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2018年1月15日 (月)

つばめ 哀愁のアルメニア

ゼアミdeワールド91回目の放送、日曜夕方に終りました。17日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。<>内がかけた音源です。有名なアルメニア民謡「つばめ」以外の曲は、探すのに少しかかると思いますので(あるいは無いと思います)、また後日にします。

今回から南コーカサスの国の一つ、アルメニアの音楽を聞いて行きたいと思います。グルジア、アルメニア、アゼルバイジャンの3カ国は、ロシアから見てカフカスの向こうと言う意味で、ロシア語で「向こう」の意味のザを頭に付けたザカフカスと言う言い方があることをコーカサスの最初でご説明しました。グルジアで8回でしたから、アルメニアも最低6,7回は予定しております。アゼルバイジャンも同じ位にはなると思います。欧米盤で把握しているだけでグルジアが20枚余り、アルメニアについては少なくとも33枚はありますが、アゼルバイジャンは更に多いです。ただし、コーカサスの音楽は回転がいいもので、大体が売れてしまって手元に残っている盤が限られているため、その中からのご紹介になります。
アルメニアとグルジアは、ローマ帝国より先にキリスト教を国教にしたことも前にお話しました。共に彫りの深い端整な顔立ちに比較的黒い髪のコーカソイドという点では共通しますが、言語においては、グルジアが非印欧語族のコーカサス系に属するのに対し、アルメニアは印欧(インド・ヨーロッパ)語族に属します。ヨーロッパのギリシア語やラテン語と、インドのサンスクリットの繋がりを研究する際に、間に位置するアルメニア語と比較対照することで見えてくることが多いと、ある本で読んだことがあります。
ロシア、ペルシア、オスマン・トルコ、モンゴルなどの大国の間にあって、数々の悲劇と離散を経験した国として知られ、中でも第一次大戦中のオスマン・トルコ末期に起きた国民の半数を失うというアルメニア人大虐殺の悲劇はよく知られています。
音楽の大まかな特徴としては、グルジアはポリフォニックな多声音楽が多いのに対し、アルメニアではモノフォニックな単旋律の語りものの性格を強く持っています。その語り部はアシュグと呼ばれ、この名から容易に類推できますが、おそらく周囲のペルシアやトルコの吟遊詩人アシュクの影響が強いように思われます。
アルメニアの最も特徴的な楽器に、もの悲しく柔かい音色のダブルリード管楽器ドゥドゥクがありまして、その一番の名手ジヴァン・ガスパリアンは最も広く知られるアルメニア人音楽家です。彼の音楽はまた後日取り上げます。その他に、中東の代表的な楽器として知られる、琴やツィターに似たカーヌーンや、擦弦楽器のカマンチャも、アルメニア音楽でよく使われます。
まず今回は、ソ連崩壊後にアルメニアが独立する数年前のペレストロイカの頃にリリースされたArt & Electronicsというレーベルの「つばめ 哀愁のアルメニア」という盤からご紹介します。廃盤音源のためゼアミHPには載せてないアイテムで、1988年当時起きて間もなかったアルメニア大地震の犠牲者救済のためのアルメニア民謡集です。ソ連時代末期の録音ですから、現在は余り聞けないような大編成の民族アンサンブルの演奏になっていて、それが今では新鮮でもあります。作曲家アラム・マレングリアンの名を冠したマレングリアン民俗アンサンブルの演奏で、18世紀の代表的なアシュクであるサヤト・ノヴァの曲などが演じられています。間で曲名を入れながら最初の5曲をご紹介します。

まずは柔かい音色のドゥドゥクがフィーチャーされた1曲目の「エレジーと舞曲」からどうぞ。

<1 つばめ 哀愁のアルメニア~エレジーと舞曲 2分47秒>

2曲目のタイトルはカノンのコンチェルティーノとありますが、カノンとはカーヌーンのことで、この楽器の華やかな音色と技巧をクローズアップしている曲です。

<2 つばめ 哀愁のアルメニア~カノンのコンチェルティーノ 6分36秒>

3曲目の「シャト・マルド・カッセ」という曲には、中東の名高い恋物語「ライラとマジュヌーン」が出てくるようです。吟遊詩人アシュクの本来の特徴は、第1に愛に関する歌を歌う歌手であること、第2に放浪芸人であること、第3にイスラムの托鉢僧デルヴィーシュやファキールであること、とされますが、少なくとも第1の要素を満たしたロマンティックな歌のようです。この曲はペルシアの8分の6拍子の舞曲レングにそっくりです。

<3 つばめ 哀愁のアルメニア~シャト・マルド・カッセ 3分32秒>

4曲目の「アリ・インズ・アンガチ」という曲には、代表的アシュグであるサヤト・ノヴァの名が登場します。この曲の曲調は、アゼルバイジャンの伝統音楽のムガームに似て聞こえます。

<4 つばめ 哀愁のアルメニア~アリ・インズ・アンガチ 3分1秒>

アルバムタイトルにもなっている5曲目の「つばめ」は、ロシア民謡に入ってロシア語でも歌われているので、最も広く知られたアルメニアの歌だと思います。この曲を聴きながら今回はお別れです。ドルハニヤン作曲のこの歌は「つばめよ、どうしてそんなに空高く飛べるのか、私の故郷の老いた母の許へ飛んで行って、私のことを伝えておくれ。そこにはお前のための巣が待っていることだろう。」と、明るい旋律の内に、民族流亡の悲しみの感情が切々と歌い込まれています。

今後の予定として、アルメニア伝統音楽以外にも、
イランのペルシア古典音楽の巨匠ホセイン・アリザーデ&ジヴァン・ガスパリアン/Endless Vision
アルメニア出身の神秘思想家グルジェフのピアノ曲
アメリカ現代のアルメニア系作曲家アラン・ホヴァネス
これらの音楽を予定しております。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<5 つばめ 哀愁のアルメニア~つばめ 3分19秒>
(Swallow) - Armenian Folk Song for Children

Dzidzernag-Vartuhi Khachatrian Swallows are an important part in Armenian iconography and nature, among eagles, storks, swallows are very precious to Armenians.と解説にありました。Dzidzernag-Vartuhi Khachatrianが女性歌手でしょうか?

The Swollow - "Tzizernak"

現地のオーケストラとピアノによる器楽演奏。

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