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2019年3月

2019年3月29日 (金)

ダヴラトマンド・ホロヴ

タジクの音楽で強く印象に残っている歌手に、ダヴラトマンド・ホロヴ(Davlatmand Kholov)がいます。フランスのIneditからCDが確か90年代に出ていましたが、イネディが最近は海外へはDL販売のみとして、CD発売を原則フランス本国のみに変えたため、現在は入手難になっています。この3拍子の曲は、そのイネディ盤の冒頭を飾っていました。トピック盤でyoutubeの見つかってないパンジシャンベ・ジョルボフが参加している国立民族アンサンブル「ファラク」のリーダーが、ダヴラトマンド・ホロヴです。Song about "Drunken beggar"とあります。直訳すれば「酔った乞食の歌」ですが、これはスーフィー的に解釈すべきでは。以下は音楽之友社2002年刊の「世界の民族音楽ディスクガイド」のディスクレビューとして書いた拙稿です。


何ともパワフルで魅力的な語りを聞かせてくれる、首都ドゥシャンベの音楽院出身の男性2人組グループ。歌とセタール(またはギジャク)のダヴラトマンド・ホロヴと打楽器タブラクのA.アブドゥッラーエフのデュオ。セタールはイランのものをもっと棹を長くした感じで、インドのシタールとのちょうど中間のような楽器。擦弦楽器ギジャクの共鳴胴は長方形。歌は3拍子が支配的で、この辺もペルシア系を連想させる。詩はペルシアの大詩人ルーミー、ハーフェズの他に、今世紀タジク詩人らしき人も。その他は民間の詩。音楽的にはアフガンのパシュトゥーン等のものに近いように思われる。そういえば、故マスードもタジク族だった。

Davlatmand. Devona Shaw (Song about "Drunken beggar")


تصنیف دیوانه شو

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2019年3月27日 (水)

「21世紀のハチャトゥリアン」トリブ・ハーン・シャヒーディー

「21世紀のハチャトゥリアン」とも呼ばれるタジクの作曲家トリブ・ハーン・シャヒーディーの映像はたくさんありました。交響的ファラクがないのが残念ですが。曲によって音響がネイ・ナヴァーなどのホセイン・アリザーデの管弦楽付き作品に似て聞こえるのは、地域が近いからでしょうか。しかも、名前がシャヒーディー! ゼアミdeワールドのオープニング曲のペルシア音楽合奏の中でウード弾き語りしているのは、往年のイランの名歌手アブドルワハブ・シャヒーディーです。番組でゲルギエフの指揮したメロディア盤CDまで流すことは今の所考えておりませんので、最も長そうな2時間を越えるコンサートの映像を貼っておきます。
ココログの改変後の個別ページのURLは、ブログのタイトルをクリックすると出てきましたので、お知らせしておきます。


Tolibkhon Shakhidi. Great Hall of Moscow Conservatory. April 29, 2016

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2019年3月25日 (月)

Topic Recordsの「タジキスタンの伝統音楽と大衆音楽」から

ゼアミdeワールド153回目の放送、日曜夕方に終りました。27日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。交響的ファラクがあれば良かったのですが、今の所見つかってないので、グルチェラ・ソディコヴァのポップスの同一曲と思われる一本と、ニゴロはシャムスでは見つからず、他の女性歌手ですが上げておきました。Hotam Hokimovとかは無さそうです。

ココログですが、既にお気づきの方もいらっしゃるかも知れませんが、3月19日にリニューアルして、ページごとのアドレスと言うのはなくなったようです。(これまでにアップした個別アドレスは生きているようですが)タグの操作も変わっているので、表示具合が前と違っていて、何とか前と同じにならないか試行錯誤中です。



タジキスタンの音楽の4回目になります。今回はイギリスのTopic Recordsから2006年に出ました2枚組の「タジキスタンの伝統音楽と大衆音楽、多声部音楽」FALAK, THE VOICE OF DESTINY: TRADITIONAL, POPULAR & SYMPHONIC MUSIC OF TAJIKISTANからご紹介したいと思います。1枚目は伝統音楽、2枚目は現在のポピュラー音楽を収録していて、田舎と都市部、伝統とモダンの両方を紹介している2枚組です。特にシンフォニックな中に伝統声楽が入る曲などは、前衛的な作品に聞こえる程ですが、ここで出てくるのが何度かご紹介しましたファラクです。原題にVOICE OF DESTINY(運命の声)とあるのが正にファラクのことで、よく特徴を捉えた表現だと思います。半音階の多いフリーリズムのコブシ豊かな詠唱というだけでなく、ファラクとは元々「運命」とか「vault of the sky(天蓋または天空?)」のような意味を持っている言葉で、命のはかなさ、若さの喪失、片思いなど、様々な悲しみの感情を表すルバーイー(四行詩)の詩の内容も重要とされています。



まずは、その2枚目16曲目のシンフォニックなファラクからおかけしたいと思います。前衛的に聞こえるのは、ハイテンションなフリーリズムかつ旋律の半音階進行の多さから来るものだと思います。「運命の声」と言うイメージは、オマル・ハイヤームのルバイヤート以来の伝統でしょう。ファラクは、日本の詫び寂びにも通じるものがあると思います。この交響的ファラキはトリブ・カーン・シャヒーディー作曲で、歌い語っているのは俳優のアブドゥムミン・シャリポフです。ハチャトゥリアンに師事したトリブ・カーン・シャヒーディーの管弦楽作品は、ヴァレリー・ゲルギエフ指揮ロンドン交響楽団などの演奏でも露MelodyaからCDが出ております。彼は「21世紀のハチャトゥリアン」とも言われている人です。



<2-16 Abdumumin Sharipov / Falaki (Tolibkhon Shakhidi)  4:25>



1枚目には器楽のみを含む様々なファラクが何曲か入っておりまして、Falaki Badakhshon、Falaki seqisma、Falaki dashti、Falaki bo raqs(踊りのファラク?)、Falak bo surudi khalqi、Falaki ravonaとあります。これまでにおかけしたファラクや、先ほどの現代曲にも近いファラクと言うことで、一番オーソドックスなFalaki Badakhshonをおかけしておきます。聞けば聞くほど、日本で言えば詩吟に近いようにも思います。歌っているパンジシャンベ・ジョルボフは、東部バダフシャンで名の通った歌手だったようですが、その後西部の首都ドゥシャンベに移り、フランスのInedit盤で名演を聞かせた名歌手ダヴラトマンド・ホロヴ(Davlatmand Kholov)がリーダーの、国立民族アンサンブル「ファラク」で一緒に活動しているそうです。



<1-1 Panjshanbe Jorubov / Falaki Badakhshon 1:56>



2曲目には同じパンジシャンベ・ジョルボフが歌う比較的親しみやすいガザルが入っていますが、時間の都合で割愛しまして、3、4曲目には女性歌手グルチェラ・ソディコヴァの歌唱で2つのファラクが入っていますが、最初のFalaki seqismaがリズミカルな曲調なのに対し、次のFalaki dashtiは笛だけの伴奏のフリーリズムの詠唱になっております。Falaki dashtiとは、ダシュティ旋法のファラクではなく、「平地のファラク」という意味のようです。2曲続けてどうぞ。



<1-3 Gulchehra Sodiqova / Falaki seqisma 5:06>



<1-4 Gulchehra Sodiqova / Falaki dashti 2:49>



伝統音楽の方で異色なのが6曲目のグルグリで、倍音の入った浪曲のような叙事詩弾き語りですから、テュルク系の曲かと思いましたが、やはりイラン系の伝統のようです。ドンブラ弾き語りのホタム・ホキモフは、グルグリ叙事詩のプロ歌手とのことです。首都ドゥシャンベに近い所にこんな音楽があるとは驚きですが、古代にシルクロード交易を支えたイラン系のソグド人の末裔とされるヤグノブ人が住んでいるのも、タジク北西部ですから、東部のバダフシャンだけが秘境ではないことを実感する音源です。長いので少しだけおかけします。



<1-6 Hotam Hokimov / Gurughli 9:08 2分位>



2枚目の6曲目には1枚目に出てきた女性歌手グルチェラ・ソディコヴァがポップスも歌っていますので、一曲おかけします。彼女の息子の楽団をバックに、ドンブラを弾き語っているようです。



<2-6 Gulchehra Sodiqova / Zi duri 6:10 抜粋>

Гулчеҳра Содиқова [Gulchehra Sodiqova]





2枚目にはゼアミブログでも取り上げました有名なグループ、シャムスの演奏が4曲入っております。4曲目のNigoroを聞きながら今回はお別れです。ニゴロとは「恋人」の意味だそうです。



ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週



<2-4 Shams / Nigoro 4:23 抜粋>

Nigoro

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2019年3月22日 (金)

タジクのタンブール

タジクの弦楽器は、ルバーブとドゥタール、セタール中心に見てきましたが、タンブールは余り見かけていませんでした。この楽器でも、素晴らしい演奏が色々ありましたので、3本上げておきます。ウズベクとウイグルの印象の強い楽器ですが、1本目のようにバダフシャンらしい音楽でもよく特徴の表れた演奏になっていると思います。
タンブールは、ウイグルのものが一番長く、おそらく先の方には手が届かない程。ウイグルのタンブールは一度生で見たことがありますが、ほとんどハイポジションだけで弾いていました。次がウズベクで、タジクのタンブールは一番短く小ぶりでしょう。しかし、パミール音楽の幽玄さをよく表現しています。一つ驚いた点は、タジクのタンブールだけ、フレットレスのようです。1本目に以下のような興味深いコメントがありました。これも本当にバダフシャンの方かどうかは、ちゃんと調べてみないとと思っています。Our friends performing "yatabidor" very old traditional singin style in Muminabad, Khatlon, Tajikistan.

Crying of Tanbur part6

Маромхим Исоев НАМОЗ

Гурези Рахмон суруди оча 2018 Gurezi Rahmon

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2019年3月20日 (水)

タジクの吟遊詩人 アブドゥッラー・ナズリエフ

VDE-GalloのTadjikistan - Songs of the Bardsの中では、「3つのルバーイー」を歌っていた低音が魅力のアブドゥッラー・ナズリエフが特に忘れられないのですが、youtubeでは少し違う綴りなら結構ありました。多分間違いないと思いますが。キリル文字で探せば、もっとあるかも知れません。CDではセタールとありましたが、ここで弾いているのはタンブールだと思います。もし演奏者が違っていても、「タジクの吟遊詩人」のいぶし銀の歌声が堪能できました。(この盤のジャケットを飾っている古老が気になりますが、この人かなと思うAbdullah Mamadshayevで検索しても、ローマ字ではほとんど何も出てきません)

Абдулло Назри - Токи абру Abdullo Nazriev ( Forsi Tojiki Dari )

Абдулло Назриев - Abdullo Nazriev .Савти Фалак- ДАРВОЗ ( Tajik Folk Music)

Abdullo Nazriev - Gufti Bigu ( Tajikistan Folk Music )

Abdullo Nazriev ( Tajik Folk Music )

Abdullo Nazriev - Metapad Dil ( Tajik Folk Song )

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2019年3月18日 (月)

Tadjikistan - Songs of the Bards (VDE-Gallo)

ゼアミdeワールド152回目の放送、日曜夕方に終りました。20日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。

タジキスタンの音楽の3回目になります。今回ご紹介しますのは、スイスのVDE-Galloから98年に出た「タジキスタン: 吟遊詩人の歌」(Tadjikistan - Songs of the Bards)です。何度オーダーしてもなかなか確保できなかった幻の名盤で、入ればたちまち客注で埋まって売り切れてしまうもので長らく聞けてなかったのですが、10年ほど前にコピーを手に入れました。(現在ではおそらく入手困難だと思います)
VDE-Galloは、ルーマニアの民俗音楽を研究していた民俗音楽学者Constantin Brailou が1944年にジュネーヴに設立した、フィールド・レコーディング音源のアーカイブ機関=AIMP(Archives Internationaes de Musique Populaire)が所有する音源の大半を、LP・CD としてリリースしてきたレーベルです。初回のシリーズはユネスコの協力まで得ていたりと、学術的な裏づけ・構成が完璧に成された壮大な「音」のドキュメント集で、フランスのユネスコやオコラ、アメリカのスミソニアン・フォークウェイズなどと並んで、民族音楽の最も重要なレーベルです。

「タジキスタン: 吟遊詩人の歌」では、タジキスタンの吟遊詩人(Bard)の音楽を11曲収録しています。タジキスタンの音楽様式は、ウズベク音楽が支配的な西部の様式と、ペルシア系のアフガニスタンと接する東部の様式の二つに大別され、本作はその両方が聴けますが、やはり東部のバダフシャンや南に位置する同じイラン系民族の多いアフガニスタン、パキスタン北部から、インド北部までの音楽との繋がりの方を強く感じさせるように思います。ドンブラ(あるいはドンブラク)、セタール(共鳴弦のついたパミール・セタール)、ギジャクなどの中央アジア特有の各種弦楽器の弾き語りが中心です。
南アジアのイラン系や北インドのパンジャーブへと繋がる詩の形式に恋愛詩のガザルがありますが、四行詩のルバーイー(複数はルバイヤート)も何曲かに見えまして、これはイラン東部のホラサーンに生まれ、現在のアフガニスタン北部のバルフで少年時代を過ごしたオマル・ハイヤームのルバイヤート以来の伝統が、今でも根付いていることの現れだと思います。

まずは1曲目のFalak and Two Ruba'i(ファラクと2つのルバーイー)ですが、演奏はアブドゥッラー・ママドシャーエフです。もしかしたらジャケットを飾っているドンブラクを構えた古老でしょうか。最初のフリーリズムの部分がファラクで、ペルシア的な8分の6拍子に入ってからがルバーイーでしょう。その後7拍子の不安定な部分に移りますが、「私の心は悲しみのフィドル(ここではギジャク)のように呻き悲しむ」とか「私の心はケバブのように燃える」のような詩内容をよく伝えています。

<1 Abdullah Mamadshayev / Falak and Two Ruba'i 7分53秒>
Falak and Two Rubâ'i


2曲目はGhazal By Lahutiという曲で、アディネ・ハシモフによるドンブラ弾き語りと、彼の息子の打楽器タブラクの伴奏です。この曲などは、いかにもインド~パキスタンのガザルやカッワーリにも繋がるような曲調です。

<2 Adine Hashimov / Ghazal By Lahuti 3分46秒>
Ghazal By Lâhuti


この盤は詩の形式で見ると恋愛詩ガザルが6曲、四行詩ルバーイーは3曲ありまして、特にルバーイーの入った音源はフェイドアウトしたくないので、11曲目の「3つのルバーイー」を先におかけします。この盤の中でも特に印象的な歌唱が聞けます。アブドゥッラー・ナズリエフのセタール弾き語りと、彼の息子イスマイルとダヴラトの伴奏です。太鼓は低音が豊かなのでイランのトンバク(あるいはアフガニスタンのゼルバガリ)でしょうか。92年の首都ドゥシャンベでの録音で、この演奏はバダフシャンとウズベクのシャシュマカームの折衷のように聞こえますが、どうでしょうか? こういうルバーイーの語りが、タジクでは結婚式でもよく演奏されるそうです。

<11 Abdullah Nazriev / Three Ruba'i 6分59秒>
Three Rubâ'i


では最後に6曲あるガザルの内、6曲目の「2つのガザル 2」を時間まで聞きながら今回はお別れです。デラヴァール・シャーのドゥタルチェ弾き語りに、アコーディオンとタブラクの伴奏が付きます。アコーディオンは西洋式のものだと思いますが、床に置いて左手で鞴(ふいご)を動かし右手で演奏するインド~パキスタンのハルモニウムを強く連想させる音色です。ペルシア詩の祖であるサーマーン朝時代のタジクの大詩人ルーダキーの一節が出てくるようです。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<6 Delavar Shah / Two Ghazal II 7分36秒>
Two Ghazal II

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2019年3月15日 (金)

アフガン側のパミール音楽

今日はちょっと予習になりますが、アフガニスタン側パミールのバダフシャン音楽を見てみます。放送の方は、タジクの後はアフガニスタン、フンザ、一部パキスタン北部、ウイグル、トルコと移動する予定です。テュルク系繋がりでトルコへ飛ぶ予定が、パミール周辺のイラン系繋がりでどんどん印パの方向に引っ張られそうですので(笑)、無理無理テュルクの方に舵を切る予定です。
アフガニスタンは中央アジア、西アジア、インドの文化が入り混じった所で、どこで取り上げるか難しい国です。イランの次でも良かったのですが、中央アジア繋がりでやっておかないと、ヨーロッパ巡りの後マグレブからエジプト南部に移り、西インドのラジャスタンに飛んでからのインド巡りの前では無理があるし、また長くなり過ぎるのでと思っています。
アフガニスタンのパミール音楽のyoutubeが、予想以上に色々ありそうです。調べてみて驚きました。冒頭の笛の音からして、いかにもバダフシャン。やはり天空の音楽のイメージです。楽器編成では、西のイランに繋がるタール、南のインドに繋がるハルモニウムが見えています。寒い所かと思いきや、半袖の人もいます(笑) 2本目はロシア文字表記ですから、タジク側かも知れません。

Pamir Music from Afghanistan Musician

Pamir-music.МАНУЧЕХРИ-ХАЙРУЛЛО***2017

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2019年3月14日 (木)

バダフシャン・アンサンブルの生映像、放送時間変更のお知らせ

17日の152回目放送分と、13日のTwitter、FB、インスタで速報致しましたが、ラヂバリの番組改編に伴い、4月からゼアミdeワールドの本放送の時間が日曜22時に変わります。夕方6時から夜の10時への移行です。夕飯時の忙しい時間から、夜の落ち着いた?時間への変更は、いいことかも知れませんが、リスナーの皆さんのご都合はいかがでしょうか。再放送は水曜夜8時半で、変更なしです。放送で「3年目も」と言いましたが、丸3年なので4年目になります。単純計算では、世界の伝統音楽を一通り回り終えるのに後20年ほどかかるかなと思いますが、宜しくお付き合い頂けましたら嬉しい限りです。
バダフシャン・アンサンブルですが、DVDには入ってないワルシャワなどでのライブ映像が幾つかありました。何よりも、イランのセタールとインドのシタールの合いの子のようなパミール・セタールの演奏を確認できる嬉しい映像です。左の弦楽器は、タジク・ルバッブ(またはアフガン・ルバーブ?)です。太鼓の奏法もよく分かります。ここで聞ける歌は、ウズベクよりも、アフガニスタン~北パキスタンとの類似性が強く感じられるように思います。

Badakhshan Ensemble na skrzyzowaniu kultur festiwalu Warszawa 2015

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2019年3月11日 (月)

Badakhshan Ensemble (SF)

ゼアミdeワールド151回目の放送、日曜夕方に終りました。13日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。

タジキスタンの音楽の2回目になります。これまでにリリースされたタジキスタンの音源を改めて見てみると、確認している15枚余りの中には、北西部のブハラ・シャシュマカーム系のウズベク音楽よりも、東部のバダフシャンの音楽が遥かに多いことに気が付きました。前者の太平な雰囲気に対して、バダフシャンのフリーキーにも聞こえるほど狭い音域での半音階の動きが多く緊張感に満ちた音調は、全く印象の違うものだと思いますが、キング盤では同じ演奏家がそのどちらも演奏し、両者が混合している音楽もあるように思います。その辺りの音楽事情の精査の必要を感じますが、それは東部音楽のスピリチュアルな要素が、シャシュマカーム系の演奏にも少なからず入り込んでいるように感じるからです。
今回は数あるバダフシャンの音源からアメリカのSmithsonian Folkwaysから2007年にリリースされましたDVD付の「バダフシャン・アンサンブル/パミール高原の歌と踊り」からご紹介したいと思います。特に有名なファラクを初め、ウイグル側のタジクの歌で聞いたようにも思える歌が入っていて、演奏が若手によるという点でも素晴らしいと思います。

まずはファラクですが、前回はムロドフ・ジュラベクの歌唱でバダフシャン音楽の典型としておかけしました。1000年以上前からの古い民謡と言われている歌ですが、この盤では一曲目にFalak-I Badakhshaniというタイトルで女性歌手Soheva Davlatshoevaのアカペラ独唱がありまして、5曲目にも器楽伴奏付きの男性歌唱でファラクが入っておりますので続けておかけします。一曲目は「世界は二つの門がある通路のようなもの」と歌いだされる四行詩のルバーイーが歌詞とあります。この一行だけでも、イラン東部のホラサーンに生まれ、現在のアフガニスタン北部のバルフで少年時代を過ごしたオマル・ハイヤームのルバイヤートを連想させる内容です。「哲学的な嘆き歌」という形容も5曲目に見えますが、確かにそう思います。では2曲続けてどうぞ。

<1 Badakhshan Ensemble / Falak-I Badakhshani 4分19秒>
Falak-i Badakhshani


<5 Badakhshan Ensemble / Falak 5分39秒>
Falak


2曲目のAy Pari(妖精?)という曲が、中国のウイグル側のタジクの歌で聞いたようにも思った歌で、それはゼアミブログで10年余り前にこの辺りの特集をしていた頃にyoutubeで聞いたように思いました。この盤の解説には1950年代に初めてパミールの民族楽団によって演奏され、その後ポップチューンにもなった有名曲だそうです。旋律の印象はファラクとそれ程変わらない感じですが、こういう曲が一般大衆に支持され歌い踊られている状況が凄いと思いました。

<2 Badakhshan Ensemble / Ay Pari 8分18秒>
Ay Pari (Oh, Fairy)


この盤はルーミーなどの詩によるSabzak Medleyという曲で賑やかに締めくくられますが、ここではバダフシャンの楽器が勢ぞろいしているようです。編成はバダフシャニ・ルバーブ、枠太鼓のダフ、ギジャク、パミール・ルバーブ、パミール・タンブール、セタールです。共鳴弦の付いたパミールのセタールは、イランのセタールと北インドのシタールの中間のような構造と音色です。

蘭Panから90年代に出た2枚には、この辺りに多いイスマイール派の神秘主義歌謡も収録されていましたが、このバダフシャン・アンサンブルの盤の白眉と思われる16分近い6曲目のMaddohも、段々と早くなる演奏にはスーフィー音楽の恍惚境が感じられます。かけられたらと思いましたが、今回は時間切れのため、また次回以降に余裕がありましたらおかけします。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<10 Badakhshan Ensemble / Sabzak Medley 6分31秒>
Sabzak Medley

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2019年3月 8日 (金)

シリンモフとシャブナミ・スラヨ

先日のタジク盤の99年ポップス・コンピレーションにシャムスなどと一緒に入っていたシリンモフの動画が見つかりました。Ширинмох Нихолова(シリンモフ・ニハロヴァ)がフルネームのようです。(hasugeさん、今回も有難うございます) シャムスのメンバーと共演していると思しき2本目は女性歌手シャブナミ・スラヨで、この曲はもちろんですが、シリンモフの方も、ルバーブや笛の音からして、かなりバダフシャンぽいように思います。タジクでは、どういう具合にシャシュマカームとバダフシャン調が混在しているのか、謎が深まります。と言うか、シャシュマカーム調のタジク・ポップスと言うのは、今の所聞いた覚えがありません。

Ширинмох Нихолова - Суруди сол | Shirinmoh Niholova - Surudi sol

шабнами сурае ва нобовар

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2019年3月 6日 (水)

Мадина Акназароваの場合

151回目の放送でも少し触れていますが、パミールらしい厳粛なイメージの(私はそう感じますが)バダフシャン音楽と、シャシュマカームなどのウズベク系音楽が、タジキスタンではどういう風に住み分けされているのかが、目下の最大の関心事です。日本の純邦楽と洋楽のような関係でしょうか?
面白いサンプルを見つけました。Мадина Акназарова(マディナ・アクナザローヴァ)の歌唱ですが、1本目は典型的なバダフシャン調のポップス?、2本目はルバーブ中心に北インドのタブラも入ってインド~パキスタンのポップなガザル風にも聞こえます。1本目のRapoと言う曲は、151回目でかけるSmithsonian Folkwaysの「バダフシャン・アンサンブル/パミール高原の歌と踊り」にも入っている古い舞踊曲です。

Мадина Акназарова - Памирская (Рапо) | Madina Aknazarova - Pamiri (Rapo)

Мадина Акназарова - Гул нагирад чоита (2018) | Madina Aknazarova - Gul nagirad joita

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2019年3月 4日 (月)

タジキスタンの東西の音楽

ゼアミdeワールド150回目の放送、日曜夕方に終りました。6日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。キング盤と同じ音源のyoutubeはないのではと思いますので、バダフシャンのファラクだけ、演奏者は違いますが、見た中では最も私の持っているイメージに近い演奏を上げておきました。

今回からタジキスタンの音楽巡りになりますが、本放送が3月3日ということで、この曲「うれしいひなまつり」から始めたいと思います。作曲者である河村光陽氏の長女の河村順子さんの名唱です。昭和11年の少女歌手時代のオリジナルSP音源もありますが、これからおかけするのは昭和30年代の録音で、成人されてからの慈しみ溢れる歌唱がとにかく最高です。

<29 河村順子 / うれしいひなまつり 2分40秒>
SP、ステレオ共、youtubeは無しでした。

タジクの初回はウズベクの時と同じく、比較的入手しやすいキングのワールドルーツミュージックライブラリーに組み込まれている「タジクの音楽」からご紹介します。世界的な民族音楽学者・小泉文夫さん死去の後、その教え子の一人だった小柴はるみさんの監修で出た「遊牧の詩~中央アジア、ウズベクの音楽」の姉妹編のような一枚ですが、タジクの方は1987年民音の催しのための来日時の録音で、プロデューサーは故・星川京児さんです。
まずはこの盤からタジキスタンの4州の民謡を花として讃えた軽快な器楽合奏のグルホイ・タジキスタン (タジキスタンの花)と、アフガン・ルバーブ(タジク・ルバッブ)とドイラによる古典曲のチガルポラを続けておかけします。1曲目の楽器編成はルバーブ、擦弦のギジャク、ツィターに似たコーヌーン(カーヌーン)、横笛のナイ、枠太鼓のドイラです。

<1 タジクの音楽 / グルホイ・タジキスタン (タジキスタンの花) 2分2秒>

<2 タジクの音楽 / チガルポラ 2分40秒>

次に都市部のシャシュマカーム系の音楽と分かる例として、ウズベクの名曲「モナージャト」と同じリズムが4曲目のナブルジ・アジャムで聞けますので、こちらをおかけします。ギジャクとドイラによる演奏です。

<4 タジクの音楽 / ナブルジ・アジャム 3分45秒>

ウズベキスタンの南東に接するタジキスタンは、テュルク(トルコ)系の多い中央アジアの国々の中では唯一イラン系のタジク人が中心の国です。中世においては現在のイランよりもむしろこの辺りがペルシア文化の中心で、大詩人のハーフェズやルーミーに先立つペルシア古典詩人の最古参であるルーダキーが生まれたのも、現在のタジクになります。彼はブハラの宮廷に仕え、宮廷詩人として活躍しました。
これまでにウズベクの音楽で出てきましたように、北西部や首都のドゥシャンベなどの都市部ではウズベクと共通するシャシュマカーム系の音楽が多く聞かれるのに対し、東部のパミール高原の険しい山岳地帯にあるバダフシャン地方では、この地の厳しい自然を思わせるような峻厳な旋律が印象に残る独特な伝統音楽が演奏されています。その荒々しく峻厳な音楽を奏でる弦楽器は、名前からルバーブと同系統と分かるルボッブで、洗練されて大らかなシャシュマカームのルバーブとは、一味も二味も違います。形は北インドのサロッドにかなり似た感じになります。アフガニスタンの政治家マスードの出身部族として知られるアフガニスタン北部のタジク族の間でも似た音楽が聞かれます。

タジクの山間部の有名な民謡ファラクが、名歌手ムロドフ・ジュラベクの歌唱で入っていますので、バダフシャン音楽の典型としておかけします。ファラクは、1000年以上前からの古い民謡と言われています。

<7 タジクの音楽 / ファラク 4分18秒>
Гурухи "Само" - Фалак | Gr. "Samo" (Sky) - Falak


タジキスタンのムスリム(イスラム教徒)の間ではスンナ派が多数を占めるのに対し、東部のパミール高原ではシーア派のイスマーイール派の信徒が大部分を占めていて、そのグノーシス主義や新プラトン主義の流れを汲む神秘主義的な教義が、都市部と山間部の音楽の違いに影響しているのかも知れません。

この盤にはシャシュマカームの曲としてイランのセガーに対応するセゴフという曲もありますが、時間の都合で割愛しまして、もう一曲、バダフシャンらしいルボイヨト (四行詩)という曲をおかけしておきます。オマル・ハイヤームのルバイヤートをすぐ様思い出させるタイトルですが、恋人への思いを歌った歌でパミールで古くから知られている曲とのことです。女性歌手ディリドロヴァ・マイサラが歌っています。リズムパターンだけは、先ほどのシャシュマカーム系と思われるナブルジ・アジャムにも似ているのが面白いところです。

<10 タジクの音楽 / ルボイヨト (四行詩) 5分42秒 3分位>

では最後にタジキスタンのワルツという曲を時間まで聞きながら今回はお別れです。ワルツとありますが、やはり胡旋舞を髣髴とさせるような感じがあります。ルーミーの詩に歌手のムロドフが3拍子の曲を付けています。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<15 タジクの音楽 / タジキスタンのワルツ 3分59秒>

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2019年3月 1日 (金)

バダフシャン(パミール)のポップス

3日の放送の先取りになりますが、タジキスタン東部のパミール高原に位置するバダフシャン地方のポップスを少しみてみます。結構youtubeがありました。舞踊が入ってかなり盛り上がっているようで、ちょっと驚いています。音源としてはイギリスのTopic Recordsから出ていた2枚組のFALAK, THE VOICE OF DESTINY: TRADITIONAL, POPULAR & SYMPHONIC MUSIC OF TAJIKISTANの2枚目に色々入っていて、一昨日のシャムスも4曲入っていました。この2枚組が出たのも納得の盛り上がり方のように思います。音楽の核は昔ながらだと思いますが、洋楽器も豊富に取り入れ、何より演奏者と聴衆共に若い人が多いのが素晴らしいことです。タジクやアフガニスタンでは、北インドのタブラがよく使われますし、このパミールらしい神秘的な音階は、北インドのラーガのどれかに似ているようにも思えてきました。イランなら複雑なチャハールガーでしょうか。(1本目のПарвиноз=パルヴィーノズというのはグループ名でしょうか?)

Парвиноз

Навои Бадахшон 2

Gr Pomir Alik Full HD гр памир и памирцы

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