ユルチエヴァのモナージャト
ゼアミdeワールド134回目の放送、日曜夕方に終りました。14日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。月曜はグルジアのルスタヴィの松山公演を見に行っておりまして、ブログアップはお休みしました。今日の動画ですが、ユルチエヴァのムナージャトだけライブ版で見つかりました。ドタール独奏は、また後日探してみます。
ウズベキスタンの音楽の3回目になります。今回は前回かけられなかった音源からご紹介したいと思います。
まず曲名で気になっていた、サマルカンドとフェルガナという地名を冠したUshshaq-i SamarqandとFerghana suwaraの2曲です。ウズベク中部のサマルカンドと、東部のキルギスと入り組んだ地方にあるフェルガナでは、音楽にどんな違いがあるかのサンプルになるかと思いました。
フェルガナ生まれの現代ウズベクのディーヴァ、モナージャト・ユルチエヴァですが、Ferghana suwaraを歌っているマアムール・ジャン・ウザコフは、ユルチエヴァの師匠のシャヴカット・ミルザエヴの父のムハンマド・ジャン・ミルザエヴが弾くカシュガルのルバーブなどの伴奏で歌うことが多かったようです。私は両方聞いているので、確かに通じるものがあるように感じました。ウッシャークはウズベクの旋法体系のシャシュマカームの一つかと思いますが、スワラと言うのは、おそらく詩の形式ではと思いました。ペルシア語の詩の明るいウッシャーク・サマルカンドと、どこか憂いのあるフェルガナ・スワラ、どちらもウズベクらしい美しさがあります。ウズベク語はテュルク系ですが、この辺りは古代にはイラン系のソグド人が活躍した地でもありますので、アム川とシル川の間のトランスオクシアナ(これはヨーロッパからの呼称で、アラビア語ではマー・ワラー・アンナフル)の辺りは今でもイラン系のタジク語がかなり使われています。
では2曲続けておかけしますが、間でFerghana suwaraの曲名だけ再度入れます。
<11 Ushshaq-i Samarqand/ザイナブ・パールヴァーノヴァの歌と民族楽団 5分3秒>
Ushshaq-i Samarqandは1951から60年頃の録音でした。次はFerghana suwaraで、1958年から62年の間の録音とのことです。
<12 Ferghana suwara/マアムール・ジャン・ウザコフの歌と民族楽団 4分59秒>
では、今回はモナージャト・ユルチエヴァの代表的な一曲「モナージャト」をおかけしておきたいと思います。95年に出て、2008年に再発されたオコラからの彼女のソロ・アルバムについて、音楽之友社から2002年に出た「世界の民族音楽ディスクガイド」に書いた拙稿を読み上げます。
ウズベキスタンの歌姫(1960年生まれ)の記念すべきオコラ盤。これぞウズベクというべき悠々たるテンポでしっとり歌われる彼女の愛称と同じ名のMonajat(祈りの意)は特に絶品。元々器楽演奏されていたスーフィーの祈りの旋律だそうだが、ウズベクのモスクの青が眼前に浮かぶような、チムール時代にトリップしてしまいそうな香り高い感動的な名曲だ。ナイーヴで清々しく、既に風格と上品さを備えたフェルガナ-タシケント派のスター歌手として知られ、世紀に一人の逸材とまで言われている。
<1 Monajat Yultchieva / Ouzbekistan ~Monajat 8分49秒>
''Munojot''
ユルチエヴァの名唱は、他の音源と並べて次回以降も聞いて行きたいと思います。歌が続きますので、最後に器楽演奏を入れたいと思います。スイスVDE-Galloの「中央アジアのドタールの名手たち」に、ウズベクの音源では、「ブハラのドタール」としてアブドラヒム・ハミードフの演奏が2曲入っております。仏Ocoraから出ていた廃盤アイテム「ドタールの芸術」に収録されていた名手で、イランMahoor Institutの「トランスオクシアナのドタール」で超絶技巧を聞かせた女流名人ゴザル・ムミノヴァの師匠です。ブハラのシャシュマカームの古典曲ギリャと、バヤト・カラ・キョズの2曲ですが、後者はカスピ海東北部のホラズムの伝統的都市音楽のレパートリーに属し、アゼルバイジャンから伝わったそうです。時間までこれらの曲を聞きながら今回はお別れです。2曲目は、入らなかったら、またの機会に回します。
ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週
<1 ブハラのドタール ギリャ 5分1秒>
<2 ブハラのドタール バヤト・カラ・キョズ 3分23秒>
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