トルクメンのドタール
ゼアミdeワールド108回目の放送、日曜夕方に終りました。16日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。昨日のネットラジオでの放送は、私の番組以外も全て音が割れていて残念でした。同じ曲のyoutubeを探すのは至難の業だと思いますので、ドタールの構造と演奏の感じが分かる映像を一本だけ上げておきます。トルクメン洋折衷の編成と混じり具合がまた面白いです。中間部では、ドタールソロの接写があります。 Dutar Performance - Turkmen Folk Music 今回から中央アジアに入ります。まずは一番西に位置するトルクメニスタンからです。中央アジアは歴史的な地域名称にトルキスタンという言い方があります。その名の通り、テュルク系民族の住む土地(ペルシア語で~スタン)という意味です。トルクメンの他には、ウズベキスタン、タジキスタン、カザフスタン、キルギスタンとありますが、中国側のウイグルも同じトルコ系なので、トルキスタンに入ります。この中でタジキスタンだけイラン系が中心で、他の国はトルコ系民族が中心です。この中でトルクメニスタンは、名前にトゥルクとはっきり民族名が入っている国です。 トルクメニスタンの伝統音楽では、吟遊詩人バフシーが有名でフランスのIneditやユネスコ、スイスのVDE-Galloなどから音源が色々ありましたが、やはり完売していて手元に残ってないため、次回にアップルミュージックからかけることにしまして、今回は手元に資料として残っているコンピレーションの中の音源をご紹介したいと思います。バフシーと言うのは、モンゴル語の仏教指導者バクシュに由来するそうです。録音は首都アシガバードなど本国でのものが多いのかと思ったら、イラン東部のホラサーン地方の北部にもトルクメン人は多く住んでいるので、そちらでの録音もイラン盤で多数出ていて、どうやらイラン側での録音の方が多そうです。バフシーの歌には、ホーミーに似た倍音唱法の一歩手前まで行っている例もあります。 まずは「シルクロード音楽の旅~天山からカフカースへ」という新世界レコードのコンピレーション盤から、アマン・アマンという曲をお聞き下さい。この盤は90年前後にフランスのシャンデュモンドから出ていた確か6枚組の「ソ連の音楽への旅」の音源からの抜粋だったと思います。10枚シリーズのアナログ盤が元ですが、その音源はソ連のメロディアのものです。 アマン・アマンという曲は、中央アジアの代表的な弦楽器ドタールの独奏です。ペルシア語の1,2,3に当たるイェク、ド、セのドが当たっている通り、わずか2弦しかない楽器ですが、棹が長いため、とても弦が2本しかないとは思えない技巧的な演奏を聞かせます。タールは以前言いましたように弦を意味するペルシア語です。因みに、3弦の代表格はセタールでイランの代表的な弦楽器の一つです。1弦のエクタールも、インド東部ベンガル地方の放浪の吟遊詩人バウルが使う弦楽器にこの名前があります。 <15 シルクロード音楽の旅~アマン・アマン 2分52秒> 次に入っているのは「お願い、愛しい人」と言う曲で、ドタールと擦弦のギジャクの伴奏で歌われます。 <16 シルクロード音楽の旅~お願い、愛しい人 3分47秒> この盤にはトルクメンの曲が3曲入っておりまして、最後はイルハンと言う曲です。イルハンと聞くと、トルコのサッカー選手を思い出される人もいらっしゃるかと思いますが、ここでは言うまでもなく、現在のイランを中心に、アムダリヤ川からイラク、アナトリア東部までを支配したモンゴル帝国を構成した地方政権のことです。イルハン国の首都は、現在のイラン北西部のタブリーズでした。このドタールとギジャクの二重奏曲は、マルコ・ポーロが元朝の中国から姫をお連れしたモンゴル最盛期のイル汗国の賛歌とのことです。 <17 シルクロード音楽の旅~イルハン 2分29秒> もう一枚ご紹介しますのは、スイスのVDE-Galloから出ている「中央アジアのドタールの名人」と言う盤で、この中にはウズベキスタンのブハラ、タジキスタンのパミール、イランのホラサーン地方などの音源と一緒にトルクメンのドタール演奏が6曲入っております。その中から3曲抜粋しましたが、いずれもイラン側での録音でした。まず最初はジバ・ギョゼルというドタール独奏曲で、演奏しているアク・モラード・チャリーエフと言う人は、録音された1978年当時トルクメンの首都のアシガバード高等音楽院のドタール教授とのことです。洗練された美しい演奏を聞かせています。 <15 中央アジアのドタールの名人 Ziba Gozel 5分17秒> もう一曲は、ナズリ・ヤールという曲で、和訳は「我が最愛の恋人よ」となっています。ドタール弾き語りがバハマン・ダリジェと言う人で、セカンド・ドタールも入った演奏です。モッラ・ナファスの詩に乗せたエルサリとサリル・サリク形式の曲と解説にありました。喉をひくつかせるような歌唱が独特です。 <17 中央アジアのドタールの名人 Nazli Yar 3分59秒> 最後に、やはりイランのテヘランでの録音になりますが、アク・モラード・チャーリエフのドタール独奏で、マカームという曲です。マカーム(旋法)が何かは不明です。末尾にエフと付く名前から推測するに本国の人だと思いますが、1978年当時はまだソ連時代ですから、トルクメン本国での録音が難しかったのでしょうか? この演奏も実に素晴らしいです。 この曲を聴きながら今回はお別れです。 ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週 <18 中央アジアのドタールの名人 Maqam 4分7秒>
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