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2019年3月18日 (月)

Tadjikistan - Songs of the Bards (VDE-Gallo)

ゼアミdeワールド152回目の放送、日曜夕方に終りました。20日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。

タジキスタンの音楽の3回目になります。今回ご紹介しますのは、スイスのVDE-Galloから98年に出た「タジキスタン: 吟遊詩人の歌」(Tadjikistan - Songs of the Bards)です。何度オーダーしてもなかなか確保できなかった幻の名盤で、入ればたちまち客注で埋まって売り切れてしまうもので長らく聞けてなかったのですが、10年ほど前にコピーを手に入れました。(現在ではおそらく入手困難だと思います)
VDE-Galloは、ルーマニアの民俗音楽を研究していた民俗音楽学者Constantin Brailou が1944年にジュネーヴに設立した、フィールド・レコーディング音源のアーカイブ機関=AIMP(Archives Internationaes de Musique Populaire)が所有する音源の大半を、LP・CD としてリリースしてきたレーベルです。初回のシリーズはユネスコの協力まで得ていたりと、学術的な裏づけ・構成が完璧に成された壮大な「音」のドキュメント集で、フランスのユネスコやオコラ、アメリカのスミソニアン・フォークウェイズなどと並んで、民族音楽の最も重要なレーベルです。

「タジキスタン: 吟遊詩人の歌」では、タジキスタンの吟遊詩人(Bard)の音楽を11曲収録しています。タジキスタンの音楽様式は、ウズベク音楽が支配的な西部の様式と、ペルシア系のアフガニスタンと接する東部の様式の二つに大別され、本作はその両方が聴けますが、やはり東部のバダフシャンや南に位置する同じイラン系民族の多いアフガニスタン、パキスタン北部から、インド北部までの音楽との繋がりの方を強く感じさせるように思います。ドンブラ(あるいはドンブラク)、セタール(共鳴弦のついたパミール・セタール)、ギジャクなどの中央アジア特有の各種弦楽器の弾き語りが中心です。
南アジアのイラン系や北インドのパンジャーブへと繋がる詩の形式に恋愛詩のガザルがありますが、四行詩のルバーイー(複数はルバイヤート)も何曲かに見えまして、これはイラン東部のホラサーンに生まれ、現在のアフガニスタン北部のバルフで少年時代を過ごしたオマル・ハイヤームのルバイヤート以来の伝統が、今でも根付いていることの現れだと思います。

まずは1曲目のFalak and Two Ruba'i(ファラクと2つのルバーイー)ですが、演奏はアブドゥッラー・ママドシャーエフです。もしかしたらジャケットを飾っているドンブラクを構えた古老でしょうか。最初のフリーリズムの部分がファラクで、ペルシア的な8分の6拍子に入ってからがルバーイーでしょう。その後7拍子の不安定な部分に移りますが、「私の心は悲しみのフィドル(ここではギジャク)のように呻き悲しむ」とか「私の心はケバブのように燃える」のような詩内容をよく伝えています。

<1 Abdullah Mamadshayev / Falak and Two Ruba'i 7分53秒>
Falak and Two Rubâ'i


2曲目はGhazal By Lahutiという曲で、アディネ・ハシモフによるドンブラ弾き語りと、彼の息子の打楽器タブラクの伴奏です。この曲などは、いかにもインド~パキスタンのガザルやカッワーリにも繋がるような曲調です。

<2 Adine Hashimov / Ghazal By Lahuti 3分46秒>
Ghazal By Lâhuti


この盤は詩の形式で見ると恋愛詩ガザルが6曲、四行詩ルバーイーは3曲ありまして、特にルバーイーの入った音源はフェイドアウトしたくないので、11曲目の「3つのルバーイー」を先におかけします。この盤の中でも特に印象的な歌唱が聞けます。アブドゥッラー・ナズリエフのセタール弾き語りと、彼の息子イスマイルとダヴラトの伴奏です。太鼓は低音が豊かなのでイランのトンバク(あるいはアフガニスタンのゼルバガリ)でしょうか。92年の首都ドゥシャンベでの録音で、この演奏はバダフシャンとウズベクのシャシュマカームの折衷のように聞こえますが、どうでしょうか? こういうルバーイーの語りが、タジクでは結婚式でもよく演奏されるそうです。

<11 Abdullah Nazriev / Three Ruba'i 6分59秒>
Three Rubâ'i


では最後に6曲あるガザルの内、6曲目の「2つのガザル 2」を時間まで聞きながら今回はお別れです。デラヴァール・シャーのドゥタルチェ弾き語りに、アコーディオンとタブラクの伴奏が付きます。アコーディオンは西洋式のものだと思いますが、床に置いて左手で鞴(ふいご)を動かし右手で演奏するインド~パキスタンのハルモニウムを強く連想させる音色です。ペルシア詩の祖であるサーマーン朝時代のタジクの大詩人ルーダキーの一節が出てくるようです。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<6 Delavar Shah / Two Ghazal II 7分36秒>
Two Ghazal II

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