パリサーのホマーユンと各ラディーフ盤の聞き比べ
ゼアミdeワールド156回目の放送、日曜夜に終りました。17日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。以下の理由で今週はブログアップもほとんど出来ないと思いますm(. .)m アリザーデではかけたことになっている短いBidad-e Kotも、時間が足りずカットしました。タライーの演奏は「ライラとマジュヌーン」までは入らず、ちょうどネイダーヴードで終わりました。
前回カシミールのラバーブ、北インドのサロッド、イランのセタールで、ラーガ・キルワーニとホマーユン旋法の聞き比べをしましたが、最後のホセイン・アリザーデのセタール演奏がビーダードの途中で終わってしまいました。せっかくですので、もう少しお聞かせしたいと思いますし、ちょうど家の工事が始まる前後で、更には18日にはトークトークでの9回目の終活カフェでの弦楽合奏、20日には西条の樹木葬朗読会でのチェロ伴奏とありまして、14日と21日放送分の準備には余り時間がかけられないと思います。年度初めですし自己紹介を兼ねて、パーソナリティ名にしているホマーユンの代表的な演奏として女性歌手パリサーの名唱と、往年の名歌手マフムード・キャリーミーの独唱、アリザーデとダリウーシュ・タライーのセタール独奏によるラディーフの該当箇所を並べてご紹介したいと思います。実はペルシア音楽は枚数的には手持ち資料が民族音楽では最も多く500枚前後はありますので、ペルシア音楽だけで1、2年はゆうに出来ますが、15分枠の最初に10回ほどごく一部をかいつまんでかけただけですので、折に触れて戻って取り上げたいと思います。
まずはファーテメ・パリサーの1978年の日本公演の歌唱から、ホマーユン旋法です。私がこの録音を初めて聞いたのは1980年の柘植元一氏のNHKFM「世界の民族音楽」の番組で、これが民族音楽に本格的に目が向くきっかけになった録音です。柘植氏の師匠で世界的民族音楽学者だった故・小泉文夫氏が、ペルシアの古典声楽を「世界で最も美しい歌」とか「死ぬ前に聞きたい歌を二つ選ぶとすれば、一番にペルシアの歌、二番目に日本の新内節」と語ったことに大きく影響を受け、その後両方に近づくきっかけになりました。
15分枠の時は抜粋でしたが、今回は10分余りのハーフェズの詩「恋人の巻毛から結び目を解け」によるこのホマーユンの演奏をノーカットでおかけします。裏声を絶妙に操るタハリール唱法を駆使した蠱惑的な絶美のアーヴァーズ(歌唱)です。
<4 ペルシア絶唱~イスラム神秘主義の歌声 ホマーユン旋法 10分12秒>
Parissa : Classical Vocal Art of Persia (Dastgah eh homayoun)
このビクターJVC盤には、パリサーの歌唱はマーフール旋法もありますので、次回おかけします。因みにゼアミdeワールドのオープニングにかけているのも、シャヒーディーとパイヴァール他のマーフールの演奏です。
では、ホマーユンの聞き比べとして、セタールの前にパリサーの師匠のマフムード・キャリーミーのラディーフも5枚組で出ておりますので、彼の独唱で、ネイダーヴードとビーダードの2曲をおかけします。パリサーが日本のライブで歌った中には確かにこの2曲があったと思います。12の各旋法の規範となる楽曲集成のようなラディーフは、沢山の小楽曲あるいは伝統的旋律形のグーシェで出来ております。各グーシェを雛形として、それを即興的にパラフレーズして演奏されます。ホマーユンには通常10~20余りのグーシェがありまして、ネイダーヴードとビーダードはその内の2つです。キャリーミーのラディーフ集成は、併せて楽譜も出ております。
<24 Mahmud Karimi / Vocal Radif of Persian Classical Music Vol.2 Homayun / Neydavud 1分39秒>
<25 Mahmud Karimi / Vocal Radif of Persian Classical Music Vol.2 Homayun / Bidad 1分10秒>
ホセイン・アリザーデのセタールによるラディーフ5枚組からホマーユンの部分をおかけします。前回途中になったビーダードからどうぞ。その後Bidad-e Kotを挟んでネイダーヴードが出てきます。
<36 Hossein Alizadeh / Radif Vol.2 Homayun / Bidad 2分11秒>
<37 Hossein Alizadeh / Radif Vol.2 Homayun / Bidad-e Kot 27秒>
<38 Hossein Alizadeh / Radif Vol.2 Homayun / Neydavud 1分52秒>
セタール独奏の比較で、ダリウーシュ・タライーのラディーフ5枚組から、同じくホマーユン旋法のビーダードと、Bidad-e Kotを挟んでネイダーヴードをおかけします。キャリーミーでは逆でしたが、タライーはアリザーデとこの部分の曲順が同じです。雛形ではあっても、二人の個性の違いがよく表れているように思います。ダイナミックで一瞬の閃きが光る天才肌のアリザーデと、緻密で職人技的なタライーと言えるでしょうか。
<29 Dariush Talai / Radif Vol.2 Homayun / Bidad 2分10秒>
<30 Dariush Talai / Radif Vol.2 Homayun / Bidad-e Kot 29秒>
<31 Dariush Talai / Radif Vol.2 Homayun / Neydavud 1分51秒>
ダリウーシュ・タライーの演奏では、ネイダーヴードの後も20曲近くホマーユン旋法のグーシェが続きますので、時間までおかけします。この中には「レイリー・マジュヌーン」(ライラとマジュヌーン)もあります。
ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週
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