Afghanistan Untouched~ハザラ、パシュトゥーン、カザフ、トルクメン
ゼアミdeワールド165回目の放送、日曜夜にありました。19日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。曲が多いので、カザフとトルクメンのyoutubeは明後日以降に回します。
アフガニスタンの音楽の5回目になります。前々回に続いて今回もアメリカのTraditional Crossroadsから出ていた「往年のアフガニスタン(Afghanistan Untouched)」の2枚組からご紹介します。Untouched(無傷の)という副題通り、平和な頃の貴重な記録で、1968年にマーク・スロービンによってフィールド・レコーディングされた録音の集成です。前々回は1枚目のタジク族とウズベク族の音楽でしたので、今回は2枚目のハザラ族、パシュトゥーン族、カザフ族、トゥルクメン族の音楽をご紹介します。
モンゴル帝国時代の末裔と言われるモンゴル系のハザラ人の音源は、一曲だけ入っています。ハザラ人はアフガニスタンの中央部から首都のカブールなどかなりの広域に住んでいますが、2003年推計のパーセントで見ると、パシュトゥーン人が45%、タジク人が32%、ハザーラ人が12%、ウズベク人が9%ですから、少ない方の民族ということにはなります。それ以外のトルクメン人、アイマーク人、ヌーリスターン人、バローチ人、パシャイー人は、もっと少ない少数民族になります。
ハザラの曲を笛で演奏しているのは、ディルダルという人です。モンゴル系ですが、5音音階ではないのが分かります。
<1 Didar / Hazara Music: Flute Tunes 1分44秒>
Hazara Music: Flute Tunes
この後はパシュトゥーンの音楽が5曲、ヘーラートの音楽が4曲、カザフの曲が2曲、トルクメンの曲が4曲と続いて、最後はゼアミブログでも妙技を取り上げたMalang Nejrawiの片面太鼓ゼルバガリの独奏で締めています。プラヤ盤の冒頭もこの人の演奏でした。この曲はフェイドアウトしたくないので、先におかけしておきます。様々なリズムパターンをデモ演奏しています。解説にありませんが、彼はパシュトゥーン族でしょうか?
<17 Malang Nejrawi / Samples Of Drum Rhythms On Zirbaghali 5分14秒>
Samples Of Drum Rhythms On Zirbaghali
アフガニスタンの最大民族のパシュトゥーン族の使うパシュトー語は、古代にパルティアから圧迫されてイラン高原からガンダーラ地方へ移住したイラン系のサカ族の言語を起源としていて、『漢書』で塞(そく)と呼ばれる種族(サカ)と釈迦族がもとは同じ民族であった、という大変に興味深い説があります。パシュトゥーン人というのは狭義のアフガン人で、元々アフガニスタンは、ペルシア語とダリー語で「アフガン人(パシュトゥーン人)の国」という意味です。ガンダーラは、現在のアフガニスタン東部からパキスタン北西部にかけて存在した古代王国です。
タンブール弾き語りとタブラ伴奏の4曲目は、内戦の頃によく耳にしたマザリ・シャリフでの録音です。アフガニスタンのタンブールは、共鳴弦のたくさん付いた長い棹の弦楽器で、シタールのルーツ楽器と言われています。
<4 Abdul Mazari / Bulbulak-I Sangshekan For Voice And Tanbur 4分16秒>
Bulbulak-I Sangshekan For Voice And Tanbur
ヘーラートの弦楽器は、有名なルバーブではなく、ドゥタールの演奏が2曲入っています。ドゥタールは2本の演奏弦だけでなく、共鳴弦のものと思しきペグがたくさん付いたヘーラート・ドゥタールです。
<7 Mohamed Qasem / Herati Music: Ghori (Dutar Piece) 3分46秒>
Herati Music: Ghori
ソ連時代の1932年にカザフスタンの首都アルマトゥイから脱出したカザフ族も、やはりアフガニスタン北部に住んでいて、この盤にはドンブラの独奏と弾き語りが入っています。カザフスタンでは変化があっても、亡命者の演奏には30年代のまま変わってない面があるかも知れません。ロシアのバラライカのように左手の親指を上から巧みに使う独特なフィンガリングが見られるドンブラ独奏と、弾き語りの両方を続けておかけします。
<11 Khandikhan / Kazakh Music: Dombra Pieces 1分20秒>
<12 Haji Birdali / Kokshetau 1分53秒>
やはりソ連を脱出してトルクメニスタンに近い北部に住んでいるトルクメン族の4曲は、ダブルリードと思われる管楽器のディリ・トュイドゥクと、尺八や東欧のカヴァルなどに近い音色のカルグイ・トュイドゥクの独奏で始まり、代表的な弦楽器のドゥタール弾き語りの吟遊詩人バフシーの音楽に移っていきます。3曲続けておかけします。独特な喉をひくつかせる歌唱の出てくるドゥタール弾き語りを聞きながら、今回はお別れです。演奏は、バフシーの名をそのまま名乗る名人アフマド・バフシーです。
ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週
<13 Nur Mohamed / Turkmen Music: Two Dili-Tuiduk Pieces 2分26秒>
<14 Hamra Bakhshi / Waghelbeg (Karghy-Tuiduk Piece) 1分11秒>
<15 Akhmad Bakhshi / Ughulbeg (Song With Dutar) 5分8秒>
| 固定リンク
「中央アジア」カテゴリの記事
- 中国の少数民族の音楽 ウイグル族、モンゴル族、朝鮮族、苗族、チベット族(2019.09.02)
- カラシュとフンザ(2019.08.10)
- ブルシャスキー語の話(2019.08.08)
- フンザとギルギット(2019.08.05)
- ホマーユン・サキのライブ映像 モハンマド・オマル&ザキール・フセイン1974 Vagabunden Karawane(2019.07.19)
「ゼアミdeワールド」カテゴリの記事
- アナトール・シュテファネットのヴィオラ(2022.06.27)
- バロ・ビアオ(盛大な結婚式)後半(2022.06.20)
- ファンファーレ・チョカリアのバロ・ビアオ(2022.06.13)
- VDEガロのモルダヴィア編(2022.06.06)
- オルテニアの様々なドイナ(2022.05.30)
コメント