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2019年3月11日 (月)

Badakhshan Ensemble (SF)

ゼアミdeワールド151回目の放送、日曜夕方に終りました。13日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。

タジキスタンの音楽の2回目になります。これまでにリリースされたタジキスタンの音源を改めて見てみると、確認している15枚余りの中には、北西部のブハラ・シャシュマカーム系のウズベク音楽よりも、東部のバダフシャンの音楽が遥かに多いことに気が付きました。前者の太平な雰囲気に対して、バダフシャンのフリーキーにも聞こえるほど狭い音域での半音階の動きが多く緊張感に満ちた音調は、全く印象の違うものだと思いますが、キング盤では同じ演奏家がそのどちらも演奏し、両者が混合している音楽もあるように思います。その辺りの音楽事情の精査の必要を感じますが、それは東部音楽のスピリチュアルな要素が、シャシュマカーム系の演奏にも少なからず入り込んでいるように感じるからです。
今回は数あるバダフシャンの音源からアメリカのSmithsonian Folkwaysから2007年にリリースされましたDVD付の「バダフシャン・アンサンブル/パミール高原の歌と踊り」からご紹介したいと思います。特に有名なファラクを初め、ウイグル側のタジクの歌で聞いたようにも思える歌が入っていて、演奏が若手によるという点でも素晴らしいと思います。

まずはファラクですが、前回はムロドフ・ジュラベクの歌唱でバダフシャン音楽の典型としておかけしました。1000年以上前からの古い民謡と言われている歌ですが、この盤では一曲目にFalak-I Badakhshaniというタイトルで女性歌手Soheva Davlatshoevaのアカペラ独唱がありまして、5曲目にも器楽伴奏付きの男性歌唱でファラクが入っておりますので続けておかけします。一曲目は「世界は二つの門がある通路のようなもの」と歌いだされる四行詩のルバーイーが歌詞とあります。この一行だけでも、イラン東部のホラサーンに生まれ、現在のアフガニスタン北部のバルフで少年時代を過ごしたオマル・ハイヤームのルバイヤートを連想させる内容です。「哲学的な嘆き歌」という形容も5曲目に見えますが、確かにそう思います。では2曲続けてどうぞ。

<1 Badakhshan Ensemble / Falak-I Badakhshani 4分19秒>
Falak-i Badakhshani


<5 Badakhshan Ensemble / Falak 5分39秒>
Falak


2曲目のAy Pari(妖精?)という曲が、中国のウイグル側のタジクの歌で聞いたようにも思った歌で、それはゼアミブログで10年余り前にこの辺りの特集をしていた頃にyoutubeで聞いたように思いました。この盤の解説には1950年代に初めてパミールの民族楽団によって演奏され、その後ポップチューンにもなった有名曲だそうです。旋律の印象はファラクとそれ程変わらない感じですが、こういう曲が一般大衆に支持され歌い踊られている状況が凄いと思いました。

<2 Badakhshan Ensemble / Ay Pari 8分18秒>
Ay Pari (Oh, Fairy)


この盤はルーミーなどの詩によるSabzak Medleyという曲で賑やかに締めくくられますが、ここではバダフシャンの楽器が勢ぞろいしているようです。編成はバダフシャニ・ルバーブ、枠太鼓のダフ、ギジャク、パミール・ルバーブ、パミール・タンブール、セタールです。共鳴弦の付いたパミールのセタールは、イランのセタールと北インドのシタールの中間のような構造と音色です。

蘭Panから90年代に出た2枚には、この辺りに多いイスマイール派の神秘主義歌謡も収録されていましたが、このバダフシャン・アンサンブルの盤の白眉と思われる16分近い6曲目のMaddohも、段々と早くなる演奏にはスーフィー音楽の恍惚境が感じられます。かけられたらと思いましたが、今回は時間切れのため、また次回以降に余裕がありましたらおかけします。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<10 Badakhshan Ensemble / Sabzak Medley 6分31秒>
Sabzak Medley

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