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2018年3月

2018年3月30日 (金)

アリム・カシモフのタール演奏、サリ・ゲリン、デシュティ、クロノスSQ

週末ですので、今日はアリム・カシモフの気になる動画をいくつかまとめて上げておきます。タールもこんなに弾けるのかという驚きの1,2本目、アルメニアの名歌と思われたサリ・ゲリンをトゥヴァのサインホ・ナムチラク他と共演した映像の3本目、デシュティはその名の通りペルシアのダシュティ旋法(特にデイラーマンの歌)をすぐ様思い出させるノスタルジックな歌唱の4本目です。現代音楽の名カルテットとして知られるクロノスSQと共演したり(Smithsonian Folkways盤有り)、とにかく話題性豊富なステージが多いです。これも5本目に上げておきましょう。こちらは10年前の来日の前後の演奏のようです。サインホとの共演は、二人の若さから推測すると、おそらくその10年くらい前でしょうか。これ程の各音楽の著名な演奏家との共演と言うのは、どこから話が持ち上がるのか、気になるところです。サリ・ゲリンでは、サインホの倍音唱法の入ったチベット仏教の歌と西洋の古楽(グループ名は?)も重なるという余りにも意外な組み合わせ。

alim qasimov minnet eylemem

Alim Qasimov & Fergane Qasimova - Tarda Super ifa, Canli Mugam

Alim Qasımov - Sarı Gelin - yellow bride

Alim Qasimov Deshti

Kronos Quartet & Alim Qasimov Ensemble - Getme, Getme (Said Rustamov, Azerbaijan)

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2018年3月28日 (水)

アリム・カシモフ還暦記念

今日は「アリム・カシモフの60歳記念とNanə Ağamalıyevaの誕生日」の催しの一本を上げておきます。2時間20分余りあります。アゼルバイジャンの音楽界?の歌手が次々登場し、アリム・カシモフがタールの腕前を披露するシーンがあったり(こんなに上手いのかとビックリ)、彼がアザーンを唱えるシーンなど、見所が豊富です。歌手は皆アゼルバイジャンの歌手でしょうか? 言葉が似ているからか、トルコ歌謡にとても似ているように思いました。スタジオのバックは、首都バクーからのカスピ海の夜景でしょうか?

Nanəli - Alim Qasımovun 60 illik yubileyi və Nanə Ağamalıyevanın ad günü

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2018年3月26日 (月)

アリム・カシモフのイネディ盤

ゼアミdeワールド101回目の放送、日曜夕方に終りました。28日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。イネディと同じyoutubeは多分ないと思いますので、2曲目と同じバヤーテ・シーラーズのライブ映像を上げておきます。娘ファリガナ・カシモヴァとのデュエットです。伴奏者については、放送で話した内容も間違っておりましたが、収録の後先日ブログで訂正しましたので、今回は放送内容のまま上げております。

アゼルバイジャンの音楽の2回目は、アゼルバイジャンの人間国宝ともいえるアリム・カシモフの奇跡の歌声を聞いてみたいと思います。ユネスコ国際音楽賞を受賞し、「20世紀の最も偉大な歌手の一人」とも称えられる大歌手です。2004年NHKの新シルクロードでタイトル曲を歌っていたので聞き覚えのある方もいらっしゃると思います。2008年には娘のファルガナ・カシモヴァと来日もして素晴らしい歌唱を聞かせました。ペルシア音楽が本家の、細かい節回しのタハリール唱法の入った、高い張りのある歌声がとにかく凄いです。
彼の録音は沢山ありますが、世界的に知られるようになったのは1989年頃だったでしょうか。フランスのイネディやChant du monde、オコラ、スイスのVDE-Galloから相次いでCDが出まして、最近では娘のファリガナ・カシモヴァとの録音がドイツのWorld Network、アメリカのSmithsonian Folkways、ドイツのDreyer Gaidoから出ています。イランのBarbadからは、ペルシアの名タスニーフMorqe Saharも歌ってこの曲をタイトルにしたTabriz ConcertのDVD付き2枚組も出ています。やはりどんどん売れて手元に残っているのは初期の盤のみという状態ですので(笑)、今回はイネディの第1集から、ムガーム・チャハールガーとムガーム・バヤーテ・シーラーズを抜粋しておかけしたいと思います。チャハールガーが41分、バヤーテ・シーラーズが30分ありますので、本当にかいつまんでになります。苗字については「カシモフ」と長らく呼ばれて来ましたが、原語に近いと思われるガスィモフとかガスモフという表記も多くなっています。
伴奏者について、前回の解説に訂正を入れる必要が出てきましたので、お知らせしておきます。
「バーラム・マンスロフは1911年生まれで1985年に亡くなっているので、1962年生まれのタール奏者のマリク・マンスロフとは祖父と孫位の年の差になります。同じ苗字なので息子と思われがちですが、どうやらそうではないようです。」このように前回言いましたが、調べましたら同姓同名のマリク・マンスロフというケマンチェ奏者がいまして、エルカン・マンスロフという年配のタール奏者も確かに確認できました。この二人はおそらくバーラム・マンスロフの息子だと思われます。これからおかけするイネディ盤はこの二人の伴奏という表記になっていますが、アーティスト写真は、当時若手のタール奏者のマリク・マンスロフと、ケマンチェ奏者のエルシャン・マンスロフに差し換わっています。VDE-Gallo盤では、若手の二人で名前とアーティスト写真が一致していますので、イネディの表示が間違いで実はこの二人なのかも知れません。エルカンとエルシャンの違いも微妙で非常にややこしいですが、そういうことのようです。
まずは冒頭のタールとケマンチェの演奏から鮮烈に始まるチャハールガーの方からどうぞ。パラジャーノフのシュールな映画を思い出させるような始まり方です。

<1 Alim Kassimov 1 ~Mugam Chargah 41分36秒 抜粋>

次のバヤーテ・シーラーズですが、ハビル・アリエフのケマンチェ演奏をどうしても思い出してしまう旋法ですが、やはり別なメロディから始まります。しかし哀愁味溢れる美しく官能的な旋律は、聞く者を捉えて離さないものがあります。ムガームでは、歌い手をハナンデ、タール、ケマンチェ、枠太鼓ダフの伴奏陣をサーザンデと呼びますが、大体歌手がダフを叩き歌うことが多いようです。各曲とも、インド音楽ならアーラープに当るバルダシュトという即興的な前奏に始まり、テスニーフ(ペルシアのタスニーフと同じく歌曲の一種と思われます)、舞曲レング、ティリンガなどが組曲風に演じられます。この構成を見てもペルシアとコーカサスの音楽が入り混じっていることがよく見て取れますが、アゼルバイジャンは言語面では中央アジア諸国やトルコと繋がるテュルク(トルコ)系になります。 アリム・カシモフのバヤーテ・シーラーズを聞きながら今回はお別れです。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<2 Alim Kassimov 1 ~Bayati Shiraz 30分33秒 抜粋>
Alim & Fargana Qasimov Ensemble, Bayati Shiraz

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2018年3月23日 (金)

マリク&エルシャン・マンスロフ

イネディ盤を含めアリム・カシモフの伴奏を何枚もの盤で受け持っていたマリク・マンスロフとエルシャン・マンスロフは、やはりアゼルバイジャンのムガームにおけるタールとケマンチェの演奏では、現在もトッププレイヤーなのだろうと思います。先日のマリク氏のシャーナーズ(CDと同じムガームの名演なだけにyoutubeでのヴォリュームダウンが残念)のリンクから既に見られた方もいらっしゃるかと思いますが、何度も出てきているバヤーテ・シーラーズの妙技を中心に上げておきます。間のドリ(ドール?)の叩き方も、カフカスの中では最もイランのトンバク寄りです。2本目はシュールで、イランのシュール旋法と似ていますが、アゼルバイジャンの方が甘美に聞こえます。バヤーテ・シーラーズは、イランのダストガーならバヤーテ・エスファハーン(古都を冠している点でも)かホマーユンに似ているような気もします。どちらも艶美で哀感に溢れ、とても日本人受けの良い旋法だと思います。ところで、2008年にアリム・カシモフが来日した際の伴奏は彼らだったのでしょうか? 私は残念ながら行けませんでしたので。

Bayati shiraz

Shur

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2018年3月22日 (木)

バーラム・マンスロフの二人の息子

21日は101回目の収録をしてきましたが、大事な訂正がありましたので、放送前にお知らせして、関連動画を見ておきたいと思います。アリム・カシモフの伴奏者について、前回の解説に訂正を入れる必要が出てきて、以下のようにお話ししました。

「バーラム・マンスロフは1911年生まれで1985年に亡くなっているので、1962年生まれのタール奏者のマリク・マンスロフとは祖父と孫位の年の差になります。同じ苗字なので息子と思われがちですが、どうやらそうではないようです。」このように前回言いましたが、調べましたら同姓同名のマリク・マンスロフというケマンチェ奏者がいまして、エルカン・マンスロフという年配のタール奏者も確かに確認できました。この二人はおそらくバーラム・マンスロフの息子だと思われます。25日の放送でおかけするイネディ盤の第1集ではこの二人の伴奏という表記になっていますが、アーティスト写真は、当時若手のタール奏者のマリク・マンスロフと、ケマンチェ奏者のエルシャン・マンスロフに差し換わっています。VDE-Gallo盤では、若手の二人で名前とアーティスト写真が一致していますので、イネディの表示が間違いで、実はこの二人なのかも知れません。エルカンとエルシャンの違いも微妙で非常にややこしいですが、そういうことのようです。

以上のように101回目の収録で言いましたが、Malik Mansurovで検索して出てきたケマンチェ奏者の写真は、よく調べたらエルシャン・マンスロフでした。80年代の写真とはすっかり変わって、坂上二郎さんのようになられていて、分かりませんでしたm(__)m(笑) と言うわけで、放送の前に再度訂正しておきます。m(__)m
とにかくイネディ盤の表記ではケマンチェ奏者がマリク・マンスロフ、タール奏者がエルカン・マンスロフとなっていますが、実際アリム・カシモフの伴奏をしているのは、VDEの写真通りでマリク・マンスロフのタールとエルシャン・マンスロフのケマンチェなのでしょう。リリースは1989年ですから、その頃はまだ情報がちゃんと出揃ってなくて、さすがのIneditも間違っていたということではないかと思いました。民族音楽の名門レーベルでもこんなことがあるのですね。結果、イネディ盤表記の二人がバーラム・マンスロフの息子だと、江波戸先生始めどの解説にも書かれていました。本当のバーラム・マンスロフの二人の息子は、エルダール・マンスロフ(ピアニスト)とエルカン・マンスロフでした。この二人の映像を上げておきます。今回は調べていて頭の中に?が5つくらい立ちましたが、ようやく難問が解明できてすっきりしました(笑)

Elkhan Mansurov - "Bayati-Shiraz"

Eldar Mansurov - "Melody" (music: Eldar Mansurov)

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2018年3月19日 (月)

放送100回目はアゼルバイジャンのタール

ゼアミdeワールド100回目の放送、日曜夕方に終りました。21日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。

今回からアゼルバイジャンの音楽です。記念すべき100回目と言うことで、華々しく始めたいと思います。
アゼルバイジャンの伝統音楽に、ムガームと言うジャンルがありまして、その名から容易に推測できるように、アラブのマカームの流れを汲むので、もちろん旋法体系を表しますが、同時にその音楽体系や楽曲自体も指すようです。ムガームの典型的な編成は、ケマンチェとタールが両脇を固め、間で歌い手がダフを叩き歌うというトリオ編成のスタイルになります。歌手の有名所では、2004年のNHKの新シルクロードでタイトル曲を歌っていたアリム・カシモフがいまして、私は残念ながら聞きに行けなかったのですが、2008年には娘ファルガナ・カシモヴァと来日もして素晴らしい歌唱を聞かせました。彼の録音はオコラやイネディなどから沢山出ていまして、それらもいずれご紹介しますが、まずは彼の伴奏を受け持つことの多いタール奏者のマリク・マンスロフのソロ・アルバムから一曲たっぷりお聞き下さい。
タールは、イランでは3コース複弦なので6弦ですが、アゼルバイジャンのタールは弦の数が多いようです。Guitarの綴りの中にもペルシア語で弦を意味するtarが入っているように、セタールと並んでギターやシタールなどの洋の東西の棹の長い同属弦楽器のルーツ(名前のみ?)に当る楽器です。マリク・マンスロフはアリム・カシモフも師事した往年のタール名人バーラム・マンスロフなどから強く影響を受けているようです。まるでロックを聴いているかのような強烈な高揚感を持って始まり、火花の散るようなスリリングな即興演奏を聞かせています。旋法はコルド・シャーナズで、演奏時間は20分ほどですから途中までになるかも知れません。コルドと言うのはペルシア語でクルドのことです。シャーナーズというのもアラブの方では度々出てきたマカームですが、アゼルバイジャンの旋律と同系統になるのかどうかは、調査が必要です。
この録音は元はフランスのレーベルBudaから出ていましたが、後にイランのMahoor Institutからもリリースされています。現在はおそらく廃盤のブダ盤は非常によく売れて手元に残ってないので、イラン盤の方でおかけします。真ん中辺りでは、グレゴリオ聖歌でお馴染みのディエス・イレ(怒りの日)の旋律が登場してびっくりさせますが、西洋音楽も色々知っている人なのかも知れません。

<1 Malik Mansurov / Tar - Music of Azerbaijan 20分1秒 抜粋>
Shahnaz tar solo

彼のシャーナーズの動画がありました!

ヨーヨー・マが主役で2004年に放送されたNHKの新シルクロードで初めてアリム・カシモフの歌を聞いた方も多いかも知れません。彼の鮮烈な歌唱は次回以降におかけすることにしまして、今回はマリク・マンスロフの大先輩のバーラム・マンスロフのタール独奏を比較でかけたいと思います。こちらも現在は廃盤のフランスChant du mondeの「アゼルバイジャンの伝統音楽」に収録された演奏です。彼は1911年生まれで1985年に亡くなっているので、1962年生まれのマリク・マンスロフとは祖父と孫位の年の差になります。同じ苗字なので息子と思われがちですが、どうやらそうではないようです。ここで演奏されているのはシューシタールで、この旋法はペルシアではホマーユン旋法系列の哀感に溢れながらも、艶っぽく官能的なイメージもありますが、この演奏は時折長調的にも聞こえるのが面白いです。この曲を聞きながら今回はお別れです。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<9  Bahram Mansurov / Shushtar 7分20秒 抜粋>
"Heyrati" - Alim Gasimov, Bahram Mansurov, Talat Bakikhanov

シューシタリーではありませんが、バーラム・マンスロフの動画も色々あります。ライフルを構えるように高く掲げるスタイルが、アゼルバイジャン流のタール奏法の特徴。左のアリム・カシモフが若い!

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2018年3月16日 (金)

ハビル・アリエフのサリ・ゲリン

次の放送は18日ですのでタールは来週に回して、ハビル・アリエフの演奏でサリ・ゲリンがありましたので、今日はこちらと2012年のインタビュー番組を上げておきます。アルメニアの名歌と一般に思われているこの曲ですが、実はアゼルバイジャンの歌だという説もあります。周知の通りアゼルバイジャンとアルメニアには、ナゴルノ・カラバフをめぐる紛争があったのは、まだソ連崩壊後のことです。このアルメニアの飛び地は事実上独立状態にあるそうです。そこで気になるのが、ハビル・アリエフは、サリ・ゲリンをどちらの曲として演奏しているのでしょうか。「そんなことは、どちらでもいい。曲の素晴らしさは、政治問題を越えている」と彼は考えているようにも思いますが。インタビューのラストで、当時85歳とは思えない妙技を披露しています。

Habil Əliyev - Sarı gəlin / Habil Aliyev - Sari gelin ( Azerbaijan)

Aynadaki Men Habil Aliyev 03 11 2012 Xezer TV

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2018年3月15日 (木)

バーラム・マンスロフのタール

先回りして往年のアゼルバイジャンのタール名人バーラム・マンスロフの演奏の入った映像がありましたので、見てみたいと思います。14日の収録では、マリク・マンスロフのブダ盤と同じ内容のイラン盤と、バーラム・マンスロフのシャン・デュ・モンド盤の独奏をかけました。派手なマリク氏に対して、淡々としているように聞こえるバーラム翁ですが、これがよく聞くととても味わい深い演奏です。哀感溢れるホマーユンの副旋法のようなシューシタリーなのに、陰陽がいつの間にか入れ替わるのは、古い時期の音曲においては洋の東西を問わないのかも知れません。この人の録音は、他にはLPの頃のオランダPhilipsからのユネスコ・コレクションにあった位でしょうか。美声の歌手Mutallim Mutallimovのダフ叩き歌いと、タラト・バクハノフのケマンチェを両サイドに従えています。しかも、曲目はバヤーテ・シーラーズ。ハビル・アリエフの演奏とは異なる旋律ですが、確かに似た雰囲気。バーラム翁は1911年生まれですから、1970年前後くらいの演奏でしょうか。彼の動画があれば見たいものですが、今の所見当たりません。

Mutallim Mutallimov - "Bayati-Shiraz"

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2018年3月14日 (水)

ハビル・アリエフ&シャジャリアン

先日バヤーテ・シーラーズの妙技を上げましたアゼルバイジャンのケマンチェ名人ハビル・アリエフ・ムスタファ・オグリと、イランの古典声楽界の大御所シャジャリアンが共演している映像がありました。私は初めて見るような気がします。いくらペルシア音楽の影響が濃いアゼルバイジャンの音楽とは言え、かくもペルシア音楽に寄り添えるものかと、驚きました。シャジャリアンがまだ若いので、大分前の映像でしょう。
2本目ではイランの名高いタスニーフ、モルゲ・サハルが出てきます。このタスニーフはダストガー・マーフールの晴れやかで威厳に満ちたメロディがとても感動的な曲です。2008年に来日もした名歌手アリム・カシモフが、最近のDVDのMorqe Sahar Tabriz Concertで歌っていましたが、こちらはアゼル風にアレンジされた歌唱で、これがまた興味深いものがありました。イラン北西部のアザルバイジャンの州都タブリーズの同胞への熱き贈り物のように聞きました。2004年にアリザーデさんとハムアーヴァーヤーンが来日した際の演奏と、バムの地震の犠牲者への追悼ライブを収録したDVD「Hamnava ba Bam」でのシャジャリアンの名唱が特に記憶に残っていますが、どちらも感涙を禁じ得ないものがありました。
今週の収録では、タールの聞き比べと言うことで、アリム・カシモフの伴奏で知られる中堅タール名手マリク・マンスロフと、彼の大先輩バーラム・マンスロフ(よく言われますが、マリク氏の父ではないようです)をかけました。その次にアリム・カシモフの歌唱を取り上げる予定です。

Shajarian & Habil Əliyev

Morghe Sahar By Top Masters: Kаmancheh - Habil Aliyev (Azerbaijan) & Shajarian (Iran) Morghe Sahar.

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2018年3月12日 (月)

ケマンチェ聞き比べ アルメニア、アゼルバイジャン、イラン

ゼアミdeワールド99回目の放送、日曜夕方に終りました。14日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。先週はばたばたで結局ブログアップは月曜だけになりましたm(. .)m 今週はもう少しアップ出来ると思いますが。

アルメニア音楽をまとまった形で取り上げるのは一応前回で最後で、民謡的な音楽や若手ドゥドゥク奏者の音源などが最近は結構リリースされていましたが、売り切れて手元に残ってないので、ほとんどかけることは出来ませんでした。
今回はケマンチェの系統の擦弦楽器の聞き比べということで、アルメニア、アゼルバイジャン、イランの音源を並べてみたいと思います。この楽器の名前ですが、ケマンチェ、キャマンチェ、カマンチェ、カマンチャ、ケマンチャなど国によって色々ですが、トルコやマグレブの方などでは末尾のチェが取れて、ケマンとかカマンと言ったりもします。これらの国ではヴァイオリンをそう呼んだりもします。因みにカマンというのは、今治など伊予の方言では「結構です」とか「良いですか?」の意味になるので、ちょっとくすっと笑ってしまう感じがあります(笑)
まず、アルメニアですが、フランスのArionからのLP盤でアンドラニク・アルスタミアンという人のカマンチェ独奏です。この盤は1982年リリースで、CD化はされてなかったと思います。1918年生まれの名手の絶品の演奏をお聞き下さい。
一曲目は、Dunen Gulkenという曲で、訳は「あなたの魂は強い」となると思います。18世紀アルメニアのアシュグ(吟遊詩人)、サヤト・ノヴァの曲です。冒頭から非常にインパクトのある音をヒットしている演奏です。

<A1 Le Kamancheh d`Armenie / Andranik Aroustamian  Dunen Gulken4分16秒>
Sayat Nova - Kamancha || Music of Armenia

Andranik Aroustamianでは見当たらないので、他の奏者ですが。

続いて、アゼルバイジャンのケマンチャは、一昨年の5月の15分枠の頃に、以前大変お世話になった音楽プロデューサーの星川京児さんの追悼でもかけました。キングWRMLシリーズのバヤーティ・シーラーズの音源です。90年代前半のNHKFM「世界の民族音楽」の星川さんの回のオープニング曲でした。演奏者名の表記は、ハビル・アリエフ・ムスタファ・オグリとか、アリエフ・ガビリ・ムストファ・オグリとか、幾つかに分かれます。以前のキングのシリーズでは「カスピ海の旋律」、現在のシリーズでは「アゼルバイジャンの音楽」に収録されております。

<1 ハビル・アリエフ・ムスタファ・オグリ / バヤーティ・シーラーズ 7分5秒>
Habil Aliyev - Bayatı Şiraz

ハビル・アリエフ自身の動画もあります。神業としか思えない名演。

3番目ですが、ペルシア音楽界最高のケマンチェ奏者と言えばこの人、1905年生まれの大御所アスガール・バハーリーです。当番組のオープニング曲は、イランの歌手兼ウード奏者のアブドゥルワハブ・シャヒーディーのNegah Garm Toという曲ですが、この曲の別テイクのように聞けるマーフール旋法の美しく明朗な演奏です。当番組テーマ曲は、フランスの民族音楽の名門レーベル、オコラのCD化第1弾の一曲目でした。今では考えられないようなオールスターキャストですが、中でもケマンチェのアスガール・バハーリーやトンバクのホセイン・テヘラーニは特に光っています。これからおかけする音源は、イランのSedaというレーベルから2枚出ている内の一枚ですが、ややこしいことにペルシア語の曲目クレジットと、実際に録音されている内容がVol.1と2で逆になっています。曲目クレジットではVol.1がアーヴァーズ・アブアターとアーヴァーズ・バヤーテ・エスファハーン、Vol.2がダストガー・マーフールとダストガー・チャハールガーになっています。バヤーテ・エスファハーンのバヤーテとは、グルジェフの曲でも出てきたバヤーティの元になったと思われるペルシア語で、「詩句」を意味する言葉です。曲名ではその後にシーラーズとかエスファハーンと来るので、それぞれの町の詩とか歌というような意味になるようです。
序奏のダルアーマドに始まり、シャヒーディー作のピシュダルアーマド(前奏曲)が続きます。その後は別なダルアーマドからトンバク伴奏付きの速いチャハールメズラブの部分に入ります。マーフールの演奏はまだまだ続きますが、おかけする9分程では、チャハールメズラブまでになります。

<Asghar Bahari / Kamancheh solo-2  Dastgah Mahur 9分位>
Singer:Ali Rostamian Kamanche:Asghar Bahari (2\2)

ここでバハーリーが歌伴で弾いている旋法は、ホマーユンかバヤーテ・エスファハーンだと思います。マーフールの演奏がすぐに見つからないので今日はとりあえずこちらを。

ここでちょっと催しのお知らせを入れます。
3月18日の今治中央公民館での文化祭の洋楽の部に、今治市民弦楽合奏団で出ます。私はファースト・ヴァイオリン担当で、曲目はモーツァルトのアヴェ・ヴェルム・コルプスと、J.S.バッハの小フーガト短調です。時間は朝9時半からの4番目ですから、10時前後位だと思います。宜しければ是非お越し下さい。
それと、私の店トーク・トークでクリスマスとヴァレンタインの辺りで行いました終活カフェは、好評につき毎偶数月に行うことになりました。次回は4月26日で、セミナーが3時半から、演奏は5時からの30分ほどです。ご予約をゼアミのメール等でお受けしております。アドレスはVYG06251@nifty.ne.jpです。この番組へのご感想もこちらでお受けします。

では最後に再度アンドラニク・アルスタミアンのアルメニアのケマンチェを聞きながら今回はお別れです。A面の2曲目からは、アルメニア民謡、ヒジャーズ旋法のアルメニアの即興と続きますが、その後のヴァラヤティ・デルキャシュというペルシア古典の旋律をおかけします。確かにペルシア音楽の感じが色濃く出ている演奏です。この人の演奏はB面にアゼルバイジャン絡みの曲もありますので、アゼルバイジャンに入ってからも、ケマンチェの聞き比べでまた出すかも知れません。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<A4 12分50秒から Le Kamancheh d`Armenie / Andranik Aroustamian  Valayati Delkash 5分16秒>

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2018年3月 5日 (月)

ホヴァネスのエチミアジン交響曲 アルメニア中世の聖歌

ゼアミdeワールド98回目の放送、日曜夕方に終りました。7日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。イースターの歌は、また後日探してみます。

アルメニア音楽の8回目になります。今回は現代アメリカのアルメニア系作曲家アラン・ホヴァネスの音楽をメインに、先週取り上げましたオコラ盤のアルメニア教会宗教歌を併せてご紹介したいと思います。
アラン・ホヴァネスと言えば、私が90年頃に勤めていた池袋の店で、アルメニア教会の三角屋根のジャケットのLPがとても気になり、社販で購入したのが最初の出会いでした。それはアメリカのクリスタル・レコーズというレーベルのポセイドン・ソサエティー・シリーズで、ホヴァネスの作品集の一枚でした。彼は1911年生まれ2000年没ですから、前衛作曲家のジョン・ケージと変わらない世代ですが、前衛には向かわず、自身のアルメニアのルーツを初め、インド音楽や日本の雅楽などの世界中の伝統音楽からの影響を作品に反映させた独自の作風で知られています。1940年から10年間、マサチューセッツ州のアルメニア教会のオルガニストを務めたそうで、そういう経験も彼の芳醇なアルメニア的な旋律の秘密ではと思います。変り種では、中世イランの詩人オマル・ハイヤームの四行詩、ルバイヤートに付けた曲などもありました。余談ですが、ホヴァネスという名前は、「ヨハネス」のアルメニア語読みというのをどこかで読んだ記憶があります。
今回はアルメニア教会の総本山であるエチミアジンを主題にした交響曲第21番「エチミアジン」から、まず第1楽章のアンダンテ・マエストーソをお聞き下さい。ティンパニと鐘の音が神聖な雰囲気を醸し出し、アルメニアらしいエキゾチックな旋律がその上で奏でられます。ポセイドン・ソサエティーと同じ録音で、ホヴァネス自身の指揮、ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団の演奏です。

<1 Symphony No.21 Etchmiadzin / Andante Maestoso 5分46秒>
Alan Hovhaness : Symphony No. 21 'Etchmiadzin' Op. 234 (1968)


この曲は3楽章構成で、第2楽章を飛ばして第3楽章の途中までになりますが、聞いて頂きましょう。前にDivine Liturgyというコミタスの宗教歌の盤で聞いたのと似たエキゾチックな旋律が出てきます。後半は「ノアの箱舟伝説」で有名なアルメニアのシンボルのアララト山をイメージしているようです。

<3 Symphony No.21 Etchmiadzin / Introduction 8分59秒 抜粋 5分位>

では、後半は前回も取り上げましたオコラの「アルメニアの中世の宗教歌と器楽」から、冒頭の3曲以外の中から抜粋してご紹介します。まずはイースター(復活祭)の聖歌を4曲続けてお聞き下さい。何と8世紀頃にStepannos Sunetziという人によって作曲された曲とのことです。千年以上前の曲を歌うのは、冒頭の3曲と同じくEmma Dzadourian指揮の男声合唱です。

Armenie 1:Chants Liturgiques du Moyen Age et Musique Instrumentaleから

<4 Zor Intreats (And Having Eaten - Maundy Thursday Canticle) 1分48秒>
<5 Orhneszuk Zter (Praise The Lord!) 主を讃えよ 1分46秒>
<6 Sa E Bann Astuats (It Is God Himself) それは神自身 1分6秒>
<7 Ognagan Induneli Egher (Accept My Prayer, Oh God) 私の祈りを受け入れて下さい、神よ 1分35秒>

アルメニアには古くから独唱の伝統もあって、グルジェフの伝記映画「注目すべき人々との出会い」の中では東欧系ユダヤのイディッシュ・ソングの歌い手として有名なBen Zimetが歌っていましたが、オコラ盤には女性歌手ルシネ・ザカリアンの印象的な歌唱が入っておりますので、その中からHavoun, Havounという曲をおかけします。この歌も非常に古く、10世紀のGrigor Narekatsiという人が作曲したそうです。

<11 Loussine Zakarian / Havoun, Havoun 4分8秒>
NAREGATSI " HAVOUN HAVOUN"/ LUSINE ZAKARYAN

こちらはオーケストラ伴奏付き

では最後にAman, Hayr Sourp (Amen, The Father Is Holy)という曲を聞きながら今回はお別れです。この曲はNerces le Gracieux(1856-1905)という、おそらくフランス語圏のアルメニア人作曲家と思われる人の書いた曲で、19世紀末頃の美しい聖歌です。歌唱はEmma Dzadourian指揮の男声合唱です。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<15 Aman, Hayr Sourp (Amen, The Father Is Holy) 5分36秒>
  Lusine Zakaryan, Amen Hayr Yev Sourp

ルシネ・ザカリアンの歌唱でこの曲がありました。

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2018年3月 2日 (金)

アルメニアとアゼルバイジャンのバヤーティ

結局同じ曲か、あるいはルーツが同じなのか、よく分かりませんが、グルジェフのバヤーティと、グルジェフ・アンサンブルの演奏するNo.40(From Asian Songs and Rythms)を並べてみます。おそらくどちらもバヤーティ旋法で、同じ3拍子系。グルジェフの後半部分と旋律はかなり似ているように思いますが、いかがでしょうか。曲名を「カマンチャ」と言っていたのは早とちりでした。キング盤か何かでしょうか、歌入りでこの曲名を聞いた覚えがあって、そっくりな旋律だったようにも思いますので、また確認してみます。来週の放送でかける予定のバヤーティ・シーラーズとの関係がどうなのかも気になります。次の次からは本格的にアゼルバイジャンです。
一昨日のイマミヤール・ハサーノフは、1975年アゼルバイジャンの首都バクー生まれ。現在はアメリカを中心にキャマンチェ奏者として活躍。アゼルバイジャン音楽を教えてもいるそうです。3本目にキャマンチェの超絶デュオを入れておきます。左がImamyar Hasanovです。こちらもバヤーティ系の旋法に聞こえます。太鼓はダラブッカだと思いますが、イランのトンバク風な叩き方をしています。

G.I.Gurdjieff's music - No 40 "Gurdjieff Folk Instruments Ensemble"/duduk,kamancha ...

14 - Bayaty

Arslan Hazreti & Imamyar Hasanov (Duet - Live performance)

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