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2018年8月27日 (月)

ロシアのモンゴル系の国、カルムイクの音楽

ゼアミdeワールド123回目の放送、日曜夕方に終りました。29日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。動画は、とりあえずカルムイクのドンブル(dombura or topshur)のデュエットを上げておきます。CDと同じ音源は無さそうです。ドンブル奏者は女性のみと解説にありましたが、これは男性が踊る時は、という注釈付きだったのかも知れません。

Kalmyk topshur dueling (Viktor Batyrovich Okchayev and Dmitriy Sharayev)


今回はカスピ海北西岸のヴォルガ河下流西部に位置するロシア連邦内のモンゴル系の国、カルムイクの音楽をご紹介します。ヨーロッパ唯一の仏教国です。モスクワからそれ程離れてないヨーロッパ・ロシアにありながら、モンゴル系でチベット仏教を信奉する仏教国の存在は、一般にはほとんど知られてないかも知れません。
カルムイク人(Kalmyk)とは、オイラート人のロシアでの呼称で、ではオイラートとは何かと言うと、モンゴル高原の西部から新疆ウイグルの北部にかけて居住する民族で、15世紀から18世紀にモンゴルと並ぶモンゴル高原の有力部族連合であった、オイラト族連合に属した諸部族の民族で、中華人民共和国、モンゴル国の一部になった後、モンゴル民族の一員とみなされていますが、元来はテュルク系だったようです。
この場所でのモンゴル系ということで、ダッタン人の末裔のイメージを強く持っていましたが、いわゆる「タタールのくびき」は、13世紀前半に始まったモンゴルのロシア侵攻と、それにつづくモンゴル人によるルーシ(現在のロシア・ウクライナ・ベラルーシ)支配を、ロシア側から表現した用語ですから、時期的にはずれます。

この場所に居住していることについて、ウィキペディアには以下のように解説がありました。
「1755年から1759年にかけて、清の乾隆帝がジュンガル・ホンタイジ国を征服、清・ジュンガル戦争が終結。疫病(天然痘)の蔓延でカルムイク人の父祖の地が空き地になる。1771年、ヴォルガ・カルムイク人の指導者ウバシは、父祖の地である東トルキスタンのイリ地方への帰還を決定したが、その年は暖冬で、ヴォルガ川が凍結しなかったためヴォルガ西岸にいた半数は取り残されることになった。この取り残された人々こそがカルムイキア自治共和国のカルムイキア人の祖先である。
また、このときみすみすカルムイク人たちを逃がしたロシア政府の辺境守備での無能振りと権威の失墜(ウラル・コサックの蜂起 (1772年))が、2年後の1773年にドン・コサックが蜂起したプガチョフの大乱を招くきっかけとなった。」
このようにありましたが、更に興味深い一例として
「ロシアの革命家、政治家レーニンは、父方の祖母を通じてカルムイク人の血を引いている。」
とありました。レーニン以外にも、作曲家ならグバイドゥーリナなど、タタールやカルムイクなどのアジア系の血を引くロシアの有名人は枚挙に暇ないと思います。

解説はこの位にしまして、ロシアのKailasから2001年に出ましたCD「Tsahan - Masterpieces of Kalmyk Traditional Music (1990-1997)」から聞いて行きたいと思います。解説が簡略なので、私の感想中心になります。

2曲目はTakin Biという弦楽器の独奏曲です。ドンブラをすぐさま思い出す音ですが、カルムイクではドンブルと言うようです。弾き手は女性のみだそうです。

<2 Tsahan - Masterpieces of Kalmyk Traditional Music  Takin Bi 2分10秒>

6曲目のTuula Biもドンブルの曲ですが、沖縄音階にも聞こえる旋律で、こんなメロディがカスピ海の北部から聞こえる不思議を感じます。ドンブルは女性が弾いて、男性が踊ることが多いようですが、この曲は「野うさぎの踊り」とのことです。

<6 Tsahan - Masterpieces of Kalmyk Traditional Music  Tuula Bi 3分40秒>

22曲目にも同じTuula Biが入っていて、違う演奏者ですので、比較でかけてみます。

<22 Tsahan - Masterpieces of Kalmyk Traditional Music  Tuula Bi 1分46秒>

9曲目のTohrun Aisという曲は、南隣のコーカサス各地で幾つか見られた「鶴」をテーマにした歌のカルムイク版で、ドンブルの弾き語りです。

<9 Tsahan - Masterpieces of Kalmyk Traditional Music  Tohrun Ais 1分36秒>

モンゴルにオルティンドーという「長い歌」と訳される歌唱のジャンルがありまして、その定義は「非拍節的な自由リズムにもとづく旋律で歌い演奏される」となります。日本の追分や馬子唄のようなコブシを利かせたフリーリズムの歌ですが、同じモンゴル系ということで、カルムイクにも「長い歌」の伝統があり、この盤にも何曲か入っています。モンゴルのオルティンドーのような高度な技術ではないようですが、ロシアの茫洋とした本物の民謡との中間のようにも聞こえて、興味深いものがあります。
10曲目のAlta Gidg Hazrはその「長い歌」で、ラマ教(チベット仏教)関連の民謡のようです。

<10 Tsahan - Masterpieces of Kalmyk Traditional Music  Alta Gidg Hazr 3分35秒>

21曲目の「長い歌」Tsahan Tolhata Bornは、この盤のタイトルのツァハンという語が入っている曲で、その意味は不明ですが、正にロシアの女性の地声民謡と、モンゴルのオルティンドーのあいのこのようにも聞こえます。「幸運な歌」とだけ解説がありました。

<21 Tsahan - Masterpieces of Kalmyk Traditional Music  Tsahan Tolhata Born 4分37秒>

では最後に、25曲目のドンブル弾き語りのAakin Kkukn Kotushを聴きながら今回はお別れです。3分過ぎてから歌が出てきます。踊り手を囃し立てる賑やかな曲です。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<25 Tsahan - Masterpieces of Kalmyk Traditional Music  Aakin Kkukn Kotush 6分37秒>

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