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2019年2月

2019年2月28日 (木)

I Wish You Were Here

ある意味「極北」のようなバダフシャンの音楽には、いつも厳粛な気持ちにもなりますが、この音階で演じられるポップスの映像が結構ありました。しかし、今日は遅くなりましたので、放送で冒頭だけで終わってしまったユルドゥズ・ウスマノヴァの I Wish You Were Hereを上げておきます。冒頭のタンブールの音には、ぐいぐい耳が引き寄せられます。このウスマノヴァの歌は、初期でしょうか? 欧米ポップス寄りで、ウズベクの伝統色の感じられない歌唱はどうも苦手ですが、先日の一曲Schoch Va Gado(金持ちと貧乏人)は一番しっくりと来ました。バダフシャン関連は明日できると思います。(Nasiba Abdullayeva関連の探索は今回は出来なさそうです)

Yulduz Usmanova - I Wish You Were Here

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2019年2月27日 (水)

Шамс

先日のタジク・ポップスの内、シリンモフは見つかっておりませんが、シャムスは結構ありました。1本目はバダフシャンの険しい感じのメロディラインが特徴的です。この独特なコード進行?とメロディラインは一度聴いたら忘れられません。世界の屋根、パミール高原の絶景を思わせるものなのかも知れません。(3日の放送分でタジク東部のバダフシャンの音楽について少しお話しています) 2本目は旋回舞踏とのジョイント・ステージ。ペルシア文学史上最大の神秘主義詩人ジャラール・ウッディーン・ルーミーが師と仰いだシャムス・タブリーズィからグループ名を取ったのではと思いますので、とても自然な流れでしょう。解説にTajikistan's most popular bandとありました。そうなんですね!

Шамс - Ба лолазор / Shams - Ba Lolazor (Jilo 2014)

Shams, a Tajik Band.mov

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2019年2月25日 (月)

ウスマノヴァとアブドラエヴァ

ゼアミdeワールド149回目の放送、日曜夕方に終りました。27日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。ジュディさんについての説明は、時間の都合で放送で流せなかった部分です。ユルドゥズ・ウスマノヴァ / 君がここにいたら、も器楽部分だけで終わりましたので、タジクの歌手共々また探してみます。

ゼアミブログの方で、ウズベクとタジクのポップスで橋渡しをして、タジクに移るような予告をしておりましたので、ウズベク・ポップスを代表する歌姫(ディーヴァ)の2人、ユルドゥズ・ウスマノヴァとナスィバ・アブドゥッラーエヴァの歌から聞いて行きたいと思います。
まずはオスマンの女性名ウスマノヴァを名乗るユルドゥズ・ウスマノヴァですが、彼女の盤は沢山リリースされていますが、セレクション・アルバムという盤が手元にありますので、こちらから一曲おかけします。キングレコードから2007年に「世界の女神(ディーヴァ)たち」という世界中の大衆歌謡の女性歌手のシリーズが出まして、私はイスラエルのセファルディー(スペイン系ユダヤ人)の歌手ヤスミン・レヴィのライナーノーツを担当しましたので、このシリーズ全20枚のサンプルをキングレコードから頂いていました。

1曲目の「金持ちと貧乏人」という曲ですが、タンブールの深い音色から始まり、ポップな中にも伝統的なシャシュマカームを学んだウスマノヴァの哀愁を帯びた歌声が重なる佳曲です。

<1 ユルドゥズ・ウスマノヴァ / 金持ちと貧乏人 6分47秒>
Schoch Va Gado


ナスィバ・アブドゥッラーエヴァは、ナシバ・アブドラエヴァの表記の方が一般的になっているようです。ウスマノヴァが63年、アブドラエヴァは61年生まれで、国は違えど同世代の共通する何かを感じます。
この人の歌はyoutubeで多く聞きましたがCDは持っていないので、アップルミュージックからの音出しになります。このサマルカンド生まれの美貌の歌手には、シルクロードのポップ・クイーンのイメージを長らく持っていました。youtubeで見たことのあるメロディの美しいアゼリという曲をどうぞ。曲名通りアゼルバイジャン風の泣きのケマンチェの伴奏が入っています。

<Nasiba Abdullayeva / Azeri 5分22秒>
Nasiba Abdullaeva-Umr (azeri)


次にタジク・ポップスのコンピレーション盤がやはり手元にありますので、こちらから数曲かけたいと思います。この盤は99年に代々木のミール・ロシア語研究所に通っていた頃に講師の先生から頂いた思い出の盤です。香取先生とは旧ソ連内の音楽の話で盛り上がったものでした。ロシア語学習とは言っても別に左傾化した訳ではなく、昔からロシアの歌が好きで、更には旧ソ連内の族際語であり、この地域について調べるにはロシア語が不可欠と思っての受講でした。ペレストロイカ後に顕著になった中央アジアのポップスの流れを受けてでしょうか、99年当時のタジクの若手歌手のコンピレーションで、割とチープな打ち込みの入った曲も多いのですが、その中で印象に残った2曲をおかけしておきます。ペルシア古典詩の「ホスローとシーリーン」を思い出す名前の女性歌手シリンモフと、アラビア語で「太陽」の意味のシャムスの歌唱です。タジク語の曲名は読みが難しいので省きます。

<2 Shirinmoch 3分27秒>
<3 Shams 4分4秒>
~~~~~~~~~~~~~~~~~

ここで催しのお知らせを入れます。

知られざる美食の国 シリアからやってきた! 
世界はひとつみんなのだんらん

メニュー:となりのシリア料理ランチ(5品)
マンディ(シリア風ピラフ)、バミヤ(オクラのトマトソース和え)、ムタッバル(ナスとゴマのペースト)、ホンモス(ひよこ豆のペースト)、シリア風サラダ

イベントの収益金はシリア難民の支援に役立てられます。

日時:3月9日と10日 11時半~14時
場所:松山大学 文京キャンパス  カルフール1Fカフェテリア
大人 1800円(当日) 1500円(前売り)
大・高・中 1500円(当日) 1000円(前売り)
小学生以下 500円
   限定60名

お問い合わせ 世界を拓く実行委員会
メール info@artapricot.com

両日とも夜にアラブ音楽のライブがあります。

「ジュディさんとアラブ音楽の夕べ」
アラブ伝統楽器 ウードの演奏
ジュディさんとの懇談「シリア、知られざる、本当のところ」

日時:3月9日と10日 18時開場 18時半~20時半
場所:松山大学 文京キャンパス  カルフール1Fカフェテリア
大人 3800円(当日) 3500円(前売り)
大・高・中 2500円(当日) 2000円(前売り)
小学生以下 1000円 (3歳以下不可)
ディナーコース(7品)
限定30名
コフタ(シリア風牛肉のつくね)、ショルバット・アッツ(レンズ豆のスープ)、ハラブサラダ(アレッポ風サラダ)、ロッズまたはホブス(ご飯またはシリア風パン)、トルシィ(野菜の塩漬け)、デザート(シリアのお菓子)、ドリンク(アラビック紅茶、アラビア・コーヒーなど)

演奏:常味裕司(ウード)、相沢恭行(ギター)
リーム・アハマド(アラビア語通訳)
ユセフ・ジュディ(埼玉でドバイ・アンティーク&カフェを経営)

アサド政権に対抗するデモに参加していたが、身の危険を感じ、2012年8月に来日。家族は紛争の激化にともない、隣国イラクの難民キャンプに身を寄せていたが、2015年1月ジュディさんは2年ぶりに家族と再会することができた。3度にわたる難民認定を求める裁判を起こしたが敗訴。現在は埼玉県でドバイ・アンティークカフェを経営して生計を立てている。

ウードの常味さんは、私の店Cafeトーク・トークで2回ライブをやりましたウード奏者の加藤吉樹さんの最初の師匠です。私も東京の音や金時辺りで何回かと、Uターン後も松山で2度ライブに伺ったことがあります。

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では最後にユルドゥズ・ウスマノヴァの歌う「君がここにいたら」という曲を時間まで聞きながら今回はお別れです。やはりタンブールの印象的なソロから始まります。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<4 ユルドゥズ・ウスマノヴァ / 君がここにいたら 5分>

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2019年2月22日 (金)

ジラウとバクシー

今日の2本では、カラカルパクの伝統的な音楽を聞けますが、一本目は倍音の入っただみ声のコビュズ弾き語りに始まり、ドゥタール弾き語りに移ります。伴奏の擦弦は、シャーマニックなコビュズでは強烈すぎるからでしょうか、ケマンチェ(これをカラカルパクではギジャクと呼ぶのでしょうか)になっています。ドゥタール弾き語りでは歌に倍音が入ってこないことがほとんどのようです。コビュズ弾き語りのジラウ(ジロウ?)の生演奏は余りないようなので貴重では。二本目はベテラン女性のドゥタール弾き語りでしょうか。バックで3人が唱和している映像は珍しいように思います。

2 Silk Road Songs of the Karakalpaks in Uzbekistan

Ayimkhan Shamuratova Ensemble - Folk song from Karakalpakstan

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2019年2月20日 (水)

カラカルパクの音楽レッスン風景

カラカルパクと言えば、一昔前までは神秘のベールに包まれた謎の国のようなイメージを持っていましたが、この国の音楽もyoutubeがかなりあって、調べてみてびっくりしました。伝統音楽とポップス、どちらも結構あります。伝統音楽の方で特に興味深く見たのが、今日の一本。ソ連時代には途絶えかけた吟遊詩人(英語ではバード)の伝統が、残り少ない名人によって若手に受け継がれていく場面です。師匠のガイラート・バクシー(本名ガイラート・オテムラートフ)がドゥタールと歌の稽古をつけていますが、終始口伝えで一節一節ドゥタールの稽古をしています。歌の方は、この女性は既にかなり上手いようですが、もっと上手くドゥタールで伴奏できるように、と師匠。
この映像を上げているフレデリック・レオタール(Frederic Leotar)氏は、ブダ盤の現地録音と製作を担当した民族音楽学者。冒頭で引用されている、干上がって行くアラル海の映像は、大分前に何かで見た記憶があります。バクシー(バード)の伝統は復活しても、アラル海が元通りになるのは難しいようです。

A Music Lesson

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2019年2月18日 (月)

カラカルパクの伝統音楽

ゼアミdeワールド148回目の放送、日曜夕方に終りました。20日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。

ゼアミブログの方で、ウズベクとタジクのポップスで橋渡しをして、タジクに移るような予告をしておりましたが、カラカルパクスタンを忘れておりました。フランスのBudaからDVD付きの盤「カラカルパクスタン~祖先の歌声 Karakalpakistan: The Voice of Ancestors」が出ておりますので、今回はこちらからご紹介します。
カラカルパクスタンは、ウズベキスタン内の自治共和国で、カラカルパクとはカラカルパク語などのトルコ系の言葉では「黒い帽子」の意味になります。カラが黒、カルパクが帽子の意味で、因みに黒海はトルコ語でカラ・デニズです。この国はウズベキスタン西部のアラル海南岸に面する乾燥地帯にありますが、ペルシア文化の影響の色濃いウズベクよりは、カザフやトルクメンの遊牧系文化とのつながりの深い場所で、シャーマニックな吟遊詩人の歌声には明らかに倍音唱法が入っている部分があります。浪曲のようにも聞こえる倍音の入ったダミ声の発声は、明らかにカザフやトルクメンのバフシーなどの吟遊詩人の歌に酷似しています。同じくブダから出ている「アルジェリアのガスバ」と同じく、ボーナスDVD付で、各楽器のデモ演奏的内容の映像が入っています。

まずは浪曲に似て聞こえる倍音の入ったダミ声の例として、一曲目のエディゲをどうぞ。エディゲというのは、カラカルパクの叙事詩語りのようです。擦弦楽器のコビュズを弾き語るのはBakbergen Syrymbetovで、ジャケットのカラ・カルパク(黒い帽子)を被ってコビュズを弾いているのは、この人でしょうか?

<1 Bakbergen Syrymbetov / Edige 2分56秒>
Edige 1


2曲目は女性のドゥタール弾き語りですが、やはりコビュズも伴奏で出てきます。ウズベクのドタールよりも、カザフのドンブラの方に近く感じられます。カラカルパクのバクシー(吟遊詩人)Ziida Sheripovaの演奏です。

<2 Ziida Sheripova / Bolmasa 3分31秒>
ZIYADA SHERIPOVA, INJEGUL SABUROVA, KARAKALPAKSTAN

曲は違いますが、同じ歌い手です。

前半は男性のコビュズ弾き語りと女性のドゥタール弾き語りが交互に入っています。男性のコビュズ弾き語りは、BaksyではなくJyrawというようです。3曲目はBaxtiiar Esemuratovのコビュズ弾き語りですが、本当に浪曲そっくりに聞こえます。

<3 Baxtiiar Esemuratov / Terme 2分49秒>

4曲目はQaraqalpaqtaという曲で、タイトル通り母国についての内容のようです。女性バクシーのOrynbaeva Ulbosyn Alymbaiのドゥタール弾き語りです。

<4 Orynbaeva Ulbosyn Alymbai / Qaraqalpaqta 2分45秒>

5曲目は1曲目のエディゲの2つめの抜粋で、3曲目と同じジロウのBaxtiiar Esemuratovのコビュズ弾き語りです。

<5 Baxtiiar Esemuratov / Edige2 1分57秒>

少し飛びまして9曲目から3曲はベテラン女性歌手Biibiraba Otpberenovaの独唱で、英雄叙事詩のAlpamysや子守歌などが入っています。

<9 Biibiraba Otpberenova / Ne Ko'rdin'kara At, Ne Ko'rdin'? 2分26秒>

後半はドゥタールやコビュズの独奏が続きますが、終わりの方で口琴とシングルリードのクラリネットのような笛、Sybyzgyが出てきますので、3曲続けます。

<20 Xojamuratov Ikram A`bdig`afur / Shashbawli Alti Qiz Namasi 2分18秒>

<21 Esenova Hinjigu`l / Shin'qobiz namasi 57秒>

<22 Xojamuratov Ikram A`bdig`afur / Torg'aj namasi 58秒>

では最後に13曲目のSaparova Tamara Jaqsybaiの歌う子守歌Hawjarを時間まで聞きながら今回はお別れです。何曲か子守歌がありますが、この曲はメロディラインにロシアの影響があるようにも思いました。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<13 Saparova Tamara Jaqsybai / Hawjar 2分42秒>
A Karakalpak lullaby with English subtitles (from the book: La steppe musicienne, example 61)

曲は違いますが、これは付録DVD収録の映像です。

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2019年2月15日 (金)

ボテ・チン(中国の美女)

ユルドゥズ・トゥルディエヴァのボテ・チンはありました。この曲をシャジャリアン以外の歌手が歌うのは、初めて見るような気がします。後半は先日のCDと同じく、パリサーの歌っていたマーフール旋法のタスニーフです。本当に二人の歌唱を知らずに歌っているのだとしたら驚きですが、余りに似ているので、きっと参考にしていると思いますが、どうでしょうか。2本目はシャジャリアンのライブ映像です。タールはモハンマド・レザ・ロトフィでしょう。二人とも若いです! 3本目はよく知られたカルテックス盤の音源です。

Yulduz Turdieva Ensemble - Ey meh-i men ey but-i çiz ey senem (Özbekistan)

bote chin

Shajarian - Bote Chin

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2019年2月13日 (水)

ユルドゥズ・トゥルディエヴァの伴奏の擦弦楽器

ユルドゥズ・トゥルディエヴァがどんな活動をしているのか、youtubeを見ると段々分かってきました。Dreyer Gaido盤のような古典的な歌唱は、むしろ珍しいのではと思います。先日の一曲以外に放送でかけた曲は、いずれもまだ動画が見つかっておりません。ヴァイオリン弾きの一人として気になることの一つは、ヴァイオリンをどんな風に弾いているかですが、これは良いサンプルがありました。やはり立てて歌に寄り添うように弓先中心で優しく弾いていましたが(アンプを通しているのもあるでしょうが)、途中から西洋式に顎に挟むスタイルに変わります。2本目では伴奏陣のフロントはタールとケマンチェで、ヴァイオリンの代わりにケマンチェが歌に沿う絶品の演奏を聞かせます。アゼルバイジャンのムガーム風に始まり、ウズベクのダンス曲でしょうか、賑やかに展開していきます。

Yulduz Turdieva Qara Guzlum

Teyyar Bayramov & Yulduz Turdiyeva-Özbək mahnısı

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2019年2月11日 (月)

Yulduz Turdievaの歌声

ゼアミdeワールド147回目の放送、日曜夕方に終りました。13日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。ユルドゥズ・トゥルディエヴァの動画は色々ありますが、放送で途中までになった Mavrigiのライブ映像がありましたので、今日はまずこちらを上げておきます。

ウズベキスタンの音楽も12回目になりました。古典的な音楽だけでも他に英ARCや仏Ocoraのこれまでにかけてない他の盤などまだまだありますが、きりがないので古典音楽は今回でラストにします。今回はドイツのDreyer Gaidoから出ているユルドゥズ・トゥルディエヴァの盤をご紹介します。これまでにかけた音源は廃盤アイテムも多かったのですが、この盤は現在も入手可能な一枚です。取引先の帯ではユルドゥス・トルディーバのライジング・スター・オブ・ザ・イーストとなっている盤で、2009年のオスナブリュックでのモルゲンランド音楽祭のライブ音源です。タイトル通り、トルディエヴァは2009年のこの国際的なコンペティションで披露した歌声で、審査委員を唖然とさせ高い評価を得た女性歌手です。
ウズベキスタンだけでなく、ペルシアやアゼルバイジャンの曲も取り上げていまして、これまでに何度も取り上げたモナージャトを歌っているのを始め、イランの古典声楽の名歌手シャジャリアンがよく歌っていたBote Chin(中国の美女)も出てきます。
伴奏は枠太鼓のドイラと、撥弦楽器がタールまたはルバーブ、擦弦楽器はギジャクまたはヴァイオリンが使われています。2009年8月21日、ドイツのモルゲンランド音楽祭でのライヴ録音です。
まずは、これまでにモナージャト・ユルチエヴァの歌唱で何度かご紹介しましたスーフィーの歌に由来するというモナージャト(祈り)ですが、もちろんユルチエヴァだけの曲ではなく沢山の歌唱や器楽独奏までありましたので、またブログの方で取り上げたいと思います。

<2 Yulduz Turdieva Ensemble / The Rising Star of the East ~Munojot 8分8秒>

3曲目のアゼルバイジャンの古典曲はカラバフ・シカステスィとなっておりまして、アゼルバイジャンとアルメニアの間で紛争になったナゴルノ・カラバフと関係ありと思い、気になりました。典型的なアゼルバイジャンのムガームのスタイルです。

<3 Yulduz Turdieva Ensemble / The Rising Star of the East ~Karabakh Shikastesi 4分10秒>

4曲目はバヤーテ・シーラーズで、これはまたアゼルバイジャンのアリム・カシモフなどの演奏を思い出す曲です。バヤーテ・シーラーズらしい艶美な曲調です。11分近いので少しだけおかけしておきます。

<4 Yulduz Turdieva Ensemble / The Rising Star of the East ~Bayat-e Shiraz 10分57秒 抜粋 2分>

5曲目の「二つのペルシアの歌」、Tasnif Ey Mah,Ey Tirの前半が、イランの古典声楽の名歌手シャジャリアンがよく歌っていたBote Chin(中国の美女)というタスニーフです。エキゾチックな旋律美が一度聞くと忘れられない曲です。歌詞の英訳では、エイ・マーのマーは月、ボテ・チンは「中国のアイドル」となっています。バヤーテ・シーラーズと同じ音階と解説にありますが、ペルシアならホマーユン旋法になると思います。因みに私のパーソナリティ名はこの旋法から取りました。後半の長調の曲はマーフール旋法で、こちらはイランの名女性歌手ファーテメ・パリサーがよく歌っていたタスニーフです。この盤の解説にはユルチエヴァ、シャジャリアン、パリサーの名前は出て来ませんが、それ程ウズベクではよく知られている曲ということなのかも知れません。

<5 Yulduz Turdieva Ensemble / The Rising Star of the East ~Tasnif Ey Mah,Ey Tir 6分16秒>

では最後に6曲目のMavregiを時間まで聞きながら今回はお別れです。イランのシーア派の人々によってイラン東部のホラサーン地方からウズベクのブハラに持ち込まれた祭礼音楽の一種とのことです。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<6 Yulduz Turdieva Ensemble / The Rising Star of the East ~Mavregi 7分39秒>
Yulduz Turdieva- Mavrigi (Buhorocha)

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2019年2月 7日 (木)

色々なモナージャト

一般にはおそらくユルチエヴァの歌唱でよく知られていると思われるウズベクの名曲モナージャト(「祈り」の意)ですが、探せば探すほど色々な演奏があります。来週の12回目の放送用にかけたユルドゥズ・トゥルディエヴァのドライエル・ガイド盤にもありましたので、かけました。今日上げたのは、ユルドゥズ・ウスマノヴァなどと並ぶウズベク・ポップスの歌姫、ナスィバ・アブドゥッラーエヴァのおそらく若い頃の歌唱や、Sirojiddin Juraev以外のルバーブの独奏、更には巨匠トゥルグン・アリマトフのタンブール独奏もありました。弦楽器独奏も味わい深くていいものですが、ポップスにも馴染むとは、驚きです。一本目のブハラ系ユダヤ人の往年の女性歌手ベルタ・ダヴィドヴァ(1922-2007)の歌唱では、元スーフィーの歌らしく、旋回舞踏が似合いそうな感じのリズムになっています。3分過ぎからがモナージャトです。

MUNOJOT Berta Davydova Tajik Uzbek Songs Берта Давыдова Узбек Муножот

Муножат - Насиба Абдуллаева

munojot

Turg'un Alimatov - Munojot kuyi

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2019年2月 6日 (水)

Sirojiddin Juraevのドタールとルバーブ

Qoshtariを50年以上前の音源から聞き取り、アレンジして演奏したSirojiddin Juraevの映像もありました。「トランスオクシアナのドタール」でリスナーを驚愕させたゴザル・ムミノヴァも彼の版で弾いていたようで、それは「トランスオクシアナのドタール」と、米Smithsonian Folkways盤の解説を読んで初めて知ったことでした。その米Smithsonian FolkwaysのMusic of Central Asia Vol. 7: In the Shrine of the Heartは、若手の演奏が多そうということで放送では1曲取り上げただけでしたが、もしご希望があればウズベクの13回目で取り上げるように致します。なければ、次のタジクとの橋渡しで、両国のポップスを考えております。(ウズベクの12回目はドイツのドライエル・ガイドのユルドウス・トルディーバになりました)
2本目ではユルチエヴァの歌唱でお馴染みのモナージャトを、おそらくドタールではなくルバーブのソロで弾いています。

Sirojiddin Jurayev - Koshtar

Munojot

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2019年2月 4日 (月)

トランスオクシアナのドタール

ゼアミdeワールド146回目の放送、日曜夕方に終りました。6日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。動画は取り合えず先日と同じQosh Toriを貼っておきます。3分辺りからQoqancheも出てきます。

ウズベキスタンの音楽の11回目です。今回は弦が2本しかないとは思えない超絶技巧を聞かせる、低音豊かなドタールの名人芸を聞いて行きたいと思います。11月11日のウズベクの3回目でスイスVDE-Galloの「中央アジアのドタールの名手たち」からアブドラヒム・ハミードフの演奏をかけましたが、この人は仏Ocoraから出ていた廃盤アイテム「ドタールの芸術」に収録されていた名手で、イランMahoor Institutの「トランスオクシアナのドタール」で超絶技巧を聞かせた女流名人ゴザル・ムミノヴァの師匠に当たります。
youtubeに上がっているこの二人のQoshtariという非常に技巧的な曲をゼアミブログで取り上げたことがありますが、まずはその曲からおかけします。左手で弦を打つ音と、右手で胴を叩く音から始まり、鬼気迫る超絶技巧に移っていきます。アブドラヒム・ハミードフは最初のレフトハンド奏法の部分を、まるで赤子を抱くようにドタールを前に構えて余裕で弾いています。この曲では2本の弦を同じ音に調弦するそうで、それは曲名に表れていて、コーシュは「ユニゾン=同じ音」、トールは弦の意味です。まずはゴザル・ムミノヴァの「トランスオクシアナのドタール」収録の演奏でどうぞ。

<14 Gozal Muminova / Dotar of Transoxania ~Qosh Tori 2分35秒>
Guzal Muminova plays Dutar


ゴザル・ムミノヴァは1977年ホラズムのヒヴァ生まれで、ヒヴァ・ハン国で有名なこの町は、これまでのサマルカンド、ブハラやタシケントからは西に遠く離れています。ウズベクの次に取り上げる予定の、ウズベク西部の自治共和国であるカラカルパクに近い位置にあります。そのためか、遊牧文化が濃厚なカザフに近いカラカルパク寄りの雰囲気を感じさせるようにも思いますが、どうでしょうか。実際ホラズムの曲も数曲ありまして、それらはウズベクの東の方では余り弾かれないのではと思います。

同じQoshtariが、米Smithsonian Folkwaysから2010年に出ている「心の聖堂にて~都市ブハラ、その他からのポピュラー・クラシック(Music Of Central Asia Vol. 7: In The Shrine Of The Heart: Popular Classics From Bukhara And Beyond)」にも入っておりますので、比較でおかけしておきましょう。Sirojiddin Juraevのドタール独奏です。このDVD付きの盤に入っているのは、おそらくゴザル・ムミノヴァの前後の世代の音楽家だと思いますが、この曲の50年以上前の音源から聞き取りアレンジして演奏したのが、このSirojiddin Juraevで、ゴザル・ムミノヴァもその版で弾いているようです。アブドラヒム・ハミードフの演奏は、もっと広く知られたヴァージョンですが、50年前のスタイルとは少なからず異なるそうです。

<4 Sirojiddin Juraev / Qushtar 4分2秒>

この後は、ゴザル・ムミノヴァの「トランスオクシアナのドタール」の全20曲から、数曲抜粋してご紹介します。まずは華々しく始まる1曲目のドタール・バヤートですが、激しいかき鳴らしの合間の細かい指使いを想像しながら聞いてみて下さい。

<1 Gozal Muminova / Dutor Bayot 1分59秒>

バヤート旋法のドタールソロでした。バヤートは、ウズベクのシャシュマカームでは、ナヴァーの系列に入るようです。
続く2曲目のQoqancheは、巨匠トゥルグン・アリマトフの影響を感じさせるグリッサンドを多用する独特な音の動きの曲です。ゴザル・ムミノヴァはトゥルグン・アリマトフにもついたようです。

<2 Gozal Muminova / Qoqanche 3分58秒>

この盤で特に私が驚いた曲が12曲目の親しみやすい曲調のサーギナーメ&ウファルで、30秒辺りから予測のつかない不思議な転調をします。回転数が突然上がったかのようで、最初何が起こったのかと度肝を抜かれました。タイトルはSoqi Nomaとありますが、おそらく「酌人の書」を意味するサーキナーメのことだと思います。前の曲が声楽曲を模倣したモゴルチャでしたが、この曲はモゴルチャの変奏とありますので、なかなか分かりにくいですが関連がありそうです。

<12 Gozal Muminova / Soqi Noma & Ufar 3分11秒>

ゴザル・ムミノヴァの故郷ヒヴァがあるホラズム地方の曲が数曲ありますが、その内の一曲、ラストを飾っている20曲目のMeskin I et IIでは、彼女の従弟のウミド・バルターエフのタンブールとデュエットしています。金属弦で高い音を発するタンブールと、シルクの弦で柔らかく低い音のドタールがとても対照的です。

<20 Gozal Muminova / Meskin I et II 4分31秒>

では最後に10曲目のシャシュマカームの7分ほどの曲、Tasnif & Gardun-i Navoを時間まで聞きながら今回はお別れです。これまでの躍動的な曲とは対照的な、格調高いブハラのシャシュマカームの古典音楽の中にドタールが絶妙に嵌っているのがリアルに感じ取れるかと思います。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<10 Gozal Muminova / Tasnif & Gardun-i Navo 7分13秒>

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2019年2月 1日 (金)

シャヴカット・ミルザエヴのルバーブを探して小編成のKelmady発見

放送用に選曲をしていてシャヴカット・ミルザエヴのルバーブ独奏の繊細な音色に改めて聞き入ってしまいましたので、出来れば彼とムナージャト・ユルチエヴァの共演の映像を見たいものだと思いましたが、ルバーブがShavkat Mukhamedovの演奏がほとんどのようです。しかし幾つか見ている内に、Kelmady(あるいはモナージャト)をユルチエヴァの歌とルバーブ、ドイラだけの小編成で演奏している映像を見つけました。これはシャヴカット・ミルザエヴでなくても見逃せません。この淡々とした音の運びを聞くと、あのシルクロードの青く美しい建物が目に浮かびます。

Munojot Yo'Ichiyeva / Munadjat Yulchieva / Муножот Йўлчиева - Kelmady
Munadjat Yulchieva - voice
Shavkat Mukhamedov- rubab
Khodjimurad Safarov - doira

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