋子による宮城道雄の随筆からの朗読、更に露木茂の解説が入ります。尺八の広門伶風は、この曲の初演を勤めた吉田晴風の弟子とのことです。

<2-6 春の海(朗読入り) 9分14秒>

宮城道雄の筝とヴァイオリンでの演奏は、喝采を博したルネ・シュメーとの録音の他に、黒柳徹子の父である黒柳守綱との演奏も入っておりまして、この方はN響などでコンサートマスターを勤めた人です。ルネ・シュメーのような時代がかった派手さはないですが、堅実な演奏をされる方です。

<1-5 春の海(箏とヴァイオリンによる) 6分53秒>

変り種として、南米のフォルクローレに使われる縦笛ケーナと琴による演奏も入っております。アルゼンチンのケーナの名手ウニャ・ラモスが1978年に来日した際の録音で、琴は当時宮城合奏団のプリマ奏者だった砂崎知子です。少しフォルクローレ風になっている部分もありますが、元々この曲とフォルクローレの音階は結構近いと思います。

<2-1 春の海(箏とケーナによる) 4分13秒>
春の海 ケーナ演奏 Haru No Umi (The Sea In Spring)

やはりウニャ・ラモスでは無いので、他のケーナ奏者の演奏ですが。

ここで、少し宣伝を入れたいと思います。
2月4日に今治中央公民館で第11回今治総合芸能祭がありまして、今年はヴァイオリンで出ます。時間は1時からで3番目です。琴と尺八の葉風会とヴァイオリン、ダンスのコラボで、編成は似ていますが、「春の海」が邦楽の枠内だったのに対して、森岡章作曲の「月に寄する三章」という曲は、昭和40年代の雰囲気が色濃く感じられるナツメロのような、昔のラジオドラマの音楽のような曲調です。2曲目はペルシアの舞曲レングに似た感じにも聞こえます。宜しければ是非お越し下さい。

では、最後にポルンベスクのバラーダ(「望郷のバラード」のタイトルで日本では知られます)の名演で知られる天満敦子のヴァイオリンと、砂崎知子門下の遠藤千晶の2011年10月のライブ録音を聞きながら今回はお別れです。天満さんの1993年発売のアルバム『望郷のバラード』は、クラシックとしては異例の5万枚を超える大ヒットとなり、東欧革命前夜のルーマニアを舞台に、この曲をめぐる謎とヴァイオリニストの恋愛を描いた高樹のぶ子の小説『百年の預言』のヒロインは、天満さんをモデルとしています。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<2-4 春の海(箏とヴァイオリンによる) 7分38秒>

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2018年1月 4日 (木)

ベートーヴェンのSQ15番と高砂の千秋楽

明けましておめでとうございます。本年もどうぞ宜しくお願い致します。
ゼアミdeワールド89回目の放送、大晦日の夕方にありました。年は明けておりますが、いつも通り放送内容をアップしておきます。あと20秒ほどがどうしても入らなかったので、やむを得ず、オープニング曲の頭と、3楽章の解説の一部を削りました。以下の放送原稿には全て載っております。また、何とか時間内に収めようと慌てていたものですから、付祝言の所で、観世流宗家を宗曲と間違って言っておりました。ベートーヴェンの方は、ブダペストSQのyoutubeでは5楽章までの全曲のみのようでした。

放送されるのは31日大晦日の夕方のみで再放送は無しと言うことで、相応しい音楽を色々考えておりました。紅白の前に例えばナツメロとかを聞いて頂くのが良いか、ベートーヴェンの第九か、迷いましたが、前者は今一つ選曲が絞れないので、また来年にでも回すことにしまして、今回はベートーヴェンの音楽にしたいと思います。

今日おかけするのは、交響曲第九番に近い時期に作曲されて、似た感じのテーマ性を感じさせる後期の弦楽四重奏曲から第15番の第3楽章と第5楽章です。民族音楽を中心に聞きながらも、バッハの音楽やベートーヴェンの後期弦楽四重奏曲などは、昔から変わらず聞き続けている西洋クラシック音楽です。ヌーヴェルヴァーグの監督J.L.ゴダールの映画にも絶妙に引用されていたことは、好事家の方はよくご存知かと思います。

この15番のカルテットは、全部で5楽章から成っていますが、その中でゆったりとした第3楽章は白眉の部分とされています。第九のラストを飾る歓喜の合唱と共通するものを感じる、ベートーヴェン晩年の深い音楽です。

以下ウィキペディアの解説を読み上げてみます。

第3楽章 "Heiliger Dankgesang eines Genesenen an die Gottheit, in der lydischen Tonart" Molto Adagio - Andante
ヘ調のリディア旋法、五部形式
「リディア旋法による、病より癒えたる者の神への聖なる感謝の歌」と題された、最も長い楽章。全体のクライマックスに位置している。ゆっくりとしたヘ調の教会旋法による部分と、より速めの「新しい力を得た」ニ長調の部分の交替で構成される。この楽章は、ベートーヴェンが恐れていた重病から快復した後に作曲されたため、上記のような題名が付された。

<3 Beethoven String Quartet No.15 In A Minor, Op.132 - 3. Molto Adagio 16分18秒>
Beethoven - String quartet n°15 op.132 - Budapest


続きまして4楽章を飛ばして終楽章の第5楽章ですが、「失われた時を求めて」で知られるフランスの小説家マルセル・プルーストが、「ベートーヴェンでは、後期のピアノソナタや弦楽四重奏曲第15番の最終楽章を好み、真夜中に自室に楽団を呼んで演奏させたこともある」というエピソードを読んだことがあります。当時の有名なカペー弦楽四重奏団だったのかも知れません。この楽章の主題にはもの凄い秘話がありまして、実は第九の終楽章の主題として予定されていたそうです。それがあの合唱付に差し替えられました。もしこの曲が採用されていたら、憂いを含みながら素晴らしく情熱的で力動感溢れる名旋律ではあっても、器楽曲ですから、年末に第九が恒例になるようなことはなかったのではと思います。ブダペスト弦楽四重奏団の60年代の演奏でどうぞ。

<5 Beethoven String Quartet No.15 In A Minor, Op.132 - 5. Allegro Appassionato 6分33秒>

では、最後にゼアミらしく謡曲「高砂」の有名な部分を聞きながら、今回はお別れです。
世阿弥作のお能の名曲「高砂」と言えば、結婚式に謡われる「高砂やこの浦舟に帆を上げて」の祝言の小謡でよく知られますが、ラストの「千秋楽は民を撫で」の部分が大晦日に相応しいように思いました。謡うのは観世流宗家の観世清和氏です。私が95年に習ったのは喜多流謡曲ですが、観世流の謡いは5流の中では一番近く感じます。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。皆様どうぞ良いお年をお迎え下さい。

<3 観世流初心小謡集 高砂~千秋楽は民を撫で 37秒>
DVD実践編3 謡「千秋楽」

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