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2018年5月

2018年5月30日 (水)

トルクメンのドタール合奏

今日の2本は、トルクメンのドタール(より正確な表記はドゥタールかも)の合奏ですが、3姫1太郎の家族でしょうか、息の合った演奏を聞かせています。こうして聞くと、クルディスタンのタンブールの合奏にそっくりに見えます。音や右手のストロークが似ているように思います。タイトルのaydimlariを、同じテュルク諸語のオグズ系統であるトルコ語で調べると「知識人」との訳が出てきました。トルクメン語で同じになるかどうかは不明ですが。(アゼルバイジャンの時に書きましたが、トルコ語、アゼルバイジャン語、トルクメン語はかなり近いようです) おまけの3本目などを見ると、2本しか弦がないのにも関わらず(むしろ弦の数が少ないからこそ)歌うように奏でることが可能な、優れた弦楽器であることが改めてよく分かります。

turkmen aydimlari

turkmen aydimlari

turkmen halk aydym gulbahar

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2018年5月28日 (月)

倍音唱法入りバフシー

ゼアミdeワールド110回目の放送、日曜夕方に終りました。30日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。VDE盤では浪曲のような発声から倍音唱法に至る吟遊詩人バフシーの音源が目立ちます。このタイプの歌唱は、イネディやキングWRML盤(次回予定)では聞けなかったので、貴重な記録だと思います。倍音入りバフシーのyoutubeはほとんど見当たりませんが、長尺の映像を含めいくつかありました。VDE盤と同じ演奏者では残念ながら見当たりませんでした。

Turkmen folk song and Dutar


Kerwen bagsy - Goroglynyn oylenishi


トルクメニスタンの3回目は、トルクメンの吟遊詩人バフシーの歌の男性編ということで、スイスVDE-Galloの「トルクメニスタン バフシーの音楽」から聞いて行きたいと思います。この盤には、テケ、サリク、エルサリーなどの部族に伝わる5つの歌唱スタイルが収録されていて、それはアシガバード、メルヴ、チャルゾウ、タシャウズ、クラスノボズクの5つになります。首都のアシガバードなど、それぞれ町や地方の名前のようです。繊細な音の弦楽器ドゥタールをかき鳴らし、朗々と歌うさまは勇壮で、時に擦弦のギジャックの伴奏も入ります。トゥバやアルタイの喉歌(あるいは倍音唱法)に近いような、喉を締めて歌う発声法も随所にみられます。この盤の録音は1988-90年で、やはり現物が手元に残ってないので、アップルミュージックからの音出しになります。解説を参照出来ませんので、その5流がどのトラックになるのか不明なのが残念です。
まず1曲目のYagmyr Nurgeldyevという人のGongurbash Mukamyというドタール独奏曲からどうぞ。

<1 Yagmyr Nurgeldyev / Gongurbash Mukamy 2分53秒>

2曲目は、Khomat Jelilovという人のDalmidiという曲ですが、日本の浪曲に似た歌い方のように思いました。倍音唱法的に聞こえる部分もありますので、と言うことは、浪曲も喉歌に似ていると言えるのかも知れません。

<2 Khomat Jelilov / Dalmidi 4分52秒>

3曲目のGelinlerという曲は先ほどの同じKhomat Jelilovの歌唱ですが、この曲では浪曲風な技巧ではなく、朗々と勇壮に声を張り上げて歌っていて、同じ歌い手なのかと思う位に違って聞こえます。

<3 Khomat Jelilov / Gelinler 4分5秒>

4曲目のAk Yuzliという勇壮な曲もKhomat Jelilovの歌唱ですが、この様な複雑な曲調を表現できる凄い歌い手であることが3曲続けて聴くとひしひしと伝わってきます。CDジャケットの白いテルペックを被った男性はこの人かも知れません。

<4 Khomat Jelilov / Ak Yuzli 4分53秒>

数曲飛んで7曲目のYarym Garasaという曲はOdenyaz Nobatovという人の歌唱で、ドタールの掻き鳴らしは控えめです。声を揺らすゆったりとした歌い方は、隣の国のウズベキスタンの歌に少し似て聞こえました。

<7 Odenyaz Nobatov / Yarym Garasa 4分10秒>

11曲目のGarygymになると、はっきりとした倍音唱法が聞けます。これは明らかにモンゴルのホーミーやトゥヴァのホーメイを思わせるものがあります。Khaitly Mammetdurdyevの歌唱です。

<11 Khaitly Mammetdurdyev / Garygym 4分35秒>

12曲目のGitme Goroglyも同じKhaitly Mammetdurdyevの歌唱ですが、ここでは低音での倍音唱法もありまして、これはチベット仏教の聲明を思わせるものがあります。タイトルのGoroglyというのは、この辺りの英雄叙事詩の朗唱(ダスタン)で最も好まれる古いトルコの英雄叙事詩ケログルの一種のように思いましたが、どうでしょうか。

<12 Khaitly Mammetdurdyev / Gitme Gorogly 3分59秒>

17曲目のAkmammet NurmammedovによるDaglarになると、これまた浪曲にそっくりで、しかも低音の倍音が入って来る歌唱になっています。それが中央アジアから聞こえるという不思議を感じます。

<17 Akmammet Nurmammedov / Daglar 3分40秒>

この盤には器楽だけのトラックも幾つかありますが、8曲目のVelek Gubalyevという人のYara Degmesinという曲は、日本なら尺八、イランやトルコのネイ、東欧ならカヴァルに似た縦笛の吹奏で、ウラル地方南部のバシコルトスタンにも同じ様な音色の笛があります。笛の音と声が一緒に出ているダブルトーンに近い演奏ですが、バシコルトスタンの方が、より声も一緒に出ています。カザフの後でバシコルトスタンも一回予定しております。
時間が余りましたら、9曲目のSona Gelinという曲もおかけしたいと思います。同じ笛の吹奏のようで、演奏はTschariyar Jumaevという人です。

これらの曲を聴きながら今回はお別れです。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<9 Velek Gubalyev / Yara Degmesin 2分>

<10 Tschariyar Jumaev / Sona Gelin 1分40秒>

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2018年5月23日 (水)

トルクメンのポップス

バフシーの女性篇に続いて23日の収録ではバフシーの男性篇にしました。男性の方では倍音唱法が出てくる浪曲風な歌唱が多いことに驚かされます。CDでバフシーのようなトルクメンの伝統音楽は結構ありますが、ポップスについては見たことも聞いたこともなかったので、youtubeで今日のような映像を見れるのは、とても嬉しいことです。一本目ではインドの映画音楽の影響をストレートに感じます。2本目はどちらかと言えば、やはり中東やトルキスタンです。バフシーでは西アジアと並んで歌唱法で北アジアとの共通点が見え、ポップスではインドも表に出てくるという、この地が様々な文化の十字路ということを強く感じさせるバラエティの豊富さです。歌手の顔立ちもイラン、モンゴル、テュルク、ロシアなどが混じっているのでしょうか、一体何人?という風貌(美形多し)が多いように思います。

Bahar Hojayewa Turkmen song.DAT

Ýap Boýunda (Bilezik) - Türkmen Türküsü Türkçe altyazılı. Turkmen Song- English Subtitles. Türkmence

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2018年5月21日 (月)

トルクメンとトルカマン

ゼアミdeワールド109回目の放送、日曜夕方に終りました。23日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。女性バフシーの二人とも残念ながらyoutubeは見当たりませんので、Tawus Perizatという人の弾き語りを入れておきます。Tawus Perizatの左で弾いている擦弦楽器が、ギジャクです。

Tawus Perizat Turkmen bagşy


トルクメニスタンの2回目は、トルクメンの吟遊詩人バフシーの歌を中心に聞いて行きたいと思います。まずはフランスIneditの「女性バフシーの歌」から、有名なトルクメンの歌姫ジャマラ・サパロヴァの歌でQashliyarと言う「別れの曲」からどうぞ。ドタール伴奏は、前回ロシアのMelodiya音源でご紹介しましたアク・モラード・チャーリエフと同一人物と思われるアクムラド・シャリエフです。

<1 Songs of Bakhshi Women~Qashliyar  5分4秒>

ジャマラ・サパロヴァは、キングのワールドミュージックライブラリーにも録音が入っていた歌手で、私も執筆で参加した音楽之友社の「世界の民族音楽ディスクガイド」の星川京児さんのコラムによると、「アルジェのライとパンジャブのバングラを掛け合わせ、イランのタハリールを強烈にしたようなヴォーカル」と形容された世にも希なポップスで、この盤ではドタール伴奏で歌っていますが、星川さんが首都アシガバードで彼女の歌を聞かれた時はプログラム・シンセ伴奏のポップなスタイルだったようです。国土の7割が砂漠というトルクメニスタンの風土を強く感じさせるドタールの鮮烈な音と、遊牧民ならではの強靭な喉を聞かせる典型的な歌手です。
このイネディの「女性バフシーの歌」には、もう一人Shemshat Hodjaevaという、サパロヴァよりは高い可憐な声で歌う歌手も入っておりますので、Gelsynという曲をおかけしたいと思います。

<4 Songs of Bakhshi Women~Gelsyn  3分20秒>

ジャマラ・サパロヴァで、もう一曲Kone Guzerと言う曲もおかけしておきたいと思います。完売で手元にないため今回アップルミュージックからかけていて、解説を参照出来ておりませんので、曲の詳細は不明です。

<14 Songs of Bakhshi Women~Kone Guzer  2分53秒>

トルクメンの音楽と言うと、いずれも個性的な中央アジア諸国の音楽の中では比較的印象が薄いのは否めませんが、カスピ海の東岸に面し、日本の1.5倍ほどの国土の7割が砂漠という、地理的な魅惑も感じさせる、謎を秘めた国という風に常々感じております。
トルクメンで思い出すのが、イランのタールとセタールの巨匠ホセイン・アリザーデのトルカマン(正確にはトルキャマン)という曲で、元はセタールとオーケストラのために書かれたようですが、KereshmehとMahoorの盤ではセタール独奏で演奏されています。彼の弾くセタールの強靭な音は、明らかにトルクメンのドタールを思わせるもので、彼自身「この曲はトルカマンの人々と彼らの土地にインスパイアされた」と解説に書いています。イランは北西部にアゼルバイジャン系、北東部にトルカマンという、いずれもトルコ系民族が住んでいる国で、アリザーデ自身アゼルバイジャンの血を引くので、彼らの音楽には強く惹かれる部分があるのだろうと思います。この曲はラストパンジガーという旋法で即興演奏されますが、ペルシアの旋法の中で最も複雑かつ流動的で、遊牧民の哀しみと激情を映し出すのに適した旋法のように思います。
全曲は57分余りありますので、最初のちょうど3分のダルアーマド・ラストと、終曲の11分を越える壮絶なトルカマンの途中までになると思いますが続けてお聞き下さい。

この曲を聴きながら今回はお別れです。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<1 Hossein Alizadeh / Torkaman ~Daramad-e Rast 3分>

<14 Hossein Alizadeh / Torkaman ~Torkaman 11分38秒>
Hossein Alizadeh - Torkaman

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2018年5月17日 (木)

ドタールの聞き比べ ウイグルとトルクメン

ドタールという楽器はトルキスタンの方々にありますが、今日はトルクメンとウイグルの聞き比べ、見比べをしてみましょう。ウイグルのドタールは、現物を見たことがありますが、低いフレットは目一杯手を伸ばさないと届かないくらい長い棹でした。楽器が大きいからでしょうが、低音が豊かです。ストロークも、トルクメンではクルドのタンブールのような、フラメンコのラスゲアードの逆回しのような動きがありましたが、ウイグルの方は、また何とも独特です。どちらも民族固有の音楽を雄弁に表現できる素晴らしい楽器だと思います。
今後の放送の予定ですが、トルクメンが3回、カザフが5回、キルギスが5回、カラカルパクが1回、ウズベクとタジクがそれぞれ7回前後、カラコルムが1回、ウイグルはその後になりますので、早くて半年後くらいになるかと思います。アフガニスタンは、中央アジア枠で北部だけ入れようかどうしようか考え中です。文化的に西アジア、南アジアと3分割される国です。

Uyghur Dutar Player Abdurehim Heyit in Kashgar

TURKMEN DUTAR, OWADAN GELIN ,OGHLAN BAKHSHI

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2018年5月16日 (水)

トルクメンのドタールとトルカマン

トルクメンのドタールと言えば、数年前に一本目の動画が結構話題になったように記憶しています。2本のドタールのインタープレイも凄いですが、途中右のバフシー?の歌声が、まるで飛行機が加速して飛び上がるように、倍音唱法になる部分があります。ユネスコ盤にもありましたが、あっ!と驚く瞬間です。左の男性はトルクメン人だと思いますが、右の人はもしかしたら西洋人かも、と外見からは思いました。もしそうならバフシーの芸を身に着け、倍音唱法まで出してくる筋金入りと言えるのでは。
二本目の白いテルペックを被った男性の激しい演奏も実にトルクメンらしく、勇敢な遊牧民の誇りを感じさせる演奏です。今日の収録では、彼らの演奏からインスパイアされたホセイン・アリザーデのセタール独奏曲「トルカマン」もかけます。

turkmen dutar

Turkmen music, LEYLI GELIN , OGHLAN BAKHSHI

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2018年5月14日 (月)

トルクメンのドタール

ゼアミdeワールド108回目の放送、日曜夕方に終りました。16日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。昨日のネットラジオでの放送は、私の番組以外も全て音が割れていて残念でした。同じ曲のyoutubeを探すのは至難の業だと思いますので、ドタールの構造と演奏の感じが分かる映像を一本だけ上げておきます。トルクメン洋折衷の編成と混じり具合がまた面白いです。中間部では、ドタールソロの接写があります。

Dutar Performance - Turkmen Folk Music


今回から中央アジアに入ります。まずは一番西に位置するトルクメニスタンからです。中央アジアは歴史的な地域名称にトルキスタンという言い方があります。その名の通り、テュルク系民族の住む土地(ペルシア語で~スタン)という意味です。トルクメンの他には、ウズベキスタン、タジキスタン、カザフスタン、キルギスタンとありますが、中国側のウイグルも同じトルコ系なので、トルキスタンに入ります。この中でタジキスタンだけイラン系が中心で、他の国はトルコ系民族が中心です。この中でトルクメニスタンは、名前にトゥルクとはっきり民族名が入っている国です。
トルクメニスタンの伝統音楽では、吟遊詩人バフシーが有名でフランスのIneditやユネスコ、スイスのVDE-Galloなどから音源が色々ありましたが、やはり完売していて手元に残ってないため、次回にアップルミュージックからかけることにしまして、今回は手元に資料として残っているコンピレーションの中の音源をご紹介したいと思います。バフシーと言うのは、モンゴル語の仏教指導者バクシュに由来するそうです。録音は首都アシガバードなど本国でのものが多いのかと思ったら、イラン東部のホラサーン地方の北部にもトルクメン人は多く住んでいるので、そちらでの録音もイラン盤で多数出ていて、どうやらイラン側での録音の方が多そうです。バフシーの歌には、ホーミーに似た倍音唱法の一歩手前まで行っている例もあります。
まずは「シルクロード音楽の旅~天山からカフカースへ」という新世界レコードのコンピレーション盤から、アマン・アマンという曲をお聞き下さい。この盤は90年前後にフランスのシャンデュモンドから出ていた確か6枚組の「ソ連の音楽への旅」の音源からの抜粋だったと思います。10枚シリーズのアナログ盤が元ですが、その音源はソ連のメロディアのものです。
アマン・アマンという曲は、中央アジアの代表的な弦楽器ドタールの独奏です。ペルシア語の1,2,3に当たるイェク、ド、セのドが当たっている通り、わずか2弦しかない楽器ですが、棹が長いため、とても弦が2本しかないとは思えない技巧的な演奏を聞かせます。タールは以前言いましたように弦を意味するペルシア語です。因みに、3弦の代表格はセタールでイランの代表的な弦楽器の一つです。1弦のエクタールも、インド東部ベンガル地方の放浪の吟遊詩人バウルが使う弦楽器にこの名前があります。

<15 シルクロード音楽の旅~アマン・アマン 2分52秒>

次に入っているのは「お願い、愛しい人」と言う曲で、ドタールと擦弦のギジャクの伴奏で歌われます。

<16 シルクロード音楽の旅~お願い、愛しい人 3分47秒>

この盤にはトルクメンの曲が3曲入っておりまして、最後はイルハンと言う曲です。イルハンと聞くと、トルコのサッカー選手を思い出される人もいらっしゃるかと思いますが、ここでは言うまでもなく、現在のイランを中心に、アムダリヤ川からイラク、アナトリア東部までを支配したモンゴル帝国を構成した地方政権のことです。イルハン国の首都は、現在のイラン北西部のタブリーズでした。このドタールとギジャクの二重奏曲は、マルコ・ポーロが元朝の中国から姫をお連れしたモンゴル最盛期のイル汗国の賛歌とのことです。

<17 シルクロード音楽の旅~イルハン 2分29秒>

もう一枚ご紹介しますのは、スイスのVDE-Galloから出ている「中央アジアのドタールの名人」と言う盤で、この中にはウズベキスタンのブハラ、タジキスタンのパミール、イランのホラサーン地方などの音源と一緒にトルクメンのドタール演奏が6曲入っております。その中から3曲抜粋しましたが、いずれもイラン側での録音でした。まず最初はジバ・ギョゼルというドタール独奏曲で、演奏しているアク・モラード・チャリーエフと言う人は、録音された1978年当時トルクメンの首都のアシガバード高等音楽院のドタール教授とのことです。洗練された美しい演奏を聞かせています。

<15 中央アジアのドタールの名人  Ziba Gozel 5分17秒>

もう一曲は、ナズリ・ヤールという曲で、和訳は「我が最愛の恋人よ」となっています。ドタール弾き語りがバハマン・ダリジェと言う人で、セカンド・ドタールも入った演奏です。モッラ・ナファスの詩に乗せたエルサリとサリル・サリク形式の曲と解説にありました。喉をひくつかせるような歌唱が独特です。

<17 中央アジアのドタールの名人  Nazli Yar 3分59秒>

最後に、やはりイランのテヘランでの録音になりますが、アク・モラード・チャーリエフのドタール独奏で、マカームという曲です。マカーム(旋法)が何かは不明です。末尾にエフと付く名前から推測するに本国の人だと思いますが、1978年当時はまだソ連時代ですから、トルクメン本国での録音が難しかったのでしょうか? この演奏も実に素晴らしいです。

この曲を聴きながら今回はお別れです。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<18 中央アジアのドタールの名人  Maqam 4分7秒>

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2018年5月 9日 (水)

アディゲのイスラメイ

アディゲ、チェルケス、サーカシアのイスラメイについては、これまでに何度も書きました。107回目のコーカサス総集編のラストをイスラメイで締めましたが、去年の7月にコーカサスに入ってきた時に取り上げたのもイスラメイでした。この美しい舞踊は、やはりアディゲの誇りなのでしょう。何本も見ましたが、この群舞の一本は初めてだと思います。タイトルにも解説にも、アディゲの首都Майкоп(マイコプ)が出てくるので、チェルケスやサーカシアとするよりは、アディゲとはっきり明記できる数少ない例かも知れません。

Ансамбль «Зори Майкопа», г. Майкоп - Исламей

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2018年5月 7日 (月)

コーカサスのラストにチェチェン、グルジア、イスラメイを再び

ゼアミdeワールド107回目の放送、日曜夕方に終りました。9日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。コーカサスの最後はサーカシアのイスラメイで締めましたが、時間切れで放送では解説を入れられませんでした。内容は以下の通りです。名残惜しいですが、次回からは中央アジアに向かいます。バタバタしていて、2日には収録速報をツイッターにアップするのを忘れておりましたm(. .)m

今回は予告しておりました通りコーカサスの番外編を考えております。あるいは総集編のように出来ればとも思いましたが、30分という限られた時間ですので、やはり個人的に思い入れの強い音楽になるかと思います。既にお気づきの方も多いかと思いますが、コーカサスからヴォルガ中流域は、個人的に一番調べてみたかったエリアで、そのまま中世のハザール帝国の版図と重なる辺りになります。ハザールは、支配層がユダヤ教に改宗したことで知られる「謎の国家」で、その遺民が東欧系ユダヤ人に多数流れ込んだとの説がありますが、その真偽はともかく、この地域で東西の民族や文化が複雑に入り混じっている様は、非常に興味深いものがあります。バルトークやコダーイは、自国ハンガリーやルーマニア周辺で盛んにフィールドワークを行い、東欧各地で収集した民謡を彼らの作品に反映させましたが、アジア系とも言われたりしたハンガリー民族のルーツを探ってヴォルガ中流域からウラル地方に行き着いた辺りから民族音楽研究が本格的に始まったように、ハンガリーは民族音楽研究において常に世界をリードする国でした。ソ連崩壊後、情報が溢れるように出てきた旧ソ連各地やコーカサスの辺りは、今でも民族音楽研究の豊富な素材を見出せるエリアだと思います。

前置きはこの位にしまして、まずはチェチェンの歌姫マッカ・サガイーポヴァの最近作Возьми мое сердце(ヴァズミ・マヨー・セルツェ 「私の心を奪う」)から、メロディの美しいサン・ドグ・ドゥ・ホと、レズギンカのリズムが漲るファン・バールガシュという2曲を続けてどうぞ。

<5 Макка Сагаипова / Сан дог ду хьо 3分40秒>
Макка Сагаипова - Сан са ду Хьо


<6 Макка Сагаипова / Хьан б1аьргаш 4分>
Макка Сагаипова - Хьан б1аьргаш ЧЕЧЕНСКИЕ ХИТЫ 2017!


チェチェンのマッカ・サガイーポヴァの代表曲の一つPretty Boyが、グルジアの女性3人組トリオ・マンディリの2015年のアルバムWith Loveのチェチヌリ・ポップリと題するチェチェンの曲メドレーの1分50秒辺りに出てきましたので、再度おかけしたいと思います。何だ、総集編はチェチェンとグルジアのアイドルばかりじゃないかと言われそうですが(笑)、チャーミングさだけでなく、彼女らのポリフォニーの歌声は本物です。YouTubeもその後何本か出ていました。

<9 Trio Mandili / With Love - Cechnuri Poppuri 3分12秒>
カルトゥリ・ポップリの方はありますが、チェチヌリ・ポップリはYouTubeがなさそうです。もしかしたら、マッカさんの歌が入っているからでしょうか?

トリオ・マンディリは2枚のアルバムを出していますが、両方の冒頭を飾っている曲はどちらも素晴らしいので再度おかけしたいと思います。2014年にyoutubeでいきなり300万件を越えるアクセスがあって大注目を浴びたグルジア民謡のAparekaからです。何気なく歩きながら3人で撮ったこの演奏の映像が、彼女らの生活を劇的に変えました。この曲が2015年のファースト・アルバムWith Loveの一曲目を飾っています。

<1 Trio Mandili / With Love - Apareka 2分38秒>
Trio Mandili Apareka


2017年リリースのEnguroからは、一曲目のErti Nakhvitと言う曲を12月3日の85回目で時間が足りず、かけられずでしたので、再度おかけします。コーカサス音楽らしい旋律美と躍動的なリズムが溢れた曲です。

<1 Trio Mandili / Enguro - Erti Nakhvit 1分56秒>
Trio Mandili - Erti nakhvit - CD-album ENGURO


続いて、最近まで聞いていたアゼルバイジャンの民謡ですが、キングの「カスピ海の旋律」にマメードヴァ・スムルード・モブルード・キジという女性歌手が歌うAzerbaijianという曲が入っておりますので、おかけしておきます。チェチェンやグルジアはコーカサス系ですから、並べて聞くとかなり印象が異なり、アゼルバイジャンの方はペルシア音楽に近く、コブシが豊かなことがはっきり聞き取れると思います。詩の内容は「幾多の山を越えてきた。鶴の眼のように澄み、美味な水をたたえた川を渡ってきた。遠近いろいろな所から聞こえてくる。アラス河のことが、アゼルバイジャンのことが。おお、アゼルバイジャンよ。私は友人。愛しい人の思い出に浸っている。~」このように叙事詩のような内容です。

<7 カスピ海の旋律~Azerbaijian 4分49秒>
また後日探してみます。

最後に、去年の7月に北コーカサスに入った際の最初にかけたサーカシアの音源ですが、メロディアの「サーカシアの伝統音楽アンソロジー」収録のオーソドックスなイスラメイの1965年の録音を再度かけてみたいと思います。バラキレフの超絶技巧ピアノ曲で一般に広く知られている曲名です。
レズギンカと類似の8分の6拍子のリズムがついていることもありますが、イスラメイ特有のノーブルなメロディラインが確かにあります。よくレズギンカで男性の踊りが鷲、女性の踊りが白鳥に喩えられますが、正にコーカサスの高い山を舞い降りてくる鷲のような雄々しく颯爽としたイメージの曲です。
このように7月に解説しておりました。
この曲を聴きながら今回はお別れです。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<Ислъамый (Исламей) 3分16秒>
Нальмэс - Исламей (2016)

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2018年5月 2日 (水)

カシモフ父娘の歌うオスマン古典音楽

今日の一本では、とても興味深い音楽が聞けます。名高い中東の悲恋物語「ライラとマジュヌーン」がテーマになっていたり、それを歌うのはアリム・カシモフ父娘というだけで話題性が大きい訳ですが、音楽がオスマン・トルコ古典音楽になっている所が最大の特徴だと思います。このゆったりと雅びで大らかな流れは、紛れもないオスマン音楽。Segah旋法の微妙な陰影も素晴らしいです。アゼルバイジャンがオスマン帝国に入っていた時代にはこういう歌が歌われていたのでしょうか。明らかにムガームとは別物に聞こえますし、カシモフ父娘の歌唱では、このタイプは初めて聞くような気がしますが、どうでしょうか? もしかしたら、一般の日本人が江戸時代の長唄を歌うような感覚でしょうか?
解説にFrom the Album "Spirit Of the East - Vocal music by Piris Elyahu"  A Collaboration between the Israeli composer Piris Elyahu and the Azeri Vocalists Alim Qasimov & Ferqane Qasimova.とあります。この盤は未確認でした。イスラエルのPiris Elyahuが関わっているということで、オスマン的なのかも知れません。イスラエルも昔はオスマン領。ユダヤ系の作曲家もかなりいたようですから。

Duet Of Leili and Majnunzabol Segah Piris Elyahu Alim & Fergane Qasimov

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