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2018年5月 7日 (月)

コーカサスのラストにチェチェン、グルジア、イスラメイを再び

ゼアミdeワールド107回目の放送、日曜夕方に終りました。9日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。コーカサスの最後はサーカシアのイスラメイで締めましたが、時間切れで放送では解説を入れられませんでした。内容は以下の通りです。名残惜しいですが、次回からは中央アジアに向かいます。バタバタしていて、2日には収録速報をツイッターにアップするのを忘れておりましたm(. .)m

今回は予告しておりました通りコーカサスの番外編を考えております。あるいは総集編のように出来ればとも思いましたが、30分という限られた時間ですので、やはり個人的に思い入れの強い音楽になるかと思います。既にお気づきの方も多いかと思いますが、コーカサスからヴォルガ中流域は、個人的に一番調べてみたかったエリアで、そのまま中世のハザール帝国の版図と重なる辺りになります。ハザールは、支配層がユダヤ教に改宗したことで知られる「謎の国家」で、その遺民が東欧系ユダヤ人に多数流れ込んだとの説がありますが、その真偽はともかく、この地域で東西の民族や文化が複雑に入り混じっている様は、非常に興味深いものがあります。バルトークやコダーイは、自国ハンガリーやルーマニア周辺で盛んにフィールドワークを行い、東欧各地で収集した民謡を彼らの作品に反映させましたが、アジア系とも言われたりしたハンガリー民族のルーツを探ってヴォルガ中流域からウラル地方に行き着いた辺りから民族音楽研究が本格的に始まったように、ハンガリーは民族音楽研究において常に世界をリードする国でした。ソ連崩壊後、情報が溢れるように出てきた旧ソ連各地やコーカサスの辺りは、今でも民族音楽研究の豊富な素材を見出せるエリアだと思います。

前置きはこの位にしまして、まずはチェチェンの歌姫マッカ・サガイーポヴァの最近作Возьми мое сердце(ヴァズミ・マヨー・セルツェ 「私の心を奪う」)から、メロディの美しいサン・ドグ・ドゥ・ホと、レズギンカのリズムが漲るファン・バールガシュという2曲を続けてどうぞ。

<5 Макка Сагаипова / Сан дог ду хьо 3分40秒>
Макка Сагаипова - Сан са ду Хьо


<6 Макка Сагаипова / Хьан б1аьргаш 4分>
Макка Сагаипова - Хьан б1аьргаш ЧЕЧЕНСКИЕ ХИТЫ 2017!


チェチェンのマッカ・サガイーポヴァの代表曲の一つPretty Boyが、グルジアの女性3人組トリオ・マンディリの2015年のアルバムWith Loveのチェチヌリ・ポップリと題するチェチェンの曲メドレーの1分50秒辺りに出てきましたので、再度おかけしたいと思います。何だ、総集編はチェチェンとグルジアのアイドルばかりじゃないかと言われそうですが(笑)、チャーミングさだけでなく、彼女らのポリフォニーの歌声は本物です。YouTubeもその後何本か出ていました。

<9 Trio Mandili / With Love - Cechnuri Poppuri 3分12秒>
カルトゥリ・ポップリの方はありますが、チェチヌリ・ポップリはYouTubeがなさそうです。もしかしたら、マッカさんの歌が入っているからでしょうか?

トリオ・マンディリは2枚のアルバムを出していますが、両方の冒頭を飾っている曲はどちらも素晴らしいので再度おかけしたいと思います。2014年にyoutubeでいきなり300万件を越えるアクセスがあって大注目を浴びたグルジア民謡のAparekaからです。何気なく歩きながら3人で撮ったこの演奏の映像が、彼女らの生活を劇的に変えました。この曲が2015年のファースト・アルバムWith Loveの一曲目を飾っています。

<1 Trio Mandili / With Love - Apareka 2分38秒>
Trio Mandili Apareka


2017年リリースのEnguroからは、一曲目のErti Nakhvitと言う曲を12月3日の85回目で時間が足りず、かけられずでしたので、再度おかけします。コーカサス音楽らしい旋律美と躍動的なリズムが溢れた曲です。

<1 Trio Mandili / Enguro - Erti Nakhvit 1分56秒>
Trio Mandili - Erti nakhvit - CD-album ENGURO


続いて、最近まで聞いていたアゼルバイジャンの民謡ですが、キングの「カスピ海の旋律」にマメードヴァ・スムルード・モブルード・キジという女性歌手が歌うAzerbaijianという曲が入っておりますので、おかけしておきます。チェチェンやグルジアはコーカサス系ですから、並べて聞くとかなり印象が異なり、アゼルバイジャンの方はペルシア音楽に近く、コブシが豊かなことがはっきり聞き取れると思います。詩の内容は「幾多の山を越えてきた。鶴の眼のように澄み、美味な水をたたえた川を渡ってきた。遠近いろいろな所から聞こえてくる。アラス河のことが、アゼルバイジャンのことが。おお、アゼルバイジャンよ。私は友人。愛しい人の思い出に浸っている。~」このように叙事詩のような内容です。

<7 カスピ海の旋律~Azerbaijian 4分49秒>
また後日探してみます。

最後に、去年の7月に北コーカサスに入った際の最初にかけたサーカシアの音源ですが、メロディアの「サーカシアの伝統音楽アンソロジー」収録のオーソドックスなイスラメイの1965年の録音を再度かけてみたいと思います。バラキレフの超絶技巧ピアノ曲で一般に広く知られている曲名です。
レズギンカと類似の8分の6拍子のリズムがついていることもありますが、イスラメイ特有のノーブルなメロディラインが確かにあります。よくレズギンカで男性の踊りが鷲、女性の踊りが白鳥に喩えられますが、正にコーカサスの高い山を舞い降りてくる鷲のような雄々しく颯爽としたイメージの曲です。
このように7月に解説しておりました。
この曲を聴きながら今回はお別れです。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<Ислъамый (Исламей) 3分16秒>
Нальмэс - Исламей (2016)

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