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2019年6月 3日 (月)

Afghanistan Untouched~タジク、ウズベク

ゼアミdeワールド163回目の放送、日曜夜にありました。5日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。



アフガニスタンの音楽の4回目になります。今回はアメリカのTraditional Crossroadsから出ていた「往年のアフガニスタン(Afghanistan Untouched)」の2枚組からご紹介します。Untouched(無傷の)という副題通り、平和で農作物が沢山取れ、人々の間に音楽が生き生きと存在していた頃の貴重な記録で、1968年にマーク・スロービンによってフィールド・レコーディングされた録音の集成です。沢山の部族ごとの伝統音楽をたっぷり2枚に収めていますが、1枚目がタジク族とウズベク族の音楽、2枚目はハザラ族、パシュトゥーン族、カザフ族、トゥルクメン族の音楽が入っています。この盤が出た2003年はアフガニスタン紛争が始まって2年目でしたから、「このCDの売り上げの内、1$がレーベルから国際赤十字社に寄付されます」、とコメントが付いていました。素晴らしい音源が多いので、解説は最小限にして沢山かけたいと思います。



今回はまず1枚目のタジク族の音楽から行きます。アフガニスタン北部のタジク族と言うと、私はまず写真家の長倉洋海氏のドキュメンタリー番組で見たアフガニスタンの政治家マスードを思い出します。ソ連と戦い、その後の内戦で戦い、9・11の二日前に暗殺され、死後「アフガニスタン国家英雄」の称号を追贈されたマスードは、「アフガニスタンのチェ・ゲバラ」と形容されることもある「「賢者の風格」のある人でした。タジキスタン側の音源でもある意味そうですが、アフガンのタジク音楽を聞くと、当時の緊迫感溢れる状況を思い出します。



1曲目はドンブラとギチャクの二重奏で、Kataghan地方では最もポピュラーな曲とのことです。ペルシア四大詩人の一人、ルーミーの出身地でオマル・ハイヤームとも所縁のあるバルフでの録音です。ドンブラ奏者のBaba Qeranは、中国西部のウイグル側でタジク人の多いタシュクルガンから来たそうです。



<1 Kataghani Tune 2分55秒>





2曲目はドンブラ弾き語りのバダフシャンのファラクで、タジキスタン側と同じく「運命のメタファー(比喩)」というイメージを感じさせる曲調です。



<2 Felak Song From Darwaz Region Of Badakhshan 4分32秒>





3曲目はギチャクとゼルバガリによるファラクで、バーバー・ナイムは当時最も録音の多かったギチャク奏者だそうです。



<3 Felak For Solo Ghichak 3分6秒>





4曲目はバダフシャンの縦笛によるファラクで、演奏者はSafar Mahdiです。こういう独奏でかつフリーリズムのファラクが、最もファラクらしいように思います。お能の能管に似て聞こえる部分もあります。



<4 Felak For Flute 2分45秒>





6曲目はドンブラによるファラクで、この楽器の微細な右手のストロークには、鮮烈な印象を覚えます。



<6 Felak On Dambura 3分10秒>





7曲目は石のカスタネットQairaqを打ち鳴らしながら歌っています。伴奏に鐘のようなものとゼルバガリと思われる太鼓が入っています。



<7 Songs With Qairaq 2分45秒>





10曲目辺りからウズベク族の音楽に変わっていきますが、12曲目は枠太鼓ドイラを打ち鳴らしながら二人の女性歌手によって歌われる結婚の歌です。長いので抜粋でおかけします。



<12 Women's Wedding Song 5分44秒 抜粋>





13曲目からはウズベク族のドンブラや低音豊かなドゥタールの独奏や弾き語りが続きますが、ドゥタールの低音が心地良い17曲目をおかけします。

ドタール奏者Zia Khojaは、ソ連から1930年代初頭に移民してきた頃に13歳だったという名手で、トランスオクシアナのドタール演奏のスタイルを堅持していた人のようです。



ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週



<17 Sowt-I Miskin (Classical Uzbek Dutar Piece) 3分32秒>

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