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2019年10月21日 (月)

オスマン・トルコの軍楽(行進曲)

ゼアミdeワールド183回目の放送、日曜夜にありました。23日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。動画は今日はジェッディン・デデンだけにしておきます。何と、ロシアの赤軍合唱団との共演です。何でこういう共演が実現したのか、大分前にもブログに書いたことがありました。

トルコの伝統音楽の2回目です。前回はオスマン朝時代の古典音楽を少し聞きましたが、トルコの音楽と言えば、おそらく向田邦子原作のTVドラマ「阿修羅のごとく」に使われたオスマンの軍楽が一番知られていると思いますので、今回はキングのWRMLのシリーズにも入っている「トルコの軍楽~オスマンの響き」と、トルコ軍隊の先頭に立つスルタンの親衛隊「イェニチェリ」をタイトルに冠したクドゥシ・エルグネルのフランスAuvidis Ethnic盤のオスマン軍楽を中心にご紹介したいと思います。

小泉文夫氏とその弟子の小柴はるみさんの現地録音の「トルコの軍楽~オスマンの響き」ですが、テレビドラマの影響もあって、一時は最もよく売れた民族音楽音源だったようです。1979年のドラマですから、若い方は知らない人が多いのではと思います。さっそくその向田邦子原作のTVドラマ「阿修羅のごとく」に使われた古い陸軍行進曲「ジェッディン・デデン」(祖先も祖父も)からおかけします。

<1 古い陸軍行進曲「ジェッディン・デデン」(祖先も祖父も) 2分29秒>

Ottoman Military Band & Red Army Choir: Ceddin Deden Neslin Baban (Ottoman Janissary March).flv


ジェッディン・デデンの作曲者は、アリ・ルザ・ベイで、旋法はヒュセイニー、リズム型(ウスール)は4拍子のソフィアです。

私は98年にトルコの軍楽、メフテルのグループが来日した際に東京でのコンサートに行きましたが、軍楽のベースにあるのは、オスマン古典音楽やイスラムの宗教音楽であることがよく分かりました。作曲者にはオスマン古典音楽の作曲家の名前がかなり見つかります。楽器編成は、トランペット系のボル、オーボエ系のズルナ、打楽器は大型対太鼓のケス、小型のナッカーレ、両面太鼓のダウル、シンバル系のジルなどです。コンサートでは、コーラン朗誦をするムアッジンを兼ねているのでは思われる歌い手もいて、歌も非常に素晴らしかったのをよく覚えています。

バルカン半島はほぼ全域手中に収め、一時ハンガリーまでオスマン・トルコの版図に入り、ウィーンのすぐそばまで来ていたのですが、トルコ軍楽の行進曲は18世紀のヨーロッパで大流行し、ヨーロッパの軍楽やブラスバンド、ひいてはオーケストラの基礎になったとさえ言われています。色々な作曲家がトルコ行進曲を残していますが、その代表曲として、モーツァルトのトルコ行進曲をおかけします。オスマン軍楽と同じ所にアクセントが入っているのがよく分かります。パウル・バドゥラ=スコダ、フリードリヒ・グルダとともに「ウィーン三羽烏」と呼ばれたイェルク・デームスのピアノ独奏です。

<モーツァルト トルコ行進曲 イェルク・デームス 3分20秒>

キングの「トルコの軍楽~オスマンの響き」から、12曲目にはオスマン古典音楽の作曲家イスマイル・ハック・ベイの書いたマカーム・マーフールの軍隊行進曲が入っています。彼の曲はこの盤に数曲ありますが、古典の曲でも好きな曲が多いので、またいずれ取り上げたいと思っております。

<12 軍隊行進曲 2分16秒>

一つ戻って11曲目には、チャルメラをもっとけたたましくしたような同属のダブルリード管楽器ズルナのタクシームと、続いてエステルゴン城という曲が入っています。旋法はどちらもエキゾチックなヒジャーズで、リズム型は4+5のアクサクという9拍子です。エステルゴン城はヨーロッパ前線のトルコ占領下のハンガリーの古い民謡から取られた旋律とのことです。

<11 ズルナ・タクシーム~エステルゴン城 4分49秒>

このキング盤には、古い陸軍行進曲「ジェッディン・デデン」がもう1トラック入っていて、こちらは小泉文夫氏による1971年の現地録音です。この演奏では、軍楽の祈りが後ろに付いています。

<17 古い陸軍行進曲「ジェッディン・デデン」~軍楽の祈り 2分20秒>

次に、スルタンの親衛隊「イェニチェリ」をタイトルに冠したクドゥシ・エルグネルのフランスAuvidis Ethnic盤のオスマン軍楽から、ジェッディン・デデンと同じ曲のEski Ordou Marshiと、冒頭のMedley: Ceremonial des Janissaires / Elci Peshrevi / Rast Kar / Air des Mehtersを時間まで聞きながら今回はお別れです。メドレーの方で出てくるRast Karは、14、15世紀のアブドゥルカディル・メーラギが書いた有名な旋律で、ウードなどの古典楽器でも盛んに演奏されています。先週取り上げたウルヴィ・エルグネルの息子で、80年代のワールドミュージックブームの時に大きくクローズアップされたネイ奏者クドゥシ・エルグネルがオスマン軍楽を入れたということで、この盤は1990年のリリース当時に一部で大きな話題になりました。現在はフランスAuvidis Ethnicは活動停止しているので、おそらく入手不可の盤になります。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<6 Eski Ordou Marshi 2分3秒>

<1 Medley: Ceremonial des Janissaires / Elci Peshrevi / Rast Kar / Air des Mehters 6分5秒>

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