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2018年12月

2018年12月31日 (月)

大晦日のベートーヴェンSQとクレズマー

ゼアミdeワールド141回目の放送、日曜夕方に終りました。放送されるのは30日の夕方のみで再放送は無しと言うことですので、去年と同じく、今日おかけするのは、交響曲第九番に近い時期に作曲されて、似た感じのテーマ性を感じさせる後期の弦楽四重奏曲から第15番の第3楽章と第5楽章です。民族音楽を中心に聞きながらも、バッハの音楽やベートーヴェンの後期弦楽四重奏曲などは、昔から変わらず聞き続けている西洋のクラシック音楽です。ヌーヴェルヴァーグの監督J.L.ゴダールの映画にも絶妙に引用されていたことは、好事家の方はよくご存知だと思います。
正月の間はブログアップは飛び飛びになるか、出来ないかも知れません。放送原稿の末にも書いておりますが、皆様どうぞ良いお年をお迎え下さい。来年も宜しくお願い致します。

この15番のカルテットは、全部で5楽章から成っていますが、その中でゆったりとした第3楽章は白眉の部分とされています。第九のラストを飾る歓喜の合唱と共通するものを感じる、ベートーヴェン晩年の深い音楽です。

以下ウィキペディアの解説を読み上げてみます。

第3楽章 "Heiliger Dankgesang eines Genesenen an die Gottheit, in der lydischen Tonart" Molto Adagio - Andante
ヘ調のリディア旋法、五部形式
「リディア旋法による、病より癒えたる者の神への聖なる感謝の歌」と題された、最も長い楽章。全体のクライマックスに位置している。ゆっくりとしたヘ調の教会旋法による部分と、より速めの「新しい力を得た」ニ長調の部分の交替で構成される。この楽章は、ベートーヴェンが恐れていた重病から快復した後に作曲されたため、上記のような題名が付された。

<3 Beethoven String Quartet No.15 In A Minor, Op.132 - 3. Molto Adagio 16分18秒>
Beethoven: String Quartet No.15 in A minor, Op.132 - 3. Canzona di ringraziamento offerta alla...


続きまして4楽章を飛ばして終楽章の第5楽章ですが、「失われた時を求めて」で知られるフランスの小説家マルセル・プルーストが、「ベートーヴェンでは、後期のピアノソナタや弦楽四重奏曲第15番の最終楽章を好み、真夜中に自室に楽団を呼んで演奏させたこともある」というエピソードを読んだことがあります。当時の有名なカペー弦楽四重奏団だったのかも知れません。この楽章の主題にはもの凄い秘話がありまして、実は第九の終楽章の主題として予定されていたそうです。それがあの合唱付に差し替えられました。もしこの曲が採用されていたら、憂いを含みながら素晴らしく情熱的で力動感溢れる名旋律ではあっても、器楽曲ですから、年末に第九が恒例になるようなことはなかったのではと思います。去年はブダペストSQでしたが、今年はハーゲン弦楽四重奏団の演奏でおかけします。古風で芳醇なブダペストSQとは一味違って、現在の弦楽四重奏団の最高峰とも言われるカルテットの名演です。

<5 Beethoven String Quartet No.15 In A Minor, Op.132 - 5. Allegro Appassionato 6分33秒>
Beethoven: String Quartet No.15 in A minor, Op.132 - 5. Allegro appassionato


では、最後に前回かけられなかったクレズマー・コンサーヴァトリー・バンドの87年に出たOy Chanukah!から、冒頭のA Freylekhe Nakht in Gan Eydnから始めて、時間までこの盤から続けたいと思います。今年のハヌカーは、12月2日から10日まででしたから、先週には既に終わっていました。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。皆様どうぞ良いお年をお迎え下さい。

<1 Klezmer Coservatory Band / Oy Chanukah! ~A Freylekhe Nakht in Gan Eydn 1分48秒>
A Freylekhe Nakht In Gan Eydn

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2018年12月27日 (木)

Itzhak Perlman plays Klezmer

このIn the Fiddler's Houseの映像をVHSで見たのは95年頃で、当時は東欧系ユダヤのクレズマーが非常に熱かったです。正にビデオが擦り切れる程見た懐かしい映像です。イスラエルの名ヴァイオリニスト、イツァーク・パールマンがリヴァイヴァル・クレズマーの代表的グループと次々セッションしています。私は特に最初のブレイヴ・オールド・ワールドのメンバーの妙技にも大変驚いたものです。パールマンもIn the Fiddler's Houseに先立って1987年に「playsユダヤ・メロディー」を同じEMIから出していたとは言え、こんなに合わせられるものだろうかとびっくり仰天でした。最初がブレイヴ・オールド・ワールド、4分位からがクレズマー・コンサーヴァトリー・バンド、6分前からがクレズマティクスです。クレズマティクスは、その後各メンバーのソロ・ワークでも大変話題になりました。先日の放送でかけたのは、クレズマー・コンサーヴァトリー・バンド(KCB)のオイ・ハヌカーでしたが、解説にもあるように、KCBの演奏はまだ20世紀初頭の東欧にクレズマー楽師達がいた頃の古録音の演奏に近いと思います。例えば、30日の放送用にかけた曲A Freylekhe Nakht in Gan Eydnは、1926年のHarry Kandel楽団の録音をそっくり再現している感じです。

Itzhak Perlman plays Klezmer

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2018年12月26日 (水)

シリア教会のハレルヤ

古シリア教会の聖歌 アレルヤ、アレルヤについて、「古シリア教会の聖歌で、最も早くからキリスト教化された地方ですから、ユダヤ教の流れも汲む古い典礼のスタイルが残っているようです。言葉はイエス・キリスト自身が話したと伝えられる古いシリア語の一種のアラム語が現在も主に使われています。」と解説していましたが、今日の一本目は、大分前にアップしたことのある、マリー・ケイルーズ修道女の歌うアレルヤ(ハレルヤ)と同じ曲のようです。Harmonia Mundiからの「ビザンティンの聖歌  受難と復活」の冒頭の非常に印象的な曲です。2本目がその音源です。3本目は「アラム語のシリア音楽」とだけ出ていますが、アラビア語ではなくアラム語ですから、キリスト教の音楽と見て間違いないでしょう。

Alleluia

Sister Marie Keyrouz - Alleluia

Syriac Music (Aramaic Chants)

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2018年12月24日 (月)

クリスマスとハヌカーの音楽

ゼアミdeワールド140回目の放送、日曜夕方に終りました。26日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。今日は取り合えず、ウィーン少年合唱団とジャン・ピアースのマ・オズ・ツールのみ上げました。

ウズベキスタンの音楽巡りの途中ですが、放送されるのが23日と26日ということで、今回はクリスマス特集、その次の30日は2日の再放送枠が無しですので、第九に類似の締めくくりの音楽、新年の最初は6日と9日ですから、正月関連の純邦楽を予定しております。このパターンが、この番組を始めてから年末年始の恒例になっております。

2年前にもかけましたが、ドイツ・グラモフォンから出ていた「聖地のクリスマス音楽」から、「ベツレヘム生誕教会の鐘」をおかけします。キリスト生誕の地とされるベツレヘムのギリシア正教会での録音で、東方的な渋みや深みを感じさせる音です。

<22 聖地のクリスマス音楽 ~ ベツレヘム生誕教会の鐘 1分15秒>

2~4曲目はローマ・カトリック教会の聖歌で、女声によって歌われるグレゴリオ聖歌の一種でラテン語で歌われています。この盤の中では唯一の西方教会の音楽で、異色の音源になっていると思います。その中から夜中のミサ:アレルヤ唱をどうぞ。

<3 聖地のクリスマス音楽 ~ ローマ・カトリック教会の聖歌 夜中のミサ:アレルヤ唱 2分>

この盤からもう一曲、古シリア教会の聖歌で、最も早くからキリスト教化された地方ですから、ユダヤ教の流れも汲む古い典礼のスタイルが残っているようです。言葉はイエス・キリスト自身が話したと伝えられる古いシリア語の一種のアラム語が現在も主に使われています。

<18 聖地のクリスマス音楽 ~古シリア教会の聖歌 アレルヤ、アレルヤ 2分20秒>

このアルバムに収録されているのは、イスラエルのエルサレムやベツレヘムでの東方諸教会の音源で、この地で2000年前にキリスト教が生まれた頃に近い響きを持っていると思われる音楽が中心です。2年前には、この盤からキリスト教の東方的ルーツを訪ねた、ギリシア正教会、エチオピア教会、エジプトのコプト教会、シリア教会、アルメニア教会、レバノンのマロン派の音源を中心にご紹介しました。今回は一般にもよく知られているクリスマス・キャロルもおかけして、その後でユダヤで同じ時期に祝われるハヌカー関連の音源もご紹介します。

よく知られるクリスマス・ソング2曲をウィーン少年合唱団の歌唱でどうぞ。最初がドイツ民謡「もみの木」で、2曲目は1818年にフランツ・グルーバーが作曲した「きよしこの夜」です。

<22 ウィーン少年合唱団ベスト もみの木 1分38秒>
O Tannenbaum by the Vienna Choir Boys


<23 ウィーン少年合唱団ベスト きよしこの夜 2分40秒>
Stille Nacht (Silent Night )


次にユダヤのハヌカーですが、ユダヤの世界にはキリストの生誕を祝うクリスマスというのは無いのですが、まるで対抗するかのようにほぼ同時期にハヌカーという祭りがあります。ハヌカーはユダヤ教の年中行事の一つで、紀元前168年~紀元前141年のマカバイ戦争時のエルサレム神殿の奪回を記念する「宮清めの祭り」です。

9本の燭台ハヌキヤーに一日一つずつ点灯した後、マーオーズ・ツール ma‘oz tzur (『砦の岩よ』)という、13世紀ドイツに起源を持つ賛歌などが歌われます。そのマーオーズ・ツールを、往年の名テノール歌手ジャン・ピアースの歌唱と合唱団でおかけします。彼はユダヤ教の会堂、シナゴーグの合唱長カントールでもありました。

<15 Jan Peerce / The Art of the Cantor ~Mo Os Tzur 6分22秒>
Jan Peerce - Mo'os Tzur and Blessings for Chanukah


15世紀のレコンキスタでスペインから追放され、北アフリカやバルカン半島など多くは旧オスマン帝国内に離散したスペイン系ユダヤ人は、セファルディーと呼ばれますが、彼らの民謡を演奏するグループVoice of the Turtleは「ハヌカー・コンサート」という盤が最初に出ました。その中からハヌカーという曲をどうぞ。

<10 Voice of the Turtle / Circle of Fire ~Hanuka 3分10秒>

ハヌカーの歌には、東欧系ユダヤのイディッシュ語ではドレイドル、ヘブライ語でスヴィヴォンという木製の独楽(コマ)についての歌がよく知られていますが、有名な旋律の入った盤がすぐに見当たりませんでした。このコマには四面に反時計回りに、ヘブライ文字のヌン、ギメル、ヘー、シンの文字が描かれていて、イディッシュ語の「nisht(ドイツ語: nichts 何もない)、gants(ganz 全部)、halb(halb 半分)、shtel(einstellen 置く)」の頭文字ですが、しばしばヘブライ語で「ネス・ガドール・ハヤ・シャム、そこで偉大な奇跡が起こった」の頭文字と解釈されています。

このドレイドルについては、東欧系ユダヤの祝祭音楽の一種であるクレズマーでよく演奏されています。クレズマー・リヴァイヴァルの中心的グループであるクレズマー・コンサーヴァトリー・バンドの87年に出たOy Chanukah!から、ドレイドル・ソングをおかけして、その後は時間までこの盤の冒頭から続けたいと思います。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<19 Klezmer Coservatory Band / Oy Chanukah!  ~Dreydl Song 3分25秒>
<1 Klezmer Coservatory Band / Oy Chanukah!  ~A Freylekhe Nakht in Gan Eydn 1分48秒>

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2018年12月21日 (金)

ナアトとカランダル

預言者ムハンマド賛歌のナアトと、イスラム神秘主義のカランダルで検索していると、ナアトではトルコのキャーニ・カラジャ、ヌスラット・ファテ・アリ・ハーンがよく歌っていたDama Dam Mast Qalandarでは、最近の若手女性デュオのNooran Sistersが特に目に留まりました。キャーニ・カラジャは2001年7月27日浜離宮朝日ホールと7月28日東京ジャーミ文化センターの両方を聞きに行きました。オスマン音楽のスタイルの伴奏で、たっぷり名唱を堪能したことをよく覚えています。97年のヌスラットの没後はカッワーリを余り聞いていなかったのですが、知らない内にこんな強力な女性デュオが、しかもパキスタン側ではなくインドのパンジャブから登場していたとは、新鮮な驚きでした。

Kâni Karaca - Na't-ı Mevlânâ (Itrî)

Dama Dam Mast Qalandar (sufi kalam)

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2018年12月19日 (水)

ブハラ アジアの音楽の十字路 ~イスラーム

16日の放送でかけましたスミソニアン・フォークウェイズのBukhara: Musical Crossroads of Asiaから、今日はイスラームの方の音源をご紹介します。

まずは祈りへの召喚の朗誦アザーンです。アザーンもイスラム圏の国によって節が少なからず違っています。ビクターJVCワールド・サウンズの一枚、「偉大なるクルアーン」はトルコの朗誦でしたが、この盤も見事なアザーンの四重唱から始まっていました。このアザーンをコーラン朗誦と間違える方もいたようですが、コーラン朗誦は独唱で、2曲目からです。コーランは、アラビア語ではクルアーンです。

<7 Bukhara: Musical Crossroads of Asia ~Azan 1分55秒>
Azan


続いてイスラム神秘主義(スーフィー)の方のナアトですが、パキスタンなどの宗教歌謡カッワーリでは、預言者ムハンマドへの賛歌として知られていますが、ブハラでも同じでした。神への賛歌をハムド、ムハンマド賛をナアト、スーフィー聖者賛がマンカバトでしたから、Dama Dam Mast Qalandarはマンカバトでしょう。

<8 Bukhara: Musical Crossroads of Asia ~Na't 3分21秒>
Na't


次のカランダルもスーフィーの歌で、wandering dervish(彷徨う托鉢僧)によって歌われてきたそうです。このタイトルもヌスラット・ファテ・アリ・ハーンなどのカッワーリでよく目にしますが、あのDama Dam Mast Qalandarという曲はアミール・フスローが詩を書いていて、スーフィー聖者Shahbaz Qalandarを讃える歌だったと思います。ですので、このブハラ版は特定の人名ではない、オリジナルのカランダルということになるでしょうか。

<12 Bukhara: Musical Crossroads of Asia ~Qalandar 4分6秒>
Qalandar


この盤の後半にユダヤ教とイスラム教の音源がまとめて入っていますが、イスラムのアザーンとナアトがまず入って、その後ユダヤ教の宗教歌3曲が続き、両方の神秘主義の歌がイスラム、ユダヤの順に入っていますが、曲順には編集者の意図が窺われます。

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2018年12月17日 (月)

ブハラのユダヤ教とイスラーム

ゼアミdeワールド139回目の放送、日曜夕方に終りました。19日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。次回はクリスマスとハヌカーの特集を考えておりますので、今日はとりあえずユダヤ教の音源の方を上げておきました。

ウズベキスタンの音楽の7回目になります。今回は1991年にアメリカのSmithsonian Folkwaysから出ました「ブハラ:アジアの音楽の十字路  Bukhara: Musical Crossroads of Asia」の音源をご紹介したいと思います。まずこの盤について音楽之友社から2002年に出た「世界の民族音楽ディスクガイド」に書いた拙稿を読み上げてみます。何度も言いましたが、この本は10年ほど前に今治市立中央図書館に寄贈してありますので、よろしければ是非ご覧下さい。

古都ブハラは古くから様々な文化の十字路だった。仏教、イスラム、ヒンドゥー、ゾロアスター教、ネストリウス派キリスト教、東方系ユダヤのそれぞれに属する人々がこの町にコミュニティを作って暮らしていたと言うが、この盤は1990年のこの町の音の記録である。素朴なウズベクの民謡や、イスラム宗教歌、ユダヤ宗教歌が主な収録曲。シャシュマカームの重要な担い手がいたユダヤ系住民はウズベクの独立後ほとんど移住してしまったそうだ。正にコミュニティ崩壊直前の貴重な記録だろう。同レーベルからはシャシュマカーム・アンサンブルというニューヨークに移住したユダヤ系グループの盤もあるが、こちらもユダヤ系の貴重音源がひしめいている。

タイトルを見ただけで分かるユダヤ教の宗教歌が4曲と、イスラムの宗教歌が3曲入っておりまして、特にユダヤ教の方は貴重音源だと思います。何故タイトルだけで分かるかと言いますと、名高い曲名がヘブライ語とアラビア語でそれぞれ書かれているからですが、ユダヤ教の方はおそらく現地では現在聞くことが難しくなっているかも知れない古い節回しを聞けて、ウズベク以外の他のユダヤコミュニティーの同じ祈祷文の朗誦と比較できることも大きなポイントです。セム一神教の初代と三代目の音源が入っているので、二代目であるキリスト教の音源も聞いてみたいものですが、さすがにネストリウス派キリスト教や、更には仏教、ゾロアスター教の音源まではありませんでした。

まずはユダヤ教のヤー・リボン・オラムですが、これはヘブライ語ではなくアラム語という別なセム系の言語で、「この世界の主」を意味します。旧約聖書の大部分はヘブライ語で書かれていますが、イエス・キリストの頃にはアラム語の方が主に使われるようになっていたと言われています。Yah Ribbon Olamは、キリスト教で言えば頌栄に当たるでしょうか? 重要な神への賛美の歌です。東欧系ユダヤのハシディック・ソングなどでは、色々な旋律がつけて歌われています。祈祷文朗誦そのものですが、これはそのブハラ版です。

<9 Bukhara: Musical Crossroads of Asia ~Yah Ribbon Olam 1分32秒>
Yah Ribbon Olam


次はユダヤ教の聖典トーラー朗誦です。トーラーとは、旧約聖書の最初の5書を指しますが、毎年この5書を輪読しています。シャバト(安息日)に読まれるトーラーの朗誦はなかなか録音許可が出ないようなので、特に貴重音源だと思います。同じトーラーを読んでもコミュニティーによって節が様々で、これはそのブハラ版ということになります。ここで読まれているのは、トーラーの最初の書である創世記の41章11~21節です。

<10 Bukhara: Musical Crossroads of Asia ~Reading From Torah 2分54秒>
Reading from the Torah


次はシャバト(安息日)の祈り、シャローム・アレイヘムとキドゥーシュです。ヘブライ語のシャローム・アレイヘムは「あなたの上に平安を」と直訳できる祈祷文ですが、日常の挨拶の言葉にもなっています。アラビア語で「こんにちわ」は、アッサラーム・アレイクムですから、同じセム系の言葉と言うことで、いかに似ているかよく分かるかと思います。キドゥーシュは、シャバトに飲まれる葡萄酒を讃える歌です。

<11 Bukhara: Musical Crossroads of Asia ~Shalom Aleichem And Kiddush 3分2秒>
Shalom Aleichem and Kiddush


最後はこの盤のラストを飾っているゾハルですが、これはユダヤ神秘主義カバラーの聖典ゾハルとすぐに分かるタイトルです。東欧などヨーロッパの方だけでなく、中央アジアのユダヤコミュニティーにも伝わっていたことがこの音源から分かります。

<13 Bukhara: Musical Crossroads of Asia ~Zohar 2分38秒>
Excerpt from the Zohar


続いてイスラム教の方ですが、祈りへの召喚の朗誦アザーンです。アザーンもイスラム圏の国によって節が少なからず違っています。

<7 Bukhara: Musical Crossroads of Asia ~Azan 1分55秒>

続いてイスラム神秘主義(スーフィー)の方のナアトですが、パキスタンなどの宗教歌謡カッワーリでは、預言者ムハンマドへの賛歌として知られていますが、ブハラでも同じでした。

<8 Bukhara: Musical Crossroads of Asia ~Na't 3分21秒>

次のカランダルもスーフィーの歌で、wandering dervish(彷徨う托鉢僧)によって歌われてきたそうです。このタイトルもヌスラット・ファテ・アリ・ハーンなどのカッワーリでよく目にします。
この盤の後半にユダヤ教とイスラム教の音源がまとめて入っていますが、イスラムのアザーンとナアトがまず入って、その後ユダヤ教の宗教歌3曲が続き、両方の神秘主義の歌がイスラム、ユダヤの順に入っていますが、曲順には編集者の意図が窺われます。

<12 Bukhara: Musical Crossroads of Asia ~Qalandar 4分6秒>

では、最後にこの盤の前半の3曲目、Songs From The Sozanda Repertoryを時間まで聞きながら今回はお別れです。セム一神教の初代ユダヤ教と三代目イスラームの、男性の朗誦のみの宗教歌とはがらっと変わりまして、枠太鼓ダイェラを叩きながら女性が賑やかに歌っています。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<1 Bukhara: Musical Crossroads of Asia ~Songs From The Sozanda Repertory 13分32秒 抜粋>
Songs from the Sozanda Repertory

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2018年12月13日 (木)

Ilyas Malayev シャシュマカームとシタール

Ilyas Malayevはウズベクの古都ブハラのユダヤ系音楽家でシャシュマカームの演奏者、と思っていましたが、北インドのシタールを演奏している映像が結構あります。歌はシャシュマカームだと思いますので、同じ映像の別なシーンでシタールを弾いているのも彼だと思いますが、少し若くも見えるので、もしかして同姓同名の人でしょうか? あるいは、シャシュマカームとシタールの両方の演奏家ということでしょうか。Shanachie盤のジャケットで彼が構えていたウズベクのタンブールは、イランのセタールと並んでシタールの親に当たると思うので、イランのサントゥール奏者がピアノに関心を持って弾くのと同じことかも知れません。それに先日のイツハコヴァが歌っていたQashqarcha-ye Mogholcha-ye Dogahの詩が、北インド古典音楽の祖であるアミール・フスローだったこともありますし、現在の音楽交流の一ページというだけのことでしょうか。

Ilyas Malayev and Muhabbat Shamayeva Tajikistan Concert '89 6/6

Ilyas Malayev Singing & Interview

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2018年12月12日 (水)

Barno Itzhakova 70歳記念ライブ

ブハラ系ユダヤ人の名女性歌手バルノ・イシャコヴァ(1927-2001)のローマ字表記は、Barno Itzhakovaらしいことが分かりました。ユダヤの族長アブラハムの息子イサクの、原語に近い音のイツハークの女性名と思われますので、イシャコヴァとかイスハコヴァより、イツハコヴァの方が音と意味共に近いと思いました。彼女はシャシュマカームの名歌手で、動画にはタジクと出ていることが多いようですが、これは国家としてのタジクではなく、トランスオクシアナで話されるブハラ語(ヘブライ語の痕跡を残したタジク・ペルシア語)で歌われているのを指していると思います。移住先のイスラエルでのライブなのでしょう。キパを被った男性が多く、ロシア語とヘブライ語が半々くらいで聞こえます。

70. Birthday of Barno Itzhakova / Барно Исхакова 70-летие (1/4)

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2018年12月10日 (月)

ブハラ系ユダヤ人音楽家1

ゼアミdeワールド138回目の放送、日曜夕方に終りました。12日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。イシャコヴァの名ですが、キリル文字の綴りから判断すると、イスハコヴァと発音するのが近そうです。オコラ盤の曲は見つかっておりませんが、何とこの人のムナージャトがありましたので、今日はこちらを上げておきました。是非ユルチエヴァの歌唱と比較してみて下さい。

MUNOJOT Barno Iskhakova Uzbek Music O'zbek Барно Исхакова Муножот


ウズベキスタンの音楽の6回目になります。今回は前回と同じオコラからの2枚組「中央アジア 古典音楽の伝統」を中心に、ユダヤ系音楽家の演奏を取り上げたいと思います。中央アジアのウズベクとユダヤと言うのは、一般にはなかなか結び付かないかも知れませんが、ブハラ系ユダヤ人は古代パレスチナから離散したユダヤ人の中でも、最も古いグループの一つと言われています。第2神殿時代の1世紀のローマ帝国からの離散より500年も前の、第1神殿時代の紀元前6世紀のバビロン捕囚からの解放以後、カナンの地に戻らなかった、いわゆる「イスラエルの失われた10支族」の一つと自称してきたそうです。彼らブハラ系ユダヤ人はウズベクの古典音楽シャシュマカームの重要な担い手であったようで、CDもかなりあります。イラン、イラク、イエメン、シリア、クルドなど中東各地に離散したグループと共に、ヘブライ語で東方系を意味するミズラヒームと呼ばれまして、東欧系ユダヤのアシュケナジーム、スペイン系ユダヤのセファルディームと共に、大きな3つのグループの一つになります。後者2つは、それぞれの地域に回った際に取り上げます。
まずはオコラの2枚組「中央アジア 古典音楽の伝統」には、大御所の女性歌手バルノ・イシャコヴァの歌唱が3曲入っておりますので、その中からChahargahをおかけします。格調高い名唱を聞かせています。ダイェラを叩きながら歌っているのがバルノ・イシャコヴァ、ラバーブがナルカラーイェフ、ドタールがホダーヴェルディエフです。
(放送では、ラバーブとあるのが擦弦楽器だと思うので、おそらくギジャクでしょうと訂正したつもりでしたが、その際に間違えて撥弦と言ってしまっておりました)

<1-6 Asie centrale - Traditions classiques ~Chahargah 7分58秒>

続けてQashqarcha-ye Mogholcha-ye Dogahという曲もイシャコヴァの歌唱ですが、ウイグル西部のカシュガルと、アフガニスタンのヘラート州に定住するモンゴル系民族のモゴールを思わせるタイトルが気になります。モゴールチャと言うのは4分の4のリズムを指し、詩は何と、シタールやタブラを北インドにもたらし、カッワーリの創始者でもある中世インドの音楽家アミール・ホスロー作とのことです。チャハールガーと同じ3人による演奏です。

<1-7 Asie centrale - Traditions classiques ~Qashqarcha-ye Mogholcha-ye Dogah 4分31秒>

ウズベクのユダヤ系音楽家は他にもイリアス・マラーイェフの演奏がこの2枚組に入っていますが、この人の音源はShanachieのソロアルバムAt the Bazaar of Loveの方がいいと思いますので、そちらからおかけします。ウズベク本国での政情不安から、バルノ・イシャコヴァはイスラエルへ、イリアス・マラーイェフや米Smithsonian Folkways盤のあるブハラ・ユダヤ・アンサンブル・シャシュマカームはニューヨークへ移住しています。ジャケットでタンブールを構えている1936年生まれのイリアス・マラーイェフがリーダーで、ソ連崩壊後の1992年にニューヨークに移住し新天地で活動しているようです。
2分弱のTasnif-I Buzrukから、11分を越えるSaraxbarにかけて、NYで大らかな中央アジア音楽をたっぷりと奏でています。少しカッワーリに似て聞こえるようにも思います。Timeless Central Asian Maqam Musicという形容がぴったりです。更にもう一曲かける予定ですが、時間までどうぞ。

<1 Ilyas Malayev Ensemble / At the Bazaar of Love ~Tasnif-I Buzruk 1分42秒>

<2 Ilyas Malayev Ensemble / At the Bazaar of Love ~Saraxbar 11分10秒 抜粋>
Ilyas Malayev with group

Ilyas Malayevも同じ曲はなかなか出てきそうにありませんので他の曲ですが、これはおそらくウズベク時代の映像でしょう。

では、最後にオコラ2枚組に入っているバルノ・イシャコヴァのもう一曲、Dar Kucha Budamを時間まで聞きながら今回はお別れです。彼女が一人でダイェラを叩き歌っています。オコラ2枚組のラストを飾っているこの曲は、ブハラ系ユダヤのドリンキング・ソングとのことです。歌詞はタジク語の大衆詩とありますが、ブハラ語というヘブライ語の痕跡を残したタジク・ペルシア語なのかも知れません。ブハラのユダヤ宗教歌の音源も米Smithsonian Folkwaysの「ブハラ アジアの音楽の十字路」には入っていますので、また後日おかけしたいと思います。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<2-15 Asie centrale - Traditions classiques ~Dar Kucha Budam 3分47秒>

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2018年12月 5日 (水)

Turgun AlimatovのSegah

ウズベク古典音楽の巨匠トゥルグン・アリマトフのタンブールによるSegahの独奏、ありました! 彼の息子のヴァリシェル・アリマトフ氏のアカウントにアップされていました。音色だけでなく装飾の付け方まで北インドのサロッドにそっくりに聞こえますが、いかがでしょうか。あの細身の楽器から出ている音とは思えません。アリマトフによると、トランスオクシアナのセガーは、イランのセガーとは関係がないそうです。日本の琵琶に似た表現もあります。オコラ2枚組冒頭のNowruz-e Ajamは、トゥルグン・アリマトフのサトとアリシェル・アリマトフのタンブールの二重奏とありましたが、ヴァリシェル・アリマトフの間違いでしょうか? 旋法名の表記ですが、最後のHを発音して、セガーハ、セガーフ、セゴーフなど、色々な言い方をされていて、カタカナ表記は定まりません。

Turgun Alimatov

おまけでユルチエヴァの歌唱です。割と若い頃でしょうか。映像は悪いですが、非常に生々しく素晴らしい演奏です。

MONAJAT YULTCHIEVA

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2018年12月 3日 (月)

Asie centrale - Traditions classique (Ocora)

ゼアミdeワールド137回目の放送、日曜夕方に終りました。5日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。放送では間違えてウズベクの7回目と言っていたようです。Bayat-e Shiraz Talqinchasiは音源がありました。Turgun Alimatovはセガーは見つかっていませんが、貴重な動画がありましたので、代わりに一本上げておきました。

ウズベキスタンの音楽の5回目になります。今回は、現代ウズベクの歌姫モナージャト・ユルチエヴァの、先週ご紹介しましたオコラのソロ盤より前に出ていました、同じくオコラからの2枚組「中央アジア 古典音楽の伝統」から、少し若い頃の歌唱と、彼女の先輩達の名演奏からご紹介して行きます。ゼアミHPに載せているこの盤の解説を読み上げてみます。

ウズベク~タジクの古典音楽の精華を2枚に集めた中央アジア音楽ファン必携盤。器楽独奏有り、歌有りで、演奏家や曲目の紹介も充実した解説も貴重。巨匠トゥルグン・アリマトフのタンブールに始まり、若手名歌手ユルチエヴァの歌が3曲、ユダヤ系のベテラン女性歌手バルノ・イシャコーヴァ、ブハラのアリ・ババハーノフ等々とウズベク各地の古典音楽の重鎮が並ぶ。タジクの方は音楽のゆったりとした印象自体はウズベクに近いが、こちらはペルシア系民族だけあってその如何にも中央アジア的なタンブール弾き語りにもルーミーの「葦笛の歌」などが飛び出す。演奏家は名歌手ジュラベク・ナビエフ他で、ユダヤ系のバルノ・イシャコーヴァはこちらにも名を連ねている。録音は1990~93年

まずは、2曲目のバヤーテ・シーラーズ・タルキンチャスィですが、スーフィーの儀礼でも歌われてきたというこの曲は、フェルガナ・タシケント派のKhalqiというレパートリーに属するそうです。アゼルバイジャンのバヤーテ・シーラーズを思い出しながら聞くと、類似点、相違点が聞こえてくるかと思います。ゆったりとしながら、少し間延びする部分があるように感じるのは、3+2+2+2という変拍子になっていることにあるようです。トルコのアクサクを思い出させるリズムです。演奏は歌がモナージャト・ユルチエヴァ、タンブールがトゥルグン・アリマトフ、枠太鼓ダイェラがR.ザキロフです。1922年生まれの巨匠トゥルグン・アリマトフと録音当時は若手のユルチエヴァの共演を聞ける貴重な録音です。

<1-2 Asie centrale - Traditions classiques ~Bayat-e Shiraz Talqinchasi 4分>
Munâjât Yulchieva


ユルチエヴァの歌唱は3曲入っていますが、時間の都合で3曲目のOlturghusiは飛ばしまして、4曲目にはFarghanacha Shahnazという曲が入っています。これも聞き覚えがある方は、アラブのシャーナーズを思い浮かべて聞いてみて下さい。3曲目、4曲目にはユルチエヴァとアンサンブルと書かれているだけですので、演奏者の詳細は不明ですが、2曲目のような小編成ではなく、少なくとも5,6人はいると思います。3曲目、4曲目共に、やはりフェルガナ・タシケントのスタイルですが、チャハール・マカームの一部ではないとのことです。

<1-4 Asie centrale - Traditions classiques ~Farghanacha Shahnaz 6分20秒>

1枚目には巨匠トゥルグン・アリマトフの独奏が2曲入っておりますので、今回2曲共かけておきます。この人はタンブール、ドタールと、タンブールを弓で弾くサトの名人で、ゆったりとくゆらせるような悠揚迫らぬ演奏には、ウズベク音楽の真髄があると思います。私が特に驚いたのが12曲目のタンブールによるSegahの演奏で、音色だけでなく装飾の付け方まで北インドのサロッドにとても似て聞こえますが、いかがでしょうか。アリマトフによると、トランスオクシアナのセガーは、イランのセガーとは関係がないそうです。日本の琵琶に似た表現もあります。まずこちらからどうぞ。

<1-12 Asie centrale - Traditions classiques ~Segah 6分12秒>
Turgun Alimatov - Rokhat - The Pleasure (Tanbur)


戻って11曲目はサトの即興演奏です。タンブールを立てて弓で弾く楽器で、このNalaという曲は、特定の旋律には基づいてないそうです。

<1-11 Asie centrale - Traditions classiques ~Nala 4分24秒>

では、最後に1枚目の1曲目Nowruz-e Ajamを時間まで聞きながら今回はお別れです。トゥルグン・アリマトフのサトとアリシェル・アリマトフのタンブールの二重奏です。ブハラのシャシュマカームの一つ、セガーの一部sho`baと名前は共有しているけど、やはり旋律的には無関係な、トゥルグン・アリマトフ作の一曲とのことです。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<1-1 Asie centrale - Traditions classiques ~Nowruz-e Ajam 5分6秒>

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