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2018年3月26日 (月)

アリム・カシモフのイネディ盤

ゼアミdeワールド101回目の放送、日曜夕方に終りました。28日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。イネディと同じyoutubeは多分ないと思いますので、2曲目と同じバヤーテ・シーラーズのライブ映像を上げておきます。娘ファリガナ・カシモヴァとのデュエットです。伴奏者については、放送で話した内容も間違っておりましたが、収録の後先日ブログで訂正しましたので、今回は放送内容のまま上げております。

アゼルバイジャンの音楽の2回目は、アゼルバイジャンの人間国宝ともいえるアリム・カシモフの奇跡の歌声を聞いてみたいと思います。ユネスコ国際音楽賞を受賞し、「20世紀の最も偉大な歌手の一人」とも称えられる大歌手です。2004年NHKの新シルクロードでタイトル曲を歌っていたので聞き覚えのある方もいらっしゃると思います。2008年には娘のファルガナ・カシモヴァと来日もして素晴らしい歌唱を聞かせました。ペルシア音楽が本家の、細かい節回しのタハリール唱法の入った、高い張りのある歌声がとにかく凄いです。
彼の録音は沢山ありますが、世界的に知られるようになったのは1989年頃だったでしょうか。フランスのイネディやChant du monde、オコラ、スイスのVDE-Galloから相次いでCDが出まして、最近では娘のファリガナ・カシモヴァとの録音がドイツのWorld Network、アメリカのSmithsonian Folkways、ドイツのDreyer Gaidoから出ています。イランのBarbadからは、ペルシアの名タスニーフMorqe Saharも歌ってこの曲をタイトルにしたTabriz ConcertのDVD付き2枚組も出ています。やはりどんどん売れて手元に残っているのは初期の盤のみという状態ですので(笑)、今回はイネディの第1集から、ムガーム・チャハールガーとムガーム・バヤーテ・シーラーズを抜粋しておかけしたいと思います。チャハールガーが41分、バヤーテ・シーラーズが30分ありますので、本当にかいつまんでになります。苗字については「カシモフ」と長らく呼ばれて来ましたが、原語に近いと思われるガスィモフとかガスモフという表記も多くなっています。
伴奏者について、前回の解説に訂正を入れる必要が出てきましたので、お知らせしておきます。
「バーラム・マンスロフは1911年生まれで1985年に亡くなっているので、1962年生まれのタール奏者のマリク・マンスロフとは祖父と孫位の年の差になります。同じ苗字なので息子と思われがちですが、どうやらそうではないようです。」このように前回言いましたが、調べましたら同姓同名のマリク・マンスロフというケマンチェ奏者がいまして、エルカン・マンスロフという年配のタール奏者も確かに確認できました。この二人はおそらくバーラム・マンスロフの息子だと思われます。これからおかけするイネディ盤はこの二人の伴奏という表記になっていますが、アーティスト写真は、当時若手のタール奏者のマリク・マンスロフと、ケマンチェ奏者のエルシャン・マンスロフに差し換わっています。VDE-Gallo盤では、若手の二人で名前とアーティスト写真が一致していますので、イネディの表示が間違いで実はこの二人なのかも知れません。エルカンとエルシャンの違いも微妙で非常にややこしいですが、そういうことのようです。
まずは冒頭のタールとケマンチェの演奏から鮮烈に始まるチャハールガーの方からどうぞ。パラジャーノフのシュールな映画を思い出させるような始まり方です。

<1 Alim Kassimov 1 ~Mugam Chargah 41分36秒 抜粋>

次のバヤーテ・シーラーズですが、ハビル・アリエフのケマンチェ演奏をどうしても思い出してしまう旋法ですが、やはり別なメロディから始まります。しかし哀愁味溢れる美しく官能的な旋律は、聞く者を捉えて離さないものがあります。ムガームでは、歌い手をハナンデ、タール、ケマンチェ、枠太鼓ダフの伴奏陣をサーザンデと呼びますが、大体歌手がダフを叩き歌うことが多いようです。各曲とも、インド音楽ならアーラープに当るバルダシュトという即興的な前奏に始まり、テスニーフ(ペルシアのタスニーフと同じく歌曲の一種と思われます)、舞曲レング、ティリンガなどが組曲風に演じられます。この構成を見てもペルシアとコーカサスの音楽が入り混じっていることがよく見て取れますが、アゼルバイジャンは言語面では中央アジア諸国やトルコと繋がるテュルク(トルコ)系になります。 アリム・カシモフのバヤーテ・シーラーズを聞きながら今回はお別れです。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<2 Alim Kassimov 1 ~Bayati Shiraz 30分33秒 抜粋>
Alim & Fargana Qasimov Ensemble, Bayati Shiraz

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