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2018年4月 2日 (月)

アリム・カシモフの1980年頃の歌声

ゼアミdeワールド102回目の放送、日曜夕方に終りました。4日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。1985年没のバーラム・マンスロフがご存命中なので、アリム・カシモフのおそらく80年代初頭前後辺りと思われる歌唱です。

今回から新年度に入りました。この番組が始まって2年経って「世界の音楽」の10分の1も回れてないなと思う昨今です。今年度もお付き合い頂けましたら嬉しい限りです。これまでは中東のイランから始めてエジプト北部まで進み、その後ロシア、ウクライナ、ベラルーシ、バルト三国、コーカサスというルートでした。ここまでで2年ということです。今後しばらくの予定としましては、アゼルバイジャンの後は、トルコ系繋がりで中央アジア諸国を巡り、その後トルコに飛んで、続いてヨーロッパに入り、ギリシアからバルカン半島を北上し、東欧、中欧、北欧などを回って、クラシックも交えながら西ヨーロッパ諸国を回り、スペインから再び北アフリカのマグレブ諸国に入り、東に進んでエジプト南部からインド西部のラジャスタンに飛んで、インド亜大陸に入りますが、そこまででも何年経っているか見当がつきません。その後は、東南アジア、日本を含む東アジア、チベットなど内陸アジア含めモンゴルやシベリアなどの北アジア、ブラック・アフリカ、南北アメリカ、オセアニアの順になるかと思います。数年では到底終わらないと思います。

アゼルバイジャンの音楽の3回目は、タール聞き比べの際に往年の巨匠バーラム・マンスロフの独奏をかけましたフランスのレーベル、シャン・デュ・モンド(Le chant du monde)盤からご紹介したいと思います。この盤には1985年にバーラム・マンスロフが亡くなる前の、まだソ連時代のバーラム・マンスロフ周辺の正統派ムガーム音楽がたっぷり収録されています。バーラムの息子のエルカン・マンスロフのタール独奏や、99回目のケマンチェ聞き比べでバヤーテ・シーラーズをかけましたケマンチェ名人のハビル・アリエフも独奏や歌の伴奏で度々登場します。
まずは、まだ若手だった頃のアリム・カシモフと、師匠のタール奏者バーラム・マンスロフが共演した演奏からおかけしたいと思います。ケマンチェはエルマン・バダーロフという人です。4~6分の共演が3曲ありまして、まずArazbareという曲からです。どこかウズベク辺りの中央アジア的な感じのある曲調です。師匠との共演はyoutubeでは幾つか上がっていますが、CDではおそらくこの3曲のみかも知れません。古い時期のカシモフの歌唱を確認できる貴重な録音です。

<6 Azerbayjan Traditional Music - Alim Kasimov / Arazbare 6分10秒>
Alim Qasımov - Arazbarı (Kürdəxanı, 03/03/1985)

伴奏者にバーラム・マンスロフはいませんが、同じ曲です。

先ほどの曲もオスマン朝時代の古い曲に繋がるムガームだったようですが、次におかけるする曲はストレートにオスマンルというタイトルになっております。原曲は、オスマン時代のクルド系軍人のイェニチェリ(歩兵軍団)の軍隊行進曲に遡るかも知れないようです。オスマンの軍楽と言えば、70年代にテレビドラマ「阿修羅のごとく」で使われて以来、民族音楽のロングセラーのジャンルです。メンバーはアリム・カシモフ、バーラム・マンスロフ、エルマン・バダーロフですから、前の曲と同じ3人です。

<10 Azerbayjan Traditional Music - Alim Kasimov / Osmanli 6分54秒>
"Mani" - Alim Gasimov, Bahram Mansurov, Talat Bakikhanov

オスマンルはマニとも言うようです。真ん中でライフルのようにタールを高く構えているのがバーラム・マンスロフ御大。しかし、アリム・カシモフ、若い! この時20台だと思います。

次の曲も同じ3人の演奏で、曲名はオフシャールとなっています。イラン中部のトルコ系民族に由来するペルシア音楽のアフシャーリー旋法をすぐ様思い出させるタイトルですが、音楽的にはアフシャーリーとは無関係で、むしろシューシタールやフマーユンを想起させるエキゾチックな短調系の旋律です。

<11 Azerbayjan Traditional Music - Alim Kasimov / Ovshar 4分22秒>

シャン・デュ・モンド盤の6、10、11曲目のアリム・カシモフの歌唱をおかけしましたが、最後に1曲目に戻ってカラバフ・シェカステスィという曲を聞きながら今回はお別れです。この盤は冒頭の男声の甲高い歌唱で一般に知られることが多かったように記憶していますが、こちらはザビオッラー・クリエフという他の若手男性歌手です。男声とは思えないようなハイテンションの高音で出てくるので、度肝を抜かれる感じがあります。古典音楽ですが、曲調がアシュク(吟遊詩人)系なのが面白い一曲です。そしてケマンチェ伴奏をしているのは、あのハビル・アリエフです。実に味わい深く素晴らしい伴奏を聞かせています。1989年のリリース当時アルメニアとの間でもめていた場所、ナゴルノ・カラバフをすぐ様思い出させる曲名なので、最初に持って来たのかも知れません。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<1 Azerbayjan Traditional Music - Zabiollah Kuliev / Karabagh Shekastesi 6分13秒>
Sakine Ismailova - Zarbi mugam Karabagh Shikastesi

Zabiollah Kulievでは見当たりませんが、イネディのムガームシリーズ第5集の女性歌手サキーネ・イスマイロヴァの歌唱で同じ曲がありました。

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